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超CSⅨ福岡 決勝Round 3:やぶさか(宮城県) vs. FOS/MAV

ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:堀川 優一

そのデッキは、あまりにも異質だった。

 この日の1500強のデッキリストの中には、個性的かつ見事なローグデッキがいくつも見受けられた。たとえば、予選突破はかなわなかったものの5勝2敗という成績を残したハンター協会会長の「60枚5C邪王門」。6勝1敗で予選突破を果たしたものの、決勝1回戦で敗北を喫してしまったP太郎の「リーフ.Starヒカリスマ」。それらはフィーチャーマッチに呼ばれる可能性もあったが、タイミングが合わないうちに敗退してしまい、機会を逸してしまった。優れたデッキリストがネット上に即時に出回る現代において、個性と勝率を両立するのは極めて困難だ。

 だが、このベスト32までトーナメントが進行した時点で、一際異彩を放つローグデッキがまだ勝ち残っていた。

FOS/MAV「あー、こえー……怖いっす」

やぶさか(宮城県)「怖いっすね……」

 宮城からの遠征勢であるやぶさか(宮城県)は、大型大会での実績などはこれまで残せていないようだが、宮城の上位ランカーからも県内の凄腕デッキビルダーとして一目置かれている様子。そしてそんなプレイヤーが、とんでもない見た目のデッキを持ち込んでこのフィーチャーマッチテーブルに座っているのだ。

 一方、対する大分のFOS/MAVは、昨年8月にチーム戦で開催された超CSⅧ in 大阪でベスト16に入賞した実績を持つ。今回は独自のチューンを施した「4Cテレポート」を使用し、決勝1回戦では上述のP太郎を倒してここまで勝ち上がってきた。だが、ここにきてもなお奇抜なローグデッキと当たるなど、はたして予想できているかどうか。

 いつも通り、超次元ゾーンが互いに提示される。その中でやぶさか(宮城県)が1枚だけ、光のサイキックの表面の効果を確認した。まさか今さら《時空のコスモ アンタッチャブル》の効果を確認するアドバンスプレイヤーはいないはず。とするとあのカードは……?と思う間もなく、「はい、大丈夫です」とその確認はすぐに終わる。やがてシャッフルが終わり、対戦準備が整った。
 トップ8まで、あと2勝。やぶさか(宮城県)が秘密兵器で蹂躙するのか。それともFOS/MAVが2年連続のベスト16進出を果たすのか。戦いの火蓋が、いま切られた。

Game

 予選順位で先攻となったFOS/MAVが《宇宙妖精エリンギ》をマナチャージしてターンエンドするのに対し、やぶさか(宮城県)は1ターン目からトップギア。《龍素記号Mj リンシャンカイホ》をマナチャージすると、そのままタップして《ア・ストラ・センサー》を唱え、《メラメラ・ジョーカーズ》を回収する!

FOS/MAV「……はい……w テキスト確認よろしいですか?」

 見えている情報があまりにも異常すぎて、FOS/MAVも思わず苦笑しながら《龍素記号Mj リンシャンカイホ》のテキストを確認する。一体何が起こっているのか?……だが、わからないまでもせめて先手が取れている。どんなデッキであろうと倒せるからこそ、「4Cテレポート」は環境トップのデッキなのだ。FOS/MAVは《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》をマナチャージし、攻め手が来る時を待つ。

 しかし、やぶさか(宮城県)はなおも加速する。《新世界王の思想》チャージから再び《ア・ストラ・センサー》《イッコダス・ケイジ/種デスティニー》を回収すると、続けてそれをそのまま捨てつつの《メラメラ・ジョーカーズ》。後攻2ターン目にして、早くも4枚の呪文が墓地に並ぶ。
 「はたして、これから自分は何をされるのか?」……ローグデッキを持ち込む最大のメリット。それは対戦相手の思考に負荷をかけられる部分にある。

 それでも先攻3ターン目のFOS/MAVは少考ののち、《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》チャージから冷静に《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》を設置して1ブーストでターンを終える。「ドッコイループ」も「創世竜ループ」も殿堂入りで壊滅的な被害を受けた。仮に未知のループデッキが存在したとして、後攻3ターン目に《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》を超えてループが決まるはずもない。それが当たり前の思考であり、そして論理的にも正しいはずだった。何せ召喚以外の方法によるクリーチャーの登場は、すべて封じられているのだ。

 ただ、FOS/MAVには誤算があった。それはこのフォーマットがアドバンスであったこと。そしてやぶさか(宮城県)が持ち込んだのが、ほとんどのプレイヤーにとって完全新規のループデッキだったことだ。

 《詠み人-シラズ-Machine / 招水呪文「マジックル」》チャージから《ザババン・ジョーカーズ》2枚を唱え、手札を整えたものの残りたった1マナしかない状況で、やぶさか(宮城県)が牙を剥く。一度だけ通用する、そして一度だけで十分な、初見殺しの牙を。
 《アーティスト・リンク・ホール》

 ≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫が、マナゾーンの《新世界王の思想》のおかげで《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》をすり抜けて「跳次元召喚」される。2ドローと2マナアンタップ。さらに2枚目の《アーティスト・リンク・ホール》で2体目の≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫が登場し、手札は減らないのにいつの間にかマナはすべて起き上がっている。なおも《ザババン・ジョーカーズ》《ア・ストラ・センサー》《詠み人-シラズ-Machine / 招水呪文「マジックル」》。呪文の連鎖が止まらない。

 だが、これでようやくフルタップ……などと安心できるはずもない。呪文デッキが、ここまで呪文を連鎖させてフルタップにしたということは。
やぶさか(宮城県)「5枚以上は自明だと思うんで……」

 《次元の嵐 スコーラー》追加ターンを獲得し、再びマナが復活する。

やぶさか(宮城県)「ターン終了までいきます。何かありますか?」

FOS/MAV「……何もないです」

 しかも、復活したのはマナだけではない。4マナフルタップで唱えたのは《“魔神轟怒”万軍投》。こちらも《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》に引っかからない「GR召喚」によって《クリスマⅢ》《バクシュ 丙-二式》《アカカゲ・レッドシャドウ》が登場し、《クリスマⅢ》のみ使用して回収はなし……加えて、≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫2体がターンをまたいだことにより再び誘発。4ドロー4マナアンタップ!

 そして、いよいよその時が来た。《セイレーン・コンチェルト》を唱え、《アーティスト・リンク・ホール》でさらにもう1体の≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫を並べるも「効果は使いません」と力強く宣言すると、ついにそのクリーチャーが降臨する。
 1コスト、《龍素記号Mj リンシャンカイホ》召喚!11枚もの呪文が墓地から山札に戻りつつ、このタイミングで先ほどの≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫の能力を使用すると、これだけ動いたにもかかわらず依然マナはほぼフルオープン。

 さらに《BAKUOOON・ミッツァイル》の召喚を宣言。《龍素記号Mj リンシャンカイホ》以外の7体を破壊しての7回「GR召喚」。《全能ゼンノー》2体、《パッパラパーリ騎士》2体、《クリスマⅢ》《バルバルバルチュー》《回収 TE-10》。シールド、マナ、墓地、すべての領域を自在に使いこなす権利を得る。適宜能力を使用しつつも、なおも《ザババン・ジョーカーズ》を唱え、《龍素記号Mj リンシャンカイホ》の効果で《BAKUOOON・ミッツァイル》を手札に戻すと、《アーティスト・リンク・ホール》から≪ラスト・GOLDEN・ドラゴン≫を出し、《次元の嵐 スコーラー》も盤面に追加。やがて再びの《BAKUOOON・ミッツァイル》召喚と《“魔神轟怒”万軍投》により、ついに超GRが空に。
 そしてやぶさか(宮城県)は、ここからループの証明に入る。証明する内容は、「任意の1マナをタップすると相手の手札とマナが1枚ずつ削れる」という有限ループ。

1. マナの《メラメラ・ジョーカーズ》をタップし《ドリル・スコール》、それをそのまま墓地に落とす
2.《セイレーン・コンチェルト》使用、この時《龍素記号Mj リンシャンカイホ》の効果で《BAKUOOON・ミッツァイル》を手札に戻す
3.《回収 TE-10》2体と《パッパラパーリ騎士》《バクシュ 丙-二式》を最低限含む4体以上のGRを割りつつ《BAKUOOON・ミッツァイル》召喚
4.《メラメラ・ジョーカーズ》がアンタップでマナに、《ドリル・スコール》《セイレーン・コンチェルト》が手札にそれぞれ戻り、1マナだけ減って初期盤面
 これにより、FOS/MAVは手札とマナをすべて刈り取られてしまう。

 それでも連戦の疲れからか、やぶさか(宮城県)もそこまでスムーズにループ証明を行えなかったこともあり、この時点で制限時間が終了し追加3ターンに突入。実はこのデッキにはもう一つ、「山札にカードを1枚だけ戻しつつ11コスト払って《龍素記号Mj リンシャンカイホ》を毎ターン召喚することで山札を減らさないループ」も搭載されており、毎ターン相手のドローは弾けるために100%勝利できる山札切れ待ちが可能なのだが、あと3ターンとなれば山札切れ待ちの戦略はとれない。

 となれば、やることは一つ。《アーティスト・リンク・ホール》《勝首領龍 カツドン》を「跳次元召喚」しつつ、《BAKUOOON・ミッツァイル》でGRを出し直して≪最終勝首領 カツマスター≫へと覚醒させると、《BAKUOOON・ミッツァイル》でシールドをブレイクしにいく。

 《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》含みのW・ブレイク。《宇宙妖精エリンギ》がトリガーするものの、「G城」はブレイクのかわりに墓地に置かれるため、「S・トリガー・プラス」は発動しない。さらに《龍素記号Mj リンシャンカイホ》でT・ブレイク。召喚だけならまだしも、こいつでシールドブレイクしたことのあるプレイヤーがどれだけ存在するというのか。

 そのままGRの超過打点がFOS/MAVを押しつぶし、見事やぶさか(宮城県)が《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》の返しで実質後攻3キルを決めたのだった。

Winner: やぶさか(宮城県)

 対戦後、両者に簡単に話を伺ってみた。

FOS/MAV「既存の『4Cテレポート』だと《R・R・R》とかが入ってるんですが、バトルゾーンにクリーチャーが残らないということで、自分はクリーチャーのトリガーを主軸に構築しました。《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》まで入れてカウンターしやすい形になっています。ただこのゲームは先攻3ターン目、手札に《超次元サプライズ・ホール》があって……超次元に《時空の王機ミル・アーマ》があって。それを出していれば……相手のデッキを知らなかったとはいえ、明確にプレミでした」
やぶさか(宮城県)「このデッキは、ここ重要なんですけど、基盤を学生時代からの友達の粉バナナ君が作ったものをDiscordで教えてもらったものなんです。ジョーカーズ基盤ってすごいスピードで墓地が肥えるので、《アーティスト・リンク・ホール》と相性が良いと。だとしても《魔導管理室 カリヤドネ / ハーミット・サークル》になっちゃうという懸念があるんですが、それに対してまず《龍素記号Mj リンシャンカイホ》の枠効率が良く、相手に《禁断 ~封印されしX~》があったら『封印』全部剥がして『禁断解放』させた上で手札に戻すだけで勝てるのと、『アルティメット殿堂コンビ』と呼んでる《BAKUOOON・ミッツァイル》《セイレーン・コンチェルト》《ドリル・スコール》を使ったループパーツがすべて単色ということもあり、火水にするとデッキが単色ベースにできるのでそこが差別化できている部分です。このデッキは《アーティスト・リンク・ホール》を埋めて1マナで呪文を唱えたりもするくらいとにかく1コストの呪文が重要で、多色を埋めちゃうと使えるマナが変わっちゃうんですよね」

やぶさか(宮城県)「あとアドバンス特有の事象として《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》に引っかからないというのも強みです。今の環境ってすごくグッドスタッフが強くて。とりあえず受けて自分のカードパワーで押しつぶすみたいなのが強いんですけど、それって《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》のメタ性能によって作られていると思うんですよ。それを完全に無視できるのがこのデッキの明確な強みですね」

 予想外のアーキタイプがアドバンス最強とされていたデッキを手玉にとるというこのフィーチャーマッチでの光景は、その日のやぶさか(宮城県)の優勝を確信させるには十分だった。

 やぶさか(宮城県)
 超CSⅨ福岡
 アドバンス構築
 6 クリーチャー
1 《BAKUOOON・ミッツァイル》
4 《次元の嵐 スコーラー》
1 《龍素記号Mj リンシャンカイホ》
 10 ツインパクト
4 《イッコダス・ケイジ/種デスティニー》
4 《詠み人-シラズ-Machine / 招水呪文「マジックル」》
2 《カツラデランス / 「アフロ行きま~す!!」》
 24 呪文その他
4 《新世界王の思想》
4 《ア・ストラ・センサー》
4 《ザババン・ジョーカーズ》
4 《メラメラ・ジョーカーズ》
1 《セイレーン・コンチェルト》
1 《ドリル・スコール》
2 《“魔神轟怒”万軍投》
4 《アーティスト・リンク・ホール》
 8 超次元ゾーン
4 《モーニング・ABYFLHA・カイザー》
2 《時空の吸引ドンドン・クロウラー》
1 《芸魔温泉!オンセン・ガロウズ》
1 《勝首領龍 カツドン》
 12 超GRゾーン
2 《クリスマⅢ》
2 《バルバルバルチュー》
2 《回収 TE-10》
2 《パッパラパーリ騎士》
1 《アカカゲ・レッドシャドウ》
1 《バクシュ 丙-二式》
2 《全能ゼンノー》

 FOS/MAV
 超CSⅨ福岡
 アドバンス構築
 22 クリーチャー
4 《宇宙妖精エリンギ》
3 《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》
4 《流星のガイアッシュ・カイザー》
2 《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》
3 《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》
3 《剣轟の団長 ドギラゴン王道》
2 《烈しき切札 ドギラゴン逆》
1 《時の法皇 ミラダンテXII》
 4 ツインパクト
3 《R.S.F.K. / オールイン・チャージャー》
1 《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》
 14 呪文その他
4 《我竜塔第七層 ハッスル・キャッスル》
4 《超次元サプライズ・ホール》
2 《流星の逆転撃》
4 《鬼修羅と跳次元の決断》
 8 超次元ゾーン
1 《ジオ・ケラサス》
1 《時空のコスモ アンタッチャブル》
1 《時空のネビュラ マティーニ》
2 《モーニング・ABYFLHA・カイザー》
1 《芸魔温泉!オンセン・ガロウズ》
1 《時空の王機ミル・アーマ》
1 《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》
 12 超GRゾーン
11 《メタルポンの助》
1 《GRの猫 ニャンニャン》


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