全国大会2019 Round 1:YOSHIKI.N(青森県) vs. ZweiLance(東京都)
ライター:伊藤 敦 (まつがん)
撮影者:後長 京介
1回戦の対戦表が発表となり、DMPランキング2019全国暫定1位の◆ドラ焼きと、中部随一の強豪であり東海エリア予選で権利を獲得したユウキング/わいきんがいきなりビデオフィーチャー卓に呼ばれる。強者との戦いに無邪気に喜ぶユウキング/わいきんの声が会場内に響き渡り、緊張で張りつめたプレイヤーたちの空気をほんの少し和ませた。
席の移動が終わると、隣の対戦卓では2017日本王者の「魔王」dottoとGP8thDay1準優勝のLが静かに向かい合っている。会場内、どこを見ても強者しかいない。否、この大会に出られるというだけで、誰もが強者なのだ。
2020年3月という当初の開催予定から2年。新型コロナウイルス感染症の影響で延期に延期を重ねたこの大会も、今日ようやく開催できる運びとなった。
最初の3回戦は、アドバンス・フォーマットで開催される。オリジナルとアドバンスという区分けも、この2年の間にできたものだ。
まずは対戦前に、互いの超次元カードを確認する。とはいえほとんど形式上のもので、使用する予定のあるデッキは最強のテンプレートを用いるし、そうでないデッキはテンプレートを真似るので、真面目に確認する意味もあまりなく、あくまで儀礼的なものだろう。
ZweiLance「シャッフルのやり方について希望とかありますか?」
YOSHIKI.N「あ、ないです」
ZweiLance「じゃあ(山を)分ける感じで大丈夫ですか?」
YOSHIKI.N「はい」
2年の間に、変わったものがある。
対戦相手のデッキを直接シャッフルはしなくなった。感染対策で、対戦相手との接触は極力避けるのが現代の作法だ(無論相手のシャッフルが不十分であるとみなせばジャッジにシャッフルをお願いすることもできる)。
2年の間に、変わったものがある。
二人の間にはアクリル板がある。距離も遠いのでブレイクするシールドを直接指し示すことはなくなり、「デッキ側から〇枚目」などというように指定するようになった。さらに参加者たちは皆マスクをし、感染予防を徹底している。
2年の間に、変わったものがある。
GP7thでは3位に入賞し、今回はDMPランキング上位で権利を獲得した言わずと知れた強豪。拠点を以前の宮城から東京に移したZweiLanceは、自身のチャンネルを盛り立てながらデュエル・マスターズ公式YouTubeチャンネルであるデュエチューブにも定期的にゲスト出演するYouTuberとして大成した。それだけでなく、トレーニングで鍛え上げた肉体はもはや別人のごとくたくましい。
もちろん2年の間に、変わらないものもある。東北のエリア代表決定戦を突破したYOSHIKI.Nは、青森で変わらず元気に餃子バーを経営しているようだ。
そして2年の間に、変わらないものがある。
日本一への思い。2年越しの忘れ物。そうだ。これを置いたままでは、どこへも行けない。
誰しもが憧れた頂点を、狂おしいほど焦がれた勝利を、がむしゃらに追い求めた情熱の日々。その日々に、決着をつけるために。
YOSHIKI.NとZweiLance。高まりきった熱気が、もはや開戦を待ちきれないかのように二人の間で揺らめいた。
そして。ついに。
デュエル・マスターズ全国大会2019、日本一決定戦。その初戦が、いよいよ幕を開けた。
Game
ZweiLance「少し考えます」ジャンケンで先攻となったZweiLance。その注目の初動は、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》をチャージしてターンエンドというもの。もちろん、これだけではデッキはわからない。
それに対し、YOSHIKI.Nの動きは《ブルース・ガー》チャージからの《ブルース・ガー》召喚。
誰がどう見ても、100人中100人がそう答えるであろうデッキ……すなわち、火単ブランド。最強との呼び声も高い、今回のメタゲームのど真ん中だ。2年前、《予言者クルト》入りのメタリカミッツァイルで予選を突破したYOSHIKI.Nらしい、殴り気の多いデッキ選択と言える。
一方、2ターン目のドローを終えたZweiLanceは少考ののち、《蒼き団長 ドギラゴン剣》を埋める。切り返しのためのカードは無数にある。いま必要なのはとにかく、1%でも生存確率を高めることだ。
YOSHIKI.N「考えます」
YOSHIKI.Nもマナチャージの前にプランを考える。必要なものは何か。不要なものは何か。そしてマナチャージののちに《一番隊 チュチュリス》を召喚し、悩む間もなく《ブルース・ガー》で1枚ブレイク。S・トリガーはない。
3ターン目を迎えたZweiLanceのアクションは、《》チャージからの《メンデルスゾーン》。《最終龍覇 グレンモルト》2枚がマナゾーンに落ち、2ブーストを実現する。そしてこの段階で、ZweiLanceのデッキがドラグナー系統であることが判明。だがいずれにせよ、ここまでは予定調和だ。
そしてここからが、互いにとって勝負のターンとなる。
YOSHIKI.Nの後手3ターン目。4枚の楯で守りを固めるZweiLance。その名とは逆に、槍を持つのはYOSHIKI.Nだ。はたして何打点あれば貫通するのか。ここでYOSHIKI.Nは慎重にリーサルを検討する。
そして、意を決して動き出す。《カンゴク入道》チャージ、《一番隊 チュチュリス》召喚、《GIRIGIRI・チクタック》召喚。GR召喚でめくれたのは《ポッポーポップコー》。残る手札1枚は……《“罰怒“ブランド》!
まずは《ポッポーポップコー》のブレイク。S・トリガーはない。
残るシールドは3枚。続けて、YOSHIKI.Nは《GIRIGIRI・チクタック》で攻撃する。
もし仮にここでS・トリガーを踏まなければ、2枚になったシールドを《“罰怒“ブランド》でW・ブレイクできることになる。そうなれば、ZweiLance側の要求値は跳ね上がる。
ブレイクされた3枚目のシールドを確認するZweiLance。
その指が、やや震えながら……そのカードを、表向きにした。
《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》!
そう、ブレイクされたのは3枚目のシールドだった。すなわち「革命2」が発動している!
ZweiLance「回収を考えます。ちょっとここ時間もらいますね」
そのままZweiLanceは見た5枚の中から《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を公開して手札に加えると、《“罰怒“ブランド》を手札に戻す。この時点で、ZweiLanceに先手4ターン目が回ってくることが確定している。
それでも、YOSHIKI.Nは前のターンからバトルゾーンにいた《一番隊 チュチュリス》で最後の1点を刻む。火単ブランドである以上、他にできることはない。最速で、できるだけ多くのシールドを割り切るしかない。
だが。
今度こそ確信を持った力強さでZweiLanceの指先がめくったのは、《ドラゴンズ・サイン》!
アドバンス・フォーマットを象徴する最強のドラグナー、《最終龍覇 グレンモルト》が降臨する。
ZweiLance「アタッカーはもういないですよね?」
確認ののち、《始原塊 ジュダイナ》が装備される。すべてをやりきったYOSHIKI.NはB・A・D効果で《ブルース・ガー》を破壊し、長かった後手3ターン目が終了する。
そして、ZweiLanceにターンが返ってくる。ターン開始時に装備した《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》のバトル効果で《一番隊 チュチュリス》を処理すると、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を召喚して《インフェル星樹》を回収。手札に戻す効果はもはや使うまでもなく、無防備に横になったYOSHIKI.NのクリーチャーをZweiLanceのクリーチャーたちが蹂躙する。
さらにあまつさえ、ダブル「龍解」。≪勝利の覇闘 ガイラオウ≫と≪古代王 ザウルピオ≫が、YOSHIKI.Nの逆転の可能性を完全に封殺する。
YOSHIKI.N「終了です」
一応ターンが返ってきただけで結末が見えている様子のYOSHIKI.Nは、ドローを確認するともはや下駄を預けるように力なくターン終了を宣言する。
やがて《最終龍覇 グレンモルト》に「これから殴ります」宣言を意味する《銀河大剣 ガイハート》を装備させ、さらに《ドラゴンズ・サイン》で《熱核連結 ガイアトム・シックス》を着地させたZweiLanceは、速やかに成すべきことを済ませた。
すなわち、≪勝利の覇闘 ガイラオウ≫でW・ブレイク、続けて《最終龍覇 グレンモルト》でT・ブレイク。そして「龍解」した≪熱血星龍 ガイギンガ≫によるダイレクトアタックが、試合に終止符を打ったのだった。
Winner:ZweiLance
ZweiLance「このマッチアップだけは能動的に動ける感じにはならないので、結構ヒリつきましたね。ひとまずホッとしてます」
終わってみれば圧勝だったとはいえ、おそらく見た目以上に薄氷の思いで戦いを終えたであろうZweiLanceは、対戦後のインタビューに対してそう答えた。楯に委ねるしかないマッチアップ。十分な枚数のS・トリガーを採用しているとはいえ、肝が冷えることに変わりはない。
ZweiLance「今回は闇文明をタッチじゃなくてゴリゴリに採用した全く新しい形の5Cドラグナーを作ってきました。環境的に《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》が強いと思うので……JO退化など相手にもそうですし。で、《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》を組み込むために《龍風混成 ザーディクリカ》も抜いて《悪魔龍 ダークマスターズ》なども採用して……結構すごいことになった感じです」
ゲーム終盤に登場した《熱核連結 ガイアトム・シックス》に象徴されるように、ZweiLanceのアドバンスのデッキはドラグナー系統と一口に言っても既存の基盤にとらわれない独創的な形となっている。その仕上がり具合を見ても、この2年間の経験や知見のすべてをぶつけようとする気迫が伝わってくるかのようだ。
最後に、まずは好調なスタートを切ったZweiLanceに対し、今大会について自信のほどはいかがかと尋ねてみた。
ZweiLance「それはもう、当然。一番強いと思ってますよ」
2年の間に、変わらないものがある。
ZweiLanceという男の、プレイヤーとしての技量を超えた土壇場での勝負強さ。そして大舞台慣れした風格……いわば精神の強さ。
この二本槍だけは変わらず、誰にも砕くことはできないだろう。
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