DMGP2024-2nd Day2(オリジナル) 準々決勝:ジンジャー vs. ぽあ2期
ライター:山口 海斗(ジャイロ)
撮影:坂井 郁弥
いや、誇っていた。
その強さは誰もが仮想敵として想定しているのが現状、ベスト8まで進むと【火光闇ファイアー・バード】を握る者はジンジャーたった1人になっていた。
「DM24-EX1 デュエル・マスターズTCG 超感謝祭 ファンタジーBEST」が発売されてから超CSⅦ 横浜、超CSⅦ 広島と大型大会で常に優勝し続けているファイアー・バード。最強伝説はここで潰えるのか。
そんな【火光闇ファイアー・バード】に引導を渡そうとしているのは、母数2位の【光水闇マーシャル】を使うぽあ2期。
ファイアー・バードと同じタイミングで大幅な強化を貰ったスプラッシュ・クイーンの代表格、《マーシャル・クイーン》。新たに闇文明を採用し、今大会では数多の【火光闇ファイアー・バード】と戦ってきた。
やや遅咲きの花嫁はファイアー・バードを喰らうのか。はたまた最強のデッキは最強たるのか。
準々決勝戦を制するのはぽあ2期の【光水闇マーシャル】か、ジンジャーの【火光闇ファイアー・バード】か。ドラゴンの花嫁代理戦争が幕を開けた。
Game 1
先攻:ぽあ2期 ジンジャーは止まらない。2ターン目の《マジシャン・ルピア》、3ターン目の《ハッター・ルピア》。《ハッター・ルピア》の攻撃時に《アリスの突撃インタビュー》から《龍后凰翔クイーン・ルピア》を送り出すと、果敢にぽあ2期のシールドを攻める。この時点でジンジャーの動き出しは100点そのもの。
しかし100点の動きには100点のお返しを。《ハッター・ルピア》が割ったシールドから、ぽあ2期は《逆転の影ガレック》をトリガー!《龍后凰翔クイーン・ルピア》にマイナス3000を3回当てて墓地に追いやる。
3ターン目の《ハッター・ルピア》のシールドブレイクからトリガーを踏む、一般的に考えれば負けパターンへの直通便だが、ジンジャーに限ってその心配はない。
理由は単純明快、4ターン目の動きも100点だからだ。直前にぽあ2期がバトルゾーンに送り出した《エメラルド・クーラー》を《アリスの突撃インタビュー》で破壊し、《龍后凰翔クイーン・ルピア》を蘇生。それだけにとどまらない。
《龍后凰翔クイーン・ルピア》の攻撃は《凰翔竜機マーチ・ルピア》に革命チェンジ!《龍后凰翔クイーン・ルピア》の効果で攻撃中の《凰翔竜機マーチ・ルピア》を破壊して攻撃をキャンセル、メクレイドで《アリス・ルピア》を召喚し、《ハッター・ルピア》《ルピア&ガ:ナテハ》《ハンプティ・ルピア》を送り込む。《ハンプティ・ルピア》でぽあ2期の手札から《逆転の影ガレック》を落とすと、《凰翔竜機マーチ・ルピア》の破壊時能力で消えたはずの《龍后凰翔クイーン・ルピア》が蘇生対象に選ばれる!!!
あまりにも一連の動作が完璧なため、文章のみではイマイチ何が起きたのか伝わりにくい。
要するに、何故か自壊したはずの《龍后凰翔クイーン・ルピア》は残ってるしクリーチャーは4匹増えてるしぽあ2期の手札は減らされているのだ。それらが0コストで行われているのだ。100点を通り越して120点である。
そしてさらに重要なことに、ジンジャーのターンは終わっていない。こんどこそ《龍后凰翔クイーン・ルピア》で自身を破壊して《雷炎翔鎧バルピアレスク》に変換。《雷炎翔鎧バルピアレスク》でぽあ2期に攻撃時に《龍后凰翔クイーン・ルピア》を展開してバトルゾーンを広げる。
ジンジャーの追加ターンを確定させると、残った《ハッター・ルピア》で攻撃時に《ハンプティ・ルピア》をメクレイド、なおもぽあ2期の《サイバー・I・チョイス》を墓地にはたき落とす。
続く《龍后凰翔クイーン・ルピア》の攻撃では《影世界のシクミ》と《絶対華麗!マーシャル歌劇団》という2大踏み倒しトリガーを踏み抜いてしまう。
本来なら【光水闇マーシャル】にとって最高のトリガーとなっていただろう。
墓地を肥やしながら手札からでも踏み倒しを行うこともできる《影世界のシクミ》、後続を呼びつつコストの制限なくスプラッシュ・クイーンを踏み倒せる《絶対華麗!マーシャル歌劇団》。そのどちらもをトリガーさせたのだから、ぽあ2期にとって100点のトリガーといっていい。
【光水闇マーシャル】は墓地からの蘇生を手にして手札破壊耐性を得た。《逆転の影ガレック》を採用することでビート耐性を得た。厚いトリガーの採用で切り返し能力は環境でも一級品だ。
問題は、ジンジャーの【火光闇ファイアー・バード】がそれすらも踏みつぶす150点の攻撃を行ってきたことだ。
ぽあ2期が《マーシャル・クイーン》をバトルゾーンに送り出したとはいえ、肝心のシールドトリガーが《ハンプティ・ルピア》によって手札に残させて貰えず機能しない。 【火光闇ファイアー・バード】最後の生き残りであるジンジャー。最強の名に疑いはなく、異次元のチカラを魅せ付けて初戦を飾った。
ジンジャー 1-0 ぽあ2期
圧倒的な引きの強さはあるが、その裏で《ハンプティ・ルピア》の的確な手札破壊によって勝利を掴んでいるジンジャー。2度の《ハンプティ・ルピア》でシールドトリガーを墓地に落としていないと、最後の《マーシャル・クイーン》によって逆転を許していただろう。
確かなプレイの土台があってこそ、引きの強さは輝くのだ。
Game 2
先攻:ぽあ2期Game 1の100点の動きとは対照的に、手札に5コスト以上のクリーチャーがかさばって動けないジンジャー。その隙にぽあ2期は《エメラルド・クーラー》を出して進化元と手札を調達した。
《ハッター・ルピア》を召喚するのみでターンを終えるジンジャー、一方でぽあ2期は止まらない。《影世界のシクミ》から《カシス・オレンジ / ♥応援してくれるみんなが元気をくれ~る》の上面を蘇生してドローの期待値を高める。
ジンジャーは手札から《ハッター・ルピア》を出すと前のターンからいる《ハッター・ルピア》を使ってハイパー化、攻撃時に《雷炎翔鎧バルピアレスク》を召喚してぽあ2期のシールドをブレイク!
ジンジャーの及第点の動きであっても、後の無いぽあ2期は全力で刈り取りに行く。先ほどに続き、ワンパンで《逆転の影ガレック》をトリガー!《雷炎翔鎧バルピアレスク》にマイナス効果を2回当てて破壊に成功、墓地も肥やして準備にかかる。
値千金の1ターンをもぎ取ったぽあ2期だったが、得たターンは《エメラルド・クーラー》を添えるのみでターンを終える。序盤のスタートをしくじったジンジャーだが5マナまで伸びてしまうとその限りではない。
まずは《雷炎翔鎧バルピアレスク》を召喚すると、攻撃時に手札から《アリス・ルピア》を呼び出す。《アリス・ルピア》から捲れたのは2体の《ポッピ・冠・ラッキー》に《ハンプティ・ルピア》!
ジンジャーがぽあ2期のシールドに詰め寄ろうという、いま!まさに!このタイミングの満点解答!
《ハンプティ・ルピア》はぽあ2期の手札から《逆転の影ガレック》を落とし、《雷炎翔鎧バルピアレスク》がぽあ2期のシールドをブレイク。
ぽあ2期も黙ってやられない。《冥土人形ウォカンナ・ピエール》をトリガーさせ、ジンジャーの盤面を少しでも減らそうと試みたが……ジンジャーが墓地に落としたカードは「2」コストの《マジシャン・ルピア》。ジンジャーの盤面に一切の変動は無い。
追加ターンを獲得し、2体の《ポッピ・冠・ラッキー》を添えたジンジャーはここぞとばかりに攻め入る。
ハイパー化済みの《ハッター・ルピア》で攻撃、《アリスの突撃インタビュー》から《雷炎翔鎧バルピアレスク》を出してシールドブレイク。ぽあ2期は《邪魂転生》をトリガーさせ、ボロボロになった手札の再生を試みる。
なおも攻撃の手は緩まない。先ほど出した《雷炎翔鎧バルピアレスク》の攻撃時に《アリス・ルピア》を踏み倒すと、そこから捲れたのは《ハンプティ・ルピア》!
《邪魂転生》によって引き込んだであろう追加の《邪魂転生》を手札から落としてシールドブレイク。
ジンジャーは《龍后凰翔クイーン・ルピア》から《アシステスト・インコッピ》を呼び出すと、ぽあ2期を守る最後のシールドを割った。
ジンジャーには踏み倒しを咎める《ポッピ・冠・ラッキー》が2体に《アシステスト・インコッピ》がいる。エスケープやウルトラ・セイバーを持つこれらを除去しながら、自身の動きの要である《マーシャル・クイーン》を出さなければならない。
そんな離れ業が可能なのか。いや、可能だからこそ、ぽあ2期はここにいる! S・トリガー、《逆転の影ガレック》!!
マイナス3000効果を2匹の《ポッピ・冠・ラッキー》に当てて完全に除去。墓地から《マーシャル・クイーン》を蘇生して効果が起動。
《逆転の影ガレック》を出せばバトルゾーンは広がり、《邪魂転生》を唱えれば手札も戻る。たった1枚のS・トリガーによって自身の勝利を掴む【光水闇マーシャル】の真骨頂がいま……!!
……始まらなかった。肝心の《逆転の影ガレック》も、《邪魂転生》も、ジンジャーは既に《ハンプティ・ルピア》で取り除ききっている。
返す手段の無いぽあ2期は、ジンジャーを準決勝の舞台へと見送るのだった。 ジンジャー 2-0 ぽあ2期
Winner:ジンジャー
ジンジャー「大型大会はGP1stから出ていますけど、初めて本戦まで上がれました。」
--「GP1stから!かなりの古参ですね。しかもそれでベスト4まで来られていると!」
ジンジャー「(優勝は)地元・新潟の調整グループの悲願だから頑張ります。」
--「悲願の優勝まであと2回ですね。応援しています。」
惜しくも敗れてしまったぽあ2期にもこの対戦を振り返ってもらった。
ぽあ2期「1週間前にこのデッキに乗り換えたんですけど、同じデッキを使っているもう1人の知り合いも予選を抜けているのでこのデッキを選んで良かったです。」
--「たった1週間でここまで仕上げられたとは脱帽です。さて、今までの【光水マーシャル】だと《マーシャル・クイーン》を手札から落とされるのがかなりしんどい印象でしたがいかがですか?」
ぽあ2期「闇文明が入って《逆転の影ガレック》や《影世界のシクミ》が使えるので《ハンプティ・ルピア》の手札破壊に強くなったのがこのデッキの強みです。むしろ、《マーシャル・クイーン》を出した後に動くためのS・トリガーを手札から落とされる方が辛いです。」
--「ということは、使用者目線、ジンジャー選手の手札破壊はどうでしたか?」
ぽあ2期「全部嫌なところ抜かれていますね。完敗です。」
ぽあ2期「それに、Game 2の《冥土人形ウォカンナ・ピエール》で2コストの《マジシャン・ルピア》を捲られて、『ああ、今日はこの人の日なんだな』とは思いましたね。強すぎる。」
既に述べたように、引きの強さというのは確かなプレイという土台があって成立するものだ。ジンジャーの的確な手札破壊に適切なタイミングでのメタ置き。追加ターンを獲得するまでの徹底したタメのプレイ。それらがあって、引きの強さが勝利へと昇華されるということを改めて再確認した。
……とはいえ、なんと評価すべきか。これは一観戦者としての感想なのだが、ジンジャーは今日一日本当に神がかっている。
3ターン目までに《ハッター・ルピア》をマナに埋めた上で《ハッター・ルピア》をプレイしているし、《雷炎翔鎧バルピアレスク》からはほぼ必ず《アリス・ルピア》が複数の打点を抱えて着地している。
構築やプレイは大前提とても上手いものとして、引きの部分は確実に神がかっている。勝つべくして勝った男、ジンジャー。
続く準決勝、決勝戦でも彼の強さは止まることを知らないのだが……それはまた、別のお話。
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