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全国大会2019 関西エリア予選:トップ5カード ~環境を切り崩すのはいつだって~

ライター:林 直幸


 エリア予選も後半戦。4人の代表が一気に決まる大型予選の1つ、関西エリアでの戦いが幕を下ろした。
 激戦となった関西エリアで勝敗を分けたカードたちを紹介していこう。


第5位:《Wave All ウェイボール》


 北陸エリアから早3週間、エリア予選時の2ブロック環境もプレイヤーたちによって研究が進みつつある。
 特に環境大本命、『火水ジョーカーズミッツァイル』の構築についてはほぼ全プレイヤーが共通の見解を出していた。

 それは、九州エリアでぎゃる男らが持ち込んだ《Wave All ウェイボール》入りの基盤が最強であるということだ。

 荒木。の全国進出を皮切りに、翌週の中四国でも同じ構築のこやまが準優勝。
 そしてこの関西エリアでは、なんと決勝トーナメントに進出した『火水ジョーカーズミッツァイル』の使用者全員が《Wave All ウェイボール》入りのほぼ同じ構築を使用していたのだ。

 《Wave All ウェイボール》の強さは軽コスト呪文が多く積まれたデッキとの相性のよさに加えて、その除去耐性にある。
 クリーチャーに選ばれないことで《DROROOON・バックラスター》を回避し、
 高いパワーは《フンバルさん/フンバ・フライ・ダイ》《バングリッドX7》の除去ラインを超え、
 3ターン目に《ザババン・ジョーカーズ》と一緒にプレイするなどの工夫をすれば《斬罪 シ蔑ザンド》もケア可能。

 そう、現環境に存在する軽量除去がほぼ通用しない。
 効果の強さからも先攻2ターン目にこのカードを出すことは死刑宣告に等しい。それほどのパワーを持っているのだ。

 Aブロックの決勝戦、『火水ジョーカーズミッツァイル』のミラーマッチは互いにほぼ同じ構築、試合展開は盤面に《Wave All ウェイボール》が並び合っていた。
 それほどまでにぎゃる男の構築、そして《Wave All ウェイボール》が環境に与えた影響は大きなものだった。


第4位:《幽鬼ブチャカティ》


 『火水ジョーカーズミッツァイル』が環境大本命であるという共通認識の下で進んだ今環境は、北海道エリアで1つの転機を迎えた。
 それはNJが『水闇オレガ・オーラ』で優勝を果たしたことだ。

 環境最強の『火水ジョーカーズミッツァイル』にも弱点はある。そのうちの1つが手札リソースの薄さから、軽量ハンデスに弱いこと。
 そのために『水闇ハンデス』といった軽量ハンデスを用いた戦略は早期段階から研究が進んでいたが、どうしても環境2番手である『火水自然ミッツァイル』に対して芳しい勝率を出せない。
 そこで登場したのがよりカードパワーを高め、『火水自然ミッツァイル』に対しての勝率が改善された『水闇オレガ・オーラ』。
 関西エリアでも多くの使用者を輩出し、dottoを始めとした6人が本戦へと進出した。

 その屋台骨となっていたのは軽量ハンデスである《乱罪 ダイパ殺デー》、そしてここに挙げた《幽鬼ブチャカティ》だろう。
 特に《幽鬼ブチャカティ》《白皇世の意志 御嶺》にブロッカーを付与することで細かいケアが可能になるなど、ハンデス以外にもコントロールデッキにおいて重要な役割を担っていたのだ。


第3位:《マリゴルドⅢ》


 『火水ジョーカーズミッツァイル』の隆盛によって最も勢いを落としたデッキといえば、同じく《BAKUOOON・ミッツァイル》を扱うもう1つのデッキ。
 そう、『火水自然ミッツァイル』である。

 北陸エリアが始まった当初は環境トップを走っていたが、『火水ジョーカーズミッツァイル』の隆盛により立ち位置が悪化。
 キルターンの関係上環境トップに不利となるため、『火水自然ミッツァイル』は徐々にその立ち位置が脅かされていた。

 が、幅広いデッキに戦えるその対応力は依然として健在。
 特に関西エリアの時点では『火水ミッツァイル』に対抗するために数を増やしたTier2以降のデッキが増えていたことが追い風となっていた。それらに対して『火水自然ミッツァイル』は軒並み有利なのだ。
 決勝トーナメントでは『火水ミッツァイル』に次ぐ使用者数を叩き出し、Cブロックではatkが優勝という最高の結果を残した。
 その核であり決勝戦で最大の勝因となったのが、《マリゴルドⅢ》だ。

 『火水自然ミッツァイル』は各種マナドライブを達成してからの動きが安定している印象が強いが、《マリゴルドⅢ》による爆発力も兼ね備えている。
 事実決勝戦ではatkが4ターン《知識と流転と時空の決断》の2回GRで《マリゴルドⅢ》を捲り、効果で出した《κβバライフ》から《マリゴルドⅢ》
 そこから始まったGR連鎖の末に4体の《BAKUOOON・ミッツァイル》と3回の≪「本日のラッキーナンバー!」≫が放たれた。
 幅広く戦える上にそういった上ブレを内蔵しているからこそ、この関西エリアでも一定の使用者を輩出したのだろう。


第2位:《》


 関西エリアを制した4人全員が入れており、間違いなく今大会最も使われたであろうカード。
 それは間違いなく《》だろう。

 この環境を定義するのは《BAKUOOON・ミッツァイル》のGR召喚連打。
 その対策相手のGR召喚を止めることができるこのカードの存在無くしてこの環境を語ることはできない。
 果てには《BAKUOOON・ミッツァイル》系統のデッキにもこれが標準搭載されている始末。水文明が入っているほぼ全てのデッキに搭載されていたと言っても過言ではない。
 《Wave ウェイブ》《無限合体 ダンダルダBB》など、他のカードとの組み合わせが容易であることもここまで使われた要因のひとつであろう。

 ≪「本日のラッキーナンバー!」≫最大の特徴、それは使い手の力量をそのまま表すことだ。
 非常に強力なカードではあるのだが、このカードはただ闇雲に撃ってもリソースを1枚失うだけ。撃つタイミング、宣言する数字を少しでも間違えれば平凡以下のカードに成り下がる可能性だってある。
 トッププレイヤーの間では「このカードが流行ってからプレイングの差が明確に出るようになった」と評判のカード。関西大会の優勝者が普段CSでも結果を残しているプレイヤーであることが、その証拠であろう。


第1位:《》


 さて、以上を踏まえた上で関西エリアで最も成功したデッキは何だっただろうか?
 環境最強の《BAKUOOON・ミッツァイル》系統のデッキ?『水闇オーラ』のようなそれらを対策するデッキ?

 否。正解は、その上を行くプレイヤーたちの叡智。
 《ブラッディ・タイフーン》不在の2ブロック環境では構築困難と思われていた、『水闇カリヤドネ』である。

 兵庫県の調整チーム「サデュケーン」謹製のこのデッキ、一見すると形は《ブラッディ・タイフーン》がない部分をできる限り安定性を上げるように近づけたもの。《》の採用が目を引くところだろう。
 だが、彼らの勝因を語るにはその構築について語るより、その"環境読み"について説明する必要があるだろう。

 ビルダーであるウスラトンカチはこのデッキを作るにあたって、「『火水ジョーカーズミッツァイル』の最大出力以外には勝てるように構築した」と語る。
 つまり、2番手以降の『火水自然ミッツァイル』や『火水ジョーカーズミッツァイル』の対抗手段として研究されていた『水闇オーラ』など……
 それらの増加を見越した上で、それらを狩り尽くすためにほぼ意識されていない『水闇カリヤドネ』の研究に着手した、ということだ。

 事実、殿堂構築の『水闇カリヤドネ』の特徴は自分より遅いデッキに対して軒並み有利であること、有利対面に対して有効な動きをどのゲームでも再現できる安定性が高いこと。
 《ブラッディ・タイフーン》が抜けた穴さえ埋めれば、2ブロックでもこれの再現は不可能ではない。
 そう踏んだ「サデュケーン」メンバーによって構築されたこのデッキは、結果的にリョウマぐってぃが優勝。間違いなく今大会最高の結果を残すこととなった。

 固まったと思われた環境でさえも、まだ切り崩せる可能性があることを示してくれる。
 プレイヤーの叡智は、どこまでも留まることを知らないのだ。

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