全国大会2023:TOP5カード紹介
ライター:川﨑 大輔
全国大会2023の配信時に公開された『いきなりつよいデッキ』のCM。
「逆転こそがカードゲームだ」
「逆転快感カードゲーム」
逆転を強く押し出した映像によって幕を開けた日本一を決める戦い。
ここでは、大会を象徴する5枚のカードを通して全国大会2023を振り返っていきたい。
第5位:《ヘブンズ・ゲート》
デュエル・マスターズ黎明期から逆転の象徴として使われてきたこのカード。登場から20年以上がたつものの、『いきなりつよいデッキ 守りの王道』のコンセプトとしても選ばれた光自然のいわゆる巨大天門。
そして、この逆転の象徴がこの全国大会2023をも象徴するデッキとなった。
全国大会2023:メタゲームブレイクダウン~アドバンス~
全国大会2023:メタゲームブレイクダウン~オリジナル~
こちらの記事を参照していただければわかるように、全参加者48名の中でアドバンスは13名、オリジナルは14名と2位に圧倒的な差をつけて堂々のメタゲーム二冠王となっている。
やっぱりデュエマは逆転快感カードゲームなんだ、いきなりつよくてよかった!やったー!やったー!とはならないのがメタゲームの難しい所。そもそもだったら《ヘブンズ・ゲート》がトップ5カードの1位になってなければ話がおかしい。これだけのメタゲーム支配率を誇った光自然天門はトップ8にひとりもいなかったのである。逆転快感自体が否定されたとは言わないものの、光自然天門という戦略自体はこの全国2023ではかなり否定された形となった。
トップ8に入らなかっただけで光自然天門がダメ!?その結論は早いのではないか??
そう思う方もいると思われるので、実際に光自然天門を使用したプレイヤーが他デッキとマッチアップした時の勝率を出してみることとした。まずはアドバンスの上位6アーキタイプ(デッキコンセプト)の結果をみていただこう。 火水マジックの勝率に思わず目が行ってしまうが、一旦そこは置いといていただき光自然天門のマッチアップ成績をみていただこう。上位で勝ち越しているアーキタイプが(どちらかというと似たタイプのアーキタイプである)火光闇ドルマゲドンしかいない。特に、環境二番手の火水マジックに対しては全部で5戦マッチアップしているが全敗しているという状況である。
続いて、オリジナルにおける光自然天門のマッチアップ時の勝率をみてみよう。こちらは使用者数の分布の関係で上位7アーキタイプとの結果となる。 2戦しているフィオナアカシック相手には100%の勝率を示し、水闇自然ジャオウガにも勝ち越してはいる。だが、アドバンスよりは多少マシに見えるものの、やはり上位のアーキタイプに対してはかなり苦戦している。
天門同士のつぶし合いや、そもそもオリジナルで天門を選択したプレイヤーがすでにアドバンスでトップ8圏内にいなかったのではないか?などの他の要因ももちろんあるとは思われるが、それはそれとしてこの大会において天門のカギは固く閉じられていたと言えるだろう。
かつて全国大会2015において天門で王者となり、「天門のカギを持つ男」の二つ名を持つじゃきー。今大会では生配信での解説を担っていた彼に天門のカギの開け方を聞いてみた。
じゃきー 「天門はポジションデッキなんで、ポジションが悪い時はカギは開かないです」
たしかにじゃきーが王者となった時は、《奇跡の精霊ミルザム》の殿堂入り直後で天門へのガードが下がっている時期であった。その時と比べれば今回の巨大天門は事前に警戒されすぎていたと結論付けていいだろう。
dotto デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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だが、そんな中でも多種多様な天門デッキが存在していたのも今大会の見どころではあった。特にdottoを中心とした調整チームが持ち込んだ《聖魔連結王 ドルファディロム》と《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフⅠ世》を採用した形の巨大天門は今後の新たなスタンダードとなる可能性を秘めたエポックメイキングなリストだったと言っていいだろう。
第4位:《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》
結論から言えば、光自然天門というデッキはいわゆるメタカードに弱いのだ。逆転快感カードゲームと言えども、相手に逆転される側は当然不快、逆転して気持ちよくなられない対策はできるし、してくる。つまり、相手のトリガーによる踏み倒しを対策してしまえば天門相手なんてラクショー、やったー!……とはならない。光自然天門は受けデッキであるかのように見せかけて、実は自身のターンに≪スターゲイズ・ゲート≫からの《闘門の精霊ウェルキウス》で大量のブロッカーを展開して能動的に攻めることが可能なのである。《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》と《邪帝斧 デッドアックス》の存在するアドバンスであればなおさらだ。
それを踏まえてか、今大会のアドバンスの火水マジックには他ではみなかったかなり特徴的なカードが採用されていた。実際に、アドバンスで5戦した4人の火水マジックのデッキリストをみてみよう。
えーじ デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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のすけ デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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ノン@ゴジット デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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はやと デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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これらのデッキリストにおいて、はやとを除いた3人のデッキに採用されているのがなんとテスタ・ロッサ a.k.a.赤い稲妻こと《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》である。
自身のターンのトリガー相手には効かない踏み倒し対策でありながら、多くの火水マジックに採用されているこのクリーチャー。実際に、アドバンスで火水マジックを選択した8人中5人がこのカードを選択しており、また、ここでリストが上がっているえーじ選手のすけ選手ノン@ゴジット及びにはるる選手がプロフィールにおいても自身のデッキの最大の特徴として名前を挙げていた。
一方で、オリジナルの火水マジックにおいては《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》は1枚も採用されていない事を考えると、4人が言うように光自然天門対策に限らず踏み倒しの多いアドバンスのメタゲームを完全に読み切った選択だったと言える。
火水マジックに限らず、火闇バイクの躍進にも一役買っているこのカード。全国大会2023において『守りの王道』で活躍したのが《ヘブンズ・ゲート》だとすれば、『攻めの王道』で活躍しているのは《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》だったと言えるだろう。
第3位:《アビスベル=覇=ロード》
アドバンス・オリジナルともにトップシェアだったものの勝率的にはかなり厳しい結果、言葉を選ばなければ負け組だった光自然天門に対して、勝ち組だったアーキタイプはどれだろうか。 アドバンスにおいては闇自然アビスが、そしてオリジナルにおいては火闇自然アビスがその座にあったと言っていいだろう。特に、オリジナルでの火闇自然アビスは前述の上位アーキタイプとのマッチアップにおいて光自然天門を除いて(対戦母数が少ないとはいえ)100%の勝率を誇っており、この環境の答えであったと言っても過言ではないだろう。 実際、使用者の中でもにわか選手をトップ8に送り込んでいる。特ににわか選手の《謀遠 テレスコ=テレス》への信頼度はプレイを見る限りでは圧倒的であり、このカードこそがアビスのトップ5カードにふさわしいのではないかという声もあった。
ZweiLance デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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だが、一方でメタゲームを読み切った選択である《邪闘 シス》によってZweiLance選手トップ8入賞の原動力であるアドバンス全勝を飾ったり、オリジナルにおいて水魔導具から「魔ニキ」ミノミー選手を宗旨替えさせ見事トップ8に入賞させた闇自然アビスについてもここで触れないわけにはいかない。
したがって、今回は両方のキーカードであり、アビスロイヤルの頭領でもある《アビスベル=覇=ロード》をトップ5カードに選出させていただいた。とにかく、デュエマにおいて「覇」の文字が入ったカードに弱いカードなどない、むしろ出したら一方的になってつまらないまであると言っていいだろう。
結論として『魔覇革命』のオーバーレアもいきなりつよいということだ。
第2位:《芸魔王将 カクメイジン》
そんな最強主人公カードである《アビスベル=覇=ロード》を抑えて第2位となったのは同じく『魔覇革命』のこのカードである。 そもそも、アドバンス・オリジナルともに使用率第1位が光自然天門ではあるが、同じようにどちらも使用率第2位は火水マジックなのである。むしろ、特にオリジナルにおいては光自然天門の使用率が第1位となった最大の理由は事前に最も警戒されていたデッキが火水マジックであったからと言っても過言ではないだろう。実際、プロフィールで語られている仮想敵として挙げられている回数は圧倒的なナンバーワンである。さらにそれだけ警戒されていたにもかかわらず、特にアドバンスにおいては圧倒的な勝率を誇っている。なぜ、光自然天門は警戒された結果として上位入賞を果たせなかったのに、火水マジックはトップ8に半数の4人を送り込むという躍進を遂げることができたのはなぜか。
その答えは、冒頭で書いたじゃきーのいう天門のカギが開かなかった理由の反対にある。
つまり、光自然天門がメタゲーム的に相手の状況に依存するポジションデッキあるのに対して、火水マジックは自分が相手に対応するポジションになることを強いるデッキ、アポロに対する逆アポロでいえば、逆ポジションデッキなのである。逆ポジションデッキという用語はわかりにくいので今後のこの文章では使わないが、とにかく対戦相手に不自由な戦いを強いて自分の有利を押し付けるアーキタイプなのだ。
それだけで言えば闇自然アビス系のデッキも同じように押し付けをすることが可能ではあるのだが、火水マジックが闇自然アビス系より優位でありより警戒される理由は押し付け始めるターンの早さと大量のドローによる再現性の高さにある。 《芸魔隠狐 カラクリバーシ》は《瞬閃と疾駆と双撃の決断》との組み合わせによってそのターンに《芸魔王将 カクメイジン》へとさらなる革命チェンジをし、3ターンキルを可能にする。 また大量に山札を掘り進められる《氷柱と炎弧の決断》、そして《AQvibrato》《灼熱の演奏 テスタ・ロッサ》といった展開とドローを両立したクリーチャーたちは高い再現性を可能とする。
そして、そのすべてが一撃でゲームを決める《芸魔王将 カクメイジン》へと繋がっていく。《芸魔王将 カクメイジン》はブロックされてしまったら能力を使えないクリーチャーなのではない。相手にブロックできる状況を作らなければ敗北してしまうという状況を押し付けるカードなのだ。
したがって、今回は本質的なキーカードであり、マジックにおける究極のフィニッシャーである《芸魔王将 カクメイジン》をトップ5カードの中でも2位に選出させていただいた。とにかく、デュエマにおいて「カクメイ」という読みが入ったカードに弱いカードなどない、《Rev.タイマン》も光自然天門で無茶苦茶がんばっていたではないか。
結論として『魔覇革命』のオーバーレアもいきなりつよいということだ。大切な事なので二度書かせていただいた。
このように『魔覇革命』の2大オーバーレアがトップ8のうち6人を占めた今大会だったが、最終的に大会を制しキナリ選手を日本王者へと導いたのはその火水マジックへの相性の悪さから直前までダークホース扱いであった水魔導具であった。どれくらいダークホース扱いであったかというと、オリジナルで登場する可能性のあるアーキタイプの解説スライドを用意していたバイク仙人ことコバがスライドを用意しておらずなんとなく念のために直前でスライドを追加したくらいには警戒されていなかったのだ。
直前の殿堂発表で《神の試練》と《「無月」の頂 $スザーク$》を失い、《堕∞魔 ヴォゲンム》を中心とした相手に対応を押し付ける環境の圧倒的なパワーデッキとしての立場を失った魔導具系のデッキ。だが、思い出してほしい。全国大会2015で天門が王者となったのも《奇跡の精霊ミルザム》の殿堂で天門系へのガードが下がっていた状態であったことを。
全国大会2023のメタゲームは水魔導具の苦手な火水マジックが警戒されたことで、むしろ有利な光自然天門が中心となっていた。三度じゃきーの言葉を引用するのならば、今大会において水魔導具こそがポジションデッキだったと言っていいだろう。 また、水魔導具を使用するキナリ選手とZweiLance選手は共に苦手とする火水マジックが固まっているブロックと反対側のブロックに配置されたのも追い風だったと言える。さすがに両選手ほどの巧者をもってしても2戦連続で火水マジックに2本先取するのはかなり難しかったはずだ。
結果としてZweiLance選手との同型対決を制したキナリ選手は、前期DMPランキングで48000ptを超えて1位となっていたミノミー選手をも倒し、決勝戦へとコマを進めることとなった。
全国大会2023 決勝戦:にわか vs. キナリ
にわか選手と互いに1本ずつとった3本目。3ターン目に《鬼寄せの術》で軽減しての《邪幽 ジャガイスト》からの大量展開により圧倒的に不利になり、誰もがにわか選手の優勝を確信した瞬間に、最後にブレイクされたキナリ選手のシールドからトリガーしたのがこのカードだった。
第1位:《堕呪 ギャプドゥ》
スーパー・S・トリガーによって1ターンを確保したキナリ選手は、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》によって4体のドルスザクを並べたのだった。まさに「逆転こそがカードゲームだ」
しかし、これはただの逆転ではない。そもそも《堕呪 ギャプドゥ》は近年の水闇魔導具系デッキでは採用率はかなり低めのカードであり、殿堂によって《卍 新世壊 卍》《好詠音愛 クロカミ》型の水魔導具に戻ったことで、2マナのドローできる魔導具として再び採用されるようになったカードである。殿堂によって結果的に採用されることになったカードがドラマを生んだ。
そして、現状のメタゲームを読み切っての水魔導具を持ち込むというキナリ選手の選択、そして三重県の仲間たちと研鑽したことで磨かれたプレイスキルによるZweiLance選手ミノミー選手という強豪への勝利、これらのどれが欠けていても、この素晴らしい逆転劇にはつながらなかっただろう。
デュエル・マスターズはいきなりつよいし、いきなり逆転する。
デュエマの本質、それは突然の逆転劇。逆転快感カードゲームだ。
だが、一番の逆転の快感は、いつだって積み重ねたモノの先にある。
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