超CSⅦ横浜 準決勝:そらち軍団/超人 vs. おもちゃのアオキ2
ライター:高橋 穂(北白河)
撮影者:出端 敏夫
そのうちの半分がフィーチャー席でプレイしていることを考えると、この広大なプレイエリアにいるプレイヤーは6人……つまり、2チームのみだ。 片や、【水闇COMPLEX】【水闇COMPLEX】【火水マジック】のそらち軍団/超人。 片や、【光自然巨大天門】【光水天門】、そして【火光闇ファイアー・バード】のおもちゃのアオキ2。
そして、卓の並び順はこの表記のまま……つまり、すべての対戦において「受けデッキ対決」「ビートダウンデッキ対決」が繰り広げられることとなる。
いわば、それぞれが磨きぬいた究極の剣と剣、盾と盾がぶつかり合う構図になったわけだ。
ここで勝ち抜き、決勝戦にコマを進めるのはどちらのチームか。 A卓:黒毛和牛 vs ごんべえ
B卓:てんぱ vs 月嶋
C卓:まぐろ/超人 vs あらすか
C卓:まぐろ/超人vsあらすか
まぐろ/超人が相棒に選んだのは、前環境の覇者【火水マジック】。今大会ではめっきり数を減らしたデッキながら、「【光火闇ファイアー・バード】は苦手だが、それに勝とうとするデッキには逆に勝ちに行ける」というメタゲーム予想は見事に的中。《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》投入など細部まで入念な調整がなされたチューンで、ここまで勝ち抜いてきた。
しかしあらすかが使うのは、まさにその【光火闇ファイアー・バード】。
今大会最大シェアを誇るビートダウンデッキとして、その高い決定力と妨害性能によって【火水マジック】を環境トップの座から追い落とした張本人である。
古豪が意地を見せるのか、新星が引導を渡すのか。こうして、新旧ビートダウン対決の幕が開けた。
Game1
先攻:まぐろ/超人 ゲームはまぐろ/超人の2ターン目、【マジック】の黄金ムーブである《AQvibrato》で幕を開けた。これに対して2ターン目の応手がないあらすかだが、まぐろ/超人にもテンパイハンドが揃っているというわけではない模様。いったん《氷柱と炎弧の決断》で手札を整えにかかる。
この隙を見逃さないあらすかは、【ファイアー・バード】の妨害の要こと《ハンプティ・ルピア》で引いたパーツを打ち抜きにかかる!
公開されたのは、《芸魔王将 カクメイジン》3枚と《飛翔龍 5000VT》、《氷柱と炎弧の決断》というハイカロリーな面々。ここから革命チェンジに直結する《芸魔隠狐 カラクリバーシ》などを引き入れさせないためにも、《氷柱と炎弧の決断》を捨てさせる。
手札の重さを看破されたまぐろ/超人は今引きの《AQvibrato》の1ドローで望みを繋ごうとするも、それでも必要パーツは引けず、テンポ面で痛烈なロスを食らってしまう。
そして、ファイアー・バードの4ターン目と言えば。 《アリスの突撃インタビュー》の時間だ。
キーパーツの早出しと多面除去を兼ねる超多機能呪文が放たれたことにより、あらすかの盤面には今捨てた切り札の《龍后凰翔クイーン・ルピア》が舞い降り、まぐろ/超人の《AQvibrato》2体は消し炭となる。チェンジ元を引けていないことがわかっているまぐろ/超人にとって、痛すぎるダメージだ。
このままメクレイドを頼りに攻めていくこともできるあらすかだが、【マジック】に対して下手に攻め込むと増えた手札から何をされるかもわからないのも事実。B卓の月嶋と相談しながら、ここはあえてそのままターンを返す。
まだたった2体、しかし次のターンにはどこまで増えるかわからない鳥たちを見て、じっくりと考え込むまぐろ/超人。ここは《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》をクリーチャー面で召喚してスピードアタッカーの連鎖を防ぐことを目論む。
だが、現代デュエマ最新鋭のビートダウンはその程度の妨害で止まることはない。
試合にケリをつけるために放たれたのは、2枚目の《アリスの突撃インタビュー》!
《ハンプティ・ルピア》を捨てて《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を破壊しつつ、今捨てた《ハンプティ・ルピア》が再び手札を攻める!
《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》《芸魔王将 カクメイジン》《飛翔龍 5000VT》という手札から、並べてターンを返した際に最も危険な《飛翔龍 5000VT》を打ち抜く。
そしてここから、鳥たちはその真価を見せつける。
《龍后凰翔クイーン・ルピア》攻撃時に先ほど出した《ハンプティ・ルピア》を破壊してメクレイドすると、出てくるのは2体目の《龍后凰翔クイーン・ルピア》。
W・ブレイクはそのまま通り、今出た《龍后凰翔クイーン・ルピア》の攻撃時に攻撃済みの《龍后凰翔クイーン・ルピア》を破壊すると、今度は《アリス・ルピア》が顔を出す。 そして山札から彼女に呼び寄せられたのは、《ハッター・ルピア》《ハンプティ・ルピア》《ルピア&ガ:ナテハ》!このターンだけで、なんと6体もの鳥たちが入れ替わり立ち代わり展開されている!
まぐろ/超人のシールドには応手はなく、そのままヒッチコックばりの鳥たちの嵐が吹き荒れることとなった。
Winner:あらすか
ハンデス・除去による的確な妨害と大量展開による決定力という【ファイアー・バード】の強さが示された形となったGame1。
しかし、この相性差についてもまぐろ/超人は織り込み済みのデッキ選択だ。幸い、次も先攻。一年近くもの間環境の中心にあり続けてきた【マジック】の最後の意地を見せられるか。
Game2
先攻:まぐろ/超人今度のゲームのファーストムーブは、あらすかの《マジシャン・ルピア》。【ファイアー・バード】最高の初動として《雷炎翔鎧バルピアレスク》を捨てつつドローし、次のターン以降の選択肢を広げていく。
…だが、まぐろ/超人の刃はすでに研ぎ澄まされていた。 《ファイナル・ストップ》をチャージすると、飛び出したのは《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》!さらに手札からは《単騎連射 マグナム》が捨てられ、「ロックなど不要、やられる前にやる」という強い意志を見せる。
当然そこからすぐさま革命チェンジされるのは、《芸魔隠狐 カラクリバーシ》。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を踏み倒してアンタップ&《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》展開と動きつつシールドを1枚刻む。 ここで何も踏まなかったのを見届けると、さらなる革命チェンジで《芸魔王将 カクメイジン》が満を持して登場。《瞬閃と疾駆と双撃の決断》(アンタップ&《AQvibrato》展開)と《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》の呪文面を踏み倒すと、その猛攻はもはや止まらない!
まぐろ/超人の気迫に恐れをなしたか、その後もあらすかのシールドからS・トリガーとG・ストライクが姿を見せることはなく、ダメ押しとばかりに踏み倒された2枚目の《瞬閃と疾駆と双撃の決断》がこのゲームに終焉をもたらした。
Winner:まぐろ/超人
この土壇場で放たれた【マジック】の本懐、先攻3ターンキル。
デッキ成立当初から変わらない最強ムーブをもって、「まだ新人の鳥たちに負けてやるわけにはいかない」とばかりに一矢報いた形となる。
今月に控えた殿堂入りの関係で、大型大会の場では最後となる全力の【ファイアー・バード】と【マジック】のマッチアップ。
一つの時代の象徴とも言える最後のゲームを制するのは、どちらの「史上最強のビートダウン」か。
Game3
先攻:あらすか あらすかの《マジシャン・ルピア》に対して、まぐろ/超人も《AQvibrato》で応えるという理想的な初動のぶつかり合う2ターン目。1戦目と同じく、妨害と突破の相克となるか…と思われた矢先、ゲームは急展開を迎える。 あらすかが繰り出したのは、妨害と突破を兼ねる新カード《ハッター・ルピア》!
いるだけで革命チェンジを止めうるメタクリーチャーながら、今回はすぐさまハイパー化することでメクレイドによる展開の起点にもしていくようだ。
攻撃時のメクレイドで飛び出たのは、《雷炎翔鎧バルピアレスク》。さらにその攻撃時に《龍后凰翔クイーン・ルピア》、そのメクレイド(《マジシャン・ルピア》を破壊)から《アリス・ルピア》…と、【ファイアー・バード】の最新カードたちのオールスターが続々と集結していく!
こうして、《ボルシャック・モルナルク》と《ルピア&ガ:ナテハ》まで加わった豪華すぎる先攻3ターンキル返しにて、あらすかがおもちゃのアオキ2に最初の勝利をもぎ取ったのであった。
Winner:あらすか
有終の美を飾らんとする【マジック】の意地と、「あとは俺たちに任せろ」とばかりに力を見せつける【ファイアー・バード】の新旧ビートダウン対決は、【ファイアー・バード】に軍配が上がった。
一つのデッキが去り、新たなデッキが現れるという、デュエマの歴史において何度も繰り広げられてきた物語が、ここに確かに刻まれたのだ。
そして、そんな「新旧対決」が繰り広げられていたのはC卓だけではない。
ちょうどGame1が終わったB卓においても、【水闇COMPLEX】と【光水天門】という新旧コントロール対決が行われていたのだ。
B卓:てんぱvs月嶋
てんぱのデッキは、同じく前環境から活躍を続ける【水闇COMPLEX】。 いわゆるメタクリーチャーとS・トリガーを大量搭載した防御力と、《DARK MATERIAL COMPLEX》による決定力は本物。環境屈指の受けデッキとして、ビートダウンキラーとして活躍中の逸品となる。そして月嶋のデッキは、【光水天門】。
遥か昔の《知識の精霊ロードリエス》の時代から【天門】の顔であったこの文明の組み合わせだが、現代デュエマで環境に躍り出たのはつい最近の《理想と平和の決断》や《聖霊超王 H・アルカディアス》の登場以降……という、受けデッキとして大先輩でもあり後輩でもある不思議な立ち位置のデッキだ。
しかし【光自然巨大天門】の活躍を見ればわかるように、【天門】というコンセプトそのものの強さは現環境でも言わずもがなである。
別のデッキを握った二人だが、のちに語ったデッキ選択理由は奇しくも大筋で合致する。すなわち、「【火光闇ファイアー・バード】に有利が取れるうえで、それ以外のデッキにも勝ちうるから」だ。
同じ思想で選ばれた、二つの受けデッキ。Game1はてんぱが制したが、そこに絶望的な相性は存在しない。つまり、両者がまだ等しく「勝ちうる」状況にあるのだ。
C卓の二人がアドバイザーとしてそれぞれのプレイヤーを見守る中、Game2が幕を開ける。
Game2
先攻:月嶋 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》とテンポよく小型クリーチャーを並べていくてんぱに対して、4ターン目の《理想と平和の決断》で《同期の妖精 / ド浮きの動悸》を除去しつつ手札補充で応えるというゆっくりとした立ち上がり。ここにてんぱは《異端流し オニカマス》を送り込み、踏み倒しによる大型ブロッカー定着を牽制しにかかる。
だが、月嶋もさるもの。現代【天門】の必殺ムーブ、《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》の呪文面→《闘門の精霊ウェルキウス》と繋ぎ、メタの上から本命の《∞龍 ゲンムエンペラー》を通して見せる! 《異端流し オニカマス》によって《闘門の精霊ウェルキウス》はすぐさま手札に戻るものの、常在型効果で効果を無視する《∞龍 ゲンムエンペラー》はそのまま場に居座る形となる。低コストクリーチャーを軸とする【水闇COMPLEX】にとっては、まさに致命的な一枚だ。
そのまま動けずにターンを返すてんぱに対して、月嶋はダメ押しの《ヘブンズ・ゲート》。《闘門の精霊ウェルキウス》2体の踏み倒しから、2体目の《∞龍 ゲンムエンペラー》と《蒼神龍アナザー・ワールド》を送り込んでさらに盤石な体制を作り上げる!
こうなると、それぞれの目的は「厚いトリガーで逆転されないように《聖霊超王 H・アルカディアス》も揃えて確実にロックしてトドメを刺す」「それまでに《∞龍 ゲンムエンペラー》を何らかの手段でどかし、その隙に動いて立て直す」となる。
ここから、各チームの相談も交えてじりじりとした睨み合いが始まる。
お互いが攻めあぐねてドローゴーしている間に、A卓では複雑な裁定問題の絡んだ戦局が発生。ジャッジへの確認やそれに伴う行動指針の相談のため、C卓のまぐろ/超人がB卓のアドバイスを離れることとなる。
一人になったてんぱだが、ここで引き当てた《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》の呪文面により《∞龍 ゲンムエンペラー》1体を除去することに成功する。何らかの手段でもう1体の《∞龍 ゲンムエンペラー》を除去できれば、能力無視から解き放たれた小型獣軍団を並べて復帰が狙えそうな様相だ。
だが、そうは問屋が卸さないとばかりに月嶋が繰り出したのは《閃光の精霊カンビアーレ》! 効果を無視されている《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》《異端流し オニカマス》をタップキルすることで、並んだ《闘門の精霊ウェルキウス》を一斉に誘発させて怒涛のドローと展開を行う!
《聖霊超王 H・アルカディアス》にこそたどり着けなかったものの、ここまで盤面に差がつけばさすがに話は別。
いつの間にか闇マナを用意して《∞龍 ゲンムエンペラー》をムゲンクライムで無限に復活させられるようになった月嶋の軍勢が、数ターン後にてんぱを押しつぶした。
Winner:月嶋
まぐろ/超人「ほんとにごめん!俺がいればよかった……」
A卓での裁定問題が解決しB卓に視線を戻したまぐろ/超人が、申し訳なさそうにてんぱに声をかける。
《∞龍 ゲンムエンペラー》の圧力が勝負を分けたGame2だが、もしてんぱ側にも二人分の思考リソースがあれば《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》の温存プランや早い段階から《闘門の精霊ウェルキウス》を逆用するライブラリアウトプランなど、別の戦略が取れたかもしれない。
だが、このマッチアップで《∞龍 ゲンムエンペラー》が焦点になるのは、両者ともゲームが始まる前からわかりきっていたこと。
そもそも月嶋は「【COMPLEX】系列にも有利に戦える」ことから【光水天門】を選び、てんぱは「(【天門】のような)やや不利な対面に対しても捲りうる対応力」を見込んで【水闇COMPLEX】を選んだのだ。
それならば、その選んだ理由通りにもう一回勝つだけだ。それに、今は仲間がついている。
Game3
先攻:てんぱゲームは後攻1ターン目、月嶋の《集結!夜の四天王!!》で幕を開ける。黄金ムーブのカギとなる《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》が公開され、てんぱにそれまでの対処を強いる形となる。
これに対して、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《終止の時計 ザ・ミュート》と並べて盤面・手札と準備を整えていくてんぱ。
《ケンザン・チャージャー》による加速で、すでに見えている《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》にリーチをかけられても、《奇天烈 シャッフ》の宣言「5」で一手遅らせるなどきっちり戦況のコントロールを図っていく。
ならばと月嶋が繰り出したのは4コストの《理想と平和の決断》!手札補充のモードが2回選ばれ、一気に4枚ものカードが手札に加わる。こうなれば、踏み倒しからの連鎖はもはや確約されたようなものだ。
次のターンこそ破滅を突きつけられたてんぱは、《アーテル・ゴルギーニ》を召喚。墓地肥やしと《異端流し オニカマス》蘇生により、次のターンに《∞龍 ゲンムエンペラー》が出ても純粋な打点でダイレクトアタックに届くようシールドを刻む策に出る!
《奇天烈 シャッフ》「6」指定から一枚ずつシールドをブレイクしていくてんぱ。しかし、続く《同期の妖精 / ド浮きの動悸》のブレイクから出てきたのは…… 7コストの《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》!
真実を見極められず裏目を踏んでしまったてんぱに3連バウンスが襲い掛かると、バトルゾーンには召喚酔い中の《アーテル・ゴルギーニ》《異端流し オニカマス》しか残らない。どうやっても、次のターンに倒し切るだけの打点が足りない!
あえなくターンを返したてんぱに対し、月嶋は《光開の精霊サイフォゲート》→《闘門の精霊ウェルキウス》(手札に戻る)→《∞龍 ゲンムエンペラー》のムーブで再び盤面に蓋をする。
《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》呪文面で《∞龍 ゲンムエンペラー》除去という勝ち筋を辿るべく《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《奇天烈 シャッフ》を出し直すてんぱだったが、ここにGame2と同じく月嶋の《ヘブンズ・ゲート》→《闘門の精霊ウェルキウス》2体の踏み倒しが突き刺さる!
出てくるのは2体目の《∞龍 ゲンムエンペラー》と、《聖霊超王 H・アルカディアス》という、いわば完全ロックセット。
さすがにてんぱもこの陣容には抗えず、次のターンの《聖霊超王 H・アルカディアス》ハイパー化とダメ押しの《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》の呪文面素撃ちによって、月嶋がおもちゃのアオキ2に勝利をもたらした。
Winner:おもちゃのアオキ2
奇しくも、新たに登場したデッキたちがその強さを見せつけることになったこの準決勝。
だが、彼ら全員の選択が誤ってなどいないことは、ここまでやってきたという事実が証明している。
残る戦いは、それぞれ一戦。それぞれの正しさを示すために、彼らは次の戦いに向かう。
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