ライター：清水 勇貴(yk800)
撮影：後長 京介

　あと一勝。

　3位に入賞したチーム全員に全国大会の権利が付与される本大会において、決勝に足を進めることはそれ自体にも大きな意義がある。

　勝てば、即、全国。このチャンス、逃すわけにはいかない。

　あと二勝。

　しかし、それ以上に。

　「優勝」の栄冠は、もう両チームの指先に触れる距離にあるのだ。

　長い戦いを勝ち抜き、ここまでやってきた。一勝で満足できるものか。

　とはいえ、目の前の相手に打ち勝つこと。全国への切符にしろ、優勝の栄誉にしろ、勝たないことには何も始まらないのだ。

　故に、あと一勝。まずは目の前の相手に勝つことから始めよう。

　「みんなと戦えてよかった。」と、「特田ハウス」。一勝一勝を積み重ねて戦ってきた両者が、いま激突する。

C卓 temo vs. Rikky

Game1

先攻：Rikky 　奇しくも、C卓は本大会における最大勢力同士がぶつかり合うミラーマッチとなった。

　すなわち、【闇自然アビス】ミラーである。

　2ターン目のマナ加速から3ターン目に《フットレス＝トレース / 「力が欲しいか？」》の呪文側か《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》でゲームのテンポを握り、4ターン目にパワフルな5マナ域のアビスで圧倒的な軍勢を築き上げる、ボードコントロールとハンデス戦略が魅力のデッキだ。

　特に≪「力が欲しいか？」≫のメクレイドから《邪幽 ジャガイスト》が登場した際の爆発的展開は圧巻。最速で3ターン目にはゲームを覆せないほどの盤面が出来上がってしまうため、実際のゲーム決着よりも「速い」デッキとして認識されている。

　その性質上、2ターン目には余程のことがない限りマナブーストができるように構築されている【闇自然アビス】だが……Rikkyの2ターン目はマナチャージ、エンド。

　後手のビハインドを背負うtemoからすればともすると僥倖だが……Rikkyの顔は明るく、temoは重々しい。

　ターンをもらったtemoは《ア:エヌ:マクア》をマナに置き、《ドミー=ゾー / 「倒したいか？」》の呪文側でマナを加速するセオリー通りの展開。

　返すターン、Rikkyは《邪幽 ジャガイスト》をマナに置くと、自然マナを1枚だけタップする。

Rikky「《フェアリー・ギフト》で」

　目の前に出された殿堂カードに、temoは固いながらもどこか納得したような顔で頷きを返す。

　コストが3軽減され、残る2マナで召喚されたのはもちろん持っていた2体目の《邪幽 ジャガイスト》。

　2枚の手札を代償としたアビス・メクレイド5から飛び出すのは、文句なしの大当たり、《ア:エヌ:マクア》。

　《邪幽 ジャガイスト》の能力で墓地から《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》が蘇り、次のターンにプレイされるはずだったtemoの《フットレス＝トレース / 「力が欲しいか？」》を捨てさせた。

　《ア:エヌ:マクア》の登場時能力でマナブーストしながら後続の《フットレス＝トレース / 「力が欲しいか？」》を抱え、万全の体勢でtemoへとターンを渡したRikky。

　《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》にプランを乱されたtemoには、マナをチャージしてターンを返すことしかできない。

　Rikkyはターン最初のドローを一瞥するやマナへ叩き込み、回収しておいた«力が欲しいか？」≫で≪ドミー＝ゾー≫をメクレイド。登場時能力で山札の上から5枚を墓地に落とし、さらに2体目の《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》がtemoの《ア:エヌ:マクア》すら奪い去る。

　《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で1点入れつつ、捨てさせた《ア:エヌ:マクア》の能力をコピー。2ブーストしてマナの《アビスベル＝覇＝ロード》を回収すると、《ア:エヌ:マクア》を攻撃させて革命チェンジ。

　トリガーもG・ストライクもないことを確認するや、ここを勝負どころと見定めたRikky。

　《邪幽 ジャガイスト》のW・ブレイクにもリアクションはなく、《邪幽 ジャガイスト》の能力で召喚酔いしない《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》がダイレクトアタックを決めた。

temo 0-1 Rikky

　C卓の決着に少し先んじてA卓でも「みんなと戦えてよかった。」の極限バンバン辿異が1勝を納め、「みんなと戦えてよかった。」のチームとしての勝利が一気に近付いた。

Game2

先攻：temo 　Rikkyの「ブン回り」が見られた1戦目とは異なり、2戦目はお互いに2マナブーストから入る順当な立ち上がりとなった。

　1戦目を落とし、先攻となったtemoの3ターン目。

　まずはご挨拶とばかりに«力が欲しいか？」≫をプレイ。しかしメクレイドの結果は振るわず、選択肢は《ドミー=ゾー / 「倒したいか？」》ぐらいしかない。 　迷った末、temoは《ドミー=ゾー / 「倒したいか？」》をクリーチャーとしてプレイ。墓地リソースを増やす順当な選択肢……だったが、【闇自然アビス】ミラーにおいては痛恨の一手となった。

　返すRikky、4マナ目を用意すると«力が欲しいか？」≫を唱え、デッキトップ3枚の中から2枚目の«力が欲しいか？」≫にアクセス。再抽選の末に、《邪幽 ジャガイスト》を引き当て、登場時能力で手札から捨てられたのは《ア:エヌ:マクア》！

　万全のプレイに万全のめくり、苦悶の表情を浮かべるしかないtemo。

　このターン3度目のアビス・メクレイド5、デッキトップから《謀遠 テレスコ=テレス》が駆けつけ、今しがた捨てたばかりの《ア:エヌ:マクア》が蘇り、登場時能力でマナの《アビスベル＝覇＝ロード》を回収。

　こうなってしまえば、≪ドミー＝ゾー≫は格好の的でしかない。《ア:エヌ:マクア》が
マッハファイターで攻撃すると同時、《アビスベル＝覇＝ロード》へと革命チェンジ。

　ターン終了時に《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》をマナから踏み倒し、《謀遠 テレスコ=テレス》と合わせてtemoに残された2枚の手札を全て刈り取った。

　ため息とともにターンをRikkyへと返すtemo。

　それと同時にRikkyの眼下に並んだ深淵の軍勢が召喚酔いから解き放たれ、temoへと襲いかかった。

temo 0-2 Rikky

Winner:Rikky

　A卓で極限バンバン辿異が青柳。相手に2勝目を掴み取っていたため、「みんなと戦えてよかった。」はこれにて2勝。中央卓の決着を待たずして決勝進出を決めた。




Rikky「あの≪ドミー＝ゾー≫は呪文の方が良かったですよね」

temo「いや〜、そうですよね……ミスっちゃったなって」

　全体を通してRikkyの勢いに呑まれた形となったtemoだったが、少なくとも2ゲーム目には明確な分水嶺があった。

　3ターン目のメクレイド、あそこで≪ドミー＝ゾー≫を≪「倒したいか？」≫としてプレイしていれば、違う可能性があったかもしれない。悔しさを隠し切れないtemoに、Rikkyが語りかける。

Rikky「全国で会いましょう」

　このラウンド、この勝負は決着したが、まだ「あと一勝」は残されている。

　それは決勝戦に歩みを進めた「みんなと戦えてよかった。」だけでなく、これから3位決定戦に挑む、「特田ハウス」にとっても。

　あと一勝。

　今日の彼らのデュエル・マスターズは、もう少しだけ続く。

Winner:みんなと戦えてよかった。