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超CSⅦ横浜 プレイヤーインタビュー :チーム「カバレージ班」、カバレージを語る

ライター:河野 真成(神結)
撮影者:瀬尾 亜沙子

 会場では多数の《アリスの突撃インタビュー》が飛び交うなど、世は空前のインタビューブーム。

 デュエル・マスターズでもDMGPや超CSなどの大型大会に際して、“テキストカバレージ”という形でインタビュー記事が掲載されるのが通例だ。
 そんな中、今回のインタビュー企画を検討しながら本戦進出チームの一覧を眺めていると、1つ奇妙なチーム名があった。

 それが、チーム「カバレージ班」である。


DMGP2024-1st Day1 ベスト8(のカバレージ)
2023全国大会3位(のカバレージ)
DMGP2023-2nd3位(のカバレージ)

 カバレージ班の“本体”はまさに現在進行形でここで仕事をしているところなのだが、それはさておき。
 
 メンバーは順にフェイジャイロプレイン。いずれも公式大会でカバレージの執筆経験があるライターである。
 
 カバレージは、その書き方などを記した文章は非常に少ない。最早「ない」と言い切った方が適当なのかもしれない。
 
 実際ライター同士でも書き方の共有などが行われてることは余りなく、殆どの人が独学で書いている筈だ。
 
 となると、ライターたちは普段どのようなことを考えてカバレージを書いているのだろうか?

 予選も抜けて気分も良さそうなので、今ならきっとカバレージについての本音や書き方などを教えてくれるかもしれない。
 
 そんなわけで今回は、経歴もそれぞれ違う彼らにカバレージについてあれこれ聞いてみることにした。
 

カバレージとの出会いとチーム「カバレージ班」誕生

――それぞれカバレージを始めた経緯などを教えていただけますか? フェイさんからお願いします。

フェイ「自分は『カバレージを始めたい』という意識があったわけではないんですよね」

――あ、そうなんですね。

フェイ「元々は千葉県の方でおんそくさん2ブロックのCSを開催していたのですが、その宣伝の1つとしてカバレージを書いてみて、そこからって感じですね」

――ジャイロさんはいかがです?

ジャイロ「自分はやりたいことが先行するタイプなんです。それで最初はジャッジとかもやっていたんですけど、あるとき山の方の小林さんのCSにジャッジとしていたんですよ。そしたらその決勝戦で小林さんが動画を撮っていたり、Twitterで実況ツイートとかもしていたんです。ただ3位決定戦の方は撮ったいなかったので、折角なのでと思って棋譜(※)を取ったのが始まりです。後から『この棋譜要ります?』って小林さんに確認したら『いらない!』って言われたので、『じゃあ自分でやるか……。』と」

(※棋譜:ここではゲームの進行を記録・メモしたものを指す)

――で、それを続けていくうちに公式の大会でもカバレージを書くようになったと。

ジャイロ「そうですね。『いつか呼ばれるぞ』と思って、続けていました。CSに突撃してカバレージ書かせて貰ったりとか。だから呼ばれたときは『やった!』って」

ジャイロ「あと、元々自分がカバレージを読んでいた、というのは大きいですね。広島に住んでいたのでイベントが遠く、配信やカバレージで読んで大会を味わっていた、というのはありました」

――プレインさんはどうです?

プレイン「その昔川崎CSとかに参加していたときに(2012年頃)、運営陣の方々が凄い楽しそうに運営していたんですよね。それで自分も運営をやりたいなぁ、と長らく思っていて。そんな時にGP1stでカバレージというものを初めて見て、カッコいいなと」
 
――プレインさんはライター歴長いですよね。

プレイン「7年くらいですかね。大会の棋譜を取るとかはやっていたのですが、GP4thの際にカバレージライターが公募されていたので、そこに応募しました。一度体調不良とかで中断していた時期もあったのですが、GP復活した2022年から再開できました」

――ちなみに今回はチーム結成の仕掛け人はジャイロさんと伺ったのですが、どういった経緯で出来たんですか?

ジャイロ「さっきも言ったように自分はやりたいが先行する人間なので、『カバレージ班統一チーム』やったら面白いかなぁ、と思って。やってみたいな、という」

――わかりやすい。

ジャイロ「それで『たけじょー(※)、やるぞ!』って言ったら、『ボク横浜です』って言われて。使えねぇなぁ、という」

(※たけじょー:カバレージライターの1人)

――なるほど……。

ジャイロフェイくんとは早々に決まったんですけど、もう一人が……ということで、ライターの方に連絡飛ばしまくって、返事を貰ったのがプレインさんでした」

プレイン「私、ジャイロさんからプレイヤー認定してもらえていないと思ったんですけど、声が掛かったので『あ、プレイヤーとして見て貰えているんだ』って。前回のGPでは自分は予選落ちしたんですけど、そのとき予選上がったライターがいて……。凄い悔しかったんですよ。それで自分もちゃんと予選上がってみたいなということで、受けさせていただきました」

ジャイロ「……と、いうのが本音ですね」

――本音? ジャイロ「ちなみに一応、建前として『強い対戦をたくさん見ているカバレージライター同士が組めば、強いチームが出来るんじゃないか』みたいな話もあります」

――あー、そういうのはいいかな。

フェイ「それでいうと自分はこれまでプレインさんと繋がりなかったんですけど、今回こういった形で呼んでいただけたので、交友は広がったことには感謝していますね」

カバレージへの書き方とこだわり

――さて、皆さんはそれこそカバレージ経験が豊富な方々だと思うのですが、カバレージをどう書いているかとか、書く時に考えていることとかを教えていただけませんか?

フェイ「カバレージってGP1stからずっと続いているものじゃないですか」

――かれこれもうすぐ10年ですね。

フェイ「だからデュエマの大会自体に長い物語があると思っているんですよね。ですのでフィーチャー卓に来たプレイヤーの人物像とか、背景、その人が持っている物語なんかは書くようにしています」

――人物像といいますと?

フェイ「『過去にどんなことをしていたか?』ということですかね。例えば、前回のGPでかめさんが【火光闇ドルマゲドン】でベスト8を獲ったんですけど、かめさんと言えばGP5thの準優勝者ですよね。自分の活躍で生み出された《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を使って、それでまた活躍をする……というのがいいなと思いまして。そういうのにフォーカスして落とし込んだりしてます」

――考えてみると、面白い物語ですね。

フェイ「ただ片方のプレイヤーだけ、というのは違うと思っているので、対戦相手の方もDMPランキングとかその人を追いながら……ということはしていますね」

フェイ「あと、同じくアドバンスのGPではノンさんが……(以下、ノン選手とむった選手について語る)」

――ジャイロさんはどうですか? ジャイロ「書き方という話でいうと、『この試合、ここが明確に盛り上がったな』という部分はあると思うんですけど、自分はそこから書き始めています。そこが一番指動くんで。『ここで現れたのはなんと《流星のガイアッシュ・カイザー》!』みたいな。で、そこを書いたら、次に書きたいところを探します」

――え、上から順に書くんじゃなくて、書きたいところから書くんですか?

ジャイロ「はい。書きたいところを幾つか書いていって、あとで点と点を結んで……みたいな感じにしています。料理でいうと、先にざっくり入れたいもの入れてがーっと作って、最後に味を調える的な……」

――料理の話は置いとくとしても、そういうやり方もあるんですね。

ジャイロ「そのために、という訳では無いですけど、追える情報は全部追ってメモしています。初手も見ますし、埋めたカードとか、全ての情報を拾っていますね。《忍蛇の聖沌 c0br4》で落ちたカードは何と何、とか(紙のメモの写真を見せながら)」

――そこまで追うとなると、試合中は紙でメモする方が確かに便利そうですね。一旦紙でメモを取って、後からパソコンで書き上げるタイプなんですね。

ジャイロ「ウルトラアナログ人間なので……」

プレイン「私も、実際やり方によっては紙の方が楽かも、と思うときはありますね」

フェイ「フィーチャー卓のライター席に座ってそのまま書き上げちゃう人もいるので、この辺は人によって違いが出るところですね」
――プレインさんはどうですか?

プレイン「私は『デュエマ全体を面白く、かっこよく』というのを考えていて、例えば見たことない選手でも、どうすれば魅力が伝わる、というのは常に考えています」

――デュエマを面白く、かっこよく。

プレイン「私が選手にそこまで詳しい訳では無いので、初めて会う選手のカバレージを書くことが多いんですけど、選手にそれぞれ背景とかを訊くというのはあまり得意としていないので、試合の内容とか、或いは試合前や試合の中での発言とかで、その選手の個性を伝えていけたらいいなと思っています」

――背景というよりも、試合の中で見付けていくんですね。

プレイン「書き方の話でいうと、試合全体の内容を一通り書いて、後から肉付けをしていく、というやり方ですね。発言とかは特にメモっておくようにしています。『この発言いいなぁ』というのがあったら、そこを軸において組み立てていきますね。ジャイロさんと考え方は近いかもしれません」

――結構喋ってくれる選手も多いですからね。

プレイン「あとは面白いチーム名とか、カードとかがあればフォーカスして、ですかね。私が最初のGPの時に感じた『こんなのあるんだ! めっちゃカッコいいじゃん!』というのを、(後の世代の人にも)味わっていただけたらな、と」

――カバレージを初めて読んだときの衝撃は確かにありました。

プレイン「あとは逆にちょっとお茶目なところとか、それこそ『ミスっちゃった』みたいなのは、オチとして使わせてもらうときはあります」

ジャイロ「何しらアクションある選手、ありがたいですよね」

プレイン「ですね。例えばおんそくさんとかがカメラにピースしていたときはツッコミを入れたり、この前のGPのえむつー選手がすごいカメラ目線とかやってくれていたので」

――ツッコミを入れることで、その選手の個性を引き立てられますからね。

ジャイロ「みんなにそうして欲しいと言うわけではないですけど、試合の中でここ一番の時とかに何かしらあると、拾いやすいなとは思います」 プレイン「あと絶対やることとしては、優勝したプレイヤーには『おめでとう』と書くことにしています。優勝という凄いことを成し遂げたプレイヤーには、讃える言葉があるべきだと思っているので……」

フェイプレインさんのカバレージは、終わり方が綺麗だなと思います」

ジャイロ「締め方って難しいですよね。あとその、ミスとかも。ミスがゲームに大きく影響してしまっているものとか」

プレイン「私はそこはしっかり書いちゃいますけどね」

ジャイロ「選手ってミスを書かれたい訳じゃないけど、でも避けられないものってあるじゃないですか」

フェイ「まぁそこは場合によりますね」

プレイン「どんないい選手でも、大舞台ではミスってしまうことがあるんだ、というのは知っておくべきことだと思っています」

フェイ「それが出来ない場合はぼかしますけど、フォローは大事ですね」

ジャイロ「まぁそもそもそれがミスなのかわからないことも多いので、なるべく質問するようにはしていますね。デッキの話もそうですね。『このデッキ、〇〇はどうするんですか?』みたいな。そういうのを訊くことは結構あります」

――ちなみに、これは特にジャイロさんに訊きたいんですけど、今期凄くCSに参加するようになったイメージがあるんですが、それはライターの活動と何か関係があったりはするんですか?

ジャイロ「今期走っている理由とかでもいいですか?」

――ぜひ。

ジャイロ「今期はかなり頑張っていて。ランキングのシステムが変わったので、社会人でも頑張れそうだなというのが1つ。それと、『走るってどういうこと?』というのは実際にやってみたいなとわからないので。どっかでやらないと(これまで書いてきた言葉が)嘘になるな、と思って」

――それはわかります。自分も去年同じ事思って取り組んだ時期があったので……。

ジャイロ「残業している先輩を横目に『音速CSがあるので失礼します……』って言ったり。いや、実際そうは言わないんですけど、そんな感じで帰ったり、或いは土日は全部埋まるので、他の予定は中々立たないですねぇ……」

来たれ!未来のカバレージライター

――最後になりますが、これからカバレージを書きたいという人や、未来のカバレージライターに向けて言葉があればぜひ。

フェイ「別に、そんな難しいことじゃないんで」

――言うねえ。

フェイ「いや、変な意味はないです、やろうと思えば出来ます。ボクは独学でやりました。既にあるカバレージを読んでみて、試行錯誤しながらやっていくのがいいと思います!」

プレイン「それでいうと私は7年やっていますが、言い方がちょっと変な感じになりますけど、他のライターは皆格上だと思って取り組んでいるので。その上で、『なんとかなる』ので、気軽にやってみるのをオススメします。書いてみると、みんな案外見てくれているので」

ジャイロ「文章書くのが好きでデュエマ好きなら、やって楽しいと思います!」

フェイ「あと2ブロックもよろしくお願いします!」

――ありがとうございました。


「カバレージライターには、素晴らしい戦いを特等席で見る特権を持つ代わりに、その素晴らしい戦いを読者に届ける。だから、自分がその最高の戦いの当事者になることはできない。そんな素晴らしい戦いを目の前で見ていて、自分がデュエルをしたくならないわけがない。」
 
 この言葉にあるように、ライターを続けているとある日素晴らしい戦いを目撃することになり、そしてそれはプレイヤーとしての意欲を掻き立ててくるものだ。それはちょうど、このチーム「カバレージ班」のように。
 
 そして同じく、素晴らしいカバレージを目にしたとき、プレイヤーもまたライターをしてみたくなるものだ。それはちょうど、我々が9年前の夏に経験した時のように。
 
 もし貴方が様々なカバレージを読んで、そしてカバレージを書くことに興味を持ったとき、ぜひ一度気軽に門を叩いてみて欲しい。
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