DMGP2024-1st Day2(オリジナル):メタゲームブレイクダウン
ライター:清水 勇貴(yk800)
新ギミック「ハイパー化」を引っ提げて登場した最新弾のリリースから、わずか1週間後の開催となったDMGP2024-1st。昨日個人戦で開催されたアドバンスフォーマットから大きく様相を変え、本大会のオリジナルフォーマットはチーム戦で繰り広げられた。
公式な場でのチーム戦は、2018年に開催されたGP6th以来、実に約6年ぶりである。集まった1500チーム・4500名の選手の中から、熾烈な予選ラウンドをくぐり抜けた64チーム・計192名の選択は以下のようになった。
TOP64 デッキ分布
58 【闇自然アビス】32 【水火マジック】
13 【巨大天門】
12 【水闇COMPLEX】
10 【水闇自然グラスパー】
8 【5c蒼龍】
7 【闇火自然アビス】
6 【水闇自然DOOM】
6 【光水火ゴスペル】
6 【水魔導具】
4 【フィオナアカシック】
3 【闇単アビス】
3 【水闇火バイク】
24 その他(母数2以下)
また、この中から見事上位8チームに入賞したデッキタイプも、チームごとに併記しておこう。
TOP8 デッキ分布
【闇自然アビス】/【水火マジック】/【水火マジック】【闇自然アビス】/【巨大天門】/【巨大天門】
【闇自然アビス】/【闇自然アビス】/【闇自然アビス】
【闇火自然アビス】/ 【闇火自然アビス】/ 【闇火自然アビス】
【5c蒼龍】/【5c蒼龍】/【5c蒼龍】
【光水火ゴスペル】/【光水火ゴスペル】/【光水火ゴスペル】
【水火マジック】/【水闇COMPLEX】/【闇自然アビス】
【光水火ゴスペル】/【光水火ゴスペル】/【5c蒼龍】
6 【闇自然アビス】
5 【光水火ゴスペル】
4 【5c蒼龍】
3 【闇火自然アビス】
3 【水火マジック】
2 【巨大天門】
1 【水闇COMPLEX】
【闇自然アビス】
みんなと戦えてよかった。:C卓:Rikky DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
|
まず結論から話そう。
本大会における「最強」のデッキはまず間違いなく【闇自然アビス】だった。
最速で3ターン目から始まるメクレイド戦術によるクリーチャーの複数展開を主軸に、《ア:エヌ:マクア》と《アビスベル=覇=ロード》が相手の盤面を、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》と《謀遠 テレスコ=テレス》が手札を制圧し尽くす、闇文明らしいゲームコントロールが主軸のデッキタイプだ。
大会当日の生配信でも幾度となく登場し、その実力を視聴者にまざまざと見せ付けた。
デュエチューブリーグ参加者やDMPランカーなど、実績あるプレイヤーの使用率が非常に高く、本戦におけるシェアも圧倒的だ。総合的に見て本大会におけるベストな選択肢の一角であったことは疑う余地もない。
「魔覇革命」でのデッキタイプ成立以来、圧倒的なゲーム掌握能力で環境トップをひた走る【闇自然アビス】だが、春の殿堂施行と「デーモン・オブ・ハイパームーン」による新戦力の追加によってさらに追い風を受けることとなった。
得意の制圧力が機能しづらい【水闇魔導具】と【フィオナアカシック】は殿堂により大幅に弱体化。
ただでさえ環境内でのポジションが良くなったところに最新弾で《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》までもが追加され、その立ち位置は揺るぎないものとなった。
事前評価からそのヤバさを懸念されていたこのカードだが、その実力は本物だった。
これまで手の届かなかった高パワークリーチャーに対して明確な回答となる確定除去は極めて取り回しが良く、破壊先のコストに依存した墓地肥やし能力で《アビスベル=覇=ロード》や《邪幽 ジャガイスト》の蘇生能力の選択肢を拡張できる。
ハイパーモードの攻撃時能力が強烈な《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》にとって、《アビスベル=覇=ロード》と《邪幽 ジャガイスト》は味方の召喚酔いを無効化する手段を持っている点においても非常に相性がいい。
攻撃時のコスト8以下リアニメイトは種族や文明の指定すらなく、コスト8以下であればなんでも出せるため、これまでの【闇自然アビス】では候補にも上がらなかったようなカードを採用する余地さえも生まれた。
もっとも大きい部分で言えば、初動枠の《フェアリー・ライフ》を《配球の超人 / 記録的剛球》に差し替えた構築は本大会における主流派だった。
また、実際に予選を突破した【闇自然アビス】のいくつかは、踏み倒し先として《聖魔連結王 ドルファディロム》や《CRYMAX ジャオウガ》といった専用カードを採用するアプローチも試みられている。
これまでの戦術を順当に強化しつつも、これまでケアできなかった範囲にもアプローチ可能になっている。本大会にとどまらず、【闇自然アビス】の活躍はまだまだ止まらないだろう。
派生系として、火文明を含む形もこの項目で紹介しておく。
火文明を採用した構築は《鬼寄せの術》が採用されており、3ターン目に《邪幽 ジャガイスト》を登場させる手段が純正の【闇自然アビス】よりも多いのが何よりの強みだ。
また、《単騎連射 マグナム》や《聖魔連結王 ドルファディロム》といった強力なフィニッシュ補助も文明上邪魔になりづらい点で採用しやすい。
その分マナ色の管理が難しかったり、非アビスのカードの枚数が増えていてメクレイドにブレが生じる点がデメリットとして挙げられる。
火文明型がアップデートされた点として挙げられるのが、《イカリノアブラニ火ヲツケロ》だ。以前は《百鬼の邪王門》が採用されていた枠が、まるままこちらに差し代わっている。
《百鬼の邪王門》も強力なカードであることには間違いないが、メインの動きに絡みづらいカードを手札に抱えておく必要があったり、多色カードなのでトップデックした際にマナに置きづらかったりと、主にハンドキープの面で難点のあるカードだった。
その点、《イカリノアブラニ火ヲツケロ》は手札にコスト5のアビスを持っておくだけでよく、火文明単色でマナにも置きやすい。文明指定がないため《百鬼の邪王門》では出せなかった《ア:エヌ:マクア》が踏み倒し候補になるのも特徴的だ。
【水火マジック】
みんなと戦えてよかった。:A卓:極限バンバン辿異 DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
【闇自然アビス】と双璧を為す、「魔覇革命」からの刺客。前日のアドバンスでもワンツーフィニッシュを飾ったデッキで、Day2においても予選突破者数は2番手に付けた。
《芸魔隠狐 カラクリバーシ》と《芸魔王将 カクメイジン》に《瞬閃と疾駆と双撃の決断》が絡めば、最速3ターンでゲームを決着させられる圧倒的速度がウリの【水火マジック】。
《氷柱と炎弧の決断》の登場以降はもっぱら2ターン目にクリーチャー→3ターン目に手札調整の流れが一般的になっている。
強力なドローソースが登場したことでリソース面が安定し、中途半端なメタであれば突破することもさほど難しくない、現環境トップクラスのビートダウンデッキだ。
デッキとしての強力さには定評があるものの、新たに得たものは少なく、失ったものは大きい。
《楽識神官 プレジール》や《茶麗音愛 ソトハネ》は新たな選択肢としては悪くないものの、《氷柱と炎弧の決断》の時のようにデッキの構造を変えるほどのパワーを持っているわけではない。
その一方で、《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》のプレミアム殿堂の影響は大きく、フィニッシュ補助として《ファイナル・ストップ》などの呪文ロックや、《五郎丸コミュニケーション》・《水晶の記録 ゼノシャーク / クリスタル・メモリー》などのサーチカードの追加採用を余儀なくされている。
決して有利とは言い難い【闇自然アビス】が環境トップに台頭している点も含め、メタゲーム上の立ち位置にも恵まれていないデッキだ。
予選突破者こそ二番手につけたものの、TOP8進出者は対【闇自然アビス】デッキ2つの後塵を拝する結果となった。
ただし、優勝した「みんなと戦えてよかった。」の極限バンバン辿異選手が決勝戦で【5c蒼龍】を貫いたように、本大会において奮闘した対【闇自然アビス】デッキには概ね有利が付く。
今後も【水火マジック】には要注目だ。
【5c蒼龍】
朝は太極拳:A卓:あーくん/WiNG DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
|
というわけで、本戦で見事準優勝を飾った「朝は太極拳」が3面揃えて持ち込んだデッキがこの【5c蒼龍】だ。
マナブーストに妥協しない《フェアリー・ミラクル》・《獅子王の遺跡》の4-4フル採用から繰り出されるのは、多種多様な大型クリーチャー。
展開補助には《砕慄接続 グレイトフル・ベン》+《Disアイ・チョイス》+《ブレイン・スラッシュ》のパッケージが採用されており、コスト8以下のクリーチャーには幅広い角度からアクセスできるよう構成されている。
中速以下のゲームレンジのデッキに対しては有り余るカードパワーで制圧でき、高速ビートダウンに対しては、シールド運こそ絡むもののトリガーマナブーストや《ブレイン・スラッシュ》からのカウンター、そして《S・S・S》と回答が豊富に用意されている。
序盤の干渉が苦手なためコンボデッキにはやや隙を見せてしまうが、現環境に速度を出せるコンボはほとんど存在しない。本大会のメタゲームにおいて非常に良い選択肢のひとつだったと言えるだろう。
また、環境におけるこのデッキの立ち位置を考えるうえで、やはり《聖魔連結王 ドルファディロム》の存在は外せない。
単色のクリーチャーと呪文を1枚で咎められる点が現在の環境と非常にマッチしており、EXライフによる除去耐性と「EXライフシールドが離れたとき」のリセット再誘発によって無傷での排除が非常に難しい。
仮に対処されたとしても、ターンとリソースを消耗させている間に追加のフィニッシャーを繰り出したり、《ブレイン・スラッシュ》で再利用したりすればさほど問題にはならない点もこのデッキの大きな強みだ。
環境トップクラスと目されている【闇自然アビス】・【水火マジック】・【巨大天門】のいずれに対してもクリティカルで、このカードでターンを稼ぎつつ続くターンに《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》や《終末の監視者 ジ・ウォッチ》でさらに強烈なフタを仕掛ける黄金パターンを打破するのは非常に難しい。
カード1枚1枚が強いためデッキパワーも申し分なく、長丁場を戦い抜けるだけの地力を感じるデッキだ。準優勝という結果は、為すべくして為ったといえよう。
【光水火ゴスペル】
ファイアードラゴン:B卓:カニかまピラフ DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
|
もうひとつ、今大会で密かに好成績を叩き出していたデッキが【光水火ゴスペル】だ。
序盤から手札入れ替え呪文を連打して墓地に呪文を蓄えていきつつ、《キリモミ・ヤマアラシ》+《水晶の王 ゴスペル》を手札に用意。
4マナ前後でスピードアタッカーとなった《水晶の王 ゴスペル》が着地し、攻撃時能力で《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を唱え、獲得した追加ターンでドローソースを回して更なる追加ターンを目指していく、ビートダウンフィニッシュをメインルートに据えたコンボデッキだ。
《水晶の王 ゴスペル》での単騎駆けでも勝利を狙えるが、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》から踏み倒せるドルスザクとして《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》を1、2枚採用し、より安全に詰め切るルートが用意されている。
環境初期にはコンボデッキの最有力候補として【闇自然アビス】への対抗馬になりうるか期待されていたが、相性差がかなりハッキリしている点やコンボデッキ特有のブレが拭いきれない点などから徐々に数を減らしていったデッキタイプだ。
しかし、本大会では極端に【闇自然アビス】に偏った本戦のメタゲームやチーム戦によるブレのカバーなどの要因が重なってか、予選突破数6人に対して5人をベスト8に送り込む大金星を上げた。
うち3人が同じチーム、残りの2人も【5c蒼龍】1人と合わせて同一チームであったことは付記しておきたい。
【水闇COMPLEX】
みんなと戦えてよかった。:B卓:紅蓮 DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
|
【水闇COMPLEX】の環境上の立ち位置は非常に難しい。構築とそれに合わせたプレイングの習熟によって相性関係が変化するデッキだからだ。
基本となる形は豊富なトリガーとメタクリーチャーで相手の攻め手を捌きつつ《DARK MATERIAL COMPLEX》を設置して相手に時間制限を設け、プレッシャーを掛けながら少しずつ詰めたり、《DARK MATERIAL COMPLEX》で一気に相手の守りを吹き飛ばして自分はトリガーで受け返しを狙うトリガービートとメタビートを合わせたような思想のデッキタイプだ。
しかしそれはあくまで基本でしかなく、【水闇COMPLEX】は自由枠数枚の差し替えでできることが大きく変えられるデッキだ。
構築とプレイ次第でより防御的に立ち回ることも、逆に相手をがんじがらめにするメタ要素を強めることも、《DARK MATERIAL COMPLEX》をできる限り早期に動かすコンボデッキのような構成にすることもできる。
変幻自在のプランニングと詰めパターンの広さこそがこのデッキ最大の特徴にして武器だと言えるだろう。
あくまでデッキリストから読み取れる範囲での話にはなるが、今回優勝した紅蓮選手の構築で特徴的なのは、やはり《虹速 ザ・ヴェルデ》と《SSS級天災 デッドダムド》のパッケージ採用だろう。
主に考えられる役割として対【闇自然アビス】におけるコンパクトな盤面への対処と、対【巨大天門】における《∞龍 ゲンムエンペラー》ロック打開の両立が挙げられる。
触られづらいマナゾーンに置いておくだけで、相手が展開を作ってきた返しにコンパクトに盤面処理できるのは《虹速 ザ・ヴェルデ》+《SSS級天災 デッドダムド》の強みだ。
一度破壊されたとしても今度は《アーテル・ゴルギーニ》で蘇生して使い回せるため無駄がない。
《∞龍 ゲンムエンペラー》は《虹速 ザ・ヴェルデ》こそ機能しないものの、盤面のクリーチャーを直接どかす手段に乏しいため先置きのコマンドで相手を牽制できる点に《SSS級天災 デッドダムド》の強さがある。
その他、《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》で止まった相手のクリーチャーに対処したり、《虹速 ザ・ヴェルデ》から《SSS級天災 デッドダムド》複数枚を同時侵略させて相手のクリーチャーを複数体バトルゾーンから離し《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントを一気に進めたりと、細かい部分にもシナジーが見れらるカードチョイスだと言えるだろう。
【巨大天門】
夢を信じてデュエルマスターズ:B卓:にわか DMGP2024-1st TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
|
|
【巨大天門】は非常に明快なデッキで、それゆえに本大会ではわかりやすくメタを張られる側に回ったデッキだった。
そんな中でもにわか選手は《闘門の精霊ウェルキウス》と《∞龍 ゲンムエンペラー》をバッサリと切り捨て、《光の兄妹 るる&ルシファー》と《聖魔連結王 ドルファディロム》を採用した独特の構成で見事TOP8入りを果たした。
《聖魔連結王 ドルファディロム》の環境上の通りの良さは【5c蒼龍】の項目でも述べた通りだが、他にもこのパッケージを選ぶメリットとして種族の良さが挙げられる。
《∞龍 ゲンムエンペラー》と異なり、《聖魔連結王 ドルファディロム》はエンジェル・コマンド。すなわち、≪ギャラクシー・チャージャー≫回収対象だ。
《巨大設計図》と≪ギャラクシー・チャージャー≫のどちらでめくっても手札に加えられるため安定性が向上しているのも、決して今回の好成績と無関係ではないと考えられる。
多くのプレイヤーが【巨大天門】を仮想敵として見据えているメタゲーム下では、そもそも《∞龍 ゲンムエンペラー》が対処されやすいことも予想される。
本大会のメタゲームに即したアプローチであると感じた構築だ。
総括
2日を通し、DMGP2024-1stにて猛威を振るった「魔覇革命」の寵児たちが変わらぬ強さを見せ付けた本大会。しかし、今は環境初期。【闇自然アビス】はまさに王者に相応しいデッキだが、【5c蒼龍】や【光水火ゴスペル】といった回答も示されつつある。
そして、これらのデッキが隆盛すれば【水火マジック】が台頭し、メタゲームは回っていくのだろう。
そして、王道篇もまだまだ始まったばかりだ。
果たして次回のDMGP2024-2ndでは、愛知の地にてどのような姿を見せてくれるのだろうか。すでに半年後が楽しみでならない。
この大会の記録が、また新たな戦場の礎の一部となれば幸いである。
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY