超CSⅧ北海道 決勝戦:楽道 vs. 徒花
ライター:河野 真成(神結)
撮影:瀬尾 亜沙子
こんなことがあるものか、と思う。楽道と徒花は、現在共に中部で活動するプレイヤーだ。
そして今回、楽道の故郷で超CSが開催ということで参加をした。
2人でデッキを調整し。
2人で北海道へと向かい。
そしてなんと2人で決勝卓に座っている。
徒花「仲間が(全国)行くには別にいいんだけどさ」
楽道「でも勝ちたいよな。どうなっているんだ」
徒花「珍しいこともあるもんだ」
楽道「なんで最後に当たる相手がお前なんだ」
徒花「いいじゃないか、ドラマがあって」
そんなやり取りをしながら、試合準備を進めている。
一体何回大会をやり直せば、一体何回世界を巻き戻せば、このシチュエーションは再現するのだろう。
そんな天文学的な確率を超えた先に、この決勝戦はある。
使うデッキも当然同じ、【水単サイバー】。リストはわずかに1枚違うだけ。
まるで物語のような伝説的な決勝が、ここで始まる。
Game1
先攻:徒花
互いのデッキリストに、《Dの天災 海底研究所》は採用されてはいない。それは互いに承知の事実だ。相手の動きを妨害する手段は《パクリオ》くらいであり、それは即ち先3の《マクスハト》を止める術はないことを示している。であれば、互いに狙いはただ1つ。先に回し切ってしまおう。
そうなると俄然有利な先攻の徒花。まずは2ターン目に《アストラル・ハート》をプレイして、3ドローとデッキトップの固定を行う。対して楽道は《アストラルの海幻》をプレイであり、《アイドル・ハート》をディスカードしてターンを終了した。
もう、ゲームは終わってもおかしくはない。
だが徒花の3ターン目の動きは《裏斬隠 テンサイ・ハート》だった。これには楽道もホッとしたことだろう。返しの楽道は、そのまま《マクスハト》を投げて動き出す。
今度は祈る立場となった徒花。だが楽道の表情は、あまり芳しくなかった。
「実力ねぇな……」
そんな風に楽道はボヤく。まだゲームは終わらせないという神の啓示か。結局《フラワー・ハート》を着地させ、ターンを終了した。
なんとか強力な動きを見せたい徒花だったが、4ターン目も《アストラルの海幻》でターンを終了するしかなかった。
楽道は2面残った盤面を主張する形で、サイバーの切り札である《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》の召喚を宣言する。進化元は《アイドル・ハート》2枚に《昇カオスマントラ》と、極めて強力なもの。
当然、そのまま攻撃に移行する。徒花の《アストラル・ハート》と《アストラルの海幻》をバウンスすると、まずはメテオバーンで落ちた《アイドル・ハート》の効果で《アストラル・ハート》を繰り出し、さらに《昇カオスマントラ》の超魂Xが《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》へと繋がっていく。
最終的に《パクリオ》がデッキから出力され、徒花の《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を楯へと埋める。《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》は進化元の《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》ごと手札に戻り、これでターンを終了。
正直なところ、徒花もこのゲームは敗北を覚悟していたであろう。
徒花はまずは《アストラル・ハート》をプレイすると、そのまま残る2マナで《エメラル》へと繋ぎ、楯へと埋められた《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を救出してターンを終える。
できることはやっておく、の精神だ。
楽道は《アストラル・ハート》から《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》へと繋いでいき、再びメクレイドと展開を開始していく。目的は、《昇カオスマントラ》の回収だ。
だが《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》でドローしても、《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》でめくっても、《アストラル・ハート》でドローをしても、探しても探しても《昇カオスマントラ》の2枚目が見つからないのだ。
そして遂に持てる手数を使い切ってしまう、ターンが徒花へと返ってしまう。……楽道は、先の徒花の手札の中身を知っている。それは《パクリオ》で覗いたからだ。
返しの徒花、まずは手札に返った《エメラル》をプレイすると、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を再び回収し、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を発射。下にあるのは《昇カオスマントラ》2枚。
できることはやっておいた徒花の精神が、ここで生きた。今度は徒花が、電脳空間へ潜り込んでいく。
フィーチャー卓は暑い。徒花の額には汗が光る。
サイバーというデッキは、完全ループをしなくとも《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》で殴り切って充分なケースが多い。
だがサイバーミラーはそうもいかない。互いのデッキに《ルード・ザーナ》が採用されているからだ。
ゆえに徒花はループを選択する。
途方もない回数のメクレイドを繰り返し、《アストラル・ハート》で山札を積み込み、《サイバー・N・ワールド》を着地させ、そしていよいよ準備は整った。
サイバーでさえあれば、好きなクリーチャーを出すことも手札に返すこともできる。
最終的に《サイバー・N・ワールド》と《パクリオ》が好きな数だけ出てくることによって山札が手札を経由して楯へと叩き込まれるという、通称「Nパク」によって楽道のデッキはすべて消えることが確定。
こうして徒花が、1本目を先取した。 試合後開いた楽道の楯には、《昇カオスマントラ》が2枚あった。
徒花 1-0 楽道徒花は額の汗を拭う。
《昇カオスマントラ》が2枚以上落ちる確率というのは、わずか7%ほどの事だ。
もちろん、この2人が一緒に決勝にいることに比べるとまだ“現実的”な数字には映る。
だが、いずれにせよこの決勝卓は何か偶然を超えた世界に突入しているような、そんな気がするのだ。
ゲームは変わって楽道が先攻。このドラマのような決勝は、どんな結末を迎えるのだろう?
Game2
先攻:楽道
楽道は《アストラルの海幻》からスタート。徒花は《アストラル・ハート》でターンを終了する。注目の3ターン目、楽道は《マクスハト》で発進。もう1枚の《マクスハト》を経由して《アストラル・ハート》で終着。山札に3枚を積み込み、ターンを終える。
対して徒花も《マクスハト》スタートで、こちらは《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》。下に入ったのは《アイドル・ハート》に《昇カオスマントラ》とかなり強力だ。
まずは攻撃時に楽道の盤面を空にすると、《アイドル・ハート》のメクレイドから入る。《アストラル・ハート》で3ドローを選択。《昇カオスマントラ》の効果で《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》を経由し《アストラルの海幻》を着地させると、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を1回手札に戻してターンを終了。
盤面を返され《マクスハト》を投げられない楽道は《パクリオ》を投げるものの、公開された手札には《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》が3枚に《昇カオスマントラ》も3枚。一旦《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》を埋めて、ターンを返した。
当然《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を投げる徒花。《昇カオスマントラ》が3枚の《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》が完成する。
攻撃時にまずは《アストラル・ハート》を繰り出しドローをすると、《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》に辿り着いたことで徒花のチェインはもう止まらない。
《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》と《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》2枚による無限メクレイドが始まる。
あとは第1ゲーム同様、徒花が楽道の山札を全て楯に叩き込むだけ――とはならなかった。物語はここで終わらなかった。
メクレイドを続ける徒花がの様子が、少しおかしい。
なんと徒花の山札に《サイバー・N・ワールド》と《エメラル》がいないのだ。
どちらかがいれば、ループでそのまま勝ちだった。《サイバー・N・ワールド》が楯に落ちていても、無限《エメラル》で回収が可能だからだ。
《サイバー・N・ワールド》と《エメラル》の両方が楯落ちする確率は、1.3%ほどしかない。
確率を超えたこの物語の結末に、更にとんでもないシナリオが用意されていたのだ。
こんなことが、あるのだろうか。
2人で調整し。
2人で北海道に向かい。
そして2人で決勝を戦う。
そんな奇跡のような出来事の果ては、わずか1.3%の世界線に突入した。神はまだ、徒花に“挑戦”すべき試練を求めているのか。
一体何回大会をやり直せば、一体何回世界を巻き戻せば、このシチュエーションは再現するのだろう。
徒花は1回、呼吸を整える。
どうやら、プランを決めたようだった。
サイバークリーチャーの出し入れ自体は、幾らでも可能だ。ではどのように詰めていくのだろうか。
徒花はまず《シュトラ》を出し入れすると、楽道のマナを全て消し飛ばし、それを《パクリオ》で一度楯に叩き込んでいく。
続けて《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を残して、進化した《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》でシールドをブレイクしていく。そして今度は《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》の攻撃から再びループを開始すると、先にブレイクして手札に入ったカードを《パクリオ》を繰り出し、手札を楯に埋め直していく。
おわかりいただけただろうか?
そう「殴る→《パクリオ》で埋め直す」の動きを繰り返すことによって、楽道の楯の中身をチェックしているのだ。
目的は《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を飛ばす《ルード・ザーナ》の対策。
要するに《ルード・ザーナ》で飛ばないように手札の枚数を調整しながら楯の中身を確認しているのわけだ。これならば《ルード・ザーナ》がトリガーしても、手札が5枚になることはないので《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》は生き残る。もちろん事前にイメージはしていただろうが、この土壇場で、練習でもほぼ遭遇したことないであろう状況から、徒花はしっかりと答えを紡ぎ出した。
そして3回目攻撃で、楽道のシールドから《ルード・ザーナ》が顔を出した。だが手札の枚数はドローしても4枚。《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》は飛ばない。
そしてこの攻撃をもって、楽道の楯の中身が全て割れた。徒花は神からの“挑戦”に勝ち、大輪の花を咲かせみせた。
「全国頑張れよ!」
そして楽道は共に最後まで戦った友人に、この物語の終わりを告げたのだった。
徒花 2-0 楽道
WINNER:徒花
信じがたいシチュエーションの決勝戦。
楽道の《昇カオスマントラ》の2枚楯落ちと敗北。
そして徒花の2種の楯落ちと勝利。
ボクらは夢でも見ていたのだろうか。
まるで物語のような決勝は、ここで終わりを迎えた。
最後に勝利したのは、この日楽道と最後まで共に歩んできた徒花だった。
だが2人の物語自体は、恐らくまだ終わらないだろう。
徒花「(ここで勝ったからには)全国大会、頑張らないとな」
全国大会に向けて練習するとき、その向かいにはきっと楽道の姿があるはずだから。
初の北海道での開催となった超CSⅧ北海道で、頂点になったのは徒花だった。
おめでとう徒花!
この決勝まで共に歩んできた友との練習の成果を、きっと全国大会でも見せてくれる筈だ。
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徒花 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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楽道 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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