超CSⅥ福岡 決勝Round 1:鬼龍 vs. 紅蓮
ライター:山口 海斗(ジャイロ)
撮影者:瀬尾 亜沙子
紅蓮「一睡もせずにこの対面を練習してきた」
鬼龍「マージ?怖!」
紅蓮「この対面、「明確な負け進行」があるからそこだけ避ければ…」
対戦開始前に軽口を飛ばす2人。お互いに関西圏で上位を争っている強豪だけあって雰囲気自体は和やかだ。しかし対戦は軽口どころか濃厚こってりアブラマシマシヤサイ抜きなパンチである。【水闇魔導具】を使う鬼龍vs【水闇COMPLEX】を使う紅蓮。本記事では趣向を変え、対戦の進行をターン毎に章分けし、最後に両プレイヤーの振り返りを記すことで「両プレイヤーの思考力の高さ≒プレイヤーとしての強さ」をお伝えしたいと思う。ぜひ、最後まで読んでいただけると嬉しい。
Game
先攻:紅蓮 2ターン目《DARK MATERIAL COMPLEX》を2ターン目に着地させた紅蓮に対し、鬼龍は《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》の下面で山札を掘り進める。
3ターン目
紅蓮は《終止の時計 ザ・ミュート》の2枚ドロー1枚捨てで手札と墓地を整え、鬼龍も《堕呪 バレッドゥ》で同様の動き。お互いの下準備は整った。
4ターン目
紅蓮は《奇天烈 シャッフ》で「2」の呪文を止めるも、鬼龍の手札には《堕∞魔 ヴォゲンム》が既に準備済み。《堕∞魔 ヴォゲンム》を召喚して、ターン終了時の墓地肥やしに合わせて《「無月」の頂 $スザーク$》と《堕魔 ジグス★ガルビ》、加えて《ガル・ラガンザーク》まで揃えることに成功。
5ターン目
厳しい展開の紅蓮、《アーテル・ゴルギーニ》を召喚すると「自分の山札の上から4枚を墓地に置く。」能力を2回使い、墓地にカードを8枚用意してターン終了。鬼龍の《「無月」の頂 $スザーク$》がいる状態での墓地肥やし、当然鬼龍は山札ギリギリまでドローを進めると、《神の試練》で追加ターンを獲得する。
一見【水闇魔導具】の理想的な動きであり優勢に見えるが、鬼龍の表情は険しい。
鬼龍「詰めるしか無い…よな…」
意を決して《「無月」の頂 $スザーク$》で紅蓮のシールドをトリプルブレイク。
紅蓮「まだ捲れるよ!いけるよ!」
自身に発破をかけてシールドを捲る。紅蓮が表向きにしたシールドには、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》と《忍蛇の聖沌 c0br4》が!
≪ド浮きの動悸≫で鬼龍の《堕魔 ジグス★ガルビ》を手札に返し、《忍蛇の聖沌 c0br4》から《アーテル・ゴルギーニ》を、《アーテル・ゴルギーニ》から《奇天烈 シャッフ》を2体蘇生すると、宣言は「2」と「4」。《ガル・ラガンザーク》も紅蓮に攻撃するが、そこは今出てきた《忍蛇の聖沌 c0br4》でブロック。
《DARK MATERIAL COMPLEX》の下に7枚目のカードが入って、鬼龍は追加ターンに入る。 鬼龍の追加5ターン目
2体の《奇天烈 シャッフ》で折角の追加ターンも能動的に動けない鬼龍。《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》の下面で次のターンの安全を確保し、《「無月」の頂 $スザーク$》でバトルゾーンの《奇天烈 シャッフ》を奪いつつシールドを2枚ブレイク。ここでのトリガーは無い。紅蓮のシールドを全て奪った鬼龍ではあるが、《ガル・ラガンザーク》のダイレクトアタックは《アーテル・ゴルギーニ》でブロック、《奇天烈 シャッフ》の破壊に置き換えられて紅蓮にターンを渡してしまう。
6ターン目
紅蓮のターン開始時に《DARK MATERIAL COMPLEX》に8枚目のカードが入ってアンタップ。《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》の下面で「10」を宣言して鬼龍の《「無月」の頂 $スザーク$》を止めると、《異端流し オニカマス》を召喚しそれを起点に《闇参謀グラン・ギニョール》をムゲンクライム。《ガル・ラガンザーク》を手札に返す。《DARK MATERIAL COMPLEX》が十全に機能できる状態まで持ち込むと、鬼龍に攻撃。効果で《アーテル・ゴルギーニ》を蘇生し、先ほど同様《奇天烈 シャッフ》2体の蘇生で「2」と「4」を宣言。直前の≪「すべて見えているぞ!」≫によってこのターンの決着こそできないが、紅蓮には2体の《アーテル・ゴルギーニ》と《奇天烈 シャッフ》に《異端流し オニカマス》、《闇参謀グラン・ギニョール》、《終止の時計 ザ・ミュート》そして《DARK MATERIAL COMPLEX》がいる。
紅蓮「返せるもんなら返してください!」
鬼龍は《堕魔 ドゥポイズ》で《「無月」の頂 $スザーク$》を解体し、≪凶鬼98号 ガシャゴン≫の召喚に合わせて再度《ガル・ラガンザーク》をバトルゾーンに送り込む。併せて《飛翔龍 5000VT》も召喚し、紅蓮の小型クリーチャーを攫う。しかし生き残った紅蓮のクリーチャー3体に対して鬼龍が揃えたブロッカーは2体。
7ターン目
紅蓮は《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》の下面で≪凶鬼98号 ガシャゴン≫を破壊すると、《アーテル・ゴルギーニ》で鬼龍にダイレクトアタックを決めた。
Winner:紅蓮
と、普段ならここで両者の感想戦を軽く交えつつ筆者のポエムで締めるのだが、本記事のミソはむしろここから。TOPプレイヤー同士の怒涛の感想戦をお伝えしたい。前述の通り、本カバレージはターン毎に記しており、これ以降の会話もどのターンの話なのかを添えて記している。両名の会話がどのタイミングの話なのか振り返りつつ読み進めていただけると嬉しい。
--「紅蓮さんが冒頭に仰られていた「明確な負け進行」というのは一体?」
紅蓮「それこそ今回のようなゲーム展開は「明確な負け進行」に限りなく近いです。」
鬼龍「4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》→《「無月」の頂 $スザーク$》まで決まって《ガル・ラガンザーク》まで立てられたので、かなり【水闇魔導具】有利の進行だったと思います。」
--「…?となると今回紅蓮さんが勝てた要因はどこになるのでしょうか?」
鬼龍「紅蓮君なら見えていたでしょ。」
紅蓮「もちろん。殴るしか無かったでしょ。」
--「……??5ターン目に鬼龍さんが《「無月」の頂 $スザーク$》で攻撃したタイミングでしょうか?普段の【水闇魔導具】でしたらループに持ち込みそうなものですが…。」
紅蓮「4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》までで≪堕呪 ブラッドゥ≫が4枚見えていたんです。加えて《堕呪 エアヴォ》も3枚見えていたので、ループの線は薄いかなって。だから《アーテル・ゴルギーニ》で強気の墓地肥やしができたんです。」
鬼龍「《神の試練》まではアクセスできたんですけど、山札回復手段の≪堕呪 ブラッドゥ≫が無いと無理にでも攻撃しないといけなかったのがしんどかったですね。」
--「「明確な負け進行」を挽回できたのは≪堕呪 ブラッドゥ≫やそれを回収できる《堕呪 エアヴォ》が使えなかったから。さらに、それを対戦相手が理解していたからと。勉強になります。」
(4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》による墓地肥やしについて)
紅蓮「加えて、《秩序の意志》が1枚墓地に落ちていたのも嬉しい要素でしたね。」
鬼龍「《DARK MATERIAL COMPLEX》に封印当てるのが強いんですけど、《アーテル・ゴルギーニ》の墓地肥やしで《闇参謀グラン・ギニョール》まで辿り着かれちゃったので、なおのこと走らざるを得ない状況に思います。」
紅蓮「本当は《神の試練》が盾落ちしていたら最高だったんですけどそうはいかず。とはいえ、シールドに《忍蛇の聖沌 c0br4》がいたらゲームは作れる状況だったので悪くは無い勝負でした。」
鬼龍「《忍蛇の聖沌 c0br4》を踏んじゃってからテンパりましたね。」 --「紅蓮さんの【水闇COMPLEX】といえば《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》の採用が記憶に新しいですが(本大会の3日前に全勝優勝をされている)、今回は不採用なんですね。」
紅蓮「【フィオナアカシック】へのメタとして採用していましたが、自身の動きを阻害することがあって不採用にしました。この試合でも(5ターン目に)あった動きで、《忍蛇の聖沌 c0br4》から《アーテル・ゴルギーニ》、《アーテル・ゴルギーニ》から2体蘇生だと…」
--「2体目が蘇生できない!それで採用を見送られたのですね。となると、【フィオナアカシック】は諦めている形でしょうか?」
紅蓮「いえ、そこは《奇天烈 シャッフ》を採用することで、呪文を止めてターンをもぎ取ることができます。」
その後紅蓮は次回戦へ向かうのだが、鬼龍が引き続き先ほどの対戦を振り返ってくれた。
鬼龍「僕の知る限り【水闇COMPLEX】には山札を回復させる手段は無いので、紅蓮君の山札切れを待つ戦法(以下、LOプラン)でも良かったかもしれないです。」
--「山札切れ…?どうやって行うのでしょう?」
鬼龍「(5ターン目の)《「無月」の頂 $スザーク$》で攻撃した時なんですけど、あの時点で紅蓮君の山札が…14?いや、9枚か。手札に《堕呪 ボックドゥ》を3枚抱えていたので、《DARK MATERIAL COMPLEX》の動きを止め続けることができましたね。」 --「あの時点で《終止の時計 ザ・ミュート》や《アーテル・ゴルギーニ》などが並んでいたと思うのですが、そこは?」
鬼龍「それこそ《「無月」の頂 $スザーク$》の出番ですね。クリーチャーに攻撃したり《「無月」の頂 $スザーク$》を破壊して再度召喚したり。《DARK MATERIAL COMPLEX》以外のクリーチャーなら除去できます。紅蓮君の手札も狩り切れたはずなのでトップ勝負を強いれたはず。」
--「あ!5ターン目の時点で紅蓮さんの《奇天烈 シャッフ》は3枚見えていたのか。でも、《アーテル・ゴルギーニ》や《忍蛇の聖沌 c0br4》で墓地から使われませんか?」
鬼龍「そこは《ガル・ラガンザーク》でケアできていたので大丈夫です。トップから《奇天烈 シャッフ》を引かれたら、1回は《堕呪 ボックドゥ》の「2」を宣言される。そのタイミングで≪「すべて見えているぞ!」≫を当ててやると。いやー、プレイング甘かったですね。」
--「あのタイミングで9ターン粘ってのLOプランなんて普通出てこないですって。たくさんありがとうございました!」
対戦終了後にお話をさせていただいたり、こちらの初歩的な質問にも丁寧に答えていただいたりと普段からプレイヤーの方々には頭が上がらないのだが、今回は特にそうである。改めて鬼流、紅蓮の両名にこの場で感謝を伝えたい。
対戦終了から2時間後…
鬼龍「あの後よくよく考えまして。LOプランについてアリって言いましたけど《異端流し オニカマス》居ましたよね?」 --「6ターン目に召喚されていますね。」
鬼龍「《堕呪 ボックドゥ》の耐久プランはどこかで《DARK MATERIAL COMPLEX》が動けるターンを作っちゃうので、選べない《異端流し オニカマス》がいると攻撃を受けきれない可能性があるなって。」
--「《ガル・ラガンザーク》でブロックできる状況でも《異端流し オニカマス》は致命傷になるのですか?」
鬼龍「どのみち《異端流し オニカマス》を破壊しちゃうと動ける《DARK MATERIAL COMPLEX》がまた動き出しちゃうので。《異端流し オニカマス》が生き残って攻撃に参加されるのがダメなんです。だったらLOプランじゃなくて良かったのかもと。手元にカードがないと結論は付けられないですが。」
--「うーん、確かに…。改めて、ありがとうございました!」
まさか対戦終了2時間後に追加の思考をされているとは。トッププレイヤーの凄さにただただ感服である。
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