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DMGP2023-1st Day2(オリジナル)準々決勝:いっぺこ vs. こっちゃー

ライター:清水 勇貴(yk800)
撮影者:三田 健太

※撮影時のみマスクを外しています。 こっちゃー「今回の調整はほとんど全部脳内で行いました。リアルでの調整は前日にちょっと触ったぐらいですね」

 ゲーム開始前に一時席を外していたいっぺこの到来を待つ間、こっちゃーは堂々とそう語った。

 筆者と同じくカバレージチームとして参加し、こっちゃーとも旧知の間柄にある河野正成氏は、本マッチのカバレージを取る前に彼にまつわる話を聞いた際、「あいつは天才だよ」とぼやいた。

 超天篇期の【光水火スコーラー】などのデッキを構築した名ビルダーとしても知られるこっちゃー。今回彼が持ち込んだのは【水闇自然オービーメイカー】と言われるデッキタイプだが、彼独自の構築理論を元に「魔改造」されたリストとなっている。

こっちゃー
DMGP2023-1st
オリジナル構築
 36 クリーチャー
4 《とこしえの超人》
2 《若き大長老 アプル》
3 《キャディ・ビートル》
4 《極楽鳥》
3 《原始 サンナップ》
4 《天災 デドダム》
1 《Disメイデン》
4 《Disジルコン》
2 《「敬虔なる警官」》
3 《CRYMAX ジャオウガ》
4 《十番龍 オービーメイカー Par100》
2 《∞龍 ゲンムエンペラー》
 4 呪文その他
4 《キユリのASMラジオ》


 《原始 サンナップ》は3枚に減らされ、《応援妖精エール /「みんな一緒に応援してね!」》に関してはなんと0。

 マナをアンタップするクリーチャーは3枚しか採用されておらず、空いた枠を埋めるのは《「敬虔なる警官」》《キャディ・ビートル》といった、【水闇自然オービーメイカー】には珍しいメタクリーチャーたち——それにたっぷり3枚採用された《CRYMAX ジャオウガ》だ。

こっちゃー「このデッキを脳内で組み始めたのは【水闇自然オービーメイカー】ってデッキが出始めた時期だから、今年の2月ぐらいからなんですけど……あの時出回ってた構築って《十番龍 オービーメイカー Par100》のためにギリギリまで自然文明のカードを採用してて、それがしっくりこなかったんですよね。3ターン目に《原始 サンナップ》のマナ武装を達成して最速を狙うよりも、しっかり水と闇の単色カードを取って《天災 デドダム》《Disジルコン》を使いたかった」

こっちゃー「僕としては【水闇自然オービーメイカー】に《CRYMAX ジャオウガ》を採用してるんじゃなくて、【水闇自然メタジャオウガ】に《十番龍 オービーメイカー Par100》を採用してる感覚です」

 ベスト8までにも【火単ブランド】と何度か対面し、その全てを《「敬虔なる警官」》《キャディ・ビートル》といったメタカードを駆使して絡め取ってきたというこっちゃー。

 果たして、このマッチの結末たるや。


Game1

先攻:いっぺこ  じゃんけんの勝者となったのはいっぺこ。【火単ブランド】にとっては値千金の先攻だ。

 準決勝からは2本先取となり、2ゲーム目以降はいわゆる「負け先」で先後が決まる。1ゲーム目に勝利すれば3ゲーム目の先攻が確約されるため、1ゲーム目の勝敗は単なる勝ち星にとどまらない価値がある。

 是が非でもこの有利を活かしたいいっぺこは、じっくりと手札を眺めて《クミタテ・チュリス》をマナに埋め、ターンをこっちゃーへと渡す。

 返すこっちゃーは冷静に《Disジルコン》をセットしてターンエンド。初手で水と闇のマナを確保できる理想的なスタートだ。

 いっぺこの2ターン目、2マナを支払って召喚されたのは《カンゴク入道》。そのままターンを終了する際に能力が発動し、先攻をとったいっぺこの乏しいハンドリソースに潤いをもたらす。

 ターンが渡ったこっちゃーも不要な《若き大長老 アプル》をマナに埋めて《極楽鳥》を召喚、そのまま召喚されたばかりのマナ・バードに手をかけタップする……かと思われたが、少し考え込んだ後にターンを終えたこっちゃー。

 《とこしえの超人》を殴り返し要員としてプレイするのは【火単ブランド】対面ではよくある展開だが、今回はあえて踏みとどまることを選ぶ。

 次のターンにこっちゃーは4マナ、いっぺこからすれば《キユリのASMラジオ》から一気にアドバンテージを稼がれるのが怖い。

 先んじて打点を押し付けゲームを終わらせるか、それともメタクリーチャーを召喚して牽制するか……いっぺこはここで《U・S・A・BRELLA》を召喚することを選択。もう1枚シールドを回収してターンを終わらせる。

 迎えた後攻の3ターン目、こっちゃーはマナを埋めて自然文明のカードを3枚揃えると、事前に決めていたように次々と手札のカードをバトルゾーンに叩きつけていく。

 《原始 サンナップ》のマナ武装で3マナアンタップし、さらに《極楽鳥》を召喚。先ほど取っておいた《とこしえの超人》を召喚して、《十番龍 オービーメイカー Par100》! パワー19000のマッハファイターが《U・S・A・BRELLA》に襲い掛かり、いっぺこのバトルゾーンには《カンゴク入道》のみ。5対1の盤面が形成される。

 いっぺこが受け取った4ターン目、ここで踏ん張らなければ《十番龍 オービーメイカー Par100》のQ・ブレイカーでビートダウンされるだけでゲームの決着は確定的だ。

 手札1枚を早々にマナの近くに伏せつつ、盤面を指差し確認していくいっぺこ。やがていっぺこが表返したカード……《我我我ガイアール・ブランド》!? 思わぬカードにこっちゃーも頬をぴくりとさせる。なぜなら、このカードをマナに埋めるということはつまり……。

 《一番隊 チュチュリス》を召喚して以降のビートジョッキーのコストがされると、1マナで《こたつむり》、そしてもちろん持っていた2枚目の《我我我ガイアール・ブランド》

 先ほどのターンにこっちゃーが繰り広げた大展開に対する意趣返しのように、流れるような手捌きでクリーチャーを叩きつけたいっぺこ。

 W・ブレイカーとなった《こたつむり》を皮切りとした一斉攻撃にさらされるこっちゃー。頼みのG・ストライクも埋まっておらず、1本目はいっぺこが勝利をもぎ取った。

こっちゃー 0-1 いっぺこ

Game 2

先攻:こっちゃー  1ゲーム目を落とし、いよいよ後がないこっちゃー。

 先手番となった第2ゲームでは2枚の《Disジルコン》を続けてマナに埋めるところからゲームをスタート。次のターンには水、闇、自然の3色を確保できる形で2ターン目までを終える。

 動き出しとしては上々だが、相対するいっぺこが【火単ブランド】であることだけが気がかりだ。早期に何らかのメタクリーチャーを展開できなかったことが、後々にどう響くか。

 一方のいっぺこは2ターン目までビートジョッキーをマナに並べつつ、《こたつむり》を召喚する立ち上がり。現時点では2マナ2000のさして意味のないメタクリーチャーだが、1ゲーム目でもその力を見せたとおり、2ターン後にはW・ブレイカーとなってこっちゃーに襲いかかる。  先攻こっちゃーの3ターン目。2マナをタップして手札から公開されたのは、《「敬虔なる警官」》だ。

 表向きにしてシールドの6枚目に追加すると、いっぺこの《こたつむり》は手札へと強制送還。しかも、次のターンいっぺこはコスト2以下のクリーチャーを召喚できない。

 軽量クリーチャーがこれでもかと詰め込まれた【火単ブランド】には非常に痛烈な一打となる……はずだが、こっちゃーの顔つきは険しい。

 無理もないだろう、いっぺこの駆る【火単ブランド】がビートジョッキーを主体とした重めの構築であることはこっちゃーにもわかっている。大量の1マナクリーチャーや《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を採用した【火単ブランド】と比べれば《「敬虔なる警官」》の有効性は低い。

 ターンを受け取ったいっぺこは、この展開を予想していたかのように3マナをタップして《U・S・A・BRELLA》を召喚。

 テンポを失うどころか、逆にこっちゃーの《キユリのASMラジオ》展開を阻止しつつ、ターン開始時にギャラクシーGOする《「敬虔なる警官」》さえも墓地送りにしてしまう。

 いっぺこからすれば理想的、こっちゃーからすれば致命的な展開となった3ターン目の攻防。

 あわや手が止まってしまうか、と思われたこっちゃーの4ターン目だったが、そこはさしたるもの。《原始 サンナップ》《原始 サンナップ》と実質タダでクリーチャー2体をバトルゾーンに繰り出し、コストが6軽減され4マナとなった《十番龍 オービーメイカー Par100》を召喚する!

 シビルカウントこそ発動していないが、次のターンに4点を叩き込めるマッハファイターというだけでも十分以上だ。《U・S・A・BRELLA》をバトルで破壊し、次のターンにはリーサルを押し付けられる盤面を形成して望みを託す。

 ——しかし、この日のいっぺこはそう簡単に止まる男ではなかった。

 4マナ目を確保したいっぺこは、1マナ、2マナ、1マナと立て続けに3回マナをタップし、合計4体のクリーチャーを召喚する。

 すなわち、《クミタテ・チュリス》《こたつむり》《“罰怒“ブランド》、そしてマスターG・G・Gで0マナ、《“轟轟轟”ブランド》

 いっぺこは引いたカードを一瞥すると即座に捨てて、《原始 サンナップ》を破壊。次のターンに控えていたこっちゃーのリーサルは解除され、それどころかこのターン中にも合計7点の逆リーサルを突きつけられた格好だ。

 まさに怒涛の展開。これにはこっちゃーも「マジか」と声を漏らし、首を横に振る。

 《クミタテ・チュリス》で1点、《こたつむり》で2点、こっちゃーのシールドからG・ストライクは現れない。

 《“罰怒“ブランド》で2点。ゆっくりと最後のシールドを確認したこっちゃーは、このゲームの勝者を讃えるように右手を差し出した。

こっちゃー 0-2 いっぺこ

Winner:いっぺこ



こっちゃー 「悔いはないです、元々ベスト8まで来れるとは思ってなかったので」

 試合終了後、あっけらかんとインタビューに答えてくれたこっちゃー。メタカードにもシールドにも恵まれなかったマッチとなったが、「むしろこれまでのマッチが都合よく引きすぎしたね。収束したな〜」とこっちゃーは笑う。

こっちゃー 「ひとまず今回の目標にしてた『自己最高順位更新』は達成できましたし、次もまたそれですかね。ベスト8より上ってなると……もう優勝するしかないかなあ」

 今し方の敗戦を気にする風でもなく。関東の古豪の目は、既に未来を見据えていた。

いっぺこ 「Discordで活動しているコミュニティで普段は調整してます。カードショップだったりでリアルに対面しての調整は……ほとんどしてないですね。全部オンラインでの対戦です」

 今回のGPに向けた調整環境について訊ねた筆者に対して、「人と対面しない」という意味ではこっちゃーと同じように、しかしある意味では対照的な答えを返してくれたのは、準決勝へと駒を進めたいっぺこだ。

 「柳葉会」というコミュニティと、ZweiLance氏のYouTubeメンバーシップ「DM大学」、2つのDiscordサーバを主体として、日夜練習・調整に励んでいるといういっぺこ。

 今回は同じDiscordサーバに所属する中でも特に仲の良いメンバーでこのデッキを練り上げ、見事にいっぺこともうひとり、計2名を決勝ラウンドまで進出させたという。

 同じ調整環境、というところまで視野を広げれば、5名ものメンバーが予選を勝ち抜いたというのだから驚きだ。

 デュエル・マスターズを取り巻く環境は、時代の流れに応じて日夜姿を変えている。いっぺこの調整スタイルは筆者からすれば目新しく感じてしまうが、これが多数派となる日もそう遠くはなさそうだ。

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