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超CSⅥ :事前プレイヤー記事~終点の、2つ前で~

ライター:河野 真成(神結)

DMPランキングと全国大会

 DMPランキングが最初に導入されたのは、2017年度のことだった。
 
 当時は全国大会への出場権を獲得するには、地方ごとに開催されるエリア予選を突破するか、GPで上位入賞(当時は準優勝まで)するしかなかった。
 もちろんこれらを勝ち抜いたプレイヤーが優れていることに疑いはないが、一方でどんな強豪であろうとも毎年のエリア予選を安定して突破することなど不可能だった。
 
 しかしDMPランキングの導入によって、この事情は大きく変わる。
 ランキング上位となったプレイヤーには、全国大会への出場権を得ることになったのだ。一発勝負は、天運に依るところも大きい。だがランキングならば、安定して勝ち続けることで自ら掴み取ることが出来る。

 2017年度のDMPランキングでは、全国大会への出場権を得られるのは3名。だがこの制度は、導入初年度からすぐに結果を出す。  ランキングによって全国大会へと出場したdottoが、全国大会2017で見事優勝を飾ったのだ。彼が選択したデッキ・プレイともに文句の付け所がない、完璧な内容での優勝だった。
 
 強豪揃いの全国大会の中でも、ランキングで上がってきたプレイヤーは更に強かった。
 
 だから、誰もがdottoに憧れた。
 あの舞台に並び立ちたい。栄誉を手にしたい。己の最強を証明したい。そう思ったプレイヤーは、少なくない筈だ。
 
 憧憬と決意は、時に恐ろしいほど人を狂わす。
 
 そしてそれに呼応するように、この年以降DMPランキングでの全国出場枠が大きく拡大していった。
 2018年度は10位まで、2019年度以降は16位まで。
 その後感染症による中断期間を経たものの、2023年度はランキングが前期・後期に分かれたことで、出場するプレイヤーの数は2倍に増えた。
 特に全国大会2023ではエリア予選がないため、参加者の大半がランキングによって出場権を得たプレイヤーとなるだろう。
 
 その2023年DMPランキングも、いよいよ大詰めを迎える。
 憧れの舞台は徐々に輪郭を帯びていく、形となってプレイヤーの前に姿を見せるだろう。
 
 だがその前に。
 最後の大型大会として用意されたのが、超CSⅥだ。
 

2023年後期ランキング

 ランキングの現状について、抑えておきたい。 DMGP2023-2nd覇者 monokuro
 
 2023年10月1日より開始された後期ランキングだが、2024年1月10日現在、16位(なお、GP優勝によって全国大会への出場が確定しているmonokuroが6位にランクインしているため、17位までが出場権獲得になるだろうと見込まれる)はアーチー/はっちcsで、獲得ポイントは20180。
 
 この数値は、一体どれほどの意味を持っているのだろうか。
 
 過去のデータと比較すると、ジャッジ1.2倍ボーナスが施行された2018年のDMPランキングでは、年間のボーダーが約21000ptsほど。
 その翌年の2019年度はランキング争いが激化したが、それでも年間で28000ptsほどがボーダーラインであった。
 これは月換算をすると、約10ヶ月で28000ptsだから月3000pts程。
 しかしこのボーダーライン設定は現在では特に意味を持たず、月6000ptsほどを獲得しないといけなくなっている。ポイントのインフレが起こっているのが、よくわかるだろう。
 
 更に言えば2023年の前期と後期でもボーダーラインに思った以上の乖離がある。
 というのも、前期であれば月4500ptsでボーダーに到達出来たのだ。
 これについては、現在ランキングを"走っている"プレイヤーたちにも、誤算があったようだった。
 
リキセキタクジン「後期ランキングが始まる前は、月4000ptsくらいを指標にしていたんです。結果は月6000ptsでした」 あーくん「月間の目標を5000ptsで置いていたんですよね。4ヶ月で20000。自分は仕事をしながら毎日CSに出られる環境を作ったので、月間40回くらいCSに出られる概算で、実際この時点での目標には届いています」

(※プレイヤーの順位は1月10日更新のもの)
 
 後期のCS参加回数については、多いプレイヤーでは150回をゆうに超える。
 そもそもの話として、2023年10月1日から2024年1月10日までの合計日数が102日しかないことを考えると、毎日CS出るのも当然のこととして、平日でも1日2回以上という日が相当にある、ということがわかると思う。
 
 ランキングの激戦区となっている関東では現在、平日の昼間からもCSが行われ、そしてもちろん夕方からのCSも開催され、これを"ハシゴ"するプレイヤーも多い。
 単純に平日の"稼働率"を上げることが、ランキングを走ることのスタートと地点と言えるだろう。
 
 だたしこの事象自体は、前期と後期のポイント差を示すクリティカルな内容ではない。というのも、前期ランキングの時点では、既に上記とほぼ似たようなCS開催状況になっていたからだ。
 
 この点に関して、前期のランキングでの全国大会出場を決めたのすけは、「デッキの性質がもたらす環境の違いではないか」と指摘する。 のすけ「前期のランキングは、特に5月以降の話になりますけど【水闇ダンタルサガ】(※1)が使えたんです。このデッキだけでポイントを盛ることが出来ました。実際、Zwei(lance)さんなんかはダンタルサガでしかほぼ盛ってない筈です。だからダンタルを一定以上のレベルで回せたかどうか、という点がランキングのポイントに直結しました。後期はというと、2、3個くらいのデッキを使い分け続ける必要があったと思っています。中でも【水闇ヴォゲンム】(※2)を使えたかどうかは重要だったと思います」
※1:【水闇ダンタルサガ】は、《絶望神サガ》を使用したループコンボ兼コントロールデッキ。最速3ターンのループでの決着はもちろん、ループをチラつかせることで相手にメタカードのプレイを強要させ、その分減ったリソースを刈り取っていくという2つのプランが極めて強力。特に《ドアノッカ=ノアドッカ / 「…開けるか?」》の登場以降はメタクリーチャー除去、アグロ耐性を獲得し、隙のないデッキとして完成した。2023年8月に《絶望神サガ》が殿堂するまで、最強のデッキとして君臨。 ※2:【水闇ヴォゲンム】、または【水闇魔導具】と呼ばれるケースが多い。《堕∞魔 ヴォゲンム》、及び《「無月」の頂 $スザーク$》を使ったコントロールデッキで、DMGP2023-2nd優勝デッキでもある。4ターン目の《堕∞魔 ヴォゲンム》から《「無月」の頂 $スザーク$》の着地を狙い、ゲームを引き延ばして最後は《神の試練》などで勝ちを狙う。4ターン目まで強いアクションがないという弱点はあるため一定数の不利デッキがあるものの、一度《「無月」の頂 $スザーク$》の展開になれば勝ちというわかりやすさもあり、このゲーム展開に付き合ってくれる多くのデッキに対しては有利を取れる、というメリットがある。
 要するに前期は極端に言えば【水闇ダンタルサガ】が使えるだけで、条件を満たすことが出来た。それだけ、サガが強すぎたのだ。しかし後期はサガに並ぶほどの最強のデッキは中々なく、結果としてプレイヤーにはそのCS毎に有力なデッキをを使い分ける技術が求められたということだ。
 その中で【水闇ヴォゲンム】は安定した択としてあり続けた。その時一番強いデッキではないかもしれないが、常に上位のデッキであり、どんな環境であっても一定の勝率が担保出来た。

 ではこの違いは、ポイントにどう影響するのだろうか?
 
のすけ「【水闇ダンタルサガ】は最強かつ最適のデッキです。対して【水闇ヴォゲンム】は最適のデッキであるけども、最強ではないです。ヴォゲンムは比較的安定して勝ちやすく、予選は抜けやすいかもしれませんが、しかし本戦の何処かで不利対面に負けてしまうことも多かったと思います。特に関東ではそうだった筈です。だからコツコツとポイントは盛れても、一気にポイントを積み重ねるのは難しい。結果としてヴォゲンム"固め打ち"をしていた関東のプレイヤーは、ポイントを積みつつも、他の上位ランカーと比べた時に優勝回数自体には差が生じています」

 決して最強ではないけども、負けにくいデッキと言えるのが【水闇ヴォゲンム】の特色だ。逆を言えばヴォゲンムで優秀を獲り続けるのはかなり難しい。

 DMPランキングは、ご存じの方も多いと思うが優勝とそれ以外ではポイント獲得差に結構な開きがある。100人以下のCSであれば、ジャッジボーナス込みで優勝は1200ptsだが、ベスト8だと180ptsだ。
 
 つまり自分が安定してベスト8を獲得していたとしても、そのCS内では他の誰かが1200ptsを獲得している。色んな人が勝つことによって全体の平均は上がるものの、一方でポイントの独占が行われることはなく、結果として1位からボーダーまでのポイント差も少なくなる。  後期のランキングのもう1つの特徴として、1位からボーダーまでのポイント差が少ないことが挙げられる。期間が短いために差が開きにくいというのはあるにせよ、前期では1位であるミノミーは48000pts近い数字まで積み上げており、ボーダーとの差はなんと22000ほど。
 対して後期は、1位とボーダーの差は約5000pts程度だ。
 
 これは言うならば、前期のランキングで圧倒的なポイントを積み上げたミノミーのポイント分を、他の上位で山分けしているようなものと言えるだろうか。
 そうであればボーダーラインが大きく引き上げられたのも、1位との差が小さいのも、納得と言えるだろう。
 

それぞれのランキング

 全国大会が憧れの舞台としても、そこに辿り着くまでの過程は恐ろしく過酷だ。 オチャッピィ「社会人にランキングは向いてないですよ」

 現在ランキング2位のオチャッピィは、やや冗談交じりにそんなことを言った。
 ランキング上位は狙っていたか? と訊くと、「全然そんなことはない」と笑いながら答えてくれた。
 
オチャッピィ「元々、自分の目標は100位以内、GPの優先参加権が貰う、というものでした。実際に前期のランキングではその目標を達成しているので、無理のない範囲で出続ければいけるかな、と」

 ところがポイント4.8倍となるCSを2日連続で優勝。本人曰く「虚空から降ってきた」という10000ptsで、一気に全国圏内へと押し上がった。
 
オチャッピィ「デッキを見付けられたのが良かったですね。【闇単アビス】(※3)のお陰です。2日で22勝1敗とかだったので、それがGPだったら優勝だし、超CSでも優勝だったし、普通のCSだったとしても3連続優勝で3600ptsくらいですか。上手いところに噛み合ったから全国行けるかな、という感じで、そうでなかったら2bye狙いとかに切り替えていたと思いますね」
※3:【闇単アビス】は《アビスベル=ジャシン帝》を軸とした闇単のビート/コントロールデッキ。除去やS・トリガーを生かした戦いに強い一方で、《アビスベル=ジャシン帝》が着地するまでのリソース管理や、大局観の理解、詰めの部分などが難しいデッキでもある。
 あくまで仕事に支障が出ないことを優先している、という。
 今年の自身のランキング状況については「再現性はないです」と述べており、来期以降は引き続き100位キープを維持し続けたい、とのことであった。
 
 他のランキング上位プレイヤーを見ていくと、リキセキタクジンはCS参加回数が非常に多いプレイヤーだ。
 
リキセキタクジン「いまはデュエマ以外のことをやる時間は、ほとんどないですね」

 現状では比較的時間が取れるということもあり、精力的にCSへ参加しているという。
 
リキセキタクジン「芽がなくなったら辞めようと思っていたんですけど、ここまで来ると引き下がれないです」

 1月10日時点のランキングでは11位となっており、ボーダーラインの上にいる。
 彼は前期にある程度CSに出たデータを元に、後期ランキングへの挑戦を決めたという。
 
リキセキタクジン「前期のデータを調べていたとき、自分のアベレージは低かったですが、0ptsだった回数が少なかったんですよ。0ptsが少ないということは、ちゃんと勝ち越しているということなんです。本戦からはある程度当たり運もあると思うんですが、このデータは裏切らないかな、と」

 デュエル・マスターズは、どんなに強くても毎回優勝出来るゲームではない。そしてもちろん、日によっては負け越すこともある。しかし予選の中で、2勝4敗を3勝3敗にするような力が問われる時がある。

リキセキタクジン「それで4ヶ月間、前期の状況とかも考えたときに余裕はあるだろうとは思っていたんですよ。蓋を開けてみたら全然そんなことなかったですね」

 筆者の持つ印象だと、彼は「好きなデッキを使い続けて、いつの間にか勝っている」というようなプレイヤーだった。要するに、使いたいデッキが先にあり、結果が後から付いてくるというパターンだ。
 
 ところが後期のランキングは、そうはいかなかったようだ。
 
リキセキタクジン「好きなデッキしか使わない筈だったのに、いまの自分ってデッキを8個くらい使い回していて。強い人がメタゲームを回しているのもありますし、1つだけでやっていくのは難しいと諦めました。【火自然アポロ】(※4)だけでやっていくつもりだったんですけど……」
※4:【火自然アポロ】は《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を使ったコンボアグロデッキ。《エボリューション・エッグ》《進化設計図》といったカードを使って、タマシード+《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》《轟く侵略 レッドゾーン》《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》を早期に集め、最速3ターン目の決着を狙う。
 【火自然アポロ】はもちろん強力なデッキだが、相手のミスを拾いやすいデッキでは当然ない。だから時に難解なデッキも使わないといけない。自分のスタイルの変化や適応を求められていると言えるだろう。
 
 一方で個人的にはやや意外とも言える状況も起きている。
 
 2019年のDMPランキング6位の実績を持つあーくんは、早々から後期のランキングを走ることを表明していた。彼の実力・実績を考えると全国圏内に入っておかしくなかった筈だが、現在24位とやや苦戦を強いられているように見える。
 
 先にも触れたように、彼は月5000ptsの獲得を目標に設定し、そして実際に達成もしている。
 しかし、それだと後期ランキングのボーダーには足りなかった。
 
あーくん「同じような状況を再現できた人が思ったより多かったし、その人たちが接戦をした結果、全体のラインが上がった」、という。

 2019年時のランキングをモデルケースにしたものの、その時とは変わっていることも多かった。
 
あーくん「毎日CSに行くと、当然練習する時間は足りない。その上で、毎日CSがあるからメタゲームの進みは速い。環境に適応させた時間の振り分け方がいまいち合ってなかったと思うし、それを修正するには時間が少なかったですね」
 
 計算外の状況が起きた一方で、彼は後期ランキング全体も含めた現状についてはポジティブな見解を持っているようだった。
 
あーくん「数が正義なランキングとも言われているけど、全員が数出るようになった結果、その上で高倍率のCSで結果を残した人が上位にいる。ちゃんと強い人が評価されるランキングになっているな、と思っています」

超CSⅥが持つ意味

 全国大会は、3月に開催される。
 その出場権は、1月31日までのポイントによって決定する。

 だからこそ、今回の超CSⅥは大きい。
 
 1月20日の福岡大会では、1位はもちろんのこと、2位以下にも大きなポイントが入る。ここで4000ptsでも入ろうものなら、現在ボーダー外からでも一気に駆け上がる可能性があるだろう。
 
 一方で全国大会への出場権獲得は、ランキング以外にも方法がある。
 
 それが超CSの優勝だ。
 
 2月3日の群馬大会では、逆に全国権利を競うランキングは既に終了している。
 もちろん100位以内や県ランキングといったポイント争いは続くこととなるが、全国大会の最後の1枠を懸けたラストチャンスという位置付けになる。最後の1人が、ここで決まる訳だ。
 
 全国大会はやはり憧れの舞台であり、終着点だ。
 
 来期からはエリア予選が復活することもあり、この舞台へ立つ方法は、拡大することとなる。これまで可能性が少なかった地域・プレイヤーにとっては大きなチャンスとなるだろう。
 
 だが逆に言えば、こうした過熱したランキングから生まれる全国大会というは、今年が唯一無二となるかもしれない。
 
 超CSⅥに挑むプレイヤーも、そしてその結果を楽しみにするプレイヤーも、ランキングの行く末もまた見守って欲しいと思う。
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