超CSⅦ広島 Round 5:おんそく vs. thekym
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:瀬尾 亜沙子
殿堂施行の翌週。それは一強や二強といった抜けたデッキの解体と、群雄割拠の戦国時代の始まりを意味する。なればこそ、その週の大型大会は意識外のローグデッキを持ち込む絶好機となる。
だが、奇襲奇策ももとより環境デッキに対して通用することが大前提だ。「ファイアー・バード」や「ドリームメイト」、「ヘブンズ・ゲート」といったトップメタの普通の動きに負けてしまうようでは意味がない。ゆえにローグデッキ使いは、環境に対してギリギリで通用する刃を見極める眼が求められる。
そして今回フィーチャーマッチに呼ばれたのは、その点において類まれなる眼を持つプレイヤーだった。デュエチューブリーグの「Team SAGA」で活躍する、DMGP8th1日目優勝にして2019年度の日本一決定戦3位、DMGP2023-1stトップ8。3週間前の超CSⅦ横浜でも、意識外の「ゲイル・ヴェスパー」のデッキでZweiLance・あんだんてとともにトップ8にまで勝ち上がっていたおんそくだ。
カバレージ班の偵察によれば、今回もかなり「らしい」デッキを使っている様子。その一挙手一投足から、目が離せない。
その一方、対する鹿児島勢のthekymも、近年かなり精力的にCSに参加しており入賞実績も豊富な強豪。グランプリ2022 2日目でもトップ16に勝ち残ったことがあるなど、大舞台での経験値も十分だ。

Game
じゃんけんで先攻をとったthekymのマナチャージは《堕呪 エアヴォ》!2023年度の日本一決定戦で優勝したとはいえ、「火水マジック」と「闇自然アビス」の2強環境では長らく鳴りを潜めていたデッキ。殿堂施行と環境初期の混乱の隙をついたデッキ選択ということだろう。対するおんそくのマナチャージは《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》で、ドラゴン系のデッキであることを匂わせる。2ターン目、thekymは《堕呪 ギャプドゥ》チャージから《堕呪 ゴンパドゥ》。《卍 新世壊 卍》が貼れればゲームの主導権を握れたところだが、引けなかったかそれとも《堕∞魔 ヴォゲンム》型なのか。一方おんそくは《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》チャージから《メンデルスゾーン》で《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》2枚をマナゾーンに置いて2ブースト、後攻のベストムーブを決める。
それでもthekymは《堕呪 ギャプドゥ》チャージから《好詠音愛 クロカミ》を送り出してターンエンド。《卍 新世壊 卍》型であることが、この時点でほぼ確定する。

考えた末、《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》チャージから召喚したのは《王道の革命 ドギラゴン》!

thekym「効果確認いいですか?」
おんそく「どうぞ」

そんな状況となったthekymだが、それ以前にそもそも《卍 新世壊 卍》を引けていない。4ターン目、《堕呪 バレッドゥ》チャージからまずは《堕呪 ゴンパドゥ》……だがそれでもたどり着けず、やむなく《堕呪 エアヴォ》で《王道の革命 ドギラゴン》を返してお茶を濁すだけのターンとなってしまう。
もちろん返すおんそくは《ボルシャック・栄光・ルピア》チャージから《王道の革命 ドギラゴン》を再召喚。そしてここでマナに落ちた2枚が、《流星のガイアッシュ・カイザー》と《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》!
回収からthekymへ攻撃時に「革命チェンジ」し、呪文を封殺しながらのW・ブレイクを通してターンを返す。《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》ではかなわなかった、《王道の革命 ドギラゴン》だからこそ可能となった早期の詰めだ。

そしてなおもおんそくは、《メンデルスゾーン》チャージから《ボルザード・スーパーヒーロー / 超帝王タイム》を通常召喚し、攻撃時に《好詠音愛 クロカミ》を破壊しながらW・ブレイクする。

さらに返すターン、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》チャージから《堕呪 ゴンパドゥ》。さらに《堕呪 バレッドゥ》へとつなげ……だが、これだけ掘っても《卍 新世壊 卍》が見つからない。やむなく《堕呪 ボックドゥ》で《ボルザード・スーパーヒーロー / 超帝王タイム》を止めてターンを返すしかない。
すると。ここで唐突に。
おんそくがみたび召喚した《王道の革命 ドギラゴン》がマナゾーンに《光鎧龍ホーリーグレイス》をアンタップインで落としたことで、突如としてこのゲームの終着点が訪れることとなった。

Winner: おんそく
--「thekymさんのデッキは、普通の《卍 新世壊 卍》型ですよね?ちょっと《卍 新世壊 卍》を探せなかったですね……」
thekym「《卍 新世壊 卍》を探せなかったのもそうですし、《ボルザード・スーパーヒーロー / 超帝王タイム》が見えてたので貼るタイミングも難しくて……総じて厳しかったです」
--「おんそくさんは、ラストターンに光マナが落ちたのが強かったですね」
おんそく「光マナが落ちなかったらもう1ターン待つつもりでしたね。落ちてくれたので簡単になりました」
対応を迫るカードと、対応するカード。それぞれの状況に応じた最適解を、カードを散らしながらもハンドキープに負担をかけずにマナ置きできるのは、《王道の革命 ドギラゴン》のマナ回収能力あればこそだ。
「ドリーム英雄譚デッキ」からの新戦力のポテンシャルを一目で見抜き、さすがの構築力でデッキへと落とし込んだおんそくの眼には、慧眼という言葉が何よりも相応しい。そのことを見事に証明した一戦となった。
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