デュエル・マスターズ

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DMGP2023-2nd 決勝Round 4:みぃむ vs. SEA-K

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:後長 京介

 頂上に挑み実際に手をかけた者にしか、語れない言葉がある。

SEA-K「初グランプリでこんだけ行けると思わなかった……GPだけは初参加なんですよ」

みぃむ「そうなんですね」

 決勝ラウンドに進出した128人のうち1人だけのサムライデッキ使用者……すなわちラストサムライとなりながらもここまで勝ち上がってきたのが、地元愛知のプレイヤーSEA-Kだ。

SEA-K「ニヤケが止まらない……w」

 そんなSEA-Kはシャッフル中、緊張と興奮のあまりに何度も自分のデッキを取りこぼしてしまい、自分を戒めるように胴の前で十字を切っては、たびたびふぅー……と息を深く吐く。CSには何十回と出た経験はあっても、初参加となるグランプリでいきなりフィーチャーマッチに呼ばれ、照明とカメラを向けられている状態は、やはり平常心を保ちがたいものなのだろう。

 一方、対するみぃむは兵庫のプレイヤーで、普段は大阪のCSに精力的に参加しているほか、昨年10月のデュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2ではトップ128に入賞した経験も持っており、SEA-Kとは対照的に場慣れした様子だ。

 そんな2人がトップ8入賞まで、《我我我ガイアール・ブランド》プロモまであと1勝というところまで来ている。

 勝てば天国。だが、負ければ地獄。大きすぎるものがかかった一戦、それがいわゆるバブルマッチというものだ。

 後悔を残さないためには、全力を出しきるしかない。  決勝ラウンド第4回戦。トップ8入賞をかけた大一番が、幕を開けた。

Game

 予選通過順位で先攻のSEA-Kがジャッジが告げたデュエマ・スタートの掛け声に対し、「お願いします!じゃんけ……あ、すみません僕先攻か」とまだ落ち着きを取り戻せない様子ながらも、《竜牙 リュウジン・ドスファング》をマナチャージしてターンを終える。

 だが、返すみぃむのチャージはまさかの《絶速 ザ・ヒート》  そう、サムライ対レッドゾーンという今は西暦何年なのかわからなくなるほどに時代錯誤な対戦が、この令和の世に実現した形となったのだ。

 ともあれ、先攻2ターン目を迎えたSEA-Kは《爆炎ホワイトグレンオー》チャージから《戦術の天才 マロク》を召喚。対するみぃむは《終末の時計 ザ・クロック》チャージから《異端流し オニカマス》を送り出す。  すると、ここで《戦術の天才 マロク》をチャージしたSEA-Kはまさかのアクションなし。手札が相当に濁っているか、それとも《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》《竜牙 リュウジン・ドスファング》のセットを抱えているのか。

 いずれにせよこの好機を逃す手はないとばかりに、《龍装者 バルチュリス》をチャージしたみぃむが召喚したのは《影速 ザ・トリッパー》SEA-Kの手札内容がどうあれ、確実にもう1ターンは取れるであろう絶好の展開だ。  だが、みぃむはそんな悠長なゲーム展開には満足しなかった。

 召喚したばかりの《影速 ザ・トリッパー》を攻撃に向かわせると、《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》を「侵略」!W・ブレイクが通り、《覇帝なき侵略 レッドゾーンF》が剥がれて《影速 ザ・トリッパー》がアンタップ状態に戻る。

 そして。さらに。

 《影速 ザ・トリッパー》の再びの攻撃時、「侵略」……《轟く侵略 レッドゾーン》!!  SEA-Kは一応《戦術の天才 マロク》だけは「エスケープ」で破壊効果から逃がしてはみるものの、残る2枚のシールドの中に、いやサムライのごとく背中を見せない戦い方を選んだSEA-Kのデッキ自体に、《異端流し オニカマス》への解答などあるはずもない。

 かくして、みぃむは《異端流し オニカマス》によるダイレクトアタックを宣言する。

SEA-K「……負けです」

みぃむ「ありがとうございました……!」

Winner: みぃむ

 その後、鮮やかな後攻3ターンキルでトップ8進出を決定づけたみぃむは放送席にて、『水闇火レッドゾーン』というデッキ選択理由について晴れやかに語った。

みぃむ「グランプリで強いデッキ何か考えた時に、アドバンス・フォーマットの『闇火レッドゾーン』が思い浮かんだんです。それで実際にデッキを組んでみて回してみたら意外と強くて、初見殺しも兼ねてるからってことで選択しました」

 他方、自分の事故と相手のぶん回りが重なった不運もあり、あまりにも呆気ない幕切れで不完全燃焼気味のSEA-Kにも話を聞いてみた。

--「グランプリ、初出場でここまで勝ち上がったとはすごいですね」

SEA-K「そうですね。CSには結構出てるんですけど、超CSもこの間の大阪で初めて出ました。なので本当は、こういう舞台にはなるべく上がりたくなかったんです。緊張もしますし、手札もガンガンに事故ってたんで……」

--「ご愁傷様です。またぜひ挑戦してみてください」

SEA-K「最後もG・ストライクはあったんですが、もちろんそれだけだと受からないなと思ってたんで……《奇石 ミクセル / ジャミング・チャフ》が入ってるんで引けたらなーと思ったけどそれもないし、初動もなしで多色ばっかりで散々でした……せっかく初めてのこういう舞台だったんですが、醜態を晒してしまったなーと……」

 消沈した様子のままSEA-Kはフィーチャーマッチ・エリアの階段を下りていく。その背中は対戦前の浮つきぶりが信じられないほど、もしかするとしばらくデュエマ熱が冷めてしまうかもしれないと思わせるくらいには小さかった。

 だが、バブルマッチの夢が泡と弾けたそんなSEA-Kにも、唯一得られたものがあった。

 フィーチャーマッチ・エリアから降りた彼に、放送を見ていた仲間たちが駆け寄って「あれはしゃーない」と口々に慰めの言葉をかけたのだ。

 頂上まであと一歩だったのだという友人たちへの土産話もまた、立派な勲章だ。


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