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超CSⅦ広島 準決勝:愚っちゃん vs. ちてい

ライター:河野 真成(神結)
撮影:瀬尾 亜沙子

 大会もいよいよ大詰め。残るプレイヤーはわずかに4人。

 TOP8に4名いた【火光闇ファイアー・バード】はそれぞれ綺麗に各ブロックへ配置されたが、勝ち負けも綺麗にわかれて、残るは2名となった。
 
 そしてこの準決勝は「勝った方のファイアー・バード」である愚っちゃんと、「ファイアー・バードを倒した方」のちていの戦いとなった。
 
 そのちていの使用するデッキは、【水闇自然ジャオウガ】。
 《幻緑の双月 / 母なる星域》の殿堂後、環境からはやや後退していたが、それがちていにとっては逆に功を奏したか。《異端流し オニカマス》《ベイB セガーレ》といったメタ(妨害)カードを駆使し、ここまで勝ち上がってきた。
 
 実際、ガチンコでぶつけたときの相性はよくわからない。ファイアー・バードの対応力であれば、「プレイを詰めていけば」最終的には勝ち越すのではないかと思う。
 
 だが、この準決勝という場で突然ぶつかったとなると、話は別だろう。
ジャオウガを初めてみるということはまずないだろうが、ファイアー・バードでの対戦経験が豊富かと言われると、かなり怪しい筈だ。

加えてこの舞台ではお試しプレイのような選択は採りづらいし、その場その場で判断しなければいけないことが多い。

 ともなれば、勝負は互角と言えるか。
 
「これから決勝?」
「いや、準決勝!」

 遠くで見守る友人に、愚っちゃんは応じる。
 超CSにおける優勝は、GP以上に持つ意味が大きい。優勝者にしか全国大会への出場権がないからだ。
 
 まずは決勝へ。
 両者のデッキがぶつかる。

Game1

先攻:ちてい  まずはちてい《天体妖精エスメル /「お茶はいかがですか?」》を埋めてターンを終了。
 
 一方の愚っちゃんはその≪天体妖精エスメル≫を興味深そうに眺めたあと、こちらは《龍后凰翔クイーン・ルピア》を埋めてターンを返す。

 2ターン目、ちていは≪天体妖精エスメル≫召喚し、マナを増やしてターンを終了。ただマナ色は闇と自然で、水はなし。《天災 デドダム》はプレイしづらいか。
 愚っちゃんはしばし考えたのち、《マジシャン・ルピア》を召喚し、《ポッピ・冠・ラッキー》を捨てて2ドロー。
 
 互いに、序盤はある程度順調そうな様子だ。
 
 ちてい《天災 デドダム》を諦めて埋めると、1マナで《ベイB セガーレ》をプレイ。
 
 愚っちゃんとしては、《キユリのASMラジオ》などの強力な動きではなかったためホッとしただろうか。
再度の少考を挟み、《ハッター・ルピア》をプレイ。そのままハイパー化して攻撃に向かわせると、メクレイドで《ハンプティ・ルピア》を繰り出す。
 
 確認したちていの手札は、《母なる星域》《アーテル・ゴルギーニ》
現状は4マナであり、すぐさま《母なる星域》の脅威はない。ここは《アーテル・ゴルギーニ》を捨てさせると、《ハッター・ルピア》の攻撃が通る。トリガーもなく、そのままターン終了。

 ただしこの1枚のシールドと、デッキトップのドローは強かった。強すぎて、或いは迷ってしまったかもしれない。
 
 ちていがマナに埋めたのは《アーテル・ゴルギーニ》。そしてプレイしたのは《天災 デドダム》
 3枚確認した後、手札に加えた《冥土人形ヴァミリア・バレル》をそのままプレイする。
 これで《ハッター・ルピア》をバウンス(手札戻し)させると、《アリスの突撃インタビュー》をハンデス(手札破壊)。
その後、ハイパー化のタネとなっていた《マジシャン・ルピア》を≪天体妖精エスメル≫で踏んで、ターンを終了。ひとまず、盤面の脅威を処理した。
 
 《アリスの突撃インタビュー》を捨てられた都合、大きな動きは出来ないか。

 ただしここで愚っちゃん視点で確定していることがある。ちていの手札の残り1枚が《母なる星域》であるということだ。

 よって《ポッピ・冠・ラッキー》をプレイし、《母なる星域》からの《CRYMAX ジャオウガ》を防いで、ターンを返す。  こうなると、困ってしまったのがちていだ。
 このターンは、デッキトップから引いてきた《異端流し オニカマス》をプレイし、《冥土人形ヴァミリア・バレル》をハイパー化してターン終了する。  ファイアー・バードによって、《異端流し オニカマス》はどうすることも出来ないカードではある。これを除去して攻め込むことは出来ない。
 しかし、メクレイドであれば、《異端流し オニカマス》の能力に引っ掛からない。
 盤面に居座る《冥土人形ヴァミリア・バレル》も含めて、ちていの防御をどう突破するか。
 
 愚っちゃんは5マナで《龍后凰翔クイーン・ルピア》を召喚。
 ちていのシールドは、≪天体妖精エスメル≫と《ハッター・ルピア》の攻撃で減っているので3枚だ。
 
 ただここは《冥土人形ヴァミリア・バレル》のハイパー化のタネとなっていた《ベイB セガーレ》に攻撃を宣言。破壊対象を《ポッピ・冠・ラッキー》に指定し(そして当然エスケープで耐えて)、メクレイド8。
 そして捲れたのは、《アリスの突撃インタビュー》
 
 これで《アリスの突撃インタビュー》を切って《冥土人形ヴァミリア・バレル》を破壊。先に破壊されていた《マジシャン・ルピア》を蘇生させる。
 《マジシャン・ルピア》《異端流し オニカマス》でバウンスされるものの、手札を回しつつ《ベイB セガーレ》も処理。しっかり成果を上げてターンを終了した。
 
 ちていとしては、手札が1枚腐っている状態だ。
 愚っちゃんのシールドは4枚。攻撃に向かうわけにもいかず、ここは何もせずターンエンド。
 
 盤面を整理しよう。
愚っちゃんの盤面は、《ハンプティ・ルピア》《ポッピ・冠・ラッキー》、そして《龍后凰翔クイーン・ルピア》
 ちていの盤面は《天災 デドダム》《異端流し オニカマス》、そして≪天体妖精エスメル≫。シールドは残り3枚だ。
 
 愚っちゃん《CRYMAX ジャオウガ》の前に決着を付けたい。

 まずは3マナで《アシステスト・インコッピ》を召喚。続けて1マナで《マジシャン・ルピア》、更に2マナで《ハッター・ルピア》を召喚。  そして《ハッター・ルピア》《アシステスト・インコッピ》をタネにハイパー化させる。これで準備は整った。
 
 まずは《龍后凰翔クイーン・ルピア》で攻撃するとき、《マジシャン・ルピア》を破壊してメクレイド。出てきたのは《マジシャン・ルピア》とスピード・アタッカーではなかったが、既にちていを倒しきる打点は揃っている。

 そしてW・ブレイクに、トリガーはなかった。
 
 更に続けて《ハッター・ルピア》攻撃時に、メクレイド5で《雷炎翔鎧バルピアレスク》が駆け付け、流石に勝負あり。
 
 相手の手札の《母なる星域》を腐らせ、《異端流し オニカマス》を見事に突破した愚っちゃんが、決勝に向けて大きな一本を先取した。
 
愚っちゃん 1-0 ちてい


 ファイアー・バードは強い。

 その強さは様々な場所で説明はされていると思うが、このゲームでは強さの1つである《ハッター・ルピア》《ポッピ・冠・ラッキー》という、いわばゲーム前半で力を発揮するカードたちが刺さった恰好となった。
 
 《ハッター・ルピア》の影響で、6マナでの《母なる星域》《CRYMAX ジャオウガ》の着地は咎められ、後ろにゲームを伸ばすと最も都合の悪いタイミングで《ポッピ・冠・ラッキー》が投下される、というわけだ。
 
 《母なる星域》をキープする判断をしたちていは、この《ポッピ・冠・ラッキー》に苦しんだ。《異端流し オニカマス》がファイアー・バードに強いのは事実だが、それだけでは勝たなかった。
 
 ただこの試合は、ちていとしても不運にも、1枚のカードに辿り着けなかった。
 
 その名も《飛翔龍 5000VT》  ゲームの流れを変えるカードである。

Game2

先攻:ちてい

 先攻は、先のゲームに敗れたちてい
 
 先と同様に≪天体妖精エスメル≫からスタートする上々の立ち上がり。
 対して愚っちゃんも、《マジシャン・ルピア》のプレイとこちらも順調。《龍后凰翔クイーン・ルピア》を切って手札を整えた。
 
 まだ闇マナがなかったがちていだったが、ここで《CRYMAX ジャオウガ》を埋めると《天災 デドダム》を召喚。そこから《アーテル・ゴルギーニ》をマナに切りつつ、《異端流し オニカマス》を追加する。

 ちてい《アーテル・ゴルギーニ》切りはかなり強気に映ったか、愚っちゃんはやや時間を使う。
 やがて《ハッター・ルピア》埋めを決断。《異端流し オニカマス》の突破に残しておきたかったが、やむを得ない。《ハンプティ・ルピア》をプレイする。
 ちていの手札に見えたのは《天災 デドダム》《飛翔龍 5000VT》。なるほど、《アーテル・ゴルギーニ》切りも納得か。《飛翔龍 5000VT》を落としてターン終了。
 
 しかしちていはトップで引いてきた《キユリのASMラジオ》を埋めると、《天災 デドダム》をプレイ。
そしてそこから見えた《飛翔龍 5000VT》へと繋がった。  愚っちゃんの盤面は、手札へと帰っていく。

 そしてちていは、≪天体妖精エスメル≫で攻撃を開始する。この1点はG・ストライクを踏んだものの、《異端流し オニカマス》も動き、2点を詰めてターンを返した。
 
 《異端流し オニカマス》《飛翔龍 5000VT》という強固過ぎる盤面は、《アリスの突撃インタビュー》でも崩しようがない。
 一応これをプレイして盤面を除去するものの、蘇生した《龍后凰翔クイーン・ルピア》は当然手札へと戻される。

 《飛翔龍 5000VT》《異端流し オニカマス》がいて、相手のシールドは3枚。
 ちていは、≪ボン・キゴマイム≫を召喚すると《飛翔龍 5000VT》でT・ブレイクを宣言。
 
 愚っちゃんのデッキに入るいずれの受け札も、《異端流し オニカマス》を止めることが出来ない。

 ちていが1本取り返し、決着は3本目へと持ち込まれた。

愚っちゃん 1-1 ちてい


 《異端流し オニカマス》《飛翔龍 5000VT》という対ファイアー・バードにおける大きな主張点を通して、見事に勝利したちてい
 リストは《Disメイデン》《Disジルコン》といったかつてこのデッキの軸だったカードを抜く徹底っぷりで、【メタジャオウガ】として振り切ったような構築だった。

 準決勝ともなると、簡単には決着が付かない。
 それがちていがここまで勝ち上がってきた理由でもあり、準決勝というものなのだ。

 「勝ちに不思議の勝ちあり」とは言うが、それはあくまで1ゲーム単位での話。その大会を勝ち残ったデッキには、相応の理由がある。

 ちていの場合それが《異端流し オニカマス》《飛翔龍 5000VT》というギミックの強烈さであったり、《CRYMAX ジャオウガ》の決定力であったり、メタクリーチャーの選定というところなのだろう。

 また、ドリームメイトの流行によって“逆アポロ”のような受けに全振りしたようなデッキが少なかったのも要因だった筈だ。
 
 デュエル・マスターズのデッキは強い。
 
 ファイアー・バードも強いし、ドリームメイトも強いし、もっと言えば環境落ちをしたと思われるデッキだって、充分過ぎるほど強い。
 
 そしてそれ同士を戦わせたときには、僅かな差が勝敗を決める。それは受けの有無であったり、メタカードの刺さりやすさであったり、サブプランの強さであったりするわけだ。
 
 逆に愚っちゃんとしても、そうした相手のデッキの情報はこの2試合を通して理解しただろう。

 手の内がわかったところで、それをどう潜り抜けるか。或いは、粉砕するか。
 
 ゲームは最終3本目へと移行する。

Game3

先攻:愚っちゃん  互いにお願いしますと挨拶し、3本目が開始される。
 
 先攻の愚っちゃん《アリスの突撃インタビュー》チャージから。一方ちてい《天災 デドダム》埋めと、互いにマナに必要な色を揃えていく。
 
 2ターン目は互いに《マジシャン・ルピア》《異端流し オニカマス》を召喚しあい、終了。
 
 愚っちゃんは3ターン目、《異端流し オニカマス》に対して理想とも言える《ハッター・ルピア》の召喚に成功する。  これをハイパー化し攻撃に向かうが、捲れたのは《ポッピ・冠・ラッキー》とやや物足りないか。これでターンを終了する。
 
 《ハッター・ルピア》に面展開され続けることは避けたいちていは、《冥土人形ヴァミリア・バレル》で対抗。《ハッター・ルピア》をバウンスしてハンデスし、《コッコ・武・ルピア》を落とす。
 その後一瞬《異端流し オニカマス》に手を掛けるが、何もせずターンを終了する。
 
 愚っちゃん《ハッター・ルピア》を出し直し、場に残っていた《ポッピ・冠・ラッキー》をタネにハイパー化。再び攻撃へと向かい、ここでは《ルピア&ガ:ナテハ》を捲って1点刻む。
 
 ここまでマナブーストカードのなかったちてい《天災 デドダム》でようやくマナを伸ばし、更にそこに《飛翔龍 5000VT》がくっつく。  《飛翔龍 5000VT》自体は《ハッター・ルピア》で破壊されるものの、強力なロックを掛けた恰好だ。

 ただ《飛翔龍 5000VT》が場に残っているどうかは、かなり大きい。

 愚っちゃん《飛翔龍 5000VT》の効果に掛からない《龍后凰翔クイーン・ルピア》を召喚し、じっくりと考える。  これを動かすか、メクレイドをするか、選択は様々だ。ちていのマナは5あり、《母なる星域》が絡めば《CRYMAX ジャオウガ》が見えるのも厄介だ。
 
 だが《異端流し オニカマス》がいる中では溜めて勝ちきるのは難しいと、ここはメクレイドなしでW・ブレイクを宣言。ちていのシールドを残1に追い込み、ターン終了。
 
 ちていはまずは4マナ《キユリのASMラジオ》《天災 デドダム》を狙いにいったカードだったが、これは捲れず≪天体妖精エスメル≫と《異端流し オニカマス》。≪天体妖精エスメル≫の効果は使用せず。
 残った2マナで≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫を唱えて、5を止めて、《冥土人形ヴァミリア・バレル》をハイパー化。出来ることはやった。
 
 愚っちゃんも、ここが最後の悩みどころか。チャージして、マナは6。
 手札は地道に増やしてきたこともあり、6枚ある。だが《異端流し オニカマス》を超えで打点を作ろうとすると、やや難しい。
 
 まずは3マナで《ポッピ・冠・ラッキー》を召喚、そして残り3マナで《ハッター・ルピア》を召喚。ハイパー化し、攻撃を宣言。そしてメクレイドで《ハンプティ・ルピア》を出すと、これでちていの手札の《CRYMAX ジャオウガ》を落とした。
 
 《ハッター・ルピア》の攻撃は《冥土人形ヴァミリア・バレル》にブロックされ、ここでターンを終了。
 
 まさにギリギリの鍔迫り合いだ。
これぞ大舞台の試合。やはり、簡単には決着が付かない。
 
 ちてい《冥土人形ヴァミリア・バレル》を召喚すると、《アシステスト・インコッピ》をハンデス。続けて、《異端流し オニカマス》を召喚。
 
 ちていの殴れるクリーチャーは、《異端流し オニカマス》が2体に《天災 デドダム》と≪天体妖精エスメル≫、更にハイパー化すれば《冥土人形ヴァミリア・バレル》がW・ブレイカーになる。
 
 つまり打点は6ある。愚っちゃんのシールドは、《ルピア&ガ:ナテハ》の効果があった分、残り4枚。
 踏まなければ倒しきれるし、下の方で踏む分には《異端流し オニカマス》で問題とならない。ちていは考える。彼にとっても、ここが最後の考えどころだろう。
 
 やがて意を決し、攻撃を宣言。1点刻むが、ここがなんと《ハンプティ・ルピア》  ここしかなかった。
 ここさえ通れば、《冥土人形ヴァミリア・バレル》の2点が通って勝った筈なのだ。2体の《異端流し オニカマス》が、実質的に3枚のシールドを「焼却」出来る筈だったのだ。
 
 しかし無情にもこれで打点が消えた。ちていは無念のターンエンド。
 
 《異端流し オニカマス》と、《冥土人形ヴァミリア・バレル》の群れ。1体はハイパー化もしている。

 愚っちゃんは大きく息を吐いた。
 今度こそ、ここが最後の考えどころだ。
 
 愚っちゃん《ハッター・ルピア》を2体召喚すると、2体をハイパー化。そしてそのまま攻撃に向かわせ、メクレイドするとやってきたのは《龍后凰翔クイーン・ルピア》
 
 《ハッター・ルピア》の攻撃はブロックされるが、大きなクリーチャーが出てきた。
 そして《龍后凰翔クイーン・ルピア》の攻撃時に、《雷炎翔鎧バルピアレスク》降臨。これで打点は足りた。  更に《ハッター・ルピア》から《ハッター・ルピア》が捲れると、最後は《雷炎翔鎧バルピアレスク》で攻撃時に《ハンプティ・ルピア》ちていの手札を確認する。当然、《光牙忍ハヤブサマル》のようなカードもなかった。
 
 最終3本目、本当にギリギリの勝負だった。
 
 が、それを僅かな差で制したのは、愚っちゃんだった。
 
愚っちゃん 2-1 ちてい

WINNER:愚っちゃん
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