DMGP9th 準決勝:ゲルネウス(宮崎) vs. よしゆき(東京) ~選択と決断~
よしゆき「正直デッキが強いから勝ててる……でも、このマッチは当たりたくないですね」
ここまでの躍進を、一体誰が予想できたというのか。
否、彼らは予想した。そして確信したのだ。
オンライン調整コミュニティ「マラかっち」謹製のシークレットデッキ、『カリヤドネループ』。このデッキが、必ず頂点に立つということを。
ゆえに、よしゆきはこのデッキの使用を決断した。そして、ついにここまでたどり着いたのだ。
反対側の準決勝では、同じデッキを駆るイヌ科がアーチーと対戦している。よしゆきとイヌ科がともに勝てば、それはすなわち「マラかっち」によるグランプリの完全制覇を意味しているのだ。
その歴史的な瞬間を目撃するべく。そして、盟友の勝利を応援するべく。
惜しくもトップ16でリヒッコチュリスに負けて敗退したdottoをはじめ、「マラかっち」のメンバーたちがよしゆきの戦いを見守ろうとしている。
グランプリ-9th、準決勝。日本一決定戦出場がかかった、正念場の一戦を。
ゲルネウス「僕の身内はみんなサイドイベントの方に行っちゃってて、dottoさんとか、よしゆきさんを応援してる方々の熱がすごいんで……あてられちゃってます」
よしゆき「僕はもう長いことやってるんで、身内が多いだけです……恥ずかしいことできないんで、僕もきついですw」
一方ゲルネウスの使用デッキは『赤単ブランド』。トップ8に3人を輩出した、今回の勝ち組と言っていいデッキだが、その細部にはかなり大きな違いがある。
特にゲルネウスのリストは、1マナ域と《TOKKO-BOON!》を厚くとる代わりに《花美師ハナコ》や《斬斬人形コダマンマ》の枚数を最小限に抑えるなど、使用者が正確なプラン選択とそれに沿った最適なプレイができることを前提とした、かなりスタイリッシュな形となっているのだ。
そしてそれはそのまま、ゲルネウスが確かなプラン選択能力をもってここまで勝ち抜いてきたことの証左でもあった。
ゲルネウス「緊張する……ここまで来るなんて思ってなかった」
二度とはないかもしれない舞台。悔いを残すようなことはしたくない。
ならばどうするか?
簡単だ。全力を尽くす。それ以外にない。
ゲルネウスの速攻が全てを貫くのか。よしゆきのコンボが全てを時の彼方へと追いやるのか。
やがて試合開始のアナウンスとともに、決戦の火蓋が切って落とされた。
ジャンケンで先攻はよしゆき。《知識と流転と時空の決断》チャージからの《ア・ストラ・センサー》で《》を回収する立ち上がり。
ゲルネウス「……少し考えます」
対するゲルネウスは第1ドローが加わった手札の1枚1枚を真剣に吟味すると、《TOKKO-BOON!》チャージから《螺神兵ボロック》を送り出す。
よしゆきの2ターン目は《》チャージ、《ブラッディ・クロス》で終了。一足先に墓地の呪文の枚数を4枚にしておくことで、シールドに埋まっているかもしれない《知識と流転と時空の決断》を有効トリガーにする算段だ。
しかし、ゲルネウスは止まらない。《爆殺!! 覇悪怒楽苦》チャージから《ブルース・ガー》《螺神兵ボロック》と並べると、さらに《螺神兵ボロック》で1枚ブレイク。S・トリガーはない。
よしゆきは《レスキュー・タイム》チャージから《エマージェンシー・タイフーン》、さらに《ブラッディ・クロス》。この時点で墓地の呪文枚数は9枚にまで到達している。S・トリガーがなくても次のターンに《ブラッディ・クロス》か《ブラッディ・タイフーン》が絡めば、早くも《》が降臨しうるという状況だ。
だが。
ゲルネウス「マナの《レスキュー・タイム》だけ確認よろしいですか?」
ゲルネウスは、初手を握った時点で既にプランを選択し終えていた。もはや遅延は必要ないとばかりに《ドリル・スコール》をチャージすると、《GIRIGIRI・チクタック》を召喚。GR召喚で《ソニーソニック》……さらに「B・A・D」《“罰怒“ブランド》!
手札を綺麗に使いきる赤単ブランドの黄金ムーブで、楯4枚に対して7打点……すなわち、S・トリガーで仮に《知識と流転と時空の決断》を踏んだとしても、その1枚のみでは返せない状況を作り上げる。
《“罰怒“ブランド》でW・ブレイク。S・トリガーは《エマージェンシー・タイフーン》のみ。
《螺神兵ボロック》でブレイク。S・トリガーはない。
《GIRIGIRI・チクタック》で最後のシールドをブレイク。S・トリガーは……ない!
《ソニーソニック》のダイレクトアタックで、ゲルネウスが後手番での勝利を見事もぎとった。
ゲルネウス 1-0 よしゆき
よしゆき「次先攻もらいます」
最善は尽くした。先手2ターン目から墓地の呪文カウントを4枚にし、《知識と流転と時空の決断》の受けを作った。
だが、3ターン目に貫通するときは貫通する。普通のコンボデッキよりは受けが厚いとはいえ、厳しい戦いであることに変わりはない。
それでも、応援してくれている友がいる。決勝で待っているはずの強敵がいる。
よしゆきは気を取り直して、まずはゲームカウントをイーブンに戻すべく2ゲーム目に臨む。
《》チャージでタップインスタートとなってしまったよしゆきに対し、ゲルネウスは《爆殺!! 覇悪怒楽苦》チャージから順調に《螺神兵ボロック》を送り出す。
続くターンこそ《セイレーン・コンチェルト》チャージから《ア・ストラ・センサー》で《》を回収しつつ、《ブラッディ・クロス》で墓地に呪文4枚を落とそうとしたよしゆきだったが、落ちた2枚の中に《次元の嵐 スコーラー》があったために達成できず、苦しい表情。
他方ゲルネウスは《TOKKO-BOON!》を唱えて《ナギー・ナグナグ》をGR召喚すると、《螺神兵ボロック》でブレイク。さらにS・トリガーがないのを確認すると、少しでも《知識と流転と時空の決断》をS・トリガーで踏む確率を下げるために《ナギー・ナグナグ》でそのままもう一枚ブレイクしにいく。S・トリガーは、ない。
このままでは1ゲーム目の焼き直しになってしまうよしゆきは、《》チャージから《ア・ストラ・センサー》《ブラッディ・タイフーン》とつなげて残る3枚のシールドにトリガーが埋まっていることにすべてを賭ける。
そしてゲルネウスの3ターン目。《凶戦士ブレイズ・クロー》チャージから《GIRIGIRI・チクタック》で《ドドド・ドーピードープ》をGR召喚、さらに《“罰怒“ブランド》!
まずは《GIRIGIRI・チクタック》でのブレイク。S・トリガーは……《エマージェンシー・タイフーン》。楯は2枚、打点は5点。もはやS・トリガーは《》1枚では止まらない。
ゲルネウス「墓地の呪文の数、数えてもいいですか?」
それでも、ゲルネウスは最後まで慎重に考える。墓地の呪文は9枚。ここで攻撃しないと《ブラッディ・クロス》から《》につながってしまうリスクがある。
ならばパスすることはありえない。検討の結果、《“罰怒“ブランド》で最後の楯2枚を、躊躇なくW・ブレイクしにいく。
ここまでの流れは、1ゲーム目とほとんど同じだった。
神はいない。奇跡も起こらない。現実は残酷なまでに平等だ。
そう、だから。
そこにはただ、人の意思に基づく選択と・・があるだけなのだ。
S・トリガー、《知識と流転と時空の決断》!
最善手を打ち続けたよしゆきに対し、シールドがついに応えた。《ドドド・ドーピードープ》と《螺神兵ボロック》を手札に戻すと、ダイレクトアタッカーを失ったゲルネウスは「マスターB・A・D」で《GIRIGIRI・チクタック》を破壊しつつターンを返さざるをえない。
ついに回ってきた、先手4ターン目。よしゆきには楯がない以上、事実上のラストターン。
だが、墓地の呪文は10枚。チャージしても4マナ。このままでは《》2体を並べる方法がない。
ならば探しにいくのみ。《》をチャージ、《ア・ストラ・センサー》。
よしゆき「っし!」
たどり着いた。《ブラッディ・クロス》!
そこから先は、よしゆきの独壇場だった。
13マナ軽減、《》。《ブラッディ・タイフーン》《エマージェンシー・タイフーン》《》と唱えて墓地から《次元の嵐 スコーラー》を回収。さらに手札から《》。《》《ブラッディ・タイフーン》《ブラッディ・タイフーン》と唱えた後にG・ゼロで《次元の嵐 スコーラー》。追加ターンは、何と《》で倍化されて2ターン。
それだけあれば、並んだ《》と《次元の嵐 スコーラー》でよしゆきが殴りきるには十分すぎた。
ゲルネウス 1-1 よしゆき
ゲルネウス「いけると思ったんだけどなー……踏んだか。最後先攻でやるしかないなー」
よしゆき「……あーマジ先攻……」
どうにか星をイーブンに戻したよしゆきだが、こうなると1ゲーム目の敗戦が痛い。3ゲーム目は初めて、ゲルネウスの先手となるからだ。
ゲルネウス「……いいハンド欲しいな。にしてもすごいデッキですよね、本当に」
よしゆき「僕が作ったわけじゃないんで……w」
とはいえ、ゲルネウスの側にもミスは許されない。読み間違えて1ターンを渡せばゲームが終わってしまいかねない以上、最適なルートを選択し続けなければならない。
ゲルネウス「……勝ちてーなー」
やがて、準決勝のラストゲームが始まる。
祈るように一度顔を伏せてから初期手札を確認したゲルネウスは、この準決勝で初めて1マナクリーチャーを出さず、《BAKUOOON・ミッツァイル》チャージのみでターンを終える。対するよしゆきは《》チャージでターンエンド。
ゲルネウス「少し考えます」
いくつものプラン。リスクとリターン。それらをすべて勘案し、ゲルネウスは最適なルートを導き出そうとする。
ゲルネウス「……ごめんなさい、ちょっと長考します」
そして選択する。
《BAKUOOON・ミッツァイル》チャージ、《TOKKO-BOON!》。GR召喚は《“魔神轟怒”ブランド》。
ゲルネウス「考えます」
この1点を刻んでいいのか。……《GIRIGIRI・チクタック》の受けもある。《知識と流転と時空の決断》のないうちに楯を減らす意味もある。意を決してブレイク……S・トリガーはない。
対し、よしゆきは《次元の嵐 スコーラー》チャージから《エマージェンシー・タイフーン》と、悪くはないにせよワンテンポ遅い動き。
ゲルネウス「(マナにある)《》の下だけ見てもいいですか」
そしてゲルネウスは、選択したプランを実行に移す。
《GIRIGIRI・チクタック》チャージ、《グレイト“S-駆”》+《グレイト“S-駆”》。1体目のブレイクは《エマージェンシー・タイフーン》。これで《知識と流転と時空の決断》もトリガーになる……が、構わない。もう一体の《グレイト“S-駆”》が攻撃に行くとき、《龍装者 バルチュリス》宣言!
ブレイク。S・トリガーはない。さらに《龍装者 バルチュリス》でブレイク。S・トリガーは……ない!
こうなると追い詰められた格好のよしゆき。残るシールドは1枚、盤面にはアタッカーが3体。このままターンを返せば、埋まっているのが《知識と流転と時空の決断》でない限りしのぎきれない。
そしてよしゆきは、二度も幸運に頼るほど楽観的ではなかった。《》を唱えると、《龍装者 バルチュリス》の動きを1ターン止めることを決断する。
ただ、それでもジャスキルには足りている。ドローしたゲルネウスは、2体の《グレイト“S-駆”》のうちの1体で、最後のシールドをブレイクしにいく。
トリガーチェック。
《スパイラル・ゲート》!
どうにか4ターン目まで生き延びることに成功したよしゆき。
だが問題があった。これまでのゲームと異なり《ブラッディ・クロス》や《ブラッディ・タイフーン》を挟めなかったことで、墓地の呪文の枚数はまだたったの6枚しかなかったのだ。
やがて手札を吟味したよしゆきは、最後の決断を下す。
よしゆき「《知識と流転と時空の決断》……『2体バウンス』で」
ゲルネウス「……『2体バウンス』で!?」
ゲルネウスの聞き間違いではなかった。
どうやってもこのターン中に《》を降臨させられない以上、よしゆきに残された希望は「前のターンにゲルネウスがキープした1枚の手札が5マナ以上のカードで、かつこのターンのドローも同様で、《グレイト“S-駆”》《グレイト“S-駆”》《龍装者 バルチュリス》+5マナ以上のA+5マナ以上のBという手札になってしまって1打点のSAも作れないこと」しかなかったのだ。
このリアクションを見れば、ゲルネウスのキープした1枚がよしゆきの望んだものではなかったことは、火を見るより明らかであった。
すなわち、ゲルネウスの返すアクションは。
《螺神兵ボロック》チャージから《グレイト“S-駆”》《グレイト“S-駆”》……そして《“罰怒“ブランド》!
ゲルネウス 2-1 よしゆき
ゲルネウス「……っしゃー!」
よしゆき「イヌ科と決勝でやりたかったよ……不毛なミラーしたかったよ!」
悔しがるよしゆきに対し、ギャラリーの友人たちが「仕方ない」「まだ次がある」と労いと励ましの言葉をかける。
他方、反対側の準決勝ではイヌ科がアーチーに対して勝利を収めていた。少なくとも、3位決定戦で日本一決定戦の権利をかけた不毛なミラーをやるのを避けられたことだけは、よしゆきにとっては不幸中の幸いと言えるかもしれない。
よしゆき「1ゲーム目、《》を引けていれば『1』宣言で1ターン耐えてから《知識と流転と時空の決断》でブロッカー2体並べたりして止められたかもしれなかったけど、《》を引けなかった……もしくは《知識と流転と時空の決断》さえトリガーしてたら……ブロッカーは全部光か水なんで、出たら《螺神兵ボロック》が溶けて耐えられてたな……」
選択も決断も、すべてが報われるとは限らない。
ただ、これだけは言える。よしゆきは間違いなく全力を尽くした……なぜなら、これほど不利に見えるマッチアップにおいてもワンチャンスを作れる《知識と流転と時空の決断》を採用していなければ、そもそもここまで勝ち上がってはこれなかっただろうからだ。
ならば、今日このフィールドに『赤単ブランド』を持ち込み、精密なプレイですべてのプラン選択に正答して勝ち残ったゲルネウスをこそ称えるべきだろう。
よしゆき「いやー……赤単はきついっす」
ひとまず日本一決定戦の権利を確定させたゲルネウスは、イヌ科の待つ決勝卓へ。
そしてよしゆきは日本一決定戦の出場権利をかけ、3位決定戦……すなわち、アーチーとの最後の一戦に臨む。
Winner: ゲルネウス
ここまでの躍進を、一体誰が予想できたというのか。
否、彼らは予想した。そして確信したのだ。
オンライン調整コミュニティ「マラかっち」謹製のシークレットデッキ、『カリヤドネループ』。このデッキが、必ず頂点に立つということを。
ゆえに、よしゆきはこのデッキの使用を決断した。そして、ついにここまでたどり着いたのだ。
反対側の準決勝では、同じデッキを駆るイヌ科がアーチーと対戦している。よしゆきとイヌ科がともに勝てば、それはすなわち「マラかっち」によるグランプリの完全制覇を意味しているのだ。
その歴史的な瞬間を目撃するべく。そして、盟友の勝利を応援するべく。
惜しくもトップ16でリヒッコチュリスに負けて敗退したdottoをはじめ、「マラかっち」のメンバーたちがよしゆきの戦いを見守ろうとしている。
グランプリ-9th、準決勝。日本一決定戦出場がかかった、正念場の一戦を。
ゲルネウス「僕の身内はみんなサイドイベントの方に行っちゃってて、dottoさんとか、よしゆきさんを応援してる方々の熱がすごいんで……あてられちゃってます」
よしゆき「僕はもう長いことやってるんで、身内が多いだけです……恥ずかしいことできないんで、僕もきついですw」
一方ゲルネウスの使用デッキは『赤単ブランド』。トップ8に3人を輩出した、今回の勝ち組と言っていいデッキだが、その細部にはかなり大きな違いがある。
特にゲルネウスのリストは、1マナ域と《TOKKO-BOON!》を厚くとる代わりに《花美師ハナコ》や《斬斬人形コダマンマ》の枚数を最小限に抑えるなど、使用者が正確なプラン選択とそれに沿った最適なプレイができることを前提とした、かなりスタイリッシュな形となっているのだ。
そしてそれはそのまま、ゲルネウスが確かなプラン選択能力をもってここまで勝ち抜いてきたことの証左でもあった。
ゲルネウス「緊張する……ここまで来るなんて思ってなかった」
二度とはないかもしれない舞台。悔いを残すようなことはしたくない。
ならばどうするか?
簡単だ。全力を尽くす。それ以外にない。
ゲルネウスの速攻が全てを貫くのか。よしゆきのコンボが全てを時の彼方へと追いやるのか。
やがて試合開始のアナウンスとともに、決戦の火蓋が切って落とされた。
Game 1
先攻:よしゆきジャンケンで先攻はよしゆき。《知識と流転と時空の決断》チャージからの《ア・ストラ・センサー》で《》を回収する立ち上がり。
ゲルネウス「……少し考えます」
対するゲルネウスは第1ドローが加わった手札の1枚1枚を真剣に吟味すると、《TOKKO-BOON!》チャージから《螺神兵ボロック》を送り出す。
よしゆきの2ターン目は《》チャージ、《ブラッディ・クロス》で終了。一足先に墓地の呪文の枚数を4枚にしておくことで、シールドに埋まっているかもしれない《知識と流転と時空の決断》を有効トリガーにする算段だ。
しかし、ゲルネウスは止まらない。《爆殺!! 覇悪怒楽苦》チャージから《ブルース・ガー》《螺神兵ボロック》と並べると、さらに《螺神兵ボロック》で1枚ブレイク。S・トリガーはない。
よしゆきは《レスキュー・タイム》チャージから《エマージェンシー・タイフーン》、さらに《ブラッディ・クロス》。この時点で墓地の呪文枚数は9枚にまで到達している。S・トリガーがなくても次のターンに《ブラッディ・クロス》か《ブラッディ・タイフーン》が絡めば、早くも《》が降臨しうるという状況だ。
だが。
ゲルネウス「マナの《レスキュー・タイム》だけ確認よろしいですか?」
ゲルネウスは、初手を握った時点で既にプランを選択し終えていた。もはや遅延は必要ないとばかりに《ドリル・スコール》をチャージすると、《GIRIGIRI・チクタック》を召喚。GR召喚で《ソニーソニック》……さらに「B・A・D」《“罰怒“ブランド》!
手札を綺麗に使いきる赤単ブランドの黄金ムーブで、楯4枚に対して7打点……すなわち、S・トリガーで仮に《知識と流転と時空の決断》を踏んだとしても、その1枚のみでは返せない状況を作り上げる。
《“罰怒“ブランド》でW・ブレイク。S・トリガーは《エマージェンシー・タイフーン》のみ。
《螺神兵ボロック》でブレイク。S・トリガーはない。
《GIRIGIRI・チクタック》で最後のシールドをブレイク。S・トリガーは……ない!
《ソニーソニック》のダイレクトアタックで、ゲルネウスが後手番での勝利を見事もぎとった。
ゲルネウス 1-0 よしゆき
よしゆき「次先攻もらいます」
最善は尽くした。先手2ターン目から墓地の呪文カウントを4枚にし、《知識と流転と時空の決断》の受けを作った。
だが、3ターン目に貫通するときは貫通する。普通のコンボデッキよりは受けが厚いとはいえ、厳しい戦いであることに変わりはない。
それでも、応援してくれている友がいる。決勝で待っているはずの強敵がいる。
よしゆきは気を取り直して、まずはゲームカウントをイーブンに戻すべく2ゲーム目に臨む。
Game 2
先攻:よしゆき《》チャージでタップインスタートとなってしまったよしゆきに対し、ゲルネウスは《爆殺!! 覇悪怒楽苦》チャージから順調に《螺神兵ボロック》を送り出す。
続くターンこそ《セイレーン・コンチェルト》チャージから《ア・ストラ・センサー》で《》を回収しつつ、《ブラッディ・クロス》で墓地に呪文4枚を落とそうとしたよしゆきだったが、落ちた2枚の中に《次元の嵐 スコーラー》があったために達成できず、苦しい表情。
他方ゲルネウスは《TOKKO-BOON!》を唱えて《ナギー・ナグナグ》をGR召喚すると、《螺神兵ボロック》でブレイク。さらにS・トリガーがないのを確認すると、少しでも《知識と流転と時空の決断》をS・トリガーで踏む確率を下げるために《ナギー・ナグナグ》でそのままもう一枚ブレイクしにいく。S・トリガーは、ない。
このままでは1ゲーム目の焼き直しになってしまうよしゆきは、《》チャージから《ア・ストラ・センサー》《ブラッディ・タイフーン》とつなげて残る3枚のシールドにトリガーが埋まっていることにすべてを賭ける。
そしてゲルネウスの3ターン目。《凶戦士ブレイズ・クロー》チャージから《GIRIGIRI・チクタック》で《ドドド・ドーピードープ》をGR召喚、さらに《“罰怒“ブランド》!
まずは《GIRIGIRI・チクタック》でのブレイク。S・トリガーは……《エマージェンシー・タイフーン》。楯は2枚、打点は5点。もはやS・トリガーは《》1枚では止まらない。
ゲルネウス「墓地の呪文の数、数えてもいいですか?」
それでも、ゲルネウスは最後まで慎重に考える。墓地の呪文は9枚。ここで攻撃しないと《ブラッディ・クロス》から《》につながってしまうリスクがある。
ならばパスすることはありえない。検討の結果、《“罰怒“ブランド》で最後の楯2枚を、躊躇なくW・ブレイクしにいく。
ここまでの流れは、1ゲーム目とほとんど同じだった。
神はいない。奇跡も起こらない。現実は残酷なまでに平等だ。
そう、だから。
そこにはただ、人の意思に基づく選択と・・があるだけなのだ。
S・トリガー、《知識と流転と時空の決断》!
最善手を打ち続けたよしゆきに対し、シールドがついに応えた。《ドドド・ドーピードープ》と《螺神兵ボロック》を手札に戻すと、ダイレクトアタッカーを失ったゲルネウスは「マスターB・A・D」で《GIRIGIRI・チクタック》を破壊しつつターンを返さざるをえない。
ついに回ってきた、先手4ターン目。よしゆきには楯がない以上、事実上のラストターン。
だが、墓地の呪文は10枚。チャージしても4マナ。このままでは《》2体を並べる方法がない。
ならば探しにいくのみ。《》をチャージ、《ア・ストラ・センサー》。
よしゆき「っし!」
たどり着いた。《ブラッディ・クロス》!
そこから先は、よしゆきの独壇場だった。
13マナ軽減、《》。《ブラッディ・タイフーン》《エマージェンシー・タイフーン》《》と唱えて墓地から《次元の嵐 スコーラー》を回収。さらに手札から《》。《》《ブラッディ・タイフーン》《ブラッディ・タイフーン》と唱えた後にG・ゼロで《次元の嵐 スコーラー》。追加ターンは、何と《》で倍化されて2ターン。
それだけあれば、並んだ《》と《次元の嵐 スコーラー》でよしゆきが殴りきるには十分すぎた。
ゲルネウス 1-1 よしゆき
ゲルネウス「いけると思ったんだけどなー……踏んだか。最後先攻でやるしかないなー」
よしゆき「……あーマジ先攻……」
どうにか星をイーブンに戻したよしゆきだが、こうなると1ゲーム目の敗戦が痛い。3ゲーム目は初めて、ゲルネウスの先手となるからだ。
ゲルネウス「……いいハンド欲しいな。にしてもすごいデッキですよね、本当に」
よしゆき「僕が作ったわけじゃないんで……w」
とはいえ、ゲルネウスの側にもミスは許されない。読み間違えて1ターンを渡せばゲームが終わってしまいかねない以上、最適なルートを選択し続けなければならない。
ゲルネウス「……勝ちてーなー」
やがて、準決勝のラストゲームが始まる。
Game 3
先攻:ゲルネウス祈るように一度顔を伏せてから初期手札を確認したゲルネウスは、この準決勝で初めて1マナクリーチャーを出さず、《BAKUOOON・ミッツァイル》チャージのみでターンを終える。対するよしゆきは《》チャージでターンエンド。
ゲルネウス「少し考えます」
いくつものプラン。リスクとリターン。それらをすべて勘案し、ゲルネウスは最適なルートを導き出そうとする。
ゲルネウス「……ごめんなさい、ちょっと長考します」
そして選択する。
《BAKUOOON・ミッツァイル》チャージ、《TOKKO-BOON!》。GR召喚は《“魔神轟怒”ブランド》。
ゲルネウス「考えます」
この1点を刻んでいいのか。……《GIRIGIRI・チクタック》の受けもある。《知識と流転と時空の決断》のないうちに楯を減らす意味もある。意を決してブレイク……S・トリガーはない。
対し、よしゆきは《次元の嵐 スコーラー》チャージから《エマージェンシー・タイフーン》と、悪くはないにせよワンテンポ遅い動き。
ゲルネウス「(マナにある)《》の下だけ見てもいいですか」
そしてゲルネウスは、選択したプランを実行に移す。
《GIRIGIRI・チクタック》チャージ、《グレイト“S-駆”》+《グレイト“S-駆”》。1体目のブレイクは《エマージェンシー・タイフーン》。これで《知識と流転と時空の決断》もトリガーになる……が、構わない。もう一体の《グレイト“S-駆”》が攻撃に行くとき、《龍装者 バルチュリス》宣言!
ブレイク。S・トリガーはない。さらに《龍装者 バルチュリス》でブレイク。S・トリガーは……ない!
こうなると追い詰められた格好のよしゆき。残るシールドは1枚、盤面にはアタッカーが3体。このままターンを返せば、埋まっているのが《知識と流転と時空の決断》でない限りしのぎきれない。
そしてよしゆきは、二度も幸運に頼るほど楽観的ではなかった。《》を唱えると、《龍装者 バルチュリス》の動きを1ターン止めることを決断する。
ただ、それでもジャスキルには足りている。ドローしたゲルネウスは、2体の《グレイト“S-駆”》のうちの1体で、最後のシールドをブレイクしにいく。
トリガーチェック。
《スパイラル・ゲート》!
どうにか4ターン目まで生き延びることに成功したよしゆき。
だが問題があった。これまでのゲームと異なり《ブラッディ・クロス》や《ブラッディ・タイフーン》を挟めなかったことで、墓地の呪文の枚数はまだたったの6枚しかなかったのだ。
やがて手札を吟味したよしゆきは、最後の決断を下す。
よしゆき「《知識と流転と時空の決断》……『2体バウンス』で」
ゲルネウス「……『2体バウンス』で!?」
ゲルネウスの聞き間違いではなかった。
どうやってもこのターン中に《》を降臨させられない以上、よしゆきに残された希望は「前のターンにゲルネウスがキープした1枚の手札が5マナ以上のカードで、かつこのターンのドローも同様で、《グレイト“S-駆”》《グレイト“S-駆”》《龍装者 バルチュリス》+5マナ以上のA+5マナ以上のBという手札になってしまって1打点のSAも作れないこと」しかなかったのだ。
このリアクションを見れば、ゲルネウスのキープした1枚がよしゆきの望んだものではなかったことは、火を見るより明らかであった。
すなわち、ゲルネウスの返すアクションは。
《螺神兵ボロック》チャージから《グレイト“S-駆”》《グレイト“S-駆”》……そして《“罰怒“ブランド》!
ゲルネウス 2-1 よしゆき
ゲルネウス「……っしゃー!」
よしゆき「イヌ科と決勝でやりたかったよ……不毛なミラーしたかったよ!」
悔しがるよしゆきに対し、ギャラリーの友人たちが「仕方ない」「まだ次がある」と労いと励ましの言葉をかける。
他方、反対側の準決勝ではイヌ科がアーチーに対して勝利を収めていた。少なくとも、3位決定戦で日本一決定戦の権利をかけた不毛なミラーをやるのを避けられたことだけは、よしゆきにとっては不幸中の幸いと言えるかもしれない。
よしゆき「1ゲーム目、《》を引けていれば『1』宣言で1ターン耐えてから《知識と流転と時空の決断》でブロッカー2体並べたりして止められたかもしれなかったけど、《》を引けなかった……もしくは《知識と流転と時空の決断》さえトリガーしてたら……ブロッカーは全部光か水なんで、出たら《螺神兵ボロック》が溶けて耐えられてたな……」
選択も決断も、すべてが報われるとは限らない。
ただ、これだけは言える。よしゆきは間違いなく全力を尽くした……なぜなら、これほど不利に見えるマッチアップにおいてもワンチャンスを作れる《知識と流転と時空の決断》を採用していなければ、そもそもここまで勝ち上がってはこれなかっただろうからだ。
ならば、今日このフィールドに『赤単ブランド』を持ち込み、精密なプレイですべてのプラン選択に正答して勝ち残ったゲルネウスをこそ称えるべきだろう。
よしゆき「いやー……赤単はきついっす」
ひとまず日本一決定戦の権利を確定させたゲルネウスは、イヌ科の待つ決勝卓へ。
そしてよしゆきは日本一決定戦の出場権利をかけ、3位決定戦……すなわち、アーチーとの最後の一戦に臨む。
Winner: ゲルネウス
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