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全国大会2024 北陸エリア予選:メタゲームブレイクダウン

ライター:原田 武(たけじょー)

 北海道、東北、東海と続いた王道篇第3弾「ゴールド・オブ・ハイパーエンジェル」2ブロック環境でのエリア予選。王道篇第4弾 「悪魔神、復活」が年の瀬と共にじわじわと迫りくる中、この環境のエリア代表決定戦も残りわずかとなってきた。

 先に開催された3大会を経て加速度的に進められた2ブロック環境の開拓も一区切りを迎えようとしている。日本海からの荒波が打ち付けるここ北陸エリアで、煮詰まりつつある研究はメタゲームにどのような彩りを添えるのだろうか。

 まず初めに、大会全体のデッキ分布を見ていこう。

全参加者デッキ分布

12 【火水マジック】
11 【水自然ジャイアント】
6 【ターボマジック】
5 【光水自然ゼニス】
4 【光闇メカCOMPLEX】
3 【光水闇COMPLEX】
3 【闇自然ゼニス】
12 その他(母数2以下)

計56名


 ついに【火水マジック】が母数最大に躍りでた。実力で言えば文句なく最強クラスの速攻デッキだが、これまでのエリア予選では【水自然ジャイアント】や各種【ゼニス】、あるいは【ターボマジック】に最大シェアを譲っていた。東北・東海のエリア予選で2連覇を果たしたことも影響したか、ここにきて大きく勢力を伸ばしている。

 2番手には北海道予選を制した【水自然ジャイアント】が僅差でつけ、その下はやや間が開きつつコンボデッキの雄【ターボマジック】、新進気鋭のコントロール【光水自然ゼニス】と続く。少しずつシェアを取り戻しつつある【光闇メカCOMPLEX】の姿も見えるなど、多彩なデッキがしのぎを削る環境となっている。

 少々意外だったのが【火自然ゼニス】の減少で、なんと使用者0となった。エリア予選開始以降それなりの使用率を保ち続けてきたのだが、【火水マジック】【水自然ジャイアント】が幅を利かせる環境ではやりづらいと判断されたか。あるいは【光水自然ゼニス】と【闇自然ゼニス】にビッグマナデッキのポジションを奪われてしまったか。今後の動向に気を付けておきたい。

 では以上を踏まえて、本戦出場を果たした16名のリストを追うこととしよう。

TOP16デッキ分布

3 【光水自然ゼニス】
2 【火水マジック】
2 【水自然ジャイアント】
2 【ターボマジック】
2 【闇自然ゼニス】
1 【光闇メカ】
1 【闇自然アビス】
1 【火光アーマード】
1 【火水闇プレジールCOMPLEX】
1 【光闇自然メカ】


【光水自然ゼニス】 予選突破率60%

 使用者数の差をひっくり返し、もっとも多く予選突破者を輩出したのが【光水自然ゼニス】。大流行の【火水マジック】に豊富なS・トリガーで対抗でき、また豊富な除去と質の良いクリーチャー群によって様々なデッキに競り勝てるのが魅力だ。予選段階で【火水マジック】が跋扈したことを考えれば、受けの厚いこのデッキがしっかり勝ち上がるのも納得がいく。

 ギチギチ
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 23 クリーチャー
1 《光牙忍ハヤブサマル》
3 《ニアピン・モスキート》
4 《プリンセス・パーティ ~シラハの絆~》
3 《聖霊超王 H・アルカディアス》
2 《蒼神龍トライクラブ・トライショット》
1 《偽りの名 ワスプメリサ》
1 《蠍紙の聖沌 5450r1》
4 《「狡智」の頂天 レディオ・ローゼス》
4 《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》
 8 ツインパクト
4 《戦攻のシダン アカダシ / 「いいダシがとれそうだ」》
2 《清浄のカルマ インカ / オキヨメ・水晶チャージャー》
2 《der'Zen Mondo / ♪必殺で つわものどもが 夢の跡》
 9 呪文その他
4 《「この私のために華を咲かすのだ!」》
1 《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》
4 《シャングリラ・クリスタル》


 この2ブロック環境では珍しく3文明を基調とすること、また水晶マナギミックに頼りつつではあるが基本的にはマナを伸ばしていくデッキであることから、採用候補となるカードの幅がかなり広いことにも注目したい。準決勝まで勝ち上がったギチギチのリストを見ると、《蠍紙の聖沌 5450r1》1枚採用による光単色マナの確保や同系統との勝負で切札になるであろう《偽りの名 ワスプメリサ》投入など細かな最適化の痕跡が見てとれる。

 比較的登場から日の浅いデッキということもあり、更なる開拓とバージョンアップに期待したい。

【闇自然ゼニス】 予選突破率67%

 「2ブロックのゼニス」元祖、堂々復権。【火水マジック】の猛攻を捌くコントロールデッキが増えるのであれば《「呪怨」の頂天 サスペンス》の使いどころだ。最速4ターンでのオールハンデスが通れば、大概の相手を沈黙させられる。

 ネルサコーム
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 18 クリーチャー
1 《光牙忍ハヤブサマル》
3 《ア:グンテ》
3 《謀遠 テレスコ=テレス》
3 《偽りの名 ワスプメリサ》
4 《「呪怨」の頂天 サスペンス》
4 《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》
 2 ツインパクト
2 《清浄のカルマ インカ / オキヨメ・水晶チャージャー》
 20 呪文その他
4 《「この私のために華を咲かすのだ!」》
4 《Dの寺院 タブラサ・チャンタラム》
4 《シャングリラ・クリスタル》
2 《深淵の逆転撃》
4 《サスペンス・ザイン》
2 《黙示録の水晶》


 ネルサコームのリストを見ると《サスペンス・ザイン》《ア:グンテ》といったS・トリガーに《深淵の逆転撃》、さらに《光牙忍ハヤブサマル》までもが投入されており、「【火水マジック】さえ受け切ればあとはなんとかなる」という声が聞こえてくるようだ。《謀遠 テレスコ=テレス》も持て余しにくい中継ぎ役として多くの対面で活躍したことだろう。

 他の選手を見ても《偽りの名 スコーピオ》《九番龍 ジゴクバンカー Par459》を採用するなど、再度研究が進められている様子が伺える。「ゼニスと言えば闇自然」の声が再び聞かれる日も近いかもしれない。

【水自然ジャイアント】 予選突破率18%

 数こそ大きく減らしたものの、2ブロックのスター【水自然ジャイアント】もしっかりと爪痕を残している。ジャイアントの種族シナジーをフル活用するものに加え、エリア予選開始後に急速に浸透した「《豊潤フォージュン》《死神覇王 ブラックXENARCH》」型も定着しつつあるが、こっすぅ は後者をもう一段掘り下げた。

 こっすぅ
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 25 クリーチャー
3 《アシステスト・シネラリア》
4 《哀樹神官 グリッファ》
3 《五番龍 レイクポーチャー ParZero》
4 《チアスペース アカネ》
4 《死神覇王 ブラックXENARCH》
2 《聖霊超王 H・アルカディアス》
1 《銀河竜 ゴルファンタジスタ》
4 《超重竜 ゴルファンタジスタ》
 11 ツインパクト
4 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》
3 《清浄のカルマ インカ / オキヨメ・水晶チャージャー》
4 《輝跡!シャイニングロード・マンティス / 輝跡の大地》
 4 呪文その他
4 《豊潤フォージュン》

 《死神覇王 ブラックXENARCH》4枚、《聖霊超王 H・アルカディアス》2枚。ともすれば欲張りにも見える積み込み方だが、それだけ現在のメタゲームにおける《聖霊超王 H・アルカディアス》を高く評価してのことだろう。《哀樹神官 グリッファ》からのアクセスのほか、《超重竜 ゴルファンタジスタ》終極宣言が絡めば素直に召喚する選択肢も見えてくる。頼りになる場面はかなり多そうだ。

【火水闇プレジールCOMPLEX】 予選突破率50%

 前日の東海予選でもTOP16を輩出した【火水闇プレジール】が、やや形を変えつつベスト8まで食い込んだ。

 イロツカ
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 27 クリーチャー
4 《DARK MATERIAL COMPLEX》
4 《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》
3 《終止の時計 ザ・ミュート》
4 《楽識神官 プレジール》
4 《アーテル・ゴルギーニ》
1 《超楽識 フミビロム》
3 《死神覇王 ブラックXENARCH》
4 《忍蛇の聖沌 c0br4》
 5 ツインパクト
2 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》
3 《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》
 8 呪文その他
3 《氷柱と炎弧の決断》
4 《イカリノアブラニ火ヲツケロ》
1 《鬼火と魍魎の決断》

 イロツカが投入したのは《DARK MATERIAL COMPLEX》。小型クリーチャーを並べながら《楽識神官 プレジール》で攻めたてつつ、除去による制圧や《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》を乗り越える際にこれを活用していくものと思われる。呼び出し先としては《アーテル・ゴルギーニ》の他《死神覇王 ブラックXENARCH》が採用されており破壊力は十分。従来の【COMPLEX】系列とは一味違った戦い方を魅せてくれそうだ。

【光闇自然メカ】 予選突破率100%

 【闇自然アビス】【火光アーマード】2デッキが主人公種族の面目躍如とばかりに母数1からの予選突破を果たす中、密かにそれに追随したのが勇者あゆりの【光闇自然メカ】だ。

 勇者あゆり
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 26 クリーチャー
4 《忍鎖の聖沌 94nm4》
2 《鎧機天 シロフェシー》
4 《ゴールド・フラウム》
2 《ハイパー・エン・ゲルス》
2 《ヨビニオン・マルル》
4 《アーテル・ゴルギーニ》
1 《セラフ・テンペストא》
2 《堕カオスマントラ》
1 《聖カオスマントラ》
2 《超天使 ゴルドラン・ゴルギーニ》
2 《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》
 6 ツインパクト
4 《星姫械 ミモザスター / 招光呪文「メカミング」》
2 《配球の超人 / 記録的剛球》
 8 呪文その他
4 《「この私のために華を咲かすのだ!」》
4 《フェアリー・Re:ライフ》


 見よ。この独特かつ磨き抜かれたリストを。メインギミックは2コストマナ加速からの《ゴールド・フラウム》召喚、ヨビニオンから《忍鎖の聖沌 94nm4》を繰り出して即メクレイド、というもの。これによりシールドを増やしながら一気に打点を形成する。展開力はあの【水自然ジャイアント】にも引けをとらない。  こうして展開したクリーチャーを活かし、ハイパーエナジーで軽減した《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》《超天使 ゴルドラン・ゴルギーニ》で決めに行く。そこまでせずともメカ軍団の数で押し切ることも可能とのこと。動きの過程でシールドが増え、またブロッカーも並ぶため突発的な攻めにもある程度対応できる。

 細部までこだわられたギミックの数々にも注目だ。ニンジャ・チェンジでのコンバットトリックは勿論のこと、《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》《ハイパー・エン・ゲルス》を組み合わせた攻撃ロックも選択できるように仕上げられている。《鎧機天 シロフェシー》《堕カオスマントラ》など要所要所で痛烈に刺さりそうなメカクリーチャーを分散して採用し、メクレイドか《星姫械 ミモザスター / 招光呪文「メカミング」》呪文側でアクセスしていくという構造も小気味よい。

 惜しくもベスト16での敗退となったが、東北大会の【火水ハイパーエナジー】や東海大会の【水単ゼニス】同様2ブロックの可能性を見せてくれたデッキであった。

【火水マジック】 予選突破率17%

 ここまで紹介してきた個性豊かなデッキによる包囲網を突破し、優勝を掴んだのは【火水マジック】であった。

 いかろす.
 全国大会2024 北陸エリア予選
 2ブロック構築
 18 クリーチャー
4 《AQvibrato》
4 《アシスター・Mogi林檎》
4 《芸魔隠狐 カラクリバーシ》
4 《芸魔王将 カクメイジン》
2 《芸魔龍王 アメイジン》
 17 ツインパクト
4 《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》
1 《同期の妖精 / ド浮きの動悸》
1 《煙幕の聖沌 k3mur1 / 聖沌忍法 メカくしの術》
3 《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》
3 《調律師ピーカプ / ♪音速で 本番中に チューニング》
4 《Napo獅子-Vi無粋 / ♪オレの歌 聞けよ聞かなきゃ 殴り合い》
1 《ゴルパガーニ-A7 / ダウンフォース・サーキュラー》
 5 呪文その他
4 《氷柱と炎弧の決断》
1 《瞬閃と疾駆と双撃の決断》


 下馬評通り……と言いたいところだが決してその道のりは楽なものではなく、母数に比して予選突破者は2名まで急落。突破率は17%となった。環境最速のビートダウンデッキとして、そして直近2回のエリア予選優勝で人気を集めるであろうデッキとして相当に意識されていたことはまず間違いない。

 その一方で予選を突破した2名はそのまま決勝まで勝ち上がって【火水マジック】ミラーマッチを演じており、このメタゲームを制したデッキであることもまた疑いようはないだろう。決勝の様子はテキストカバレージに収められているので、そちらも是非確認して頂きたい。

 多くのデッキがS・トリガーや逆転劇による除去でこのデッキの対策に走ったが、その努力をあざ笑う1枚が《ゴルパガーニ-A7 / ダウンフォース・サーキュラー》だ。  自身の革命チェンジも禁止してしまうお茶目さはあるものの、的確なタイミングで《芸魔隠狐 カラクリバーシ》《芸魔王将 カクメイジン》から唱えることができれば生半可な受けでは止まらなくなってしまう。環境から逆風が吹く中、頼りがいのある1枚となったことだろう。

 もちろん【火水マジック】の常として、そんな搦手に頼らずともS・トリガーなし・G・ストライクなし・逆転撃なしであっさりと殴り勝ってしまうこともある。対策したいが、対策したとしてもダメなときはダメというままならなさ——このあたりがこのデッキの最も恐ろしいところと言えるかもしれない。

おわりに

 【火水マジック】爆走、しかしその轍に多くのデッキの進化が見られるような大会となった。

 次回のエリア予選は12月14日、九州での開催となる。「ゴールド・オブ・ハイパーエンジェル」環境のクライマックスに向けて、この記事が読者諸氏が環境を読み解く一助になれば幸いだ。
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