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超CSⅥ福岡 決勝Round 2:卍フライ卍 vs. TCEoL

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影者:瀬尾 亜沙子


鬼才と奇才とが、期せずして激突する。

 2000名ほどいた参加者も、今や64名にまで絞られた。

 開幕前の大方の予想に反して「水火マジック」「水闇COMPLEX」の2強という大波乱の決勝トーナメント進出結果となった今大会。「水火マジック」がトップメタであることはともかく、「水闇COMPLEX」がここまで躍進するとは誰が想像できただろうか。

 だが、想定外は続くもの。まさかのローグデッキ使いが、並み居るメタデッキを次々と薙ぎ倒しながらここまで勝ち上がり、ついにフィーチャーマッチエリアに呼ばれることとなったのだ。

 しかもその対戦相手が駆るのは、シークレットテクを盛り込んだ最新デッキ。才能と才能とが激しく火花を散らす、屈指の好カードが実現したことが、彼らがフィーチャーマッチに呼ばれたまさにその理由だった。

卍フライ卍「めちゃくちゃ緊張するーこれ(笑)」

TCEoL「ふざけてフィーチャーmeとか言ってたらガチで呼ばれてしまった……こわっ(笑)」

 愛媛勢の卍フライ卍と大分勢のTCEoLは、どちらもフィーチャーマッチエリアに足を踏み入れた経験がないようで、1敗も許されない過酷なトーナメントの最中に突如として挟まった新鮮なイベントに戸惑いを隠せない様子だった。

卍フライ卍「やってることほぼ決勝やんこれ……」

TCEoL「気持ち的には一緒!でもこのまま勝ち進めば何回も呼ばれるかもなんで」

 2人は対戦準備を進めながら予選順位を互いに教え合い、卍フライ卍が93位通過のためTCEoLが29位通過で先攻であることを確認する。

卍フライ卍「本戦全部後手かもしれん……」

TCEoL「そもそもここで終わるかもしれませんよ?(笑)」

卍フライ卍「いやいや、勝つんで!(笑)  128人中、いやもしかすると2000人の中でも1人しかいないかもしれないローグデッキと、独自に練りに練り上げられた最新デッキ。オンリーワン同士、間違いなく誰も見たことのない激突となる決勝ラウンド第2回戦が、いま始まった。

Game

 TCEoLの先攻でゲームが開始。ノータイムで《忍蛇の聖沌 c0br4》をチャージすると、1ターン目に召喚したのは《DARK MATERIAL COMPLEX》  そう、TCEoLが駆るのは今大会で大躍進を遂げた「水闇COMPLEX」。だがその細部にはいくつもオリジナルのチューンが施されている。

 それに対し、後攻の卍フライ卍は《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》をチャージしてターンエンド。  そしてそれを見たTCEoLは、ほんのわずかな間だけ黙考する。その思考内容を想像するなら、大要は以下のようなものだろう。

 「……確かにパワーカードではあるけれど、トップメタの『水火マジック』『闇自然アビスロイヤル』『水闇ヴォゲンム』『水闇自然ジャオウガ』といったデッキに入る余地はなく、Tier 2まで見ても採用の可能性はほとんどない……少なくとも環境デッキではない。かろうじてありえるとしたら『4C邪王門』か?だがただの『4C邪王門』が今のメタゲームでここまで勝ち上がれるものだろうか……?

 それでもTCEoLは考えても仕方ないとばかりにターンをもらうと、《終末の時計 ザ・クロック》をチャージしたのみでターンを返す。

 だが、続けてチャージされたカードがさらにTCEoLの思考を混乱させる。 TCEoL「……テキスト読んでもよろしいでしょうか?」

 《禁呪と聖句の決断》《ヘブンズ・ゲート》系のデッキに一時採用実績があったものの、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》との同居となるとさすがに想像がつかない。この時点で卍フライ卍のデッキが圧倒的に異形であることは誰の目にも明らかだろう。

 とはいえ、傍目にも優位は《DARK MATERIAL COMPLEX》を既に設置したTCEoLの側にある。さらに《終末の時計 ザ・クロック》をチャージしたTCEoLは、《アクア忍者 ライヤ》を召喚、続けて自身を手札に戻してもう一度召喚し、《DARK MATERIAL COMPLEX》のカウントを一気に進める!!  そう、これこそがTCEoLの「水闇COMPLEX」のシークレットテク。相手のバトルゾーンの状況にかかわらず、しかも一切の手札消費なく高速で《DARK MATERIAL COMPLEX》を目覚めさせることが可能な珠玉のアイデアだ。

卍フライ卍「ここ!……あー、引けんかー」

 一方の卍フライ卍は水か自然の単色カードが欲しかったのだろうか、力を込めてドローするもかなわず、《天災 デドダム》を名残惜しそうにチャージしてターンを返すのみ。  返すTCEoLは《情熱の薔薇 メーテル / 神にも届く歌声》チャージから《奇天烈 シャッフ》を召喚して「3」を宣言。卍フライ卍の次なるアクションを多色ドローで濁った何らかの呪文と予想して咎めつつ、次のターンに《DARK MATERIAL COMPLEX》が目覚めるのに備え、より確実にトリガーを貫通させにいくプランだ。

卍フライ卍「いま手札が?」

TCEoL「2枚です」

 《アクア忍者 ライヤ》が公開情報、加えて《DARK MATERIAL COMPLEX》の下には既に5枚が敷かれており、ターン開始時の1枚と合わせて、《DARK MATERIAL COMPLEX》が次のターンにアンタップすることは確定している状況。  この状況で卍フライ卍がマナチャージしたのは《絶海の虎将 ティガウォック》知ってしまえば納得の「オボロティガウォック」の代名詞を見て、TCEoLの口から「それかー……」といったニュアンスの息が漏れる。そのまま卍フライ卍は《「必然」の頂 リュウセイ / 「オレの勝利だオフコース!」》の呪文側を唱えて《奇天烈 シャッフ》を処理してターンエンド。

 だがそれでも返すTCEoLはマナチャージからなおも《奇天烈 シャッフ》を召喚して「7」を宣言。さらに余った1マナで《アクア忍者 ライヤ》を出し、今出した《奇天烈 シャッフ》を手札に戻しつつ《DARK MATERIAL COMPLEX》を覚醒させる。  そしてすぐさま《DARK MATERIAL COMPLEX》の攻撃時、下に敷かれていた《アーテル・ゴルギーニ》を使用。4枚墓地を肥やしながらの蘇生で墓地から出した《奇天烈 シャッフ》で「6」を宣言しながらのワールド・ブレイク。はたしてトリガーは……ない!

 このターンにダイレクトアタックまでは行けないにせよ、卍フライ卍の盤面にはクリーチャーは0枚、マナゾーンは4マナのみ。「6」と「7」の呪文は唱えられず、TCEoLの側には既に7枚を下に敷いた《DARK MATERIAL COMPLEX》《アーテル・ゴルギーニ》という二大「離れない」クリーチャーに加えて《アクア忍者 ライヤ》《奇天烈 シャッフ》がいる。

 それは端的に言って、どうやっても逆転が不可能な状況に思われた。  しかし。何とここから卍フライ卍の鮮やかな逆転劇が展開される。

 まずはエンド前に《流星のガイアッシュ・カイザー》を召喚すると、《とこしえの超人》チャージから《月光電人オボロカゲロウ》で5ドロー。慎重に戻すカードを考え、さらに1マナ《絶海の虎将 ティガウォック》。3ドロー。残りは2マナ。

 そして、《流星のガイアッシュ・カイザー》の軽減と合わせたその2マナで。  《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》

 思わずテキストを確認するTCEoL。

TCEoL「……この時点で追加ターンを得てる?」

卍フライ卍「はい」

 卍フライ卍のシールドは《DARK MATERIAL COMPLEX》によって割りきられているため、「鬼エンド」の条件は達成されている。追加ターンを得た卍フライ卍は、満を持して《流星のガイアッシュ・カイザー》でTCEoLのシールド目がけて攻撃に行く。

TCEoL「考えます」

 少考ののちにTCEoLは《アーテル・ゴルギーニ》でブロックし、離れるかわりに《奇天烈 シャッフ》を破壊して置換する。続けて《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》で殴るかどうかを検討した卍フライ卍は、しかし手札の内容で既に十分勝てると考えたか、そのままエンドして追加ターンに入る。

 そしてマナチャージから《月光電人オボロカゲロウ》で再び5ドロー、さらに《絶海の虎将 ティガウォック》。シールドはないため、デッキ内にあるカードであれば、既によほどの不運が無ければ引き込めていることだろう。そのまま「G・ゼロ」で《龍素記号Xf クローチェ・フオーコ》、1マナで《飛翔龍 5000VT》を召喚

 やがて、満を持して再び《流星のガイアッシュ・カイザー》の軽減を合わせて2マナ。  《∞龍 ゲンムエンペラー》「ムゲンクライム」!

 そのまま《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》でタップ状態の《アーテル・ゴルギーニ》を倒し、圧倒的な盤面を揃えて卍フライ卍は追加ターンを終える。

 TCEoLのバトルゾーンには《DARK MATERIAL COMPLEX》しかなく、それも《∞龍 ゲンムエンペラー》で効果を失っているためほぼ無害。加えて《飛翔龍 5000VT》の効果でほとんどのクリーチャーは出せない。

 完璧……まさに完璧な逆転劇。そう思われた。

 ……だが。TCEoLが通常ドローを行ったところで。

ジャッジ「……ちょっと待ってください」

 そう、卍フライ卍はあろうことかこの瞬間、《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》の追加ターン終了時の自軍全破壊効果をすっかり忘れていたのだ!

 ジャッジの指摘により追加ターン終了時まで巻き戻され、卍フライ卍は《鬼ヶ王魔 エンド・ジャオウガ》の強制効果で《∞龍 ゲンムエンペラー》もろともすべてのクリーチャーを失ってしまう。そしてTCEoLのバトルゾーンには、7枚のカードを下に敷いて佇む《DARK MATERIAL COMPLEX》が目覚めの刻を待っている。

 当然ターン開始時に8枚目を下に敷いてアンタップしたTCEoLは、他にできることもないためマナチャージだけして即座にダイレクトアタックを敢行する。《飛翔龍 5000VT》効果がかかっていて出せない《終末の時計 ザ・クロック》を墓地に置くだけ置いて、《光牙忍ハヤブサマル》《MMM-ジョーキング》もケアできている。

 その、致命の一撃を。  《一王二命三眼槍》で敗北回避!

 自身のポカミスを自身の見事な構築でどうにかリカバリーした卍フライ卍は、みたび《月光電人オボロカゲロウ》で手札を整えると、《MMM-ジョーキング》を召喚する。

 そしてタップ状態の《DARK MATERIAL COMPLEX》への攻撃時に《頂上縫合 ドギラディス勝3rd》へと「革命チェンジ」!  唱えるのはもちろん、2ターン目からずっとマナゾーンにあり続けた《禁呪と聖句の決断》。そう、すべては伏線だった。ブロッカーを出す効果2回で、《絶海の虎将 ティガウォック》再び《∞龍 ゲンムエンペラー》が卍フライ卍のバトルゾーンに降臨する。

 なおも唱えたばかりの《禁呪と聖句の決断》を回収しながら3ドロー、加えて待機していた《MMM-ジョーキング》の能力で効果は無視されているものの《月光電人オボロカゲロウ》を横展開。「EXライフ」は《DARK MATERIAL COMPLEX》とのバトルで剥がれるも、《∞龍 ゲンムエンペラー》を含めたブロッカーが2体。「水闇COMPLEX」でこの盤面を返せる手が存在するとは思えない。

 それでもTCEoLは顔の前で両手をパンと合わせると、祈りながらドロー!……だが祈りは届かず、テキストのない《アーテル・ゴルギーニ》を召喚だけしてターンを返すことしかできない。

 やがてついに返すターン、卍フライ卍は手打ちの《禁呪と聖句の決断》《DARK MATERIAL COMPLEX》《アーテル・ゴルギーニ》を破壊すると、長かったゲームに終止符を打つべく、《∞龍 ゲンムエンペラー》でワールド・ブレイク!

TCEoL「……殴れるのは?」

卍フライ卍「(《月光電人オボロカゲロウ》2体と《絶海の虎将 ティガウォック》を指して)こいつら全部です」

TCEoL「……投了です。ありがとうございました!」

Winner: 卍フライ卍

TCEoL「あと1枚、《終末の時計 ザ・クロック》がトリガーしてたら勝ってる……《電脳の女王 アリス / 不埒な再侵入》《∞龍 ゲンムエンペラー》除去ってからターン飛ばして、自ターンに《奇天烈 シャッフ》でブロッカー止めて《終末の時計 ザ・クロック》でダイレクトまでいけた……でも、《アクア忍者 ライヤ》のおかげでずっと勝ってきたんで……強さを見せられたんで満足です!

 それでも、最後には思わず本音がこぼれていた。

TCEoL「……悔しいー!!トップ64かー……」

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