DMGP2022 Day2:オリジナルメタゲームブレイクダウン
ライター:高橋 穂
新たなカードやギミックは、このDMGP2022という環境にどのような影響を及ぼしたのだろうか?
ここでは、オリジナル部門の予選を突破した128個のデッキ、そしてその中からさらに勝ち抜いた16個のデッキたちから今大会のメタゲームを振り返っていきたい。
というわけで、早速デッキ分布を確認していこう。
TOP128 デッキ分布
デッキ名 | 使用者数 |
---|---|
5cザーディクリカ | 11 |
水闇自然ジャオウガ | 10 |
ガイアッシュ覇道 | 10 |
ゼーロベン | 9 |
4c邪王門 | 8 |
火自然アポロヌス | 7 |
水闇自然ハンデス | 6 |
水魔導具 | 6 |
キリコグラスパー | 5 |
無色ジョーカーズ | 5 |
水闇星雲人 | 5 |
火単ブランド | 5 |
RX閃 | 3 |
水闇自然ムゲンクライム | 3 |
ガイアハザード退化 | 3 |
ケンジ・キングダム | 3 |
水闇火墓地ソース | 3 |
光水火鬼羅.Star | 2 |
4cダイナボルト | 2 |
水火アポロヌス | 2 |
火自然逆悪襲 | 2 |
光火鬼羅.Star | 1 |
4cロマノグリラ天門 | 1 |
5cディスペクター | 1 |
MDWチョイス | 1 |
水闇自然墓地ソース | 1 |
光闇火ライオネル | 1 |
光水火天門 | 1 |
巨大天門 | 1 |
水単タマシード | 1 |
水自然Gジョラゴン | 1 |
闇火邪王門 | 1 |
火単B-我 | 1 |
火自然G3 | 1 |
光水ライオネル | 1 |
光火ライオネル | 1 |
光火自然ライオネル | 1 |
自然ジョーカーズ | 1 |
火自然NEXT.Star | 1 |
混沌。
そんな言葉がふさわしいメタゲームが繰り広げられている。
かなりタイプを細分化したとはいえ、最大シェアの【5cザーディクリカ】でさえ約8.6%ほどしか占有していないのは異例。構成が類似するシェア2位の【水闇自然ジャオウガ】と7位の【水闇自然ハンデス】を合算したとしても12.5%しか居らず、多様なデッキがばらける結果となった。
この二つを追いかけるように、アドバンス部門で優勝を果たした【ガイアッシュ覇道】、一か月ほど前の超CSⅣ京都で急増した【ゼーロベン】、一度数を減らしてからじわじわとシェアを伸ばしている【4c邪王門】、環境最速のビートにして超CSⅣ京都の覇者【火自然アポロヌス】などが上位を占めている。
上位層には全体的に比較的遅めのコントロールが多い…という傾向こそあれ、ここまでメタが混沌としていると「特定の1デッキを鬼のようにメタる」ような構成で勝ち抜くのは困難であり、より広い環境への理解が必要な状況だったと言える。
また、特筆すべきは母数1となるデッキの多さ。この大会のために作られたいわゆる秘密兵器と呼ばれる秘蔵のデッキが含まれているのを加味しても、全17デッキがメタの隙間を抜けてここまで辿り着いている。
一定のデッキパワーと綿密な環境理解、そして当たり運さえあればどんなデッキでも勝ちうる状況と言えるだろう。
最後になるが、「伝説の邪神」のカードを軸にしたデッキは≪Drache der'Zen≫を採用した【水単タマシード】のみが辛うじて入っているだけで、【アビスロイヤル】【オービーメイカー】といった新進気鋭のデッキはことごとく淘汰されていることがわかる。
彼らの真価が発揮されるのは、もう少しデッキ研究が進むかカードプールが増加してからになりそうだ。
そして、この中で勝ち上がった16デッキの分布はこうなる。
TOP16 デッキ分布
デッキ名 | 使用者数 |
---|---|
水闇自然ハンデス | 2 |
5cザーディクリカ | 2 |
ガイアッシュ覇道 | 2 |
水闇自然ジャオウガ | 1 |
水闇自然ムゲンクライム | 1 |
4c邪王門 | 1 |
水魔導具 | 1 |
無色ジョーカーズ | 1 |
MDWチョイス | 1 |
巨大天門 | 1 |
水自然Gジョラゴン | 1 |
闇火邪王門 | 1 |
光火ライオネル | 1 |
【水闇自然ジャオウガ】【水闇自然ムゲンクライム】といった水闇自然基盤のコントロール系が生き残り、上位勢から【ゼーロベン】【火自然アポロヌス】が脱落するなど比較的遅めのデッキが生き残る結果になった。8/15の殿堂改訂で理不尽な速度と確実性を持つキルターンを持つデッキが軒並み姿を消して以来、突き詰めればゲームスピードはやや落ちてきていると言えるだろう。
また、TOP128時点で17個あった母数1のデッキのうち、実に5個が勝ち上がっているのも見逃せない。【光火ライオネル】に至っては準優勝を果たしているなど、「全ての仮想敵を対策しきれない」という状況を上手く見抜いた独自のチョイスには高い価値がありそうだ。
この結果を踏まえて、いくつか注目したいデッキをピックアップしていく。
【水闇自然ハンデス】【水闇自然ジャオウガ】【水闇自然ムゲンクライム】
kazuna デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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総合的に見て今回の「勝ち組」となった文明の組み合わせは、《天災 デドダム》擁する水闇自然の三色と言えるだろう。この組み合わせだけで4デッキ、「この文明の組み合わせが含まれたデッキ」まで目を広げれば、実にトップ16の過半数を超える10デッキが含まれる。
今回の【水闇自然ハンデス】はハンデスとマナ加速を兼用する《悪魔妖精ベラドンナ》に加えて《若き大長老 アプル》《キャディ・ビートル》などの2マナのメタクリーチャーを《有象夢造》で蘇生するギミックを交えてアド差をつける構成だ。
旧来のものはここに《特攻人形ジェニー》も採用してよりハンデスを重視したものだったがこのタイプはトップ16には上がってこず、《CRYMAX ジャオウガ》を増量した構成の【水闇自然ジャオウガ】に近いタイプが結果を残すこととなった。
また、ハンデス・蘇生ギミックの代わりにさらなる軽量メタクリーチャーと《∞龍 ゲンムエンペラー》を加えた【水闇自然ムゲンクライム】や、《∞龍 ゲンムエンペラー》と《CRYMAX ジャオウガ》を同時採用して折衷したタイプもそれぞれベスト16に進出するなど大健闘を果たした。
非常に近しい基盤を持つこの3デッキに共通するのは、「《天災 デドダム》によるリソース確保性能」「決定力の高いフィニッシャーの存在」そして、「メタクリーチャーの充実」。
特に最後のメタクリーチャーについては「置換効果で早出しを防ぎ」「破壊されてもマナに行くので損をしない」《キャディ・ビートル》の新規加入が非常に重要。
これに《異端流し オニカマス》や《若き大長老 アプル》まで採用するとほとんどのデッキに対して序盤の妨害が可能になり、フィニッシャー降臨が間に合うようになる…という噛み合いぶりから、ただでさえ高かったこの文明基盤の対応力をさらに上昇させることとなった。
雑多なデッキを寄せ付けないこの三文明の基盤は、これからの環境においても「使う」か「乗り越える」かの選択をプレイヤーに迫ってくることだろう。
【5cザーディクリカ】
みみみ デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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サノル デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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こちらも息の長い多色コントロールデッキ。3ターン目マナ加速→4ターン目の5マナ踏み倒し呪文→《龍風混成 ザーディクリカ》→《ロスト・Re:ソウル》という「A定食」の威力は健在だ。
「伝説の邪神」にて新規加入したカードは特にないものの、地力の強さと高いカスタマイズ性を併せ持つのが何よりの魅力。細かな採用パーツでデッキの出力を調整できることから、多彩なデッキが飛び交う今大会においても安定して上位にプレイヤーを送り出している。
また、面白いのがベスト16入りした2つのデッキが《ドラゴンズ・サイン》型と≪ナウ・オア・ネバー≫型に分かれていること。以前からどちらが優越するかに議論があったこの2つの呪文だが、完全な結論が出るのはまだ先のこととなりそうだ。
【ガイアッシュ覇道】
まるいし。 デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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前日のアドバンス部門でのワンツーフィニッシュで話題となったデッキだが、こちらでもその強さは健在だ。
カウンターで飛び出す《流星のガイアッシュ・カイザー》の軽減効果で《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を4マナで繰り出して追加ターンを取って圧倒する……だけでなく、多色を活かしたパワーカードをふんだんに搭載した構成で詰め切る、これまた息の長い活躍を続けるこのデッキ。
多数の派生パターンを持ち構築幅も非常に広いデッキだが、今回は光抜きの4文明を採用したタイプがベスト16に二人を送り込んでおり、これが現在の主流と言えるだろう。
《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》や《一王二命三眼槍》を活かした受け・カウンター性能の高さと前述の必殺ムーブの存在、そしてカスタマイズ性の高さから【5cザーディクリカ】と同じく新規加入カードがないにもかかわらず好成績を残したのは見逃せない。
また、シークレットテクとして採用された《ディメンジョン・チョーカー》は古いカードながら、「終盤に《絶望と反魂と滅殺の決断》で釣るだけで大量の手札を確保できる」「《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》でバウンスして使い回せる」など消耗戦において無類の強さを発揮することが知れ渡った。
これからデッキを構築する際、または相手をする時には常に留意しておきたい。
【水魔導具】
上田秋斗 デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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混沌としたメタの間隙を突いて今回優勝を果たした、環境のソリューションと言えるデッキが【水魔導具】だ。やや苦手とする高速デッキが減ったことと《ガル・ラガンザーク》の有用性、そして天敵のカード指定除去が減少したことで相対的に高い立ち位置を確保した形になる。
特に最大母数となった水闇自然基盤のデッキには、「《卍 新世壊 卍》によってハンデスを上回る速度でカードが引ける」「期待できるキルターンがあちらより速い」「メタクリは刺さらないかバウンスでどかした隙にフィニッシュ可能」等の理由でかなり好相性。
他のデッキが注目される中で古参デッキとして多くのプレイヤーのガードが下がっていたのもあり、対策されることなくのびのびと暴れられたというのも非常に大きなファクターだ。
だが、強さが知れ渡ってデッキが流行し、逆に対策される側になると脆さが出る…というのも、過去の環境が証明している。
そういった要素も含めて、優勝者がインタビューでも語ったように、まさにこのDMGP2022というこの大会においての「環境結論」だったと言えるだろう。
【光火ライオネル】
ぴゅう デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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優勝した【水魔道具】が「デッキ選択の勝利」とすれば、準優勝の【光火ライオネル】は「カード選択の勝利」と言えるだろう。
ぴゅうの独自構築となるこのデッキは、そもそも「オリジナル環境において《アルカディアス・モモキング》と《キャンベロ <レッゾ.Star>》の刺さりが良い」→「ならば、それを上手く使えるデッキはないか?」という発想から生まれている。
そしてその要請に応えた上で十分なデッキパワーとメタ耐性、フィニッシュ力を持つ【ライオネル】系列と組み合わさり、そのうえでコンセプトを活かすべくさらなるチューンが施されて独自のデッキとして完成したわけだ。
フィーチャー卓を見ればわかるように、実際このコンセプトの2枚は実戦でもぶっ刺さっており、「デッキではなくカードを出発点として環境を読んだ構築」という逆転の発想が功を奏した形と言えるだろう。
また、この手のオリジナルデッキでは《EVE-鬼MAX》などの独自カードの採用により相手がテキストを読み落として適切なプレイができなくなる、いわゆる「わからん殺し」的な要素も軽視できない。
この突然のブレイクで、一時は他に押され気味だった【ライオネル】系列のデッキが息を吹き返す日は遠くない……のかもしれない。
その他、注目の独自デッキ
他にも、今大会では意欲的な独自構築のデッキが多数見られた。手短にはなるが、そのうちのほんの一部のデッキリストと簡単な説明を掲載して使用プレイヤーと構築者への賛辞に代えたい。
キリハ デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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2→4→6のムーブで《MAX-Gジョラゴン》を繰り出し、《自然の四君子 ガイアハザード》をコピーしてターンを凌ぎつつ《終末の監視者 ジ・ウォッチ》などのさらなる巨大獣に繋げる構成。
文明の都合上とにかくアド稼ぎに長け、《流星のガイアッシュ・カイザー》によって《次元の嵐 スコーラー》素出しによる追加ターンも狙えるなどのギミックも満載でベスト8進出を果たした。
まっつー/wiz デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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《めっちゃ!デンヂャラスG3 / ケッシング・ゼロ》クリーチャー面のG・ブレイカーからSA獣を暴発させてトドメを刺す、通称「蛮族」と呼ばれるギミックだが、始動を《MAX-Gジョラゴン》によるコピーとすることで多数のドラゴンシナジーを獲得しているのが白眉。
こちらにも採用された《流星のガイアッシュ・カイザー》によって≪めっちゃ!デンヂャラスG3≫素出しルートも狙えるなど、多彩なシナジーが光る構成。
すめらぎ デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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【グルメ墓地ソース】のリペアというべき構成ながら、マナを伸ばして《悪魔の契約》で必要分だけ墓地を肥やすという発想に脱帽。
本来天敵のはずの《若き大長老 アプル》も《悪魔の契約》のデメリットを踏み倒し2マナで超ドローに変えられるのでむしろお得になってしまう。
イクラさん デュエル・マスターズ グランプリ2022 Day2 オリジナル構築 |
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≪Drache der'Zen≫と水のタマシードにフィーチャーし、タマシードの踏み倒しを乱舞させる構成。
《バイケンの海幻》や《斬隠蒼頭龍バイケン》によりとにかく相手ターンに妨害の嵐を巻き起こし、≪Drache der'Zen≫と《神の試練》+山札回復で事実上の無限ターンまで持ち込めるなど、これからのさらなるタマシード戦略の可能性を感じる。
新シリーズに突入し、まだまだ始まったばかりの新環境。
多種多様なデッキの海を泳ぎ切った今回のデッキたちによる混沌としたメタゲームは、この環境の多様性を表しているかのようだ。
今回の考察対象には挙がらなかったが、【アビスロイヤル】【オービーメイカー】のような新カードを軸にしたデッキやまだ見ぬデッキにもまだまだ可能性は残されている。
月末に控えた「黄金戦略!!デュエキングMAX2022」発売までに、この混沌とした環境が解き明かされるのだろうか。
今回の結果が、読者諸兄のデッキ選択に新たな閃きをもたらしてくれることを祈っている。
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