リモートデュエマスペシャルトーナメント 第1回戦:あーくん vs. ゲルネウス
ライター:伊藤 敦 (まつがん)
ついに始まったリモートデュエマスペシャルトーナメント。
零龍と超GRなしの2ブロックというリモート専用の特殊フォーマットで開催されるこの大会に集まったのは、39名もの精鋭たち。しかも彼らはひとりひとり全員が実績持ちなのである。
この大会にかかっているものは、日本一の称号などではない。まして、特別な大会への参加権利がかかっているわけでもない。
だが、たとえ勝って手に入るものが名誉だけだとしても、誰よりも本気になれる。そんなデュエル・マスターズへの激しく熱かりし情熱を持った男たちが、これからぶつかり合おうとしているのだ。
そんな参加者たちのうちの一人であるあーくんは、「高倍率の大会に出場し続けてポイントを稼ぎ、全国大会に出場する」という目標に基づいて各地の高倍率CSを巡ってかつコンスタントに好成績を収めることで、2019年度の全国ランキングにおいて中盤から終盤にかけてランキングを牽引し、見事全国大会の出場権利を勝ち取った強豪である。
GP9thのフィーチャーマッチにおける「僕は天才じゃない。凡才が勝つためには努力するしかないんだ」という彼自身の言葉は、プレイヤーとしての彼のスタンスを明確に物語っている。
そのあーくんと開幕から対峙することとなったのは、GP9thでの準優勝の記憶も新しいゲルネウス。赤単ブランドを駆り、決勝戦でイヌ科に2枚の《知識と流転と時空の決断》をトリガーされ敗北を喫したものの、愚直に最速でS・トリガーを踏み抜くだけではなくリスクリターンの分岐点を正確に読み取れる確かなプラン選択能力は、見る者すべてに鮮烈な印象を残した。
ともに2019年度に大きく躍進した者同士の二人が、一回戦から激突する。
Game
先攻のあーくんが《大樹王 ギガンディダノス》《キング・マニフェスト》《クイーン・アマテラス》チャージからの《ダーク・ライフ》を初動としたのに対し、後攻のゲルネウスは《「光魔の鎧」》《ロールモデルタイガー》《蒼龍の大地》と多色マナを3連続でチャージする静かな立ち上がり。
続く4ターン目も、3→5のブーストを達成したあーくんがしかし《完全不明》チャージのみでターンを返したのに対し、ゲルネウスが《完全不明》チャージから《フェアリー・シャワー》で4→6のブーストを達成して挽回する。
既にこの段階で、対戦している2人にとっては互いのアーキタイプは自明だろう。あーくんが使うのは《キング・マニフェスト》から大型クリーチャーを踏み倒すマニフェストキューブ。対してゲルネウスは5色の中から《蒼龍の大地》や《「光魔の鎧」》などの受けが堅いカードを色に関わらずふんだんに取り入れ、それらを《獅子王の遺跡》で接着する蒼龍コントロール。
踏み倒して出すかマナブーストして出すかという違いこそあるものの、互いに大型クリーチャーを軸にしたアーキタイプであるという事実に変わりはない。ならば勝敗を分けるのは、先に大型クリーチャーを展開できるかどうかだ。
そしてその機会は、あーくんに先に訪れる。《完全不明》をチャージしたあーくんが唱えたのは、《ミステリー・キューブ》!
あーくん「適当なところでストップって言ってください」
リモートデュエマのため、プレイヤーは対戦相手のデッキをシャッフルすることができない。そのため、自身のデッキのシャッフル中に対戦相手が任意のタイミングで声をかけてシャッフルを止め、その後で対戦相手が指定した数枚を山札の上から下に送ってもらう、というようなやり方がとられるのが一般的である。
はたして、そのようにしてめくられたカードは。
《大樹王 ギガンディダノス》!!!
《悪魔龍 ダークマスターズ》《閃勇!ボンバーMAX》に《ファイナル・ストップ》2枚など、ゲルネウスが抱えていた内容の濃かった手札がすべてマナゾーンに置かれてしまう。
だが、逆に言えば労せずしてマナが10マナまで伸びたということでもある。《獅子王の遺跡》でマナブーストすることが前提のゲルネウスのデッキには、この状況からでも逆転できるカードは無数に搭載されているはずだ。ならば、それを引き込むまで耐えるしかない。
ゲルネウス「手札何枚ですか?」
あーくん「2枚です」
そう考えたであろうゲルネウスは、ひとまず現段階では役に立たない《大樹王 ギガンディダノス》をチャージしてターンエンドする。
一方、もちろんあーくんも追撃の手を緩めない。《神秘の石柱》チャージから《キング・マニフェスト》を召喚、めくれた《得波!ウェイブMAX》を唱えると、置いたばかりの《神秘の石柱》をマナから回収して、《大樹王 ギガンディダノス》で攻撃するリスクをとることなくターンエンド。
ゲルネウス「終わりでいいですかね?」
あーくん「終わりで大丈夫です」
耐久する術が無数に搭載されているゲルネウスのデッキからすれば、攻撃してくれた方が楽だったことは間違いない。やむなくゲルネウスは引いたカードをチャージすることなくターンを返すのだが、ここで《神秘の石柱》をチャージしたあーくんのアクションは《クイーン・アマテラス》!山札から《絶望と反魂と滅殺の決断》をサーチして唱え、ゲルネウスが抱えた《フェアリー・ライフ》を叩き落とす。
さらにドローが芳しくなく再び何もせずにターンを返すことしかできないゲルネウスに対し、あーくんは《神秘の石柱》を唱えてマナゾーンの《ブラキオ龍樹》を墓地に落とすと、そのまま《クイーン・アマテラス》をマナに送りつつ《ブラキオ龍樹》をフシギバース!これにより、ゲルネウスのクリーチャーの登場時効果がすべて封じられてしまう。
そしてなおもゲルネウスが大型クリーチャーを引き込めず、《獅子王の遺跡》でマナ加速しかできないでいるのを尻目に、あーくんは《ミステリー・キューブ》を唱えて2体目の《ブラキオ龍樹》を着地させる。ゲルネウスのマナゾーンに《蒼龍の大地》が見えているため、S・トリガーを乗り越えるのに十分な過剰打点を揃えにいく構えだ。
返すゲルネウスは引き込んだ《悪魔龍 ダークマスターズ》を召喚するが、登場時能力は《ブラキオ龍樹》で封じられており、ただのバニラクリーチャーに等しい。
あーくん「《蒼龍の大地》ってマナに何枚見えてます?」
ゲルネウス「3枚マナにあります」
やがて《悪魔龍 ダークマスターズ》でゲルネウスの手札の《鬼ヶ覇王 ジャオウガ》を捨てさせて反撃の芽を摘んだあーくんは、《蒼龍の大地》がトリガーしたとしても盤面がほぼ返されないことを確認すると、満を持して《大樹王 ギガンディダノス》でワールドブレイク!
《フェアリー・ライフ》《フェアリー・シャワー》《襲来、鬼札王国!》とトリガーするものの、ゲルネウスは《キング・マニフェスト》を破壊することくらいしかできない。そして、この環境にシノビは《斬隠テンサイ・ジャニット》くらいしかないのだ。
あーくん「《ブラキオ龍樹》、そのままプレイヤーで」
ゲルネウス「ありがとうございました」
Winner:あーくん
ゲルネウス「《大樹王 ギガンディダノス》が出てきてから何もできなかったw マナいっぱいあったから、なんか引けばみたいな感じだったけど……何も引かなかったですね」
あーくん「出たー!みたいな感じでしたね。ツイてましたw」
ゲルネウス「まあでも、こういう機会じゃないと対戦できる機会がなかなかないんでよかったです」
あーくん「普段リモートとか、なんかやってたりするんですか?」
ゲルネウス「いや、リモートはほとんど……」
あーくん「こっちも同じです。確かに、遠方の人と対戦できるのって今はリモートくらいですからね」
関東のあーくんと九州のゲルネウスが、互いに全く移動することなしに対戦できる。リモートデュエマの強みを、二人は改めて実感したようだった。
ゲルネウス「今回、GRがないと1ブロックのデッキになりがちなんで、思いつく限りでなんかないかなーと考えてたら、《蒼龍の大地》に行き着きました」
あーくん「《蒼龍の大地》かギャラクシールドかモモキングか、くらいしか情報なかったですよね」
ゲルネウス「また全国とかでよろしくお願いします」
あーくん「こちらこそ、よろしくお願いします」
対戦後、勝者であるあーくんにキューブマニフェストというデッキ選択について簡単にインタビューしてみた。
--「このデッキは例によって『したい会』謹製のデッキなんでしょうか?」
あーくん「そうですね、『したい会』のデッキですね」
--「どうしてこのデッキに行き着いたんでしょうか?」
あーくん「やはり『1ブロックじゃないデッキが使いたい』というのがまずあって。いくつか試したけれど、弱いかもしくはカードを持ってないかだったので、『ある程度勝てて楽しい』というラインのデッキを目指しました。《キング・マニフェスト》というカードがイラストも効果も合わせて好きなので、《完全不明》《大樹王 ギガンディダノス》《ブラキオ龍樹》みたいなデュエマを破壊するカードをこれでめくったら気持ちいいかなと」
あーくん「あといくつか想定するデッキがあって、ギャラクシールドとビッグマナと《ドラグ変怪》あたりが多いんじゃないかなーと思ってました。その中でもギャラクシールドにはパワーを感じたので、それに勝てるようにはしたいということで選んだ感じです。結果として、『映え』を狙ってるみたいなデッキ選択になっちゃいましたねw」
--「今回の目標を聞かせてください」
あーくん「あまり勝ち負けにこだわらず、《ミステリー・キューブ》や《キング・マニフェスト》のめくりで対戦した人に悪態をつかせることが目標です(笑) できる限り長く勝ち残ってその模様を視聴者に届けたいですね。デュエル・マスターズ2を皆さんにお見せしたいです」
きちんとメタゲームを想定する本気度を見せつつも、エンタメ要素でデッキを決める稚気も忘れない。そんなあーくんに、《ミステリー・キューブ》の神ははたして微笑むのか。
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