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超CSⅥ福岡 準々決勝:卍フライ卍 vs. やっすー

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子


 どれだけ練習を積み重ねても、「当たり運」だけは鍛えられないものだ。

 2000名弱の参加者から予選8回戦+決勝トーナメント4回戦を戦い抜き、トップ8に勝ち残った8人。彼らが使用するデッキの中でも、最も異彩を放つデッキ……「オボロティガウォック」

 メタゲームを読みきり、シールドへのあらゆる攻めをカウンターで封殺する環境外のローグデッキで見事ここまで勝ち上がった卍フライ卍だったが、しかしここにきて正念場となる最大の試練が訪れることとなった。

 地元福岡勢である対戦相手のやっすーが使用するデッキは、「フィオナアカシック」。シールドを一切攻めることなく勝つことができる、環境における4ターンループデッキの代表格なのだ。

 「環境内のすべてに勝てる」というような都合の良いデッキは滅多に存在しない。である以上、大会に参加するプレイヤーは対面しうるデッキに関して何らかの割り切りをしなければならない。

 それでも予選ラウンドまでなら、その割り切った相手に当たっても構わない。残りをすべて勝てばいいからだ。

 だが、不運による1敗すら許されない決勝ラウンドだけは別だ。

 トップ8に残った残りの6人のうち、2人は「水闇COMPLEX」、2人は「水火マジック」を使用しており、どちらもここまでに卍フライ卍が倒したことのあるアーキタイプである。ゆえに、ここさえ切り抜ければ優勝の確率はぐんと上がると言っていいだろう。

 そう……この絶望的な相性差のマッチアップさえ、乗り越えることができるならば。  現代デュエマで「オボロティガウォック」が優勝となれば、伝説の大会として語り継がれることだけは間違いない。

 伝説を作る権利をかけて。卍フライ卍とやっすーの準々決勝が、いま始まった。

Game 1

 予選順位の差で先攻となったやっすーが《デビル・ドレーン》をマナチャージすると、卍フライ卍がしばらく固まったのち、一言だけポツリと漏らす。 卍フライ卍マジかー……

 《デビル・ドレーン》が入っているということは、楯落ちをケアする必要があるデッキである。「フィオナアカシック」をはじめとするループデッキであることは、ほぼ間違いない。殴ってくるデッキに対するカウンターをコンセプトにする「オボロティガウォック」を駆る卍フライ卍にとっては、まして後攻スタートでは、そのマナチャージは死刑宣告にも等しい。

 そしてそのまま《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《一王二命三眼槍》と開幕2ターンをマナチャージのみで返すしかない卍フライ卍に対し、やっすーは続けて《森夢龍 フィオナ・フォレスト》《完全水中要塞 アカシック3》というマナチャージから先攻3ターン目に《「根性」の頂 メチャデ塊ゾウ / 「大親分、ここにあり!」》でマナを伸ばしつつ、見たもう1枚を山札の上に置いてエンドと、先攻5キルはほぼ確実で4キルまでありうるという順調そのものの動きを見せる。  一方、後攻3ターン目を迎えた卍フライ卍は《裏斬隠 カクシ・レシピ》チャージから送り出した《天災 デドダム》《とこしえの超人》を墓地に落としながらマナを伸ばしたのがファーストアクションとなる。いずれにせよ4キルは割り切りの構えだが、長丁場の疲れが出たか、《とこしえの超人》《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》には機能しないものの《森夢龍 フィオナ・フォレスト》からの《完全水中要塞 アカシック3》を止められる数少ない対抗札であることを失念してしまっていたのかもしれない。

 はたして5マナ目となる《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》をチャージしたやっすーのアクションは……2マナタップ、《巨大設計図》。卍フライ卍にとっては一安心だが、《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》を回収され、そのまま《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》を唱えられると、次のターンの素出し《森夢龍 フィオナ・フォレスト》が予告されたも同然で、いよいよ後がない。

 だが返す卍フライ卍は《光牙忍ハヤブサマル》チャージからの《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》《月光電人オボロカゲロウ》を手札に加えてターンエンドを宣言。もはやできることといえば、ドロー札をキープするためのやっすーの7マナ目の多色濁りに期待することくらいだ。  しかしやっすーは無情にも《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》を縦置きすると、満を持して《森夢龍 フィオナ・フォレスト》を召喚しマナゾーンから《完全水中要塞 アカシック3》を設置!これにより、以後のやっすーのすべての呪文が無料となる。

 無料の《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》を回収して無料で唱え、山札から《魔刻の斬将オルゼキア / 訪れる魔の時刻》をサーチしてマナに置き、無料の《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》で即座に回収して無料で唱える。さらにもう一度同じ手順で2枚目の《魔刻の斬将オルゼキア / 訪れる魔の時刻》を手札に加えると、あっという間にツインパクト呪文を無限に唱えられる体制となる。

 そのまま無料の《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》でマナにあった《デビル・ドレーン》を回収して無料で唱え、勝ち手段の《ラルド・ワースピーダ/H.D.2.》まで無料で唱えたところで、卍フライ卍が無力にも投了を宣言したのだった。

卍フライ卍 0-1 やっすー

卍フライ卍「このタイミングで来たか……はぁー、一番当たりたくなかった……!!」

 ノーガードで先攻5ターン目まで渡してしまったことが敗因とはいえ、基本的には受けデッキである「オボロティガウォック」が4ターン目までにループデッキに対して干渉できる手段は、極めて限られている。

 それでも、先攻なら。卍フライ卍はわずかな可能性に望みを託し、2ゲーム目に臨む。

Game 2



 先攻で《一王二命三眼槍》《流星のガイアッシュ・カイザー》とチャージのみの卍フライ卍に対し、《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》《巨大設計図》とチャージしたやっすーは《巨大設計図》《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》と3枚回収。この時点で足りないパーツは《森夢龍 フィオナ・フォレスト》のみと、早くも4キル気配を見せる。

 一方卍フライ卍は《絶海の虎将 ティガウォック》チャージからまたも《天災 デドダム》がファーストアクションとなるが、返すターンにやっすーが《森夢龍 フィオナ・フォレスト》をチャージして《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》《完全水中要塞 アカシック3》をサーチすると、公開情報での確定4ターン目始動を宣言されたも同然な卍フライ卍は苦笑することしかできない。

 それでも、卍フライ卍は《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》チャージから《天災 デドダム》《月光電人オボロカゲロウ》と動いて手札を充実させ、次の自分のターンが訪れることを祈りながらターンを終える。  はたして、やっすーは予告通り《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》《森夢龍 フィオナ・フォレスト》から《完全水中要塞 アカシック3》を設置。すわゲームエンドか……と、思われた。

 《完全水中要塞 アカシック3》を設置し終えたやっすーの手が止まっていた。否、考えているのだ。ループが決まっているなら悩まないはずだ。つまり、まだループに入れるかどうかは確定していないのだ。

 少考ののち、《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》を出し、1ドロー。卍フライ卍は固唾をのんで見守っている。やっすーの手札を見ると、呪文は《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》のみ。止まりうる。

 確率を考えれば、《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》で山札内のハズレを少しでも減らすしかない。やっすーは不要な《完全水中要塞 アカシック3》をマナに置くと、卍フライ卍に自らの山札を差し出した。このシャッフルにすべてがかかっている。

 入念なシャッフルののち、2人の命運を左右する《レレディ・バ・グーバ / ツインパクト・マップ》が唱えられる。

 1枚目……《デビル・ドレーン》。違う。2枚目……《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》。マナに《巨大設計図》はあるが、それでもまだ確定ではない。

 3枚目。《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》  無料の5ドロー。さすがに決まったか……と思ったが、やっすーの表情は優れない。まだ確定ではない。思案ののち、《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》でハズレとなる《飛翔龍 5000VT》をマナに置く。再び入念にシャッフルする卍フライ卍。

 そして意を決したやっすーは《ラルド・ワースピーダ/H.D.2.》を自分に唱える。マナに落ちたのは《超七極 Gio / 巨大設計図》《黒豆だんしゃく / 白米男しゃく》だった。その後、《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》から《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》を出す。現状ではこれがこのターンにアクセスできる最後のカードとなる。

 その、ドローは。  《魔刻の斬将オルゼキア / 訪れる魔の時刻》!!

 すべてのリソースを取り戻したやっすーに実現不可能なことは、もはや皆無だった。

やっすー「ループ証明入ります」

卍フライ卍「さっきと同じですよね……負けです!ありがとうございました!!」

卍フライ卍 0-2やっすー

卍フライ卍「ターン帰ってきたら《∞龍 ゲンムエンペラー》立てる予定だったんですけど……帰ってこなかったですね」

 1ターン目のマナチャージの時点で予想できていた結末とはいえ、卍フライ卍は悔しそうにそう述べた。

 どこか一つボタンを掛け違えていたら……優勝の二文字を背負っていたのは、あるいは自分だったかもしれない。それは都合の良い夢想だとはわかっている。それでも、こんな好機は二度とないと思えるほどに、卍フライ卍の『オボロティガウォック』は今回のメタゲームに完全に合致していた。

--「ずっと『オボロティガウォック』を使ってらっしゃるんでしょうか?」

卍フライ卍「そうですね。今日負けたのは『ブレスラチェイン』と『水魔導具』とこの試合だけなんで……『水火マジック』とかそういう系が強いと思って持ってきて、実際潰してきました。『水火マジック』、4回当たってますからね」

卍フライ卍「不利対面だけ踏まんように祈ってました……今の環境の大体の対面は、踏み倒しに《流星のガイアッシュ・カイザー》当てて《頂上縫合 ドギラディス勝3rd》から《禁呪と聖句の決断》《∞龍 ゲンムエンペラー》さえ投げとけば何とかなりますから」

 かくして卍フライ卍は、惜しくも伝説になり損ねた。だが、「伝説になり損ねた」という事実もまた、それだけで十分に立派な栄誉なのだ。

Winner: やっすー

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