DMGP7th 準決勝:ZweiLance vs. ぎらさき
日本一に懸ける思いがある。
グランプリ-7th、準決勝。そこにはグランプリの決勝進出をかけた戦いという以上に、どこまでも負けられない重みがあった。
デュエル・マスターズのグランプリにおいて、優勝者と準優勝者にのみ与えられる特典。すなわち、日本一決定戦の出場権がかかった戦いだからだ。
そしてその大一番で。日本一決定戦という舞台に立つことをおそらく誰よりも強く望んでいる、2人のプレイヤーが激突することとなった。
ぎらさき「ここまで大型大会の (上位の) 面子が濃いの、なかなか珍しいな」
名実ともに「関西最強」。チームMystic PlantのHARUことぎらさきが、対戦相手にそう話しかける。
今年の3月。DMPランキング施行一年目の総決算となったデュエル・マスターズ 全国大会2017 日本一決定戦に、ぎらさきはランキング1位で招待権を獲得して出場を果たした。ほぼ毎週のようにCSに出場しては上位入賞を繰り返し、日本一となる資格も実力も十分すぎるはずだった。
だがそこでぎらさきは、惜しくも決勝トーナメント進出を逃す。そしてdottoが日本一となる瞬間を、目の前で見届けることとなった。
日本一決定戦には、置き忘れたものがある。気が付けば今シーズンも、ぎらさきはランキングを走っていた。そうして今再び、出場権が手の届く距離にある。
しかもその対戦相手は、CSやコミュニティを通じて互いによく知る間柄の強敵 (とも) なのだ。
ZweiLance「(準々決勝) 2-0したの?」
ぎらさき「そう。合計20分かかってない」
ZweiLance「怖いよーw」
2Byeからの12-0。準々決勝の2ゲーム含めて1ゲームも落とさず、ZweiLanceはここまで駆け抜けてきた。
人気デュエマYoutubeチャンネル「フェアリープロジェクト」のYoutuberとして活動しながらも、ほとんど毎週末に各地のCSに出場する日々。その濃密な体験の数々が、ZweiLanceを日本屈指の《卍 デ・スザーク 卍》使いへと成長させた。
大舞台での先達たちの活躍を見続けてきたZweiLanceにとっては、日本一決定戦とは憧れの場所であり、夢の舞台そのものだ。なればこそZweiLanceはデッキ選択への無用なこだわりを捨て、強くなることを決意した。
夢を現実にするために。ZweiLanceは、ぎらさきと対峙する。
ぎらさき「あれ思い出すわ、《卍月の流星群》でひっくり返されたの」
ZweiLance「しめしめw」
ぎらさき「あれでちょっと強くなったわ」
CSなどで出会う顔見知りは、通常のコミュニティ内の友人とはまた違った関係性になる。
リスペクトとライバル心。ぎらさきもZweiLanceも、互いに互いを強敵と認めている。負けても学ぶものがあり、「次は自分が勝つ」と思える。それが互いに良い刺激となって成長の機会を与えあう、そうした相手に出会えるのは、だから幸せなことなのだ。
しかし。
ZweiLance「3決なんてやりたくない、決勝がやりたい……」
なぜなら、この一回には「次」はない。
ぎらさき「ツヴァイくん上手いからなぁ……」
それでも、この一回だけは譲れない。
ぎらさき「まるで関西のCSやな」
ふと外周に並ぶギャラリーたちを見渡したぎらさきが、そう呟いた。
そこにはフェアリー/AYNがいた。ペン山ペン太郎がいた。ZweiLanceの勝利を願う東北勢の姿があった。
そしてぎらさきの側にも、イヌ科や関西のプレイヤーたちが準決勝が始まるのを今かと待ち構えていた。
ぎらさき「お互い応援団おるw どっちが多いかな?」
ZweiLance「俺の方が多いだろw」
東北と関西を代表するプレイヤー同士の戦い。そのことにも意味はあるのかもしれない。
だが実際に対峙している2人にとっては、それはもはやどうでもいいことだっただろう。
ここまで来たら、ただ勝ちたい。とにかく勝ちたい。
今ここにあるのは、それだけのシンプルな欲求だからだ。
やがて、開始の時が来た。
互いに選んだ切り札は、ぎらさきは《煌世主 サッヴァーク†》。ZweiLanceは《卍 デ・スザーク 卍》。
光と闇。様々な思いが交錯した準決勝が、いま始まった。
除去されてもされなくても、最速の《追憶人形ラビリピト》+≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫に対して楔を打つことができる。後攻なので手札キープの余裕もある。圧倒的な実戦経験の中で見つけたセオリー。その膨大な蓄積が、ぎらさきの強さを支えている。
ZweiLanceの3ターン目は《卍 デ・スザーク 卍》をチャージ、少し考えてからターンエンド。対してぎらさきは《剣参ノ裁キ》で《転生ノ正裁Z》を手札に加える。
ZweiLance「手札は?」
ぎらさき「4枚」
4ターン目を迎えたZweiLanceは、《追憶人形ラビリピト》でぎらさきの手札から《煌世主 サッヴァーク†》を落とす。この《追憶人形ラビリピト》が定着すれば、ゲームを一気に掌握できる。
だがぎらさきは《転生ノ正裁Z》で《剣参ノ裁キ》の付いたシールドを回収し、そのまま《剣参ノ裁キ》を捨てて《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を「サバキZ」で唱え、《追憶人形ラビリピト》をシールドに貼り付ける。
ZweiLance「手札は何枚?」
ぎらさき「2枚」
手札の枚数を確認したZweiLanceだが、ここで2体目の《追憶人形ラビリピト》による追撃はできず、代わりに出したのは《堕魔 ヴォーミラ》。そしてぎらさきがマナチャージのみでターンを返したのに対し、墓地から2体目の《堕魔 ヴォーミラ》を出して、ゆっくりとしかし着実に盤面を作りにいく。
だが返すターン、マナチャージなしで唱えられた《剣参ノ裁キ》は、ぎらさきの手に《サッヴァークDG》をもたらす。マナゾーンには5マナ、もはや猶予はない。
しかしZweiLanceも、《堕魔 ヴォガイガ》を墓地から出して《堕魔 ヴォガイガ》を回収しつつ、《堕魔 ドゥグラス》→《堕魔 ドゥポイズ》と出して≪奇石 ミクセル≫だけどうにか処理してターンを返すことしかできない。
そしてついに、ぎらさきのバトルゾーンに《サッヴァークDG》が登場する。
登場時能力で回収したのは《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》《憤怒スル破面ノ裁キ》《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。さらにエンド時の効果を前にして、ぎらさきがアクションを考える。
ぎらさき「手札は何枚?」
ZweiLance「3枚」
ぎらさき「考えていいですか?」
ZweiLance「はい、いいよー」
やがて裏目がないか検討し終えたぎらさきは、意を決して《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》で《堕魔 ヴォガイガ》をシールドに飛ばすと、加えて《サッヴァークDG》を破壊し、《煌世主 サッヴァーク†》を降臨させる!
表向きのカードはZweiLanceのシールドに2枚、さらにぎらさきのシールドにも2枚の束が2つ。シールドゾーンには合計6枚の表向きカードがあり、何があってもバトルゾーンを離れそうにないという状況だ。
それでもZweiLanceはめげずに《堕魔 ヴォガイガ》で《追憶人形ラビリピト》を回収しつつ墓地からも《堕魔 ヴォガイガ》を呼び出し、《堕魔 ヴォーミラ》を回収。さらにエンドに《》の無月の門・絶を宣言してぎらさきのマナを縛る。
だが、既にぎらさきにはダイレクトアタックまでの道が見えていた。《憤怒スル破面ノ裁キ》を使ってカードを引いてから、《煌世主 サッヴァーク†》の攻撃時にアタック・チャンスで《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を唱えると、ZweiLanceのクリーチャーがすべてタップした上でドラゴン・T・ブレイカーが通る。ZweiLanceのシールドは残り2枚。
そして、アンタップした《煌世主 サッヴァーク†》が再び攻撃に行く際に2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!
再び《煌世主 サッヴァーク†》が起き上がり、今度はドラゴン・W・ブレイカー。これが通ればダイレクトアタックでZweiLanceの負け、すなわちぎらさきの勝利だ。
ZweiLanceが残る2枚のシールドを確認する。
はたしてバトルゾーンを離れない《煌世主 サッヴァーク†》を止められるS・トリガーが……?
あった。《堕魔 ドゥグラス》!
ぎらさきはこのちっぽけなブロッカー魔導具に阻まれ、ダイレクトアタックを逃してしまう。
一方、九死に一生を得たZweiLanceの側には《堕魔 ヴォーミラ》が3体いるため、《堕魔 ドゥグラス》を出し続けることで《煌世主 サッヴァーク†》の攻撃をしのぎつつ、逆に戦線を拡大することが可能な形となる。
とはいえ、あまり時間はかけられない。《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》 (か、もしくは《剣参ノ裁キ》《転生ノ正裁Z》からのそれ) に辿り着かれると、今度こそ確定で負けてしまうからだ。ひとまず《追憶人形ラビリピト》で手札を刈り取りつつ、《堕魔 ヴォーミラ》から魔導具を並べまくる。≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫にマナを縛られているぎらさきは、《》だけ打ってターン終了。
この時点でぎらさきのシールドは、ドラゴン・ブレイカーで増えに増えて9枚。このような展開を予期して、すべて裏向きでシールドの数を確保していたぎらさきもさすがだ。さらに《煌世主 サッヴァーク†》がブロッカーとして立っている。再びZweiLanceのターン、ひとまず落ち着いて2体目の《追憶人形ラビリピト》で手札を縛りながら、《堕魔 ドゥポイズ》で≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を自壊させて墓地に送り込み、構成パーツだった魔導具たちをバラすことで《堕魔 ヴォーミラ》で次から次へと盤面へ並べなおしていく。
既にZweiLanceのバトルゾーンには10体以上ものアタッカーが並んでいる。そしてもし次のターンが来ようものならば、もはや確実にダイレクトアタックまでつなげそうというところまで来ていた。《煌世主 サッヴァーク†》を出され、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》2発を打たれながらも、ここまでの展開になると誰が予想できただろうか。
そんな状況でも一切油断しないZweiLanceは、あらゆる負け筋を考えた上でトップ《転生ノ正裁Z》で表向きの《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を盾から拾われる可能性をケアするため、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》が乗ったシールドだけをあらかじめ割りにいく。《隻眼ノ裁キ》がトリガーするが、どの道このターンは仕留めきれないのでここに至ってはあまり関係がない。そしてエンド時の《》宣言で《追憶人形ラビリピト》の能力を発動させ、加わった手札をしっかりと叩き落とす。
人事は尽くした。あとは天命を待つのみ。
できることをすべてやり尽くした。ZweiLanceがターンを返すと、すなわちこれがぎらさきの事実上のラストターンとなる。
ドロー。
そして、それを確認したぎらさきは……。
《煌世主 サッヴァーク†》を、ダイレクトアタックに向かわせた。
裁きは、下ったのだ。
ぎらさきが公開したドローは、3枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!
ZweiLance 0-1 ぎらさき
あまりにも劇的な幕切れ。だが、人事を尽くしたのはぎらさきの側も同じだった。
2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を打った時点で、そもそも《堕魔 ドゥグラス》がシールドに埋まっていなければその場で勝ち。たとえ《堕魔 ドゥグラス》を踏んだとしても、ZweiLanceのシールドを全部割りきっておけば、いつでもトップ《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》で勝ちの目が残る。
《サッヴァークDG》《憤怒スル破面ノ裁キ》《剣参ノ裁キ》と入っているぎらさきのデッキは、カードを探す能力に長ける。9枚に増えたシールドに残る2枚ともが埋まっていなかったことは幸運にせよ、ラストターンのトップデッキという見た目のインパクトほどには、分の悪い賭けではなかったはずだ。
だとしても、ZweiLanceの側から見ればあと一歩のところでゲームを落としたという事実に変わりはない。
徹底した理性を持ちながらも、ここ一番では大きな勝負に出る度胸。その上で実際に引き込める天運をも合わせ持っている。それゆえに、ぎらさきという男は恐ろしいのだ。
続けて4ターン目に《堕魔 ヴォガイガ》で《堕魔 ヴォーミラ》を回収するZweiLanceだったが、これはぎらさきが《転生ノ正裁Z》から《剣参ノ裁キ》を捨てての「サバキZ」で《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を打ち込んでシールド行きとなる。
ならばと《堕魔 ヴォーミラ》を送り出すZweiLance。しかし、ぎらさきの仕上がりぶりはZweiLanceの予測の上を行っていた。
すなわち、《戦慄のプレリュード》からの《サッヴァークDG》。そしてエンドに《憤怒スル破面ノ裁キ》を打つと、そのまま破壊して《煌世主 サッヴァーク†》降臨!
シールドゾーンにある表向きカードの数こそ少ないものの、大雑把な盤面の状況だけ見れば1ゲーム目とほぼ同じ。こうなるとZweiLanceにできることは少ない。何より先ほどの《サッヴァークDG》によって、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》までもがぎらさきの手札に加わってしまっているのだ。
それでもZweiLanceは《堕魔 ヴォーミラ》から《堕魔 ドゥリンリ》へとつなげ、終了時に《》を宣言。ぎらさきのマナを縛り、できる限りの抵抗を試みる。
だが。
ぎらさき「手札はゼロですよね?」
《憤怒スル破面ノ裁キ》を打ったぎらさきは、《煌世主 サッヴァーク†》を攻撃に向かわせる。まずは見えていた《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を解き放ち、ドラゴン・T・ブレイク。そしてZweiLanceにトリガーがないことを確認すると、再度の攻撃時に2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!!
ドラゴン・W・ブレイク。そして今度こそZweiLanceのシールドに、《堕魔 ドゥグラス》は埋まっていなかったのだった。
ZweiLance 0-2 ぎらさき
ZweiLance「1本目、勝ったと思ったんだけどなー……」
勝者と敗者。
明暗が分かれた試合後、次なる試合のために感想戦もそこそこに席を立ったぎらさきを見送ったZweiLanceは、それとは対照的に、その場をいつまでも動くことはなかった。
否、たぶん動けなかったのだ。消沈した様子で両手で顔を覆い、何か悪いプレイがあったか、分岐点はどこだったかと、自問しながら今の試合を反芻しているようだった。おそらくそうせずにはいられないほどに、あと一歩で届かなかったという事実に対するやるせない感情が受け入れがたかったのだろう。
日本一に懸ける思いがある。
"敗者"
ZweiLanceが日本一決定戦に出場するためには、エリア代表となるか、DMPランキングの招待圏内に入るか。いずれにせよ並大抵の道のりではない。
だが、ZweiLanceならば成し遂げてくれるのではとも思う。この悔しさをバネにして、夢を現実にするために……あるいは何より、一足先に駆け上がっていったぎらさきへのリベンジを果たすために。
そして"勝者"
ぎらさきは、ひとりフィーチャーテーブルへと足を向ける。日本一決定戦への出場が確定したいま、求めるものは一つしかない。
すなわち、向かうは準決勝でdottoを破ったえんがわが待つ、グランプリ-7th決勝の舞台。
決勝戦が、これから始まる。
Winner:ぎらさき
グランプリ-7th、準決勝。そこにはグランプリの決勝進出をかけた戦いという以上に、どこまでも負けられない重みがあった。
デュエル・マスターズのグランプリにおいて、優勝者と準優勝者にのみ与えられる特典。すなわち、日本一決定戦の出場権がかかった戦いだからだ。
そしてその大一番で。日本一決定戦という舞台に立つことをおそらく誰よりも強く望んでいる、2人のプレイヤーが激突することとなった。
ぎらさき「ここまで大型大会の (上位の) 面子が濃いの、なかなか珍しいな」
名実ともに「関西最強」。チームMystic PlantのHARUことぎらさきが、対戦相手にそう話しかける。
今年の3月。DMPランキング施行一年目の総決算となったデュエル・マスターズ 全国大会2017 日本一決定戦に、ぎらさきはランキング1位で招待権を獲得して出場を果たした。ほぼ毎週のようにCSに出場しては上位入賞を繰り返し、日本一となる資格も実力も十分すぎるはずだった。
だがそこでぎらさきは、惜しくも決勝トーナメント進出を逃す。そしてdottoが日本一となる瞬間を、目の前で見届けることとなった。
日本一決定戦には、置き忘れたものがある。気が付けば今シーズンも、ぎらさきはランキングを走っていた。そうして今再び、出場権が手の届く距離にある。
しかもその対戦相手は、CSやコミュニティを通じて互いによく知る間柄の強敵 (とも) なのだ。
ZweiLance「(準々決勝) 2-0したの?」
ぎらさき「そう。合計20分かかってない」
ZweiLance「怖いよーw」
2Byeからの12-0。準々決勝の2ゲーム含めて1ゲームも落とさず、ZweiLanceはここまで駆け抜けてきた。
人気デュエマYoutubeチャンネル「フェアリープロジェクト」のYoutuberとして活動しながらも、ほとんど毎週末に各地のCSに出場する日々。その濃密な体験の数々が、ZweiLanceを日本屈指の《卍 デ・スザーク 卍》使いへと成長させた。
大舞台での先達たちの活躍を見続けてきたZweiLanceにとっては、日本一決定戦とは憧れの場所であり、夢の舞台そのものだ。なればこそZweiLanceはデッキ選択への無用なこだわりを捨て、強くなることを決意した。
夢を現実にするために。ZweiLanceは、ぎらさきと対峙する。
ぎらさき「あれ思い出すわ、《卍月の流星群》でひっくり返されたの」
ZweiLance「しめしめw」
ぎらさき「あれでちょっと強くなったわ」
CSなどで出会う顔見知りは、通常のコミュニティ内の友人とはまた違った関係性になる。
リスペクトとライバル心。ぎらさきもZweiLanceも、互いに互いを強敵と認めている。負けても学ぶものがあり、「次は自分が勝つ」と思える。それが互いに良い刺激となって成長の機会を与えあう、そうした相手に出会えるのは、だから幸せなことなのだ。
しかし。
ZweiLance「3決なんてやりたくない、決勝がやりたい……」
なぜなら、この一回には「次」はない。
ぎらさき「ツヴァイくん上手いからなぁ……」
それでも、この一回だけは譲れない。
ぎらさき「まるで関西のCSやな」
ふと外周に並ぶギャラリーたちを見渡したぎらさきが、そう呟いた。
そこにはフェアリー/AYNがいた。ペン山ペン太郎がいた。ZweiLanceの勝利を願う東北勢の姿があった。
そしてぎらさきの側にも、イヌ科や関西のプレイヤーたちが準決勝が始まるのを今かと待ち構えていた。
ぎらさき「お互い応援団おるw どっちが多いかな?」
ZweiLance「俺の方が多いだろw」
東北と関西を代表するプレイヤー同士の戦い。そのことにも意味はあるのかもしれない。
だが実際に対峙している2人にとっては、それはもはやどうでもいいことだっただろう。
ここまで来たら、ただ勝ちたい。とにかく勝ちたい。
今ここにあるのは、それだけのシンプルな欲求だからだ。
やがて、開始の時が来た。
互いに選んだ切り札は、ぎらさきは《煌世主 サッヴァーク†》。ZweiLanceは《卍 デ・スザーク 卍》。
光と闇。様々な思いが交錯した準決勝が、いま始まった。
Game 1
先攻はZweiLance。《撃髄医 スパイナー》《剣参ノ裁キ》と互いにチャージし、そのまま互いに静かな立ち上がりになる……かと思いきや、ゲームは2ターン目から早くも動き出す。ZweiLanceが《》をチャージしたのを見てか、返すターンに寸秒もおかず≪奇石 ミクセル≫を設置したのだ。除去されてもされなくても、最速の《追憶人形ラビリピト》+≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫に対して楔を打つことができる。後攻なので手札キープの余裕もある。圧倒的な実戦経験の中で見つけたセオリー。その膨大な蓄積が、ぎらさきの強さを支えている。
ZweiLanceの3ターン目は《卍 デ・スザーク 卍》をチャージ、少し考えてからターンエンド。対してぎらさきは《剣参ノ裁キ》で《転生ノ正裁Z》を手札に加える。
ZweiLance「手札は?」
ぎらさき「4枚」
4ターン目を迎えたZweiLanceは、《追憶人形ラビリピト》でぎらさきの手札から《煌世主 サッヴァーク†》を落とす。この《追憶人形ラビリピト》が定着すれば、ゲームを一気に掌握できる。
だがぎらさきは《転生ノ正裁Z》で《剣参ノ裁キ》の付いたシールドを回収し、そのまま《剣参ノ裁キ》を捨てて《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を「サバキZ」で唱え、《追憶人形ラビリピト》をシールドに貼り付ける。
ZweiLance「手札は何枚?」
ぎらさき「2枚」
手札の枚数を確認したZweiLanceだが、ここで2体目の《追憶人形ラビリピト》による追撃はできず、代わりに出したのは《堕魔 ヴォーミラ》。そしてぎらさきがマナチャージのみでターンを返したのに対し、墓地から2体目の《堕魔 ヴォーミラ》を出して、ゆっくりとしかし着実に盤面を作りにいく。
だが返すターン、マナチャージなしで唱えられた《剣参ノ裁キ》は、ぎらさきの手に《サッヴァークDG》をもたらす。マナゾーンには5マナ、もはや猶予はない。
しかしZweiLanceも、《堕魔 ヴォガイガ》を墓地から出して《堕魔 ヴォガイガ》を回収しつつ、《堕魔 ドゥグラス》→《堕魔 ドゥポイズ》と出して≪奇石 ミクセル≫だけどうにか処理してターンを返すことしかできない。
そしてついに、ぎらさきのバトルゾーンに《サッヴァークDG》が登場する。
登場時能力で回収したのは《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》《憤怒スル破面ノ裁キ》《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》。さらにエンド時の効果を前にして、ぎらさきがアクションを考える。
ぎらさき「手札は何枚?」
ZweiLance「3枚」
ぎらさき「考えていいですか?」
ZweiLance「はい、いいよー」
やがて裏目がないか検討し終えたぎらさきは、意を決して《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》で《堕魔 ヴォガイガ》をシールドに飛ばすと、加えて《サッヴァークDG》を破壊し、《煌世主 サッヴァーク†》を降臨させる!
表向きのカードはZweiLanceのシールドに2枚、さらにぎらさきのシールドにも2枚の束が2つ。シールドゾーンには合計6枚の表向きカードがあり、何があってもバトルゾーンを離れそうにないという状況だ。
それでもZweiLanceはめげずに《堕魔 ヴォガイガ》で《追憶人形ラビリピト》を回収しつつ墓地からも《堕魔 ヴォガイガ》を呼び出し、《堕魔 ヴォーミラ》を回収。さらにエンドに《》の無月の門・絶を宣言してぎらさきのマナを縛る。
だが、既にぎらさきにはダイレクトアタックまでの道が見えていた。《憤怒スル破面ノ裁キ》を使ってカードを引いてから、《煌世主 サッヴァーク†》の攻撃時にアタック・チャンスで《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を唱えると、ZweiLanceのクリーチャーがすべてタップした上でドラゴン・T・ブレイカーが通る。ZweiLanceのシールドは残り2枚。
そして、アンタップした《煌世主 サッヴァーク†》が再び攻撃に行く際に2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!
再び《煌世主 サッヴァーク†》が起き上がり、今度はドラゴン・W・ブレイカー。これが通ればダイレクトアタックでZweiLanceの負け、すなわちぎらさきの勝利だ。
ZweiLanceが残る2枚のシールドを確認する。
はたしてバトルゾーンを離れない《煌世主 サッヴァーク†》を止められるS・トリガーが……?
あった。《堕魔 ドゥグラス》!
ぎらさきはこのちっぽけなブロッカー魔導具に阻まれ、ダイレクトアタックを逃してしまう。
一方、九死に一生を得たZweiLanceの側には《堕魔 ヴォーミラ》が3体いるため、《堕魔 ドゥグラス》を出し続けることで《煌世主 サッヴァーク†》の攻撃をしのぎつつ、逆に戦線を拡大することが可能な形となる。
とはいえ、あまり時間はかけられない。《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》 (か、もしくは《剣参ノ裁キ》《転生ノ正裁Z》からのそれ) に辿り着かれると、今度こそ確定で負けてしまうからだ。ひとまず《追憶人形ラビリピト》で手札を刈り取りつつ、《堕魔 ヴォーミラ》から魔導具を並べまくる。≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫にマナを縛られているぎらさきは、《》だけ打ってターン終了。
この時点でぎらさきのシールドは、ドラゴン・ブレイカーで増えに増えて9枚。このような展開を予期して、すべて裏向きでシールドの数を確保していたぎらさきもさすがだ。さらに《煌世主 サッヴァーク†》がブロッカーとして立っている。再びZweiLanceのターン、ひとまず落ち着いて2体目の《追憶人形ラビリピト》で手札を縛りながら、《堕魔 ドゥポイズ》で≪卍月 ガ・リュザーク 卍≫を自壊させて墓地に送り込み、構成パーツだった魔導具たちをバラすことで《堕魔 ヴォーミラ》で次から次へと盤面へ並べなおしていく。
既にZweiLanceのバトルゾーンには10体以上ものアタッカーが並んでいる。そしてもし次のターンが来ようものならば、もはや確実にダイレクトアタックまでつなげそうというところまで来ていた。《煌世主 サッヴァーク†》を出され、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》2発を打たれながらも、ここまでの展開になると誰が予想できただろうか。
そんな状況でも一切油断しないZweiLanceは、あらゆる負け筋を考えた上でトップ《転生ノ正裁Z》で表向きの《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を盾から拾われる可能性をケアするため、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》が乗ったシールドだけをあらかじめ割りにいく。《隻眼ノ裁キ》がトリガーするが、どの道このターンは仕留めきれないのでここに至ってはあまり関係がない。そしてエンド時の《》宣言で《追憶人形ラビリピト》の能力を発動させ、加わった手札をしっかりと叩き落とす。
人事は尽くした。あとは天命を待つのみ。
できることをすべてやり尽くした。ZweiLanceがターンを返すと、すなわちこれがぎらさきの事実上のラストターンとなる。
ドロー。
そして、それを確認したぎらさきは……。
《煌世主 サッヴァーク†》を、ダイレクトアタックに向かわせた。
裁きは、下ったのだ。
ぎらさきが公開したドローは、3枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!
ZweiLance 0-1 ぎらさき
あまりにも劇的な幕切れ。だが、人事を尽くしたのはぎらさきの側も同じだった。
2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を打った時点で、そもそも《堕魔 ドゥグラス》がシールドに埋まっていなければその場で勝ち。たとえ《堕魔 ドゥグラス》を踏んだとしても、ZweiLanceのシールドを全部割りきっておけば、いつでもトップ《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》で勝ちの目が残る。
《サッヴァークDG》《憤怒スル破面ノ裁キ》《剣参ノ裁キ》と入っているぎらさきのデッキは、カードを探す能力に長ける。9枚に増えたシールドに残る2枚ともが埋まっていなかったことは幸運にせよ、ラストターンのトップデッキという見た目のインパクトほどには、分の悪い賭けではなかったはずだ。
だとしても、ZweiLanceの側から見ればあと一歩のところでゲームを落としたという事実に変わりはない。
徹底した理性を持ちながらも、ここ一番では大きな勝負に出る度胸。その上で実際に引き込める天運をも合わせ持っている。それゆえに、ぎらさきという男は恐ろしいのだ。
Game 2
ZweiLanceが《堕魔 グリギャン》《撃髄医 スパイナー》と埋めたのに対し、ぎらさきが《煌世主 サッヴァーク†》《転生ノ正裁Z》と埋める立ち上がり。そのままZweiLanceが3ターン目に《堕魔 グリギャン》を送り出すと、ぎらさきは《剣参ノ裁キ》で《戦慄のプレリュード》を回収する。続けて4ターン目に《堕魔 ヴォガイガ》で《堕魔 ヴォーミラ》を回収するZweiLanceだったが、これはぎらさきが《転生ノ正裁Z》から《剣参ノ裁キ》を捨てての「サバキZ」で《魂穿ツ煌世ノ正裁Z》を打ち込んでシールド行きとなる。
ならばと《堕魔 ヴォーミラ》を送り出すZweiLance。しかし、ぎらさきの仕上がりぶりはZweiLanceの予測の上を行っていた。
すなわち、《戦慄のプレリュード》からの《サッヴァークDG》。そしてエンドに《憤怒スル破面ノ裁キ》を打つと、そのまま破壊して《煌世主 サッヴァーク†》降臨!
シールドゾーンにある表向きカードの数こそ少ないものの、大雑把な盤面の状況だけ見れば1ゲーム目とほぼ同じ。こうなるとZweiLanceにできることは少ない。何より先ほどの《サッヴァークDG》によって、《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》までもがぎらさきの手札に加わってしまっているのだ。
それでもZweiLanceは《堕魔 ヴォーミラ》から《堕魔 ドゥリンリ》へとつなげ、終了時に《》を宣言。ぎらさきのマナを縛り、できる限りの抵抗を試みる。
だが。
ぎらさき「手札はゼロですよね?」
《憤怒スル破面ノ裁キ》を打ったぎらさきは、《煌世主 サッヴァーク†》を攻撃に向かわせる。まずは見えていた《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》を解き放ち、ドラゴン・T・ブレイク。そしてZweiLanceにトリガーがないことを確認すると、再度の攻撃時に2枚目の《天ニ煌メク龍終ノ裁キ》!!
ドラゴン・W・ブレイク。そして今度こそZweiLanceのシールドに、《堕魔 ドゥグラス》は埋まっていなかったのだった。
ZweiLance 0-2 ぎらさき
ZweiLance「1本目、勝ったと思ったんだけどなー……」
勝者と敗者。
明暗が分かれた試合後、次なる試合のために感想戦もそこそこに席を立ったぎらさきを見送ったZweiLanceは、それとは対照的に、その場をいつまでも動くことはなかった。
否、たぶん動けなかったのだ。消沈した様子で両手で顔を覆い、何か悪いプレイがあったか、分岐点はどこだったかと、自問しながら今の試合を反芻しているようだった。おそらくそうせずにはいられないほどに、あと一歩で届かなかったという事実に対するやるせない感情が受け入れがたかったのだろう。
日本一に懸ける思いがある。
"敗者"
ZweiLanceが日本一決定戦に出場するためには、エリア代表となるか、DMPランキングの招待圏内に入るか。いずれにせよ並大抵の道のりではない。
だが、ZweiLanceならば成し遂げてくれるのではとも思う。この悔しさをバネにして、夢を現実にするために……あるいは何より、一足先に駆け上がっていったぎらさきへのリベンジを果たすために。
そして"勝者"
ぎらさきは、ひとりフィーチャーテーブルへと足を向ける。日本一決定戦への出場が確定したいま、求めるものは一つしかない。
すなわち、向かうは準決勝でdottoを破ったえんがわが待つ、グランプリ-7th決勝の舞台。
決勝戦が、これから始まる。
Winner:ぎらさき
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