2019年度日本一決定戦事前メタゲーム総括記事:アドバンス編
ライター:清水 勇貴
度重なる開催延期を乗り越えて、いよいよ今週末に迫ったデュエル・マスターズ2019年度日本一決定戦。筆者の知る限り、2019年の競技シーンはデュエル・マスターズ史上でもトップクラスの盛り上がりを見せていました。
全国各地で数多の強豪が名乗りを上げる中で、本当に「一番強い」ヤツは誰なのか。約2年の歳月を経て、ついに決着の時を迎えます。
この記事は、日本一決定戦を観戦する皆さまへ向けて、アドバンス環境の現在のメタゲームと、注目すべきデッキについて簡単に解説したものです。
アドバンスとは、超次元ゾーンや超GRゾーンなどを含む、これまでに発売された殿堂以外の全てのカードを使用できるフォーマットです。各種「禁断」や「零龍」の存在も含めて高いカードパワーと各種メタカードがひしめく派手なデュエルが展開されるゲーム性です。
それでは、まずは現在のメタゲームから振り返っていきましょう!
メタゲーム概観
現在のアドバンスには、さながら大樹のごとく環境の「幹」を形作っているカードが存在します。王来MAX第1弾「鬼ヤバ逆襲S-MAX!!」より登場したそのカードの名は、《インフェル星樹》。
ひとつ目が「バトルゾーンにあるクリーチャーではないカードを2枚まで選んで、それらを持ち主のマナゾーンにタップして置く」能力。
ふたつ目が「バトルゾーンから自分のマナゾーンにカードが置かれた時、カードを1枚引く」能力です。
《インフェル星樹》のクリーチャーでないカードをマナゾーンに置く能力は自分のカードも選べるため、《禁断 ~封印されしX~》にゲーム開始時から付与されている封印をマナゾーンに置くことで、バトルゾーンに出るだけでマナを2枚増やしつつ、ふたつ目の能力でカードを2枚引けるのです。
特に《メンデルスゾーン》は、綺麗に繋げば2ターン目に2マナ→3ターン目に5マナ→4ターン目に8マナというブッ飛んだマナカーブさえ実現できるため、自身がドラゴンであることも含めて相性が抜群。この一連の流れを無理なく取り込めるドラゴンデッキが、現在のアドバンス環境の中心となっています。
そんな《インフェル星樹》を活用するデッキへの対抗馬となっている戦術は、大きく分けて2つ。
高速ビートダウンデッキと、4〜5ターン目に「必殺技」を叩き込むコンボ・ギミックデッキです。
これら2つの戦術に共通しているのは、「真っ当なアドバンテージゲームをそもそもしない」ことです。
《インフェル星樹》が登場するのはどれだけ早くとも3ターン目、基本的には4ターン目となるので、そのアドバンテージを活かしはじめるのは4ターン目〜5ターン目以降となります。
つまり、それまでにゲームの趨勢を決定づけるアクションを取れれば、《インフェル星樹》の生み出すアドバンテージを活用させずに、自分の土俵に持ち込んで勝利を狙うことができる、ということ。
高速ビートダウンにせよコンボ・ギミックデッキにせよ、実質的な決着のターンを《インフェル星樹》の登場よりも前に置くことで、真正面からのカードのぶつけあいを避けて《インフェル星樹》に対抗しています。
逆を言えば、「そうでないデッキ」が《インフェル星樹》のアドバンテージ力に立ち向かうのは至難の業。
自分から使うにせよ、対策に回るにせよ、このカードの存在がアドバンス環境におけるゲーム性の根幹を定義していると考えてもそう大きな間違いはないでしょう。
さて、アドバンテージの概念を大きく揺さぶってゲームの方向性を決定づける存在が《インフェル星樹》だとすれば、類稀なるロック能力によって各デッキに採用されるカードを大きく制限するカードもまた、アドバンスには存在しています。
【モモキングダム退化】の《アルカディアス・モモキング》と《キャンベロ <レッゾ.Star>》の持つロック能力は、環境の形を変えるに十分すぎるほど強烈。
《キャンベロ <レッゾ.Star>》はそのターン中の決着にこそ強く関与しないものの、広く有効なクリーチャーの登場数ロックによって返しでの逆転を痛烈に咎める1枚。
ただでさえ対処の難しいこれらのスター進化クリーチャーを、3〜4ターンという高速で叩き付けながら連続攻撃でゲームを決めるのが【モモキングダム退化】というデッキです。
このデッキと戦うには真っ向から速度で勝負するか、《アルカディアス・モモキング》の影響を受けないカードを用いて攻勢を捌きつつなんらかの手段で《キャンベロ <レッゾ.Star>》を乗り越えて勝利に近づけるギミックが必要不可欠。
では、ここからはアドバンス環境の最前線で活躍している、全国大会でも注目したいデッキについて紹介していきます!
デッキ紹介
【4Cドラグナー】
サンプルデッキ 4Cドラグナー |
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《メンデルスゾーン》や《ボルシャック・栄光・ルピア》、《龍の呼び声》といったドラゴンデッキ定番のブーストカードで序盤を支えつつ、《ドラゴンズ・サイン》から繰り出される《龍風混成 ザーディクリカ》と《最終龍覇 グレンモルト》で盤面を制圧するミッドレンジデッキです。
【光火自然モモキングRX】の基盤が持つ押し付けの強さと、【5cコントロール】の持つ防御力の高さの両立を目指して2022年初頭に誕生したこのデッキ。
1手早くコスト7のドラゴンにアクセスできるため能動的な動き出しとしても強いうえに、S・トリガー1枚から膨大な打点とブロッカーを用意できるためカウンター性能の高さも抜群。
光文明なので《アルカディアス・モモキング》の呪文ロックもすり抜けられる、環境の優等生です。
登場して以来ずっとアドバンス環境を代表するほどの活躍を見せていた【光水火自然ドラグナー】ですが、《インフェル星樹》を取り込んでその強さはさらに加速。
莫大なリソースを元手に次々とドラゴンを展開できるようになり、暴力的なカードパワーがより一層際立つこととなりました。
四方全てに隙はなし。あらゆる要素のバランスが良い、現環境の本命とも言えるデッキです。
【ガイアッシュ覇道】
サンプルデッキ ガイアッシュ覇道 |
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《メンデルスゾーン》や《ボルシャック・栄光・ルピア》、《龍の呼び声》といったドラゴンとのシナジーで強化されるマナ加速カードを駆使して序盤を一気にスキップするのは、【光水火自然ドラグナー】をはじめ、他のドラゴンデッキたちと何ら大差のないこと。
相手のスピードアタッカーや進化クリーチャーの攻撃を引き止めつつ、自分の《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を大幅にコスト軽減できる攻防一体のキークリーチャーとして大活躍してくれます。
《流星のガイアッシュ・カイザー》が登場した直後から考案されてきたデッキではあるものの、全体を通して《流星のガイアッシュ・カイザー》への依存度が高く、《流星のガイアッシュ・カイザー》なしで動き出すのが苦手なデッキでした。
しかし、王来MAX第1弾で《インフェル星樹》が登場して以降は事情が激変。
5マナから8マナへと綺麗に繋げながらリソース補充できるようになったため、《流星のガイアッシュ・カイザー》への依存度を引き下げることに成功しています。
もちろん、相手が迂闊な踏み倒しをしてくるようであれば即座に《流星のガイアッシュ・カイザー》が降り立って一気に勝利への準備を整えてくれるでしょう。
構造は【光水火自然ドラグナー】とよく似ていますが、環境上ケアされづらい《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を勝ち筋に据えているため決定力ではこちらに軍配が上がります。
その一方で、受け札を採用する余裕がそれほどなく、S・トリガーから一気に盤面を形成する手段もないため、防御力の面では《ドラゴンズ・サイン》を活用する【光水火自然ドラグナー】に一歩譲る印象です。
総じて、ドラゴンデッキ同士や【5cコントロール】のようなデッキに対しては【ガイアッシュ覇道】の方が強く、【火単ブランド】や【モモキングダム退化】を意識するなら【光水火自然ドラグナー】に分があるような関係性にあると言えるでしょう。
【モモキングダム退化】
サンプルデッキ モモキングダム退化 |
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その性質上デッキに1種類しか非進化レクスターズが採用されていなければ確実にそのクリーチャーを進化元にできるため、《禁断英雄 モモキングダムX》を召喚してから自分のクリーチャーをバトルゾーンから離すカードを使うことで、間接的に山札から特定の非進化レクスターズを踏み倒すことができます。
手札に進化「«モモキング»」があればあるだけ連続で攻撃できるこのカードを主軸に、《進化設計図》などで手札に進化「«モモキング»」を貯め込んでから一気に殴り切ってしまうのがこのデッキのコンセプトとなるギミックです。
《禁断英雄 モモキングダムX》で2マナ、自分のクリーチャーを破壊するカードで1マナの計3マナで成立するコンボということでコンボ成立の速度が早く、コンボパーツを集めるアクションを含めても3〜4ターンでコンボへと突入できることが多く、高速で繰り出される連続攻撃を無対策で受け切ることは意外なほどに困難です。
また、このデッキの影の主役となるのが《未来王龍 モモキングJO》の上に重なる多様な進化レクスターズたちです。
進化「«モモキング»」たちの持つ個性豊かな能力で戦況を切り開いていけるのもこのデッキの特徴です。
コンボデッキの宿命として手札事故とは上手く付き合っていく必要があるものの、上手く動けた際の出力の高さは折り紙付き。乗りに乗った【モモキングダム退化】を止められるデッキはほとんどないと言えるでしょう。
【火単ブランド】
サンプルデッキ 火単ブランド |
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時として2ケタにも到達するほどの猛烈な打点を作り上げ、速やかに勝利を狙う環境屈指の速攻デッキです。
無理に3ターン目の決着を狙わず、4ターン目に10打点以上を形成して物量で押し切る作戦も取りえます。
相手のシールドが4枚以下であれば、2マナにしてGR召喚付きのクリーチャーになるビートジョッキー。
テキストだけではそれほど派手には見えませんが、《“罰怒“ブランド》や《我我我ガイアール・ブランド》で横に出てきたGRクリーチャーもろともSAを付与したり、《一番隊 チュチュリス》で軽減したりといった周りのカードとのシナジーで飛躍的にパワーが向上していきます。
このカードを有効に活用するため、アドバンスにおける【火単ブランド】の1マナ域は2ターン目に単独でシールドをブレイクできるクリーチャーだけを採用することが主流になっています。
攻撃しはじめるタイミングや実際に攻撃する順序など、特に攻撃関連で選択肢が非常に多岐に渡るため、シンプルな見た目に反して乗りこなすのは非常に難しいデッキです。
常日頃に開催される大会よりも、日本一決定戦という猛者の集うフィールドでこそ真価が発揮されるであろう【火単ブランド】。
どれほどの活躍が見られるのか、期待が高まります。
【5Cコントロール】
サンプルデッキ 5Cコントロール |
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採用できるG・ストライクの枚数や受け札の質が高く、現在のアドバンス環境でも屈指の防御力と、必要最低限の決定力を兼ね備えています。
《ロスト・Re:ソウル》は刺さらないデッキがほぼ存在しない、デュエル・マスターズ界でも屈指の妨害手段。闇文明を採用し、ドラゴンシナジーを無理に採用しない理由としては十分なものです。
《インフェル星樹》や《進化設計図》でどれだけ手札を稼がれていようと、相手が動き出すより先に《ロスト・Re:ソウル》を叩き込めば全てが無に還り、一方的なゲーム展開が可能になります。
俗に「スペシャルデッキ」と呼ばれるような大型大会専用の特製デッキに対しても大型ハンデスが腐ることはほとんどないと考えられるため、その意味で大会向きと言えるかもしれません。
構築次第ではあるものの、Tier上位と目されている今回紹介したデッキの全てと対等以上に戦えることもあり、日本一決定戦でも注目度の高いデッキです。
総括
今回はアドバンス環境の大まかな形と、現在のアドバンス環境で活躍するデッキの中でも筆者が特に注目している5つのデッキについて紹介しました。これらのデッキはどれをとっても決して無視できない強大なデッキです。仮に参加される選手がこれらのデッキを使わないとすれば、それはこの5デッキを(少なくともそのうちの3つか4つを)仮想敵として見据えて調整した結果ということになるでしょう。
どんなメタゲームを想定し、どんなデッキを倒すべき敵として設定したのか……。60枚のカードに込められた選手たちの思いを想像しながら、観戦してみてはいかがでしょうか。
この記事が、日本一決定戦当日の生配信やテキストカバレージをご覧になる際の一助となれば幸いです。それでは!
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