DMGP2022 Day2 決勝Round 1:ぎゃる男 vs. ぴゅう
ライター:高橋 穂
撮影者:後長 京介
9ラウンドにも及ぶ予選の末、会場を埋め尽くしていたプレイヤーは128人まで絞られた。
一般的に、ラウンド数が多ければ多いほど「まぐれ」は発生しにくくなる。
通常のCS等であればすでに終わっていてもおかしくないこのラウンド数は、強者とそれ以外を容赦なく選別していく。
そしてこのフィーチャー席に座っている二人も、その中でも飛び切りの強者であることに疑いはない。
片や、中四国地方にて活躍する「瀬戸内の雄」ぎゃる男。
競技プレイヤーはもちろんのこと大会カバレージを読む者なら一度は顔を見たことがあるであろう、実力・経験ともに卓越したプレイヤーだ。
今回彼が駆るのは【ゼーロベン】。詳細は省くが、事実上《闇王ゼーロ》一枚(≒バトルゾーンと手札に3枚ずつ闇のカードを揃える)からほぼ即死まで確定する環境屈指のコンボデッキだ。
そして彼に相対するのはぴゅう。
超一流プレイヤーひしめく全国大会2019に出場し、アドバンス部門全勝からベスト8に輝いたのは記憶に新しい。
鋭く環境を読んだデッキ選択の巧みさに定評がある彼は、周りをあっと言わせる独自のデッキを開発してくることでも知られている。
そんな彼は、今回も秘密兵器を持ち込んできたらしいが……?
こうして、二人の強者が一つしかない勝者の椅子を賭けてぶつかり合うことになった。
先攻:ぎゃる男
予選結果で先攻を取ったぎゃる男。まずは手札をしっかり眺めてから《Disカルセ・ドニー》《困惑の影トラブル・アルケミスト》とマナに埋めていく立ち上がり。
対するぴゅうのファーストムーブは、《スロットンの心絵》《カーネンの心絵》をチャージしてからの《ゲラッチョの心絵》による1ドロー。この時点で、ぴゅうのデッキは十中八九【ライオネル】系列であろう……ということがぎゃる男に伝わる。
3ターン目、ドローを行ったぎゃる男は渋い顔。本来ならば迷わず《天災 デドダム》や《Disジルコン》を出して準備を行いたいターンだが、どうやら彼らは出ない様子だ。
しばらく考えたのちここは次善の策を、とばかりに《絶望と反魂と滅殺の決断》をチャージし、《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》にてシールド回収。《闇王ゼーロ》を目指して手札とバトルゾーンを充実させる。
ここまでじっくりと考えながら手を進めてきたぎゃる男だったが、ぴゅうの3ターン目の動きを見てさらにその悩みは深まることとなる。
マナゾーンにチャージされたのは、まさかの《EVE-鬼MAX》!そして、間髪入れずに使用された《カーネンの心絵》で公開されたのは《カーネンの心絵》《ライオネルの天宝》、そして《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》! 突然の火文明の登場、さらにそれが環境トップデッキではまず見ない思わぬカードということで、百戦錬磨のぎゃる男も思わずテキスト確認を求める。
確認が終わると、公開された中から《カーネンの心絵》《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》を手札に加えてぴゅうはターンを返す。
予想だにしないカードの登場で、プランニングの修正を余儀なくされたぎゃる男。見えたカードから先の展開を考えつつ、今まで以上の長考で最善を尽くしてなんとか打開しようとする。
その結果、マナにチャージされたのは《天災 デドダム》。そして、メインフェイズは動かずにターンを終了する。
こうしてターンが帰ってきたぴゅうは、《ライオネルの天宝》をチャージすると即座に《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》を降臨させる。
タマシードの上に重ねているので除去効果が発動、《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》は破壊される…というところまでは公開情報なので予定調和だ。
だが、ぴゅうの手札にはさらなる隠し玉が眠っていた。
《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》攻撃時に侵略で登場したのは、《キャンベロ <レッゾ.Star>》! 動き出すためにバトルゾーンに三体の闇クリーチャーが必要になる【ゼーロベン】というデッキにおいて、「クリーチャーを1体しか出せない」というテキストは致命的。ぎゃる男にとっては、急激に《闇王ゼーロ》というゴールが遠のいてしまった形となる。
《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》の手札入れ替えで手札を整えつつ2打点を通してぎゃる男のシールドを2枚まで削ると、ぴゅうはターンを返す。
こうなると、ぎゃる男にとって序盤に《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》でシールドを削ったのが響いてくる。
ぴゅうは知るよしもないことだが、実はぎゃる男の【ゼーロベン】は《秩序の意志》などの相手ターンに使える受け札が1枚も入っていない超特化構成。その分、十分な妨害を擁したうえでより速く確実に勝利に辿り着ける構築なのだが、今回は16枚も入っている水マナ源(マナを染色する《そのウサギ、クセ者につき》含む)がまったく引けていなかったのだ!
見えている《キャンベロ <レッゾ.Star>》だけでシールド全壊までは確定、進化獣が1体でも出れば即ゲームセット……というのは、さすがのぎゃる男にとっても苦しい所だ。
もっとも生存率の高い……ひいては勝利に近い選択肢を必死に探した結果、ぎゃる男が選んだのは《砕慄接続 グレイトフル・ベン》チャージからの《神徒 メイプル-1》によるピーピングハンデス。これでぴゅうの手札から進化獣を枯らせれば、次のターンに生き残って大量の手札からクリーチャー2体召喚→《闇王ゼーロ》から大逆転の目は残る。
ところが、ぴゅうの手札は《カーネンの心絵》《スロットンの心絵》《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》《センメツ邪鬼 <ソルフェニ.鬼>》《キャンベロ <レッゾ.Star>》という「絶対進化します」どころか「絶対進化するし、クリーチャー3体にも届かせません」という絶望しかない構成!
この時点でぎゃる男視点では負けが確定しているのだが、《キャンベロ <レッゾ.Star>》を落として勝負師らしくポーカーフェイスを貫きターンを返す。
そんなぎゃる男の漢気に応えてか、ぴゅうのデッキは最後の最後でその真の姿を表す。
ゲームにフィナーレを飾るべく登場したのは、トップデッキでやってきたこのデッキの看板こと《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》! 登場時の《カーネンの心絵》で《カーネンの心絵》と《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》を手札に加えて即座に2体目の《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》を踏み倒し、さらにそこから踏み倒した《カーネンの心絵》が3体目の《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》と《ライオネルの天宝》を呼び…と、驚異的な連鎖が続いていく!
そして最後には《ゲラッチョの心絵》から《アルカディアス・モモキング》が降臨し、盤面には5体ものスター進化獣が並ぶ形となった。
そう、ぴゅうのデッキは《キャンベロ <レッゾ.Star>》と《アルカディアス・モモキング》のロック性能を極限まで活かすために火文明のカードを大胆に19枚も投入した、【光火ライオネル】どころか【光火キャンベロ&アルカディアス・モモキングfeatライオネル】とでもいうべき独自の秘密兵器だったのだ!
こうして、遅れて正体を現したスター軍団がぎゃる男に最後の一撃を叩き込むこととなった。
Winner:ぴゅう
ぴゅう「まず、オリジナル環境で《キャンベロ <レッゾ.Star>》と《アルカディアス・モモキング》が強い……というところから始まりまして。上手く両方が使えるデッキを探したんです」
新カードの登場や環境の変化でいったんガードが下がったところを巧みに突いたぴゅうの読みが光った形となったこのゲーム。
だが、受け札ゼロという大きなリスクを取ってでもコンボの成功率にオールインすることを選び本戦まで勝ち上がったぎゃる男も、あと1枚水マナを捻出できていれば《天災 デドダム》などでキーパーツを墓地に送り込み、除去すら間に合わない先攻4ターンキルすら狙えていたのもまた事実だ。
確かな選択・実力を持った二人を分けたのは、きっとほんのわずかな時の運。
それでも、彼らは勝利を目指して全力を尽くす。
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