全国大会2024 東海エリア予選:TOP5カード紹介
ライター:川﨑 大輔
撮影:後長 京介
早くも2ブロックのメタゲームの概要が見えてきた結果として使用されているカード、環境で強力なカードがわかってきたこのエリアにおけるトップ5カードを見て行こう。
第5位:《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》
5位に位置付けたのは文字通り「必殺」として多くのデッキでフィニッシャーであったり、また相手のループ対策としての山札切れ対策として様々なデッキに採用されていた《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》である。最大使用率デッキであるターボマジックにおいては、単純にループ後のフィニッシャー呪文であるだけでなく、クリーチャー面が苦手とされる《聖霊超王 H・アルカディアス》に対抗できるカードであることも重要なカードとなり、《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》対策も含めてフィニッシャーにもかかわらず序中盤も役割を持てるという強いカードの条件を満たしていた。
この東海予選では水単ゼニスはもちろん、多くの光水自然ゼニスでも採用されていたことにより、採用されていたデッキ数だけで言えば33デッキと全カードの中で一番の採用率を誇るカードとなった。
第4位:《芸魔王将 カクメイジン》
僅差で4位となったのは《超重竜 ゴルファンタジスタ》を押しのけて現状最強の革命チェンジと名乗りを上げることとなった《芸魔王将 カクメイジン》。オリジナルやアドバンス、噂によれば殿堂ゼロですらも支配していたそのカードパワーは2ブロック環境でも健在だった。特にここで使用枚数が伸びたのは、《芸魔王将 カクメイジン》を使用するデッキに火水マジックとターボマジックというレンジの違う二種類のデッキでキーカードとして採用されていたのが大きいだろう。メタゲームブレイクダウンにおいても、ターボマジックが14人、火水マジックが8人と合計すれば最大勢力であった自然系ゼニスをも超える使用者数となっている。
また、その圧倒的なカードパワーとデッキのコンセプトを担う替えの効かなさから使用した22人が全員4枚投入だったことも枚数を稼いだ一因であろう。
第3位:《氷柱と炎弧の決断》
続いて3位には《芸魔王将 カクメイジン》の相棒ともいえる《氷柱と炎弧の決断》がランクイン。ここでも火水マジック系のデッキが強かったことが伺える結果となっている。《芸魔王将 カクメイジン》を採用している22人のプレイヤーが同様に《氷柱と炎弧の決断》も4枚採用している中で、火水闇プレジールを使用するあるが選手が2枚採用していたその一点でわずかな差がうまれ3位となった。
むしろ、《氷柱と炎弧の決断》自体はオリジナルやアドバンスにおいては《芸魔王将 カクメイジン》以外のデッキでも多く使われていることを考えるとこの差は小さい方で、今期の2ブロック環境においてはマジックのギミックを採用しない火水デッキが存在しにくいことをあらわしていると言えるだろう。
第2位:《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》
《芸魔王将 カクメイジン》がターボマジック+火水マジックのアプローチで採用人数を増やしたことに対して、ターボマジック+ゼニスのアプローチで採用人数を増やした《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》が2位となった。事実上の1位・2位である二つのアーキタイプにおける重要な初動であり、《水晶設計図》のない2ブロックにおいて3ターン目の《シャングリラ・クリスタル》2マナ加速の可能性を水晶マナ面でも手札面でもサポートする≪「いいダシがとれそうだ」≫はかなり魅力的な選択肢であったと言える。
メインで採用されている光水自然ゼニスの人数だけで言えば火水マジックと同じく8人であるため使用枚数に差は出ないはずなのだが、Canopus選手の水単ゼニスが4枚、ジェガン選手の水闇自然ゼニスが3枚と二つの《ローゼス・イノベーション》デッキでも採用されていた点で差がついた形となった。
第1位:《シャングリラ・クリスタル》
ここまでの流れを見ていただければ予想できると思うが、当然の1位は《シャングリラ・クリスタル》。東海の地は、水晶の華が咲き乱れていた。ツラトゥストラもニッコリだ。
ターボマジック+ゼニスという最大母数同士の組み合わせで《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》以上の採用枚数を見込めるカードである以上は当然の順位であり、使用人数も《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》に次ぐ31名、その全員が4枚採用ということで唯一の3桁スコアである124枚を記録した。
水晶マナギミックさえ採用すれば《フェアリー・ミラクル》など目じゃないアドバンテージと出力を保証してくれるこのカード。数々の新たな水晶ギミックのアプローチが華開いた東海の地だったが、今後のエリアでどのような水晶デッキが登場するか楽しみである。
それでは実際の数字と共に上位20枚のカードをここで公開しよう。
1位 124枚 《シャングリラ・クリスタル》
2位 95枚 《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》
3位 90枚 《氷柱と炎弧の決断》
4位 88枚 《芸魔王将 カクメイジン》
5位 85枚 《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》
6位 84枚 《芸魔隠狐 カラクリバーシ》
7位 77枚 《「この私のために華を咲かすのだ!」》
8位 68枚 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》
9位 64枚 《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》
10位 56枚 《グレート・流星弾》
11位 55枚 《救済のカルマ ミルク / リリーフ・水晶チャージャー》
12位 52枚 《芸魔龍王 アメイジン》
13位 50枚 《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》
14位 49枚 《聖霊超王 H・アルカディアス》
15位 46枚 《チアスペース アカネ》
15位 46枚 《輝跡!シャイニングロード・マンティス / 輝跡の大地》
17位 43枚 《超重竜 ゴルファンタジスタ》
18位 40枚 《清浄のカルマ インカ / オキヨメ・水晶チャージャー》
19位 38枚 《アシステスト・シネラリア》
19位 38枚 《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》
こうしてみると、東海エリアの会場でどのようなカードが戦っていたのか少し想像しやすいのではないだろうか?
集計していく中で、例えばとらくん!選手が《超炎怒 アゲブロム》を1枚採用したことで東海の会場にいない夜の四天王がシンべロムだけだったことや、同じく22人が採用している《芸魔隠狐 カラクリバーシ》がトップ5入りを逃したのはアーチー選手やりんちょん選手ら4人が持ち込んだリストが3枚だったのが原因だったりや、トップ20にも入れていないものの《死神覇王 ブラックXENARCH》を採用した選手は11名いて様々な試行錯誤が行われていることがわかったりと語りたいことは尽きないのだが、あまり冗長になっても仕方がないのでこのあたりで東海エリアトップ5カード紹介の記事を終えたいと思う。
という「それはマジの使用枚数のトップ5カードじゃないかい!」という冗談はこれくらいにして、あまりふざけていると怒られるので通常のトップ5カード紹介の記事をそろそろ始めようと思う。
記事の構成上、メタゲームブレイクダウンと内容が被る部分も多くあるが、これはあの無闇に長いメタゲームブレイクダウンを読む必要を減らすための記事という側面もあるのでご容赦いただきたい。
第5位:《ローゼス・イノベーション》
メタゲームブレイクダウンの集計中に最初に目をひいたのはCanopus選手の使用する水単ゼニスであった。環境の最初期に注目された《ローゼス・イノベーション》と《水晶の祈り / クリスタル・ドゥーム》のコンボだったが、ある程度環境が進む中で忘れ去られかけていたコンボであり、実際、リストを見た瞬間は恥ずかしながら何をするデッキだかわからなかった。おって、ジェガン選手の水闇自然ゼニスを目撃するに至り「もしかしてこの会場ではものすごいことが起こっているのではないか?」とテンションが上がったのだが、最終的に《ローゼス・イノベーション》を採用していたのはこの2名にとどまった。とはいえ、序盤で語った採用枚数トップ5カードの1位が《シャングリラ・クリスタル》であったことからもわかるように、水晶マナギミックの持つ出力とポテンシャルは環境でもトップレベルであると同時にまだまだ未知数のものであり、今後も環境が進む中で様々なギミックが試されていくことになると思われる。
その中でも《ローゼス・イノベーション》と《水晶の祈り / クリスタル・ドゥーム》のコンボは出力だけで言えば最大級であり、環境で最も遅いゲームレンジを担うポテンシャルはあるかと思う。
とはいえ、Canopus選手の使用した水単ゼニスは本人曰く「《「見よ!この美しき水晶の華を!!」》がないとデッキとして破綻しかねない」「光文明を入れるとマナ置きがかなりシビアになるので水単にしています」と、この手のデッキが好きでないと回せないピーキーなデッキであることは間違いない。ただ、「一方的にまける対面が少なく、自分のミスが後からよく分かる為、自分の勉強になるデッキだと思います」とのことでもあるので、このタイプのデッキに目が無い方は是非一度回してみて欲しい(そして、ループルートのわからなさに一度頭を悩ませてほしい)。
Canopus 全国大会2024 東海エリア予選 2ブロック構築 |
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なお、勝利した5戦中4戦はループで勝利し、1戦は殴り勝ったとの事だ。
第4位:《ボルシャック・ハイパー・アークゼオス》
使用したデッキリストが全て予選突破する。これは同じリストを複数人で持ち込んだものたち全員の夢だろう。
そして、その夢をこの東海エリア予選で達成した二人組がいる。それがBetMEX選手とnobuo選手だ。
BitMEX 全国大会2024 東海エリア予選 2ブロック構築 |
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nobuo選手の話によるとこのデッキ自体はBetMEX選手が店舗予選で権利を獲得した時のリストをシェアしてもらったものとのことなので、BetMEX選手にリストの中でも特に特徴的なカードである《ボルシャック・ハイパー・アークゼオス》の採用理由について聞いてみた。ちなみに、リストは途中で紆余曲折合ったものの最終的には店舗予選の権利獲得時のリストと1枚違いということで早い段階で完成度の高いリストにたどり着いていたことになる。
《ボルシャック・ハイパー・アークゼオス》の採用理由については、やはり《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》の存在が大きく、≪ボン・キゴマイム≫自体を除去できるのはもちろん、≪ボン・キゴマイム≫や《氷柱と炎弧の決断》で《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》をタップできなくなった時にハイパー化でタップできるのが大きかったという。
「マジックだけには勝ち越せなかったのですが、アークゼオスを入れると少しは勝率がアップしたので最後まで4投で行きました!」とのことで完全に相性を改善できなくともジャイアント対策なども兼ねた上での最善策として採用したカードとのことだ。とはいえnobuo選手が「東北でマジックが優勝していたので、昨日アグンテを入れて盾に1枚仕込んだ状態で回しても有利にはならなかったので純正マジックは切り気味に考えて元のリストに戻りました」と語るように火水マジックがつらい現状は変わらぬようだ。
今大会で2/2で予選突破しただけでなく、シーズン中に参加した2ブロックのCSにおいても両名あわせて6/6で予選突破を果たしているということでかなりポテンシャルの高いリストだといえるだろう。
なんにせよ、自分たち2人だけしか会場で気がついていないカードを使って2人とも予選を突破するのはあまりにも夢であまりにもかっこいい。
第3位:《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》
気がつかれていなかったカード、といえば今大会では《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》を外すことはできない。ある時まで《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》は盲点に置かれたカードだったと言っていい。構造上必要な自然文明である上にアドバンテージと盤面制圧の塊である《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》は当然の選択として、闇自然なら《「呪怨」の頂天 サスペンス》、火自然なら《「使命」の頂天 グレイテスト・グレート》が選択され、環境でゼニス・セレスと言えばこの3枚だった。実際、北海道エリア予選では《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》を使用しているリストは全参加者をチェックしてもひとりもいない。
そして、この認識を東北エリア予選でトップ4に入った†カナタ†選手が変えた。
正確には東北エリア予選で《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》入りのデッキを使用しているデッキリストは7枚あった。だが、使用している7人のプレイヤーは皆、†カナタ†選手と同じ調整チームで7枚のデッキリストは同じひとつのデッキリストだったのだ。(厳密にはあーしぇ選手のみ数枚採用枚数が違うデッキリストを使用していたが……)
このひとつのデッキリストが2ブロックに与えた影響は恐ろしいものだった。ひとつのカードの発見がここまで環境全体に影響を与えるイノベーションを見る機会はそうそうない。これが本当のローゼス・イノベーションだ。
《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》を11人が採用し38枚使用された。だが、そんな数字以上の影響を†カナタ†選手が言うところの「2ブロックの《飛翔龍 5000VT》」は与えていた。東海エリアの参加者に話を聞いて、光水自然ゼニスの話題がでなかったことはほとんどない。そして、実際特に《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》の影響を受ける水自然ジャイアントは使用者数も減らしていたし、トップ16入賞者も1名のみとなっていた。
エリア予選のメタゲームが水自然ジャイアント中心で水自然ジャイアントありきであったことを考えると、これは本当にすごいことだ。独自に開発していた水自然ゼニスと、北海道エリアで大谷選手が発見した《プリンセス・パーティ ~シラハの絆~》によって光水自然ゼニスを組むというアプローチが出会った結果、環境を根底から変えるデッキが完成したのだ。
惜しくも†カナタ†選手はトップ4敗退で権利獲得とならなかったが、それでも†カナタ†選手の調整グループがその後の2ブロック環境を変えてしまったことが証明された東海エリア予選であった。
牧瀬 全国大会2024 東海エリア予選 2ブロック構築 |
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また、牧瀬選手が使用した《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》入りの火水マジックは、当日の朝にタクシーで「どんな強い逆張りデッキがでてきてると思う?」というテーマで議論していた時にまつがんが「これは強いかもしれない」と言っていた構築であり、今後の環境でのポテンシャルに期待したい。
第2位:《楽識神官 プレジール》
チームでの調整結果が予選突破につながることもかっこいいが、同様に、会場でひとりしかいないデッキで入賞することもおなじくらいかっこいい。誰も使っていないデッキで自分が優勝する、というのはTCGをやっている人間なら一度は憧れるシチュエーションで、ちょっと想像力が豊かな人だったらその状況での優勝インタビューくらい妄想したことはあるだろう。今回、その夢にもっとも近づいていたのが水単ゼニスを使用してトップ4入賞したCanopus選手であり、そしてそれに準じる成績を残したのが火水闇プレジールを使用してトップ8入賞したあるが選手である。
あるが 全国大会2024 東海エリア予選 2ブロック構築 |
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東北エリアにていけ選手が火水ガラワルドで取っていたのと近いアプローチのデッキとして構築された火水闇プレジール。「メタクリーチャーを並べて負けない盤面を作る」「《楽識神官 プレジール》を絡めた強力な押し付けを持つ」「受けのカードを大量に積んで火水マジックへの相性を確保する」というみっつのコンセプトが絡み合った複雑なデッキであり、入っているカードや採用されているコンセプトは強いが実際にデッキとして強いかについてはリストを見る限り未知数なデッキではある。
実際、博多の2ブロックCSで勝っているのを見て試しに調整し始めたあるがも半信半疑であったという。回しているうちに、色々なデッキに有利ではあるものの、並べて殴るコンセプトである以上、ある程度の単調さが否めなかったという。だが、その転機となったのは友人と水自然ジャイアントで調整しているときだったという。相手が火水闇プレジールで有利な盤面になってから溜めて安全にゲームを決めてくるのを見て「ただ殴るデッキだろうと思っていたところで、「負けない状態で溜め続ける」プレイができることがわか」り、それがこのデッキを使用する直接のきっかけになったという。
そこからは相手によってゲームレンジをコントロールするプレイの練度を高めていたと言い、実際、直前に登場した光水自然ゼニスに対してはかなり厳しいものの、このデッキ以上のプレイ練度を高めることは難しいと考え、これらのデッキに勝てるプレイを身に着ける練習にシフトしたという。
今後、光水自然ゼニスが増えていくとしたら《楽識神官 プレジール》自体が環境に残れるかはわからないが、環境から新たなデッキを探す意欲とそのデッキの正しい評価を練習の中で見つけることの重要さをあるが選手のエピソードは示していると思う。
第1位:《芸魔王将 カクメイジン》
70人のプレイヤーが様々な思惑で参加した東海エリアを制したのはかにかまぼこが使用する火水マジックであった。メタゲームブレイクダウンでも触れているが、東北会場に続いて火水マジックがエリア予選を突破した背景には多くのデッキが火水マジックばかり対処しているわけにはいかない、もっと言えば「火水以外には有利なデッキができたから、火水マジックは割り切ろう」という選択を取ったことがあったことは間違いないだろう。
だが、その状況を乗り切ったかにかまぼこ選手が火水マジックの勢いだけで優勝したとは思えない。
こちらのインタビューに詳しい記載があるが、トーナメント歴わずか1年ほどのかにかまぼこ選手は、権利を持たない友人を2ブロックの練習に誘うのを躊躇しひとりでの練習で環境のデッキとのプレイを身に着けたという。
さらに相性の悪そうな光水自然ゼニスは直前に発表されたリストだっただけに調整が間に合わず、リストを記憶した上で予選ラウンド中の敗北でプレイングの仕方を学んでいったというのだから驚きだ。実際、そこで学んだプレイの結果として決勝戦で見事光水自然ゼニスを下して優勝したのである。
イノベーションに満ちた大会となった東海エリア予選を自己の鍛錬で制した若き才能が全国大会でどのような革命をみせてくれるのか、今から楽しみだ。
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