デュエル・マスターズ

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全国大会2019 中四国エリア予選 Aブロック準決勝:オーリ(広島) vs. こやま(岡山)

撮影者:堀川 優一
ライター:小林 龍之介


 あうんの呼吸という言葉がある。

 とある高僧が民衆からの問いかけに対して適当に「あ、うん」と回答しただけで全てが伝わったという故事が語源だが、多くを語らずとも分かり合える瞬間は確かに存在する。
 達人同士のデュエルマスターズというのは往々にして見えない刃が飛び交いあい、無言のメッセージでやり取りが行われているのだ。

 今回は中四国エリアAブロック準決勝、オーリこやまの対戦の模様をお送りしよう。


 こやまの『火水ジョーカーズミッツァイル』は、序盤から小型のジョーカーズやGRクリーチャーをバトルゾーンに並べ、早期の《BAKUOOON・ミッツァイル》召喚を狙うデッキだ。

 《メラメラ・ジョーカーズ》など1マナ手札交換呪文で《“魔神轟怒”万軍投》のコストを軽減するコンボがデッキの軸であり、妨害に脆いものの環境トップクラスの早さと展開力を持っている。
 3ターン目から4ターン目に≪「本日のラッキーナンバー!」≫《ジェイ-SHOCKER》で妨害しながら大量のクリーチャーでアタックするのが目標となる。

 《BAKUOOON・ミッツァイル》が1マナになるのも《夢のジョー星》のコストを踏み倒すのもクリーチャー4体が条件であり、ゲームにおけるキーワードだろう。


 対するオーリのデッキは《龍星装者 “B-我”ライザ》を主役に据えた速攻デッキである。
 《一番隊 チュチュリス》《ダチッコ・チュリス》のビートジョッキーサポートや《“必駆”蛮触礼亞》の踏み倒しで《龍星装者 “B-我”ライザ》を出し、アタック時効果でどんどんクリーチャーを展開してはスピードアタッカーを連鎖させていく。

 サブプランとして《BUNBUN・ヴァイカー》によるGR展開も用意されており、どんなに不利な状況でもカード1枚で逆転できる爆発力が魅力のデッキだ。

 《龍星装者 “B-我”ライザ》のスピードアタッカー付与はG・G・Gの手札が1枚以下が条件であり、キーワードとなる。


 どちらも3ターン目にビッグアクションを起こせるデッキであり、「どちらが相手より先に展開できるか」がゲームの焦点だ。
 自分がブン回りを目指すほか、相手のキーワードに干渉することも手段の一つになる。
 オーリからすると「クリーチャー4体」を妨害するために、《DROROOON・バックラスター》などでこやまのクリーチャーを破壊したい。
 こやまからすると「手札が1枚以下」を妨害するために、《ツタンメカーネン》でドローをさせたりシールドをブレイクしたりしてオーリに手札を与えたい。つまりGRをすることが妨害に繋がる。

 社会人である2人に自由に遊べる時間は多くないが、このエリア戦、ひいては全国大会に向けて可能な限り時間を見つけては練習に充ててきた。ここまでの内容は語るまでもなく“分かっている”ことだ。
 自分たちの努力が正しかったことはベスト4の席に座っていることが証明している。しかし、優勝者の椅子はたった1つしか用意されていない。ここで負ければ全国への道は断たれてしまうのだ。
 目の前に立ちはだかる人間は全て打ち倒す必要がある、それが旧知の仲であっても。
 だからこそ故に、その1戦は普段のデュエルマスターズよりもひと際大きな意味を持つ対戦となる。

 このマッチアップはシールドトリガーでの逆転が起こりにくいぶん、先に動きを通す方が有利であり、先攻を取る意味は非常に大きい。
 更に、後攻のアドバンテージである1ドローも「手札が1枚以下」を目指すオーリにとっては足かせになり得る。こやま以上に先手が欲しいところだ。
 ヘッドジャッジのアナウンスに合わせじゃんけんが行われる。
気迫のこもったじゃんけんの結果、先攻を取ったのはこやま。勝負の女神はまずこやまに微笑むが、こやまは集中を切らさない。
 そして対戦の準備が整った。運命の3ターン目に向けて、歯車は回りだした。



先攻:こやま

 こやまはまず《メラメラ・ジョーカーズ》をチャージしターンエンド。
 2ターン目には《花美師ハナコ》《Wave All ウェイボール》を展開したい『火水ミッツァイル』において、先攻1ターン目に手札入れ替えカードをチャージするのは手札が整っていることを暗示している。
 対してオーリは《“末法”チュリス》をチャージしターンエンド。
 シールドトリガーではなく《龍星装者 “B-我”ライザ》へアクセスできるカードを置いたということは、こちらも手札が充実しているようだ。
 勝負の3ターン目に向けて、何気ない挙動からも2人は情報を集めていく。

 こやまは2ターン目に《Wave All ウェイボール》を召喚。
 継続的にGRを行えるこのカードは《“魔神轟怒”万軍投》が引き込めていないときにもクリーチャーを展開してゲームメイクができる。『火単“B-我”』に対しても有効なカードで、非常に順調な滑り出しと言えるだろう。


 こやまからのアプローチに対し、オーリは《一番隊 チュチュリス》を召喚しターンエンド。
 オーリのデッキで最も出したい2マナクリーチャーであり、次の選択肢が大きく拡がった。手札には《“必駆”蛮触礼亞》《龍星装者 “B-我”ライザ》を揃えており、状況に応じて《DROROOON・バックラスター》によるクリーチャー除去のプランも取れる良い手札だ。

 互いに順調な滑り出しであるが、しかし速さ比べになれば先攻のこやまに利がある。
 3ターン目を迎えたこやまは手札を見つめて考える。
 GRギミックが持つランダム性は正しいプレイを選ぶのがとても難しい。
 『火水ミッツァイル』は特に手札入れ替えカードによるドローのランダム性もあるため、綿密なかじ取りが求められる。
 こやまの手札には《メラメラ・ジョーカーズ》《“魔神轟怒”万軍投》が揃っており、《Wave All ウェイボール》と合わせて4回のGRでどのような組み合わせが起こりうるか検討する。
 この小考は言葉が無くともビッグアクションの気配を伝え、オーリは居ずまいを正した。


 こやまが動き出す。
 まずは1マナ《メラメラ・ジョーカーズ》で1枚捨てて2枚ドロー。《Wave All ウェイボール》効果で出てきたのは《パッパラパーリ騎士》
 このタイミングでのマナブーストは非常に嬉しい当たりだ。
 そのままコスト軽減を効かせて2マナ《“魔神轟怒”万軍投》をプレイ。
 《ツタンメカーネン》が捲れると次のターンにオーリは「手札が1枚以下」を達成できなくなるし、リソースを伸ばすカードなら次のビッグアクションに繋がりやすい。
 ゲームの方向性を決めるGRにこやまの手がかすかに震えた。


 《ゴッド・ガヨンダム》効果で手札を捨て2ドロー。
 ここに赤く光るカードか《夢のジョー星》があればチェインが続く……が、こやまの手は止まった
 自分の動きを通すことが最大の防御になるというこやまの判断は間違っていない。しかし、GRの女神はオーリに微笑んだのだ。

 こやまのターンエンド宣言はオーリの反撃の狼煙である。

 相手のバトルゾーンに並ぶ《Wave All ウェイボール》と3体のジョーカーズ、そして《全能ゼンノー》を眺めた。
 パーツは揃っている。「手札が1枚以下」の条件も満たせる。デッキはオーリに応えてくれている。
 3マナ《“必駆”蛮触礼亞》から《龍星装者 “B-我”ライザ》を出し《全能ゼンノー》とバトルし破壊。
 バトルゾーンには《龍星装者 “B-我”ライザ》《一番隊 チュチュリス》の2体のみだが、ここからの爆発力がオーリを準決勝まで導いてきたのだ。
 オーリは再び居ずまいを正す。
 《龍星装者 “B-我”ライザ》でアタック宣言。デッキトップに置いたオーリの手がかすかに震えた。

 公開されたカードは、《一番隊 チュチュリス》
 《龍星装者 “B-我”ライザ》のアタックに期待した答えではない。
 《龍星装者 “B-我”ライザ》2枚目や《BUNBUN・ヴァイカー》はもちろん、《“末法”チュリス》《DROROOON・バックラスター》も当たりとして期待できた。
 だからといってスピードアタッカーが出てきたことに変わりはない。2体の一番隊アタックで2マナクリーチャーを2回捲れば打点は足りるのだ。

 《一番隊 チュチュリス》アタック宣言。先ほど以上にオーリの手に力が入る。


 《龍装者 バルチュリス》。5マナのカードだ。
 このカードが手札に来ていたなら、もっと簡単に打点を作れたのに。

 最後の《一番隊 チュチュリス》アタック宣言。


 ≪メガゴーワン・チュリス≫。3マナのカードだ。

 あっけなく、驚くほどあっけなくオーリの連撃は止まった。
 必殺の願いは届かず、こやまのシールドが1枚残った。

 こやまにターンが渡り、潤沢な手札から落ち着いた手付きでカードがプレイされていく。
 《BAKUOOON・ミッツァイル》が登場し、何度も撃たれた≪「本日のラッキーナンバー!」≫がオーリの反撃の芽を摘む。

 こやまがダイレクトアタックを宣言した瞬間、負けたはずのオーリが微笑んだ。
 そこには勝者を称える姿が。固い握手には俺の分まで任せたという強い意志が込められていた。
 オーリが去った後で初めてこやまは息を吐き、机に突っ伏す。
 しばしの沈黙の後、立ち上がり言った。

こやま「2年連続で調整仲間がエリア決勝で負けている。今年こそは絶対全国行きます」

 語らずとも伝わる決意をあえて言葉にするこやま。
 勝者は堂々と次の席へと進む。共に戦った者の願いを背に。全国への扉を開くために。


Winner:こやま

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