全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会:メタゲームブレイクダウン
ライター:齋藤 陽(あーくん)
「悪魔神、復活」リリース以後のメタゲームは、プレイヤーたちに一つの命題を与えた。火水闇ジャオウガをどう倒すか?
背景ストーリーのワルドバロムのように、現実世界で君臨した夢の鬼をどう攻略するか。
中四国の猛者たちはメカやマジックを手に取りジャオウガを圧倒し、関東の英雄たちは光水闇エルボロムや4cエルボロムといった受ける構造で それぞれジャオウガを倒した
はじめに
「【ジャオウガ】と【エルボロム】をどうやって倒すのよ」

【火水闇ジャオウガ】が強いという下馬評を超え、決勝進出率3/4。その中でもリストシェアが1組。
他にもドラ焼きやこっちゃーといった強豪プレイヤー達が、揃いも揃って【光水闇エルボロム】を選択している。
「【ジャオウガ】のメタゲーム(ゲーム環境)であるならば、最適なデッキは【エルボロム】」
言葉にしなくても、掲げられたデッキリストは声として世界に届いた。
その結果、メタゲームの主役は確かに【火水闇ジャオウガ】一強から、【ジャオウガ】と【エルボロム】の二強に移ったと言えるだろう。そして、二強環境は片方を意識するともう片方に狩られてしまうことも多い、非常に難しいゲームになってしまう。
ではここから、【ジャオウガ】と【エルボロム】のメタゲームになった後のジャッジ大会に挑んだ104人の分布を確認してみよう。
デッキ分布
16 【火水闇ジャオウガ】14 【光水闇エルボロム】(ハック9ハック抜き5)
13 【火自然ゼニス】
12 【火水マジック】
10 【4cジャオウガ】
7 【ターボマジック】
5 【水自然ジャイアント】
4 【闇単ゼナーク】
3 【ザゼゼーンメカ】
3 【光水ハイパーエナジー】
3 【水闇ハイパーエナジー】
2 【光水サイフォゲート】
2 【闇自然アビス】
2 【火水闇プレジール】
【ジャオウガ】と【エルボロム】以外に【火自然ゼニス】と【火水マジック】が追いついてきている。
それでは各デッキの特徴を整理しながら、彼らが選んだ理由を追っていこう。
【火水闇ジャオウガ】

緑おでん 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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「【光水闇エルボロム】にどう勝つのよ」という命題の回答にはなっていないかもしれないが、それでも、多くのプレイヤーが手に取ったのは、やはりその圧倒的なデッキパワーが理由だろう。
《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》、《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》、《霊淵 ゴツンマ=ダンマ》といったオリジナル環境でも手を焼くメタ(妨害)クリーチャーに、《DARK MATERIAL COMPLEX》と《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》の挟撃。
一番強いデッキを一番強く使うのが最強という考えであれば、このデッキを選ぶのは不思議ではない。
しかし、その包囲網は強く、TOP16に残っていたのは緑おでんただ1人のみであった。
【4cジャオウガ】

Kei/みるえめ 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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【ジャオウガ】に強い【ジャオウガ】が強い。
最強の【ジャオウガ】を使いたいというならミラーマッチを制すればいい。そんな発想で生まれたこのデッキは、【火水闇ジャオウガ】と、後述する【光水闇エルボロム】とのある種いいとこ取りのようなデッキになっている。
特に注目されるのは《ポッピ・冠・ラッキー》。
ゼニス系統以外のデッキほぼ全てが影響を受けるこのメタカードは、特に【ジャオウガ】ミラーや対【光水闇エルボロム】で多大な影響を与えるカードだ。
こちらは【火水闇ジャオウガ】ほどの知名度がなく、また、文明が増えたことによる取り回しの難易度も上がっている。そのため数は伸び切らなかったが、それでも人気は高く、その中でぴゅうから教えを受けたKei/みるえめが、ベスト16に入賞した。
【光水闇エルボロム】

フェアリー/AYN 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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【火水闇ジャオウガ】に対するメタデッキ……と思いきや、そのまま環境の中心を塗り替えたのが【光水闇エルボロム】だ。
《終止の時計 ザ・ミュート》や《忍蛇の聖沌 c0br4》などの強力なシールドトリガーを、《超光喜 エルボロム》や《偽りの名 ドルーシ》でバックアップして、受け続けることをコンセプトにしている。
また、今回はその大半が、関東エリアでうっちー☆らが持ち込んだ《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》と《♪ハックより 一時ずらして じゅうとなな》暴発ギミックを兼ね備えたデッキだった。
こちらのデッキは上手く決まると最速4ターンキルを可能とし、無限ターンによりミラーマッチを始めとした長期戦への強さも備えているデッキだ。
今回は意識されたためあまり勝ち切ることは出来なかったが、それでも強力なデッキであることに変わりはなく、これを使用したフェアリー/AYNがベスト8まで勝ち進んだ。
ここまでが関東大会までで示されたデッキ達である。
この段階で全体の40%ほどのデッキが埋まるほどの大人気を誇ったのがこの3種類のデッキだ。
しかしTOP16でこれらのデッキを使っていたのはわずか5名。
今回のジャッジ大会でこれらのデッキは見事狩られる側になっていたというわけだ。
「【ジャオウガ】と【エルボロム】をどうやって倒すのよ」
その答えが、これから紹介するデッキ群だ。
【火自然ゼニス】

すがない 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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優勝したすがないを始め、多くの人間が手に取ったのがこの【火自然ゼニス】だ。
マナ加速と適宜の手札補充。そして《偽りの名 ワスプメリサ》をはじめとしたロッククリーチャーで締めるビッグマナデッキだ。
平均して4.5ターン目には《「戦鬼」の頂天 ベートーベン》や《「使命」の頂天 グレイテスト・グレート》と、それにくっつくロッククリーチャーを並べ、難攻不落の盤面を作っていく。
序盤の足回りが少し心許なく、また、【火水闇ジャオウガ】に大して大きく不利がついていることから、これまでのエリアではどうしても一歩後ろの位置にいたデッキだ。
しかし、メタゲームは回る。
【ジャオウガ】と【エルボロム】の二強環境は、直接的な相性では【エルボロム】に優位がつく。
であるならば、【エルボロム】に有利のつくデッキを持っていくのが優勝するために一番適した戦略となる。という考えが見て取れる。
結果として決勝トーナメントには4人が送り込まれ、TOP4にも2人。この日この環境においては大正解であったと言えるであろう。
杞憂点があるとするならば、デッキの構造の安定感の少なさだろうか。
マナブースト、受け、フィニッシャー、ドローソースなど、各カードの役割がはっきりしすぎているため、いわゆる引き運のようなものに左右されることも少なくない。
優勝したすがないの構築は、チャージャーや《黙示録の水晶》など、基本の動きをしっかり採っており、安定感を最大限まで高めようという理念で作成されているのが特徴的だろう。
その結果が実り、見事このジャッジ大会の王者となったわけである。
【ターボマジック】

リョウマ/はっちcs 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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【火自然ゼニス】のように、ロックや実質的な特殊勝利を狙うという意味で、もう一つ注目された対話拒否デッキが【ターボマジック】だ。
コントロール~ソリティアの側面を持つため、他のデッキと比べると立ち上がりが少し遅くなっているが、その分回りきったときの破壊力は随一。《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》によって、《聖霊超王 H・アルカディアス》以外のクリーチャーや呪文に対しても高い耐性を持っているのがその万能度を加速させている。
2019年の関西エリア王者、リョウマ/はっちCSは早いメタゲームにならないと踏み、このデッキを持ち込み、結果としてTOP4に入賞した。
【火自然ゼニス】と合わせて、メタゲームにおけるもう一つの回答だったと言えるだろう。
【闇単アビス】

うつな人 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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箱ペン 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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優勝したデッキこそ【火自然ゼニス】だったが、この大会で最も勝ち組だったアーキタイプ(デッキ戦略)は?と聞かれれば、それは間違いなくこの【闇単アビス】だった。
使用人数は4人。しかし、2人が予選を抜け、その一人のうつな人は決勝にまで駒を進めている。
このデッキが最も勝ち組だった理由は環境で《DARK MATERIAL COMPLEX》の支配力が低くなったからだろう。
【光水闇エルボロム】も【火自然ゼニス】も、一貫して《死神覇王 ブラックXENARCH》の面処理とハンデス(手札破壊)が重くのしかかるデッキであるからだ。
また、《DARK MATERIAL COMPLEX》がいても戦っていけるように箱ペンの構築には《アビスベル=ジャシン帝》の採用が見られた。《DARK MATERIAL COMPLEX》は無視してさっさと殴りきってしまおうという算段だ。
総じて、メタゲームの1.5歩先のデッキとして今大会で大活躍したデッキであった。
【火水マジック】

ヤマタ 全国大会2024 エリア予選ジャッジ大会 2ブロック構築 |
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【闇単アビス】が今回の1.5歩先であれば、今回のメタゲームの2歩先にいたのが【火水マジック】だったと言える。【光水闇エルボロム】が食われた世界では、【火自然ゼニス】や【ターボマジック】といった後ろ寄りのデッキが増えるため、フィールド内最強になる世界も見込めたデッキだ。
持ち込んだ人数も12人と多く、ともすればこのデッキこそが今大会の覇者になっていた可能性もあっただろう。
決勝トーナメントには2人が進出したが、その2人が初戦で当たってしまうという不運に見舞われた。
そしてミラーマッチに勝利したヤマタ.の快進撃も、次のラウンドで《死神覇王 XENARCH》に阻まれてしまったのだ。
おわりに
「悪魔神、復活」の発売以来、プレイヤー達は【火水闇ジャオウガ】と向き合い続けた。今回は紹介しなかったが、【光水サイフォゲート】や【水自然ジャイアント】など、【火水闇ジャオウガ】に対する意識を向けたデッキたちも存在していた。
その結果が【火水闇ジャオウガ】の活躍を止め、【光水闇エルボロム】とそれを倒すデッキという構図を生んだのが今回のジャッジエリアであった。
本来であるならば、このあとのエリア予選のためにこの大会結果を参考にしてほしい。と筆を置くところだ。
しかし、今回は今年度最後のエリア予選であり、暫定最後のARev‐王道プールの競技シーンとなっている。この後もCSなどは開かれるが、一旦の節目となったデッキとこのプール、そしてそれらを選んだプレイヤーの選択に思いを馳せていただければ幸いである。
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