全国大会2024 東北エリア予選:メタゲームブレイクダウン
ライター:山口 海斗(ジャイロ)
全国規模で見ても、オリジナルフォーマットに比べて圧倒的に開催数の少ない2ブロックフォーマット。そのメタゲームの歩みは、主流となっているオリジナルフォーマットやグランプリのあったアドバンスフォーマットに比べると比較的緩やかであった。しかしそれも過去の話。
直前に開催された「全国大会2024 エリア代表決定戦 北海道大会」において2ブロック環境の開拓は全国各地で一気に進み、そのメタゲームが動き出した。店舗予選時点では【水自然ジャイアント】と【火水マジック】の圧倒的2強環境であったが、その結果やいかに。
本州初となるエリア戦のメタゲーム、まずはその母数から追っていこう。
全プレイヤーデッキ分布
25 水自然ジャイアント11 闇自然ゼニス
10 火水マジック
7 光水自然ゼニス
5 ターボマジック
4 火自然ゼニス
4 光闇メカ
3以下 13デッキタイプが18人
合計 84人
水自然ジャイアント 使用者25名
デッキの根幹を支える動きとしては《竹刀の超人 / サイバー免許皆伝》か《豊潤フォージュン》の違いこそあれど、強さの骨子は同じ。その強さを遺憾なく発揮できるのもあって、使用者は堂々の1位。全体の3割近いプレイヤーが使用していた、環境を定義するデッキであることは今更だろう。
dearjoker 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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序盤の足回りを《豊潤フォージュン》に任せている構築では、《死神覇王 ブラックXENARCH》の採用が印象的であった。ハイパー化した《哀樹神官 グリッファ》の攻撃時に《チアスペース アカネ》などを革命チェンジ宣言。先に《死神覇王 ブラックXENARCH》を《哀樹神官 グリッファ》の能力によって踏み倒した後に革命チェンジすることによって、
①《死神覇王 ブラックXENARCH》の登場時
②《哀樹神官 グリッファ》の離れた時
③《チアスペース アカネ》の登場時
と3回も《死神覇王 ブラックXENARCH》の能力が起動できる。伸ばしたマナから普通に召喚できるのももちろん強力だ。新たな詰めの手段を獲得した【水自然ジャイアント】には今後も注目だ。
闇自然ゼニス 使用者11名
環境が1周回って注目されたデッキの1つ。2024年6月頃のトップメタが再度スポットライトを浴びる形に。「全国大会2024 エリア代表決定戦 北海道大会」では使用者が1名なのを踏まえるとその注目度の高さが伺える。前述の【水自然ジャイアント】や後述の【ターボマジック】に対して強く出られる良さはそのままに、《深淵の逆転撃》という能動的な防御手段を獲得したのは明確な強みだ。
天江ましろ 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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最速4ターン目に《「呪怨」の頂天 サスペンス》による全ハンデスや《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》による攻撃制限など押し付けムーヴも光る。まずは蔓延るゼニス達をどう対処するのか、あるいは着地させないのか、着地は許しても仕事をさせないのか。各デッキたちは回答を持って挑まなければならないだろう。無視はできないデッキタイプだ。
ターボマジック 使用者5名
直前に開催された「全国大会2024 エリア代表決定戦 北海道大会」で準優勝を収めたセキボンの使用デッキだったことも皆の記憶に残っているだろう。何より、母数が多いと予想された(実際多かった)【水自然ジャイアント】に強く立ち向かえるのはかなりの魅力だ。
ディアヴロ 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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予選3位と好成績を収めており、デッキリストも4×9+3+1とシンプルながらも美しい。水晶マナを使うデッキの特権である《黙示録の水晶》を抱えており、クリーチャーを並べるデッキ群に対して強く出られるのも忘れてはいけない。今後も立ち位置などを見極めて使うことで、より良い成績を狙えるデッキだろう。
これらの勢力の大きなデッキ群たちによって本大会のメタゲームはなされていた。
では次に、そんなメタゲームを掻い潜り、見事予選を突破した16人の分布図を見ていこう。
TOP16デッキ分布
4 水自然ジャイアント4 火水マジック
2 闇自然ゼニス
2 光水自然ゼニス
1 光闇メカコンプ
1 光闇メカ
1 ターボマジック
1 火水ガラワルド
火水マジック 予選突破率40%
水晶マナを多用した【ターボマジック】ではない、いわば純正の【火水マジック】。一部を除いて、薄くなった受けに対して無類の強さを誇る。
さちぼう 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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特に印象的だったのは、《詠み人-シラズ-Machine / 招水呪文「マジックル」》の採用に踏み切っていたさちぼうの構築だ。
【火水マジック】を使っていると《アシスター・Mogi林檎》の軽減もあって1マナ余ることが一定の頻度で起こる。そこで≪招水呪文「マジックル」≫を使用することで次の動きに繋げようという意図を感じた。殿堂入りによって《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を失った【火水マジック】だが、これによる再現性の確保はかなり強力だ。今大会の頂点に立ったのも納得である。
光水自然ゼニス 予選突破率29%
東北の秘密兵器、その研究の成果が堂々と現れた。上述の【火水マジック】が強く動いていた環境というのも追い風だろう。なお、このデッキの存在によって【火水マジック】の項目では「一部を除いて、薄くなった受け」という表現を用いさせていただいた。以前より似たコンセプトのデッキはあれど、受け以外の役割が弱い《光開の精霊サイフォゲート》など懐疑的な部分も多々あった。
そんな問題点を「タッチカラーだった水文明のメイン採用」という、コロンブスの卵のような解決法で魅せてくれた。
†カナタ† 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》のデッキ掘削能力に《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》による盤面制圧能力、惜しげも無く投下されたボム系のトリガーなど語れる部分は多い。惜しくも準決勝にて有効トリガーを踏まれずに【火水マジック】に駆け抜けられて散ったデッキタイプだが、そのポテンシャルは高い。今後のメタゲームに大きく影響を与えることだろう。
光闇メカ 予選突破率50%
Viper 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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2ブロック環境の旧王者、堂々の帰還。なお予選1位を飾ったのも本デッキタイプだ。
考えてみても妥当である。使用者の多かった【水自然ジャイアント】には《堕カオスマントラ》のスレイヤー付与で盤面の優位を与えない。【ターボマジック】に対しては速度勝負で十分勝利を狙える。【闇自然ゼニス】へは《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を《DARK MATERIAL COMPLEX》で上から踏み越えていく。
どれも自身のゲーム展開が可能であり、《DARK MATERIAL COMPLEX》によるゲームメイクや《ドラン・ゴル・ゲルス / 豪龍の記憶》による展開能力など強力なポイントが多い。《DARK MATERIAL COMPLEX》の除去手段を持ち合わせていないデッキは苦戦を強いられる相手となっただろう。
火水ガラワルド 予選突破率100%
いけ 全国大会2024 東北エリア予選 2ブロック構築 |
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母数1での入賞。加えて決勝まで勝ち残っているのだからその強さは本物だ。
《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》や《爆藍月 スケルハンター》といった攻撃制限の強さを、《ロック・ポロン》や《ボルシャック・ガラワルド》など火文明のカードが持つ盤面処理能力で足支えする。
極めつけは《文藍月 スナイパー》による呪文と行動の制限。ジャストダイバーなどで触れないクリーチャーに対しては行動制限を。【火水マジック】など《爆藍月 スケルハンター》が有効な対面には「4」の宣言で《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》などの除去手段を封じる。【闇自然ゼニス】が出だしに失敗していれば「3」を宣言してゲームテンポを獲得する。
ほか、各種呪文トリガーを牽制したり《DARK MATERIAL COMPLEX》の行動を封じたり、各デッキに的確な対応をすることで見かけの何倍も強く動ける。
このデッキ、そして制作者であるいけの残した2ブロック環境への爪痕は、今後のプレイヤーが意識することになるだろう。
総括
【光水自然ゼニス】の活躍や【火水ガラワルド】の誕生など、細かな点に違いはあれど、2024年度前半の2ブロック環境にかなり近しい印象を受けた。となれば、【光闇メカコンプ】や【火自然ゼニス】など、2024年度中盤にかけて活躍したデッキが日の目を浴びる番にも思えるが果たして……?
2024年12月21日(土)発売のDM24-RP4 デュエル・マスターズTCG 王道篇第4弾 「悪魔神、復活」までカードプールの追加は無い。それまでに開催されるエリア予選は北陸、九州、関西の3会場。今後の各デッキ群の活躍、そして【火水ガラワルド】のような新たなデッキの躍進など、目が離せない。みんなもやろう!2ブロック!
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