最強位決定戦:事前メタゲーム総括記事 オリジナル編
ライター:清水 勇貴(yk800)
この記事は、今週末に開催される本大会を観戦する皆さまへ向けて、現在の競技シーンにおけるメタゲームと、注目すべきデッキについて簡単に解説するものです。
まずは直近のカードプール変化により大きな変化がもたらされたオリジナルフォーマットからご解説。
オリジナルフォーマットとはデュエル・マスターズの歴史の中で幾度かに渡って追加されてきた外部ゾーンやゲーム開始時からバトルゾーンに置かれる特殊なカードを一切使用せず、メインデッキの40枚のみで戦うルールです。
アドバンスフォーマットとは異なり、超次元ゾーンのカードや超GRクリーチャー、≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫や《零龍》が使えないことで、また違ったゲーム性のフォーマットとなっています。
予選ラウンドはアドバンスから開催されるものの、デッキの基盤としてはオリジナルのものと共通しつつ独自の要素を追加して構成されたデッキもいくつか存在するため、先んじてオリジナルフォーマットのデッキから解説していきたいと思います。
それでは、早速本編に参りましょう!
オリジナル環境の新時代 〜【サガループ】爆誕〜
現在のオリジナル環境を考えていくうえで一番最初に知っておくべきデッキ、それが【サガループ】です。デッキのご紹介に入る前に、まずは《絶望神サガ》を使ったループの手順を簡単に解説いたしましょう。
コンボの始動に必要な前準備は、墓地にクリーチャーを2体以上用意することと、手札か墓地に《絶望神サガ》があること。
この状態で手札か墓地にあるものとは別の《絶望神サガ》をバトルゾーンに出すと、その登場時能力で手札の入れ替えが発生します。カードを1枚引いて、《絶望神サガ》が手札にあるならそれを捨てましょう。 その後、墓地にクリーチャーが3体以上あるので、コスト5以下のゴッドまたはオリジンを墓地からバトルゾーンに出せます。《絶望神サガ》はコスト3のゴッド/オリジンですのでもちろん蘇生対象。《絶望神サガ》を蘇生させたら、最初に出した《絶望神サガ》は自身の能力で破壊されて墓地に。
ここで蘇生した《絶望神サガ》の登場時能力が誘発し、破壊された最初の《絶望神サガ》を含め、3体以上のクリーチャーが墓地にあります。
カードを1枚引いて好きなカードを捨て、《絶望神サガ》を蘇生し、先にいた《絶望神サガ》を破壊。また《絶望神サガ》の能力が誘発し、カードを1枚引いて捨てて《絶望神サガ》を蘇生して破壊して……と、2枚の《絶望神サガ》を交互に出し入れするループが成立します。 この手順を何度も繰り返せば、手札の枚数はそのままに内容を好きなものと入れ替えつつ、大量の墓地を確保可能に。 そこからの勝ち方にはいくつかのバリエーションがありますが、今のところは《超神星DOOM・ドラゲリオン》を手札にキープしたうえでどうにかして闇の1マナを用意し、コスト1まで下がった《超神星DOOM・ドラゲリオン》を召喚してメテオバーンでフィニッシャーを踏み倒す勝ち方が主流です。
以上の手順から考察できる【サガループ】の強みとして、特に環境へ与える影響の大きい点が2点挙げられます。
ひとつが条件の簡易さから来る成立する最速ターンの速さです。
手札か墓地に特定のカードが2枚と、墓地にクリーチャーが2体。手札に1種4枚のカードを2枚揃えるハードルはあるにしても、クリーチャーを墓地に2体用意するのはさほど難しくありません。 例えば《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》の呪文側を使ってクリーチャーを捨てればそれだけで2体揃いますし、《ブラッディ・タイフーン》でクリーチャーが2体落ちるように調整するのも簡単です。
2ターン目にこれらの墓地肥やし手段でクリーチャー2体を墓地に落とせば、次のターンに3マナで《絶望神サガ》を召喚するだけでゲームが終わってしまうこともありえます。
3ターンでゲームを終わらせるデッキ自体は現時点でもいくつかありますが、そのほとんどはS・トリガー次第で逆転しうるビートダウンデッキ。「コンボを使った特殊勝利」が3ターン目に発生しうるデッキは、過去にも数えるほどしかありません。
また、実際に3ターン目にゲームが終わることと同じかそれ以上に、【サガループ】を相手取る際に常に付きまとう「3ターン目にゲームが終わってしまうかもしれない」というプレッシャーが構築・プレイングのどちらにおいても厄介です。
後手を取ってしまった場合、先手の3ターン目に干渉できるターンは《とこしえの超人》などの例外を除けば2ターン目のみ。
このタイミングでゲームを決着させることはほとんど不可能なので、先手3ターン目のループを止めるには、2ターン目にプレイできる何らかの対策をデッキ構築の段階で用意しておく必要が出てきます。
また、ゲームプレイの段階においても、【サガループ】と相対した際にただ2ターン目に手札調整カードをプレイされるだけで、実際に【サガループ】側のコンボが揃っているかいないかに関わらず「次のターンにはコンボが成立するかもしれない」という前提に立ってのプレイをするしかありません。
以上のように、コンボ成立速度が非常に早いことが有効な対抗策の幅を狭め、環境に存在するデッキの構築やプレイに強い影響を及ぼしています。
そして2つ目の強みが、必須と言えるパーツの少なさです。
コンボの成立速度や安定性などの面に目をつむれば、コンボデッキとして成立するために必須と呼べるのは、
・《絶望神サガ》:4枚
・山札を掘り進めた後に何らかの動きに繋げられる、《蒼狼の大王 イザナギテラス》や《黙示賢者ソルハバキ》などのオリジン/ゴッド:計2枚〜5枚
・《超神星DOOM・ドラゲリオン》+踏み倒し先などの勝ち手段:計4枚〜8枚
といったところ。
もちろん実際にデッキとして動かすうえでは、これらに加えて効率のいい墓地肥やし手段や《蒼狼の大王 イザナギテラス》から踏み倒す呪文などのオプションパーツが必要にはなりますが、最小の単位を抜き出せばコンボに割く枠は計10枚のみ。クリーチャーの比率さえ最低限確保すれば、残りのスロットは全て自由枠と言えます。 ここまで自由枠が広ければ水/闇の2色の中で色々と組み替えるだけにはとどまらず、自然文明を追加してミラーに強い《若き大長老 アプル》を取り込んだり、火文明を追加して水と闇だけでは対処しづらいフィールドやタマシードをカード除去で追い返したり、といったアプローチも無理なく取れてしまいます。
スロットが広く、採用圏内に入るカードも多種多様。対面した際に相手がどんな構築の【サガループ】なのかを早い段階で判別するのは至難でしょう。
構築幅が広いため環境の変化に柔軟に対応でき、対面する相手からすれば採用しているカードを絞り込みづらいなど、【サガループ】の自由枠の広さは多様な角度から強力な武器だと考えられます。
百聞は一見にしかず、それでは実際に【サガループ】の構築を踏まえつつこのデッキを構成している要素についても触れていきたいと思います。
|
|
その1・コンボパーツを引くカード
《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》や《》の呪文面、《ブラッディ・タイフーン》や《蒼狼の大王 イザナギテラス》など、デッキを掘り進めてコンボパーツを引き込むためのカードたちです。【サガループ】をはじめとした墓地コンボデッキは多くの場合で「その2」で挙げる「墓地を肥やすカード」と大部分を共有しており、パーツ探しと墓地の枚数確保を並行して行えるのがひとつの強みです。 また、サンプル構築には採用されていないものの《ロスト・ウォーターゲイト》のようなサーチカードもこの分類に配置してよいでしょう。
ピンポイントで《絶望神サガ》にアクセスできるほか、多色の初動カードにもアクセスできるため採用例の多かったカードですが、デッキトップに積み込んでしまうことによる柔軟性の低下や手札が1枚減ってしまう弱点もあります。
確実にコンボパーツを持って来れる点では優秀なサーチカードなので、3ターン目のコンボ成立を強く意識するのであれば十分採用候補になります。
その2・墓地を肥やすカード
《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》や《》の呪文面、《ブラッディ・タイフーン》など、コンボに必要な墓地を確保するカード。《終断γ ドルブロ / ボーンおどり・チャージャー》も使い方次第ではこちらに分類されるでしょう。特に《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》や《》、《ブラッディ・タイフーン》に代表される、2ターン目に墓地のクリーチャーを2枚まで増やせるカードはマナカーブの都合上重要度が高めです。
また、サブプランとして採用されやすい《龍頭星雲人 / 零誕祭》のクリーチャー側をプレイする際には墓地の枚数を大量に確保する必要があります。他の2マナ呪文と比べて墓地肥やしの効率に優れる《ブラッディ・タイフーン》は、特に《龍頭星雲人 / 零誕祭》とセットで採用されやすいカードです。
その3・勝ち筋
勝ち筋は段階ごとに大きく2つあり、《絶望神サガ》のループ後に出てきて展開を作るカードと、より直接的に勝利に貢献するフィニッシャーに分かれています。 前者として代表的なものが《黙示賢者ソルハバキ》や、《蒼狼の大王 イザナギテラス》とそこから踏み倒す《セイレーン・コンチェルト》や闇のチャージャー呪文。
これらのカードを駆使して、マナが全てタップされた状態からでも闇の1マナを確保して《超神星DOOM・ドラゲリオン》の召喚へと漕ぎ着けます。 後者は《超神星DOOM・ドラゲリオン》とその踏み倒し先で構成されており、《水上第九院 シャコガイル》で一気に特殊勝利を狙うか、《禁断竜王 Vol-Val-8》で追加ターンを絡めてビートダウンしきる形のどちらかがほとんどです。 《水上第九院 シャコガイル》は確実に勝てるものの、《一なる部隊 イワシン》を取らざるを得ず、文明を足した構築で使うには枠をかなり圧迫するコンボ特化のフィニッシャー。
《禁断竜王 Vol-Val-8》は確実ではないもののパワーの高さで強引に押していけるフィニッシャーで、自己完結しているため枠が少なくて済む他要素との噛み合わせに優れたフィニッシャーです。
その4・除去&受け札
ここまでは【サガループ】が自分から動くための要素を見ていきましたが、ここから紹介するのは【サガループ】を意識してくる相手に対応するための要素です。
さて、受動的な要素を考えるにあたって、まず知らなければならないのは【サガループ】の弱点です。
速度、フィニッシュの確度、条件の易しさなど、単独で見ればほとんど非の打ち所がないループコンボですが、その最大の弱点はデュエル・マスターズにおける対策=メタ要素がほとんど直撃してしまう点です。
《絶望神サガ》のループはもちろん、フィニッシュ手段となる《超神星DOOM・ドラゲリオン》の召喚・攻撃を止められるカードまで合わせれば、一見すると有効そうに見えないカードまでもがデッキの障害となりえます。
ただし、【サガループ】の強みとして挙げていた通り、コスト3以上の対策カードは後手を取った場合に先手3ターン目のループに間に合いません。使うのであれば先手3ターン目のコンボを割り切ってしまうか、あるいはコスト2の対策カードと併用して続けざまに押し付けていく必要があります。
「まずは2コストの対策カードから入る」のが鉄則であるというのは、対策する側はもちろん【サガループ】側からもキーポイントとなるため、意識しておきたいところです。
また、例外的に《異端流し オニカマス》や《ブルーム=プルーフ》などの「出てきた相手を除去する」タイプのコスト踏み倒しメタはほとんど効かず、コンボデッキには広く刺さりやすいハンデスも単独では機能しづらい対策です。
【サガループ】にとって特に大きな障害となるのが、踏み倒しメタと墓地メタの2つ。最もわかりやすく突破も難しいメタカードなので、周囲のデッキもまずはこれらの要素を取り入れるところから【サガループ】対策を始める場合が多いです。
まず、踏み倒しメタの代表的なカードとして挙げられるのが、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》と《ガル・ラガンザーク》。
これらのカードは比較的に早期に立てることが難しくないうえに、ほぼ完全に《絶望神サガ》からの踏み倒しを阻止できるため、信頼性の高い対策カードです。
ただし、この形式のメタクリーチャーは多くの場合で「自分のターン中」という制限がついているため、S・トリガーで《絶望神サガ》ループに入られると無力な点には注意しましょう。
墓地メタには「墓地からクリーチャーを出せなくする」カードと「墓地自体をリセットしてすぐにコンボに入れなくする」カードの2つのアプローチがあります。
「墓地からクリーチャーを出せなくする」カードとしては、《とこしえの超人》、《若き大長老 アプル》、《U・S・A・BRELLA》などが仮想敵。
これらのクリーチャーは有効範囲がやや狭いためかターンプレイヤーの制限がない場合が多く、これらのクリーチャーを添えておくとトリガーで《絶望神サガ》を踏み倒してループに入られるパターンをケアできるのは重要なポイントです。
「墓地自体をリセットしてすぐにコンボに入れなくする」カードとして汎用性が高いのは、《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》、《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》、《コッコ・武・ルピア》など。
墓地リセットは単独では多少の時間稼ぎにしかなりませんが、他のメタ手段やハンデスと組み合わせた際の有効性はピカイチ。デッキトップから解決されるリスクを大きく減らし、サブプランとして採用されがちな墓地枚数に依存したカードたちを無力化できます。
注意点として、墓地リセットはややコストが重め。汎用性に優れる墓地リセットでコスト2以下なのは《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》のみで、他はほとんどのカードがコスト3を超えています。
単体では速度の面でも強度の面でも物足りないため、墓地リセットだけを持って「【サガループ】対策」とするのは厳しいところです。どれだけデッキへの負担をかけずに採用し、どのようにして他のメタ手段と同居させるかが重要になってきます。
その他にも、
・同一ターン中のクリーチャー登場回数を制限する《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》、《リツイーギョ #桜 #満開》
・破壊されるクリーチャーを墓地ではなくマナに置かせる《空間型無限収納ストラトバッグ》
・《超神星DOOM・ドラゲリオン》を登場させない《ベイB セガーレ》、《キャディ・ビートル》
・《超神星DOOM・ドラゲリオン》に攻撃させない《流星のガイアッシュ・カイザー》、《こたつむり》、《その子供、可憐につき》
……などなど。
これだけ幅広いカードが刺さってしまう以上、環境上に存在するほとんどのデッキが何かしらの形で【サガループ】に刺さるカードを採用できてしまいます。
そして、もうひとつの弱点が 速度。
もちろん3ターンでのフィニッシュは速度として環境最速クラスですが、同じ3ターンフィニッシュをより高い再現性で叩きつけてくるデッキにはどうしても不利を取ってしまいます。
メインギミックの中に防御的に優れたカードはそれほど採用できないので、うまく自由枠をやりくりしてビートダウン対策のカードを採用していく必要があるでしょう。
【サガループ】には受け札らしい受け札はあまり取られていない場合が多く、メタクリーチャーなどでゲームを引き延ばされた場合に突破できるよう手札からもプレイできる除去か、別の役割を持てる踏み倒しカードが優先して採用される傾向にあります。
代表的かつデッキの動きと噛み合うカードとして知られているのが《「敬虔なる警官」》。ギャラクシールドで表向きにシールドに置くとコスト2以下のクリーチャーを1体持ち主の手札に戻し、次の相手のターン中にコスト2以下のクリーチャーが召喚できなくなります。
コスト2以下という非常に狭い範囲にしか通らない除去ですが、先述したように【サガループ】を対策するうえではまずコスト2以下のメタカードから優先的に採用されるため、狭い除去範囲がデッキの強みと見事に噛み合っています。
また、メタクリーチャーだけでなくもうひとつの弱点である「高速ビートダウン」に対しても、最序盤から小型クリーチャーの大量展開に待ったを掛けられるため、極めて有効な防御手段として機能します。
《》は最小でコスト1まで下がりながら高パワーのクリーチャーまで除去できる点が唯一無二。呪文の通らない《ガル・ラガンザーク》を処理するにはこのクリーチャーに頼るほかありません。
呪文側が確定破壊除去トリガーのツインパクトカードである《龍頭星雲人 / 零誕祭》も、どちらも使いでのある優秀な1枚。呪文に選ばれないカードは除去できないものの、どんな大型クリーチャーでも確実に除去できるのは強みです。
受け札らしい受け札としては、小型クリーチャーの横展開に対してめっぽう強く、引き延ばされたゲームでは手札からプレイしてメタクリーチャーを一掃できる《九番目の旧王》や、自身のトリガーはもちろん《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》から踏み倒してもターンを強制的に中断させられる《終末の時計 ザ・クロック》などが採用されることもあります。
サブプラン
もうひとつのメタへの対抗策として、「そもそもメタカードの効かない別の戦い方を用意しておく」、という軸をズラした先述も定番です。
《》、《龍頭星雲人 / 零誕祭》はどちらも墓地ギミックを有効活用しつつ、踏み倒しメタ・《若き大長老 アプル》などの墓地対策メタクリーチャーや《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》などの、《絶望神サガ》ループだけを止めるカードの上からゲームを作れるカードたちです。
これらのクリーチャーで相手の動きに対処しつつ優位を取り、リソースゲームを制して最終的に《超神星DOOM・ドラゲリオン》まで絡めてビートダウンを仕掛けるプランは、本大会中でも度々見られるのではないかと予想しています。
【サガループ】を取り巻くデッキたち
新環境で活躍するデッキたちは、先ほどの項で触れた【サガループ】の弱点の苦手とする戦術やカードたちを何らかの形で取り込めるデッキが大部分を占めています。
それぞれのデッキがどのような動きをするかに軽く触れた後、どのように【サガループ】と戦っていくのかについて解説していきます。
【火単ブランド】
《我我我ガイアール・ブランド》の登場以降、常に環境に居続ける速攻デッキ界のトップランナー。
ここ数ヶ月は少し構築の軸を変えたビートジョッキー中心の構成が一般的でしたが、【サガループ】環境が始まってからは最初期の構築に近い《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》・《こたつむり》フル投入の形に回帰しています。
特に妨害がなさそうな場合は3ターンでのフィニッシュを、そうでない場合も《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《こたつむり》で相手の行動を1ターンズラしての4ターンフィニッシュを狙え、速度面で真っ向から張り合える数少ないデッキタイプのうちのひとつです。
ただし、【サガループ】側も《九番目の旧王》や《「敬虔なる警官」》などの有効な除去・遅延手段を持ち合わせているため油断は禁物。
【火自然“逆悪襲”ブランド】
軽量のメタクリーチャーや打点要員をバラ撒いて高速で手札を消費し、《"逆悪襲"ブランド》の打点を速やかに押し付ける高速メタビートです。
早期のW・ブレイカーで高い火力を誇りながらもメタクリーチャーの遅延範囲が幅広いため複数ターンにわたって打点を機能させやすく、線の細いデッキでありながら高い評価を得て環境に定着しています。
採用されるメタクリーチャーは《とこしえの超人》や《ベイB セガーレ》、《若き大長老 アプル》といった自分ターン中にも機能するものたちオンリーで、トリガー経由のコスト踏み倒しまで強引に押さえ付けていけるのが何よりの強みです。
【サガループ】に強い要素が詰まっているため基本的には有利ですが、手札を効率良く処理できなければコンセプトである《"逆悪襲"ブランド》の「G・G・G」がうまく機能しなくなってしまうため、《「敬虔なる警官」》のバウンス、コスト2以下召喚不可のロックは【火単ブランド】以上に致命的です。
トリガーの埋まり方に加えて、【サガループ】側がいいタイミングで《「敬虔なる警官」》をプレイできるかどうかがゲームの焦点になるでしょう。
【火自然アポロヌス】
序盤はサーチを連打して手札を整え、3ターン目に《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》から他のクリーチャーを間に挟みつつ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》へと侵略。相手のシールドを吹き飛ばしてそのままダイレクトアタックを決める豪快なコンボ・ビートダウンデッキ。
大量に採用されたサーチカードでコンボパーツをかき集めるため、こと3ターンキルの再現性では右に並ぶもののないデッキです。
このデッキは特にメタ要素を採用しているわけでもなく、純粋に速度のみで【サガループ】に対抗する貴重な存在。無対策の相手には綺麗に通るものの、《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》採用型の構築では《絶望神サガ》経由で《蒼狼の大王 イザナギテラス》をブロッカーとして立てられるため一筋縄ではいきません。
【水闇自然ジャオウガ】
水/闇/自然3色の基盤を用い、メタクリーチャーを維持しながらゲームのテンポを取りながらゲームを進行して7マナ貯まったら《CRYMAX ジャオウガ》と大量のメタクリーチャー軍団で攻めかかる、メタビートとコントロールの要素を兼ね備えたデッキです。
ハンデス要素を多めに取り入れた構築と、とにかくメタクリーチャーを大量に詰め込んだ構築の2軸がありますが、現在のメタゲームでは《秩序の意志》などの受け札を採用しやすく、《有象夢造》や《キユリのASMラジオ》の展開力でメタクリーチャーによるロック体制もキープできるハンデス軸がやや優勢な印象です。
自然は【サガループ】に有効なメタクリが豊富にあるものの、水/闇の2色にはほとんど存在しないため、特に構築をいじっていなければ【水闇自然ハンデス】/【水闇自然ジャオウガ】側はデッキに4枚の《若き大長老 アプル》に全てを賭ける展開になりがちです。
ただし、先述した通り《有象夢造》や《キユリのASMラジオ》までプレイできるマナ帯まで凌げば、山札を強引に掘り進めて出したり《「敬虔なる警官」》の効果発動中でもメタクリーチャーを展開できたりと、簡単には打開できないロック状況に持ち込めます。
もっとも【サガループ】側もあの手この手でロックを切り崩しにかかるのは想像に難くありません。
このマッチアップでは序盤に適切な妨害を挟んで【サガループ】側のコンボ成立を阻害できるか、そしてロングゲームに持ち込んだ後に【サガループ】側の「崩し」手段を捌いて勝ち切れるかが見どころとなりそうです。
【オービーメイカー】
こちらも水/闇/自然のメタクリーチャーを活用するデッキタイプ。
メタクリーチャーによる遅延、あるいは2ターン目のマナ加速から4マナを揃えてマナアンタップクリーチャー→《キユリのASMラジオ》と繋いで《天災 デドダム》などを絡めて自然マナを作り、《十番龍 オービーメイカー Par100》を3〜4ターン目に着地させて殴り勝ちを狙います
前評判としては【サガループ】に勝てるデッキと目されていたように速度自体は【サガループ】とほぼ同速、メタクリーチャーが着地すれば有利に立ち回れるものの、ビートダウンに対してあまり耐性がないことと、《キユリのASMラジオ》がプレイできなかった際の出力の低さがネックです。
《キユリのASMラジオ》は【サガループ】を見て環境に戻ってきた《とこしえの超人》や《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》で機能停止してしまうのも厳しく、前評判ほどの活躍は見せられていません。
【水魔導具】
《卍 新世壊 卍》を展開した状態で魔導具呪文を4回詠唱し、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》のドルスザク展開・追加ターンでゲームを掌握するコントロール要素の強いコンボデッキです。
定期的な強化を受けて長きに渡って最前線で活躍するデッキタイプでしたが、今回のパックでも《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》という新戦力を手にいれ、さらにパワーアップして環境に居座っています。
わずか2マナで手札を減らさずに墓地をリセットできる《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》と踏み倒しを完全に封殺する《ガル・ラガンザーク》を併用すれば、【サガループ】の機能はほぼ停止。サブプランでの貫通すら許しません。
さらに、相手だけでなく自分の墓地をリセットして《神の試練》を繰り返し使う無限ターンフィニッシュも《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》によって可能になりました。
このデッキ最大の弱点はビートダウンデッキ。《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》を採用するために《堕呪 ギャプドゥ》が不採用になっており、相手をするのがより難しくなっています。
【サガループ】との対面では《ガル・ラガンザーク》をどれだけ早く着地させられるか、および「《ガル・ラガンザーク》下での墓地0」という《》でも打開されない状況を作れるかどうかがゲームの分岐点となりそうです。
【水闇自然サガループ】
【サガループ】の発展形としてすでに環境に定着しつつある【水闇自然サガループ】。
《霞み妖精ジャスミン》や《悪魔妖精ベラドンナ》といった自壊するクリーチャーマナ加速で素早くマナを確保し、《キユリのASMラジオ》で貪欲に展開しつつリソースを回収。水/闇/自然基盤の基本に忠実に、大量のマナ加速から早期に《CRYMAX ジャオウガ》を投げつけるビートプランを狙いつつ、隙を見せた相手には《絶望神サガ》をループさせて《超神星DOOM・ドラゲリオン》+《禁断竜王 Vol-Val-8》による大打点を突然押しつけます。
《キユリのASMラジオ》は単純に《天災 デドダム》や《Disジルコン》でリソースを伸ばすのはもちろん、コンボパーツとしても非常に優秀です。墓地に2クリーチャーがある状態で闇マナを残して《キユリのASMラジオ》を唱え、《絶望神サガ》と墓地の増えるカードが同時にめくれればそのままループして《超神星DOOM・ドラゲリオン》に繋げてゲームに勝つことも。
このデッキの本質は《キユリのASMラジオ》を用いてリソースを確保する《CRYMAX ジャオウガ》ビートダウンで、《絶望神サガ》ループからの展開は「隙を見せてくれるなら通して勝っちゃうよ」といった温度感。踏み倒しメタは一貫して有効に働くものの、墓地対策や回数制限系のロックならほとんど無視できるよう構築されています。
また、《若き大長老 アプル》で通常の【サガループ】のコンボを牽制しつつ戦っていけるのもセールスポイントと言えるでしょう。ある程度引きに依存する部分はあるものの、明確に【サガループ】への回答を持った【サガループ】として独自の強みを持っています。
ここからは、【サガループ】の登場によって環境での立ち位置が激変したデッキについて軽く触れていきたいと思います。
【水闇自然グラスパー】や【ケンジ・キングダム】、【ゼーロベン】などは、【サガループ】より遅いコンボデッキです。
コンボフィニッシュには独自の強みがありますが、その分より強くて早いアンフェアが出れば特別な理由がない限りはそちらが優先され、使う必然性が薄くなってしまいがちです。
特にコンボデッキは特殊な構成でもなければ自分より速いコンボデッキに基本的に勝つのが難しいため、他のアーキタイプの高速化よりも厳しい立ち位置に晒されてしまいます。
続いて【闇単アビス】と、再びの登場となる【ケンジ・キングダム】。これらは墓地戦術に強くフォーカスを当てているデッキたちです。
【サガループ】の登場によって《とこしえの超人》や《若き大長老 アプル》、もちろん墓地リセットもさらに増加。「ついで」にメタを貼られてしまい、振るわない戦績となっています。
最後に【4c邪王門】。
このデッキは【サガループ】の台頭により一気に沈む……かと思われましたが、まだまだ環境で活躍しているデッキタイプです。
その背景には、環境全体が【サガループ】に対策にリソースを割いたことによる、ビートダウンデッキの増加と全体的なデッキパワーの低下があると考えられます。
これまでに触れてきた通り、【サガループ】の台頭で最も勢いを増しているのは各種ビートダウンデッキ。そして【4c邪王門】はごく一般的なビートダウンデッキに対しては全般に有利を取れるデッキタイプです。
さらに、【サガループ】を意識することで周囲のデッキの構築が3ターン目前後までの軽くてゲームへの影響が小さいカードに寄ったり、【4c邪王門】には有効ではないメタカードが採用されたりと、純粋なカードパワーに優れる【4c邪王門】にとっては戦いやすい環境になっています。
とはいえ、既存の構築のままだと《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》とそれを使い回す《龍素記号wD サイクルペディア》ぐらいしか【サガループ】対策を採用していない【4c邪王門】は、直接対決では少なくとも有利とは言えないでしょう。
この「トップメタ<トップメタに勝てるよう構築されたデッキ<トップメタに勝つために歪んだ構築に勝てるデッキ<トップメタ……」というメタの構図は1トップの環境でよく見られる形です。
本大会に参加するプレイヤーたちが、どこまでメタが進むと予想してデッキを持ち込むのかも、注目すべきポイントのひとつでしょう。
総括
今回は超大型新人・【サガループ】を中心に、「最強位決定戦」直前のオリジナル環境のメタゲームを紐解いていきました。
【サガループ】の存在感は非常に大きなものですが、現在のところ「【サガループ】が圧倒的な最強!」ということはなく、あくまでも「環境内で一番に意識すべきデッキ」というところに収まっています。
とはいえ厳しいマークを向けてどうにか、といった立ち位置なのは間違いありませんし、何度も述べた通り非常に構築の自由度が高いデッキなので、「最強位決定戦」本番では見たこともないような新型【サガループ】が開発されて、猛威を振るっているかもしれません。
選手の皆さんのデッキ選択には必ず何らかの意図が込められています。生放送をご覧になる際に、そのプレイヤーがなぜそのデッキを選んだのか、なぜそのカードを採用するのかに思いを馳せるにあたって、本記事が一助になれば幸いです。
アドバンスの事前メタゲーム記事は明日アップロード予定です! お見逃しなく!
ここまでは【サガループ】が自分から動くための要素を見ていきましたが、ここから紹介するのは【サガループ】を意識してくる相手に対応するための要素です。
さて、受動的な要素を考えるにあたって、まず知らなければならないのは【サガループ】の弱点です。
速度、フィニッシュの確度、条件の易しさなど、単独で見ればほとんど非の打ち所がないループコンボですが、その最大の弱点はデュエル・マスターズにおける対策=メタ要素がほとんど直撃してしまう点です。
《絶望神サガ》のループはもちろん、フィニッシュ手段となる《超神星DOOM・ドラゲリオン》の召喚・攻撃を止められるカードまで合わせれば、一見すると有効そうに見えないカードまでもがデッキの障害となりえます。
ただし、【サガループ】の強みとして挙げていた通り、コスト3以上の対策カードは後手を取った場合に先手3ターン目のループに間に合いません。使うのであれば先手3ターン目のコンボを割り切ってしまうか、あるいはコスト2の対策カードと併用して続けざまに押し付けていく必要があります。
「まずは2コストの対策カードから入る」のが鉄則であるというのは、対策する側はもちろん【サガループ】側からもキーポイントとなるため、意識しておきたいところです。 また、例外的に《異端流し オニカマス》や《ブルーム=プルーフ》などの「出てきた相手を除去する」タイプのコスト踏み倒しメタはほとんど効かず、コンボデッキには広く刺さりやすいハンデスも単独では機能しづらい対策です。
【サガループ】にとって特に大きな障害となるのが、踏み倒しメタと墓地メタの2つ。最もわかりやすく突破も難しいメタカードなので、周囲のデッキもまずはこれらの要素を取り入れるところから【サガループ】対策を始める場合が多いです。 まず、踏み倒しメタの代表的なカードとして挙げられるのが、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》と《ガル・ラガンザーク》。
これらのカードは比較的に早期に立てることが難しくないうえに、ほぼ完全に《絶望神サガ》からの踏み倒しを阻止できるため、信頼性の高い対策カードです。
ただし、この形式のメタクリーチャーは多くの場合で「自分のターン中」という制限がついているため、S・トリガーで《絶望神サガ》ループに入られると無力な点には注意しましょう。
墓地メタには「墓地からクリーチャーを出せなくする」カードと「墓地自体をリセットしてすぐにコンボに入れなくする」カードの2つのアプローチがあります。 「墓地からクリーチャーを出せなくする」カードとしては、《とこしえの超人》、《若き大長老 アプル》、《U・S・A・BRELLA》などが仮想敵。
これらのクリーチャーは有効範囲がやや狭いためかターンプレイヤーの制限がない場合が多く、これらのクリーチャーを添えておくとトリガーで《絶望神サガ》を踏み倒してループに入られるパターンをケアできるのは重要なポイントです。 「墓地自体をリセットしてすぐにコンボに入れなくする」カードとして汎用性が高いのは、《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》、《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》、《コッコ・武・ルピア》など。
墓地リセットは単独では多少の時間稼ぎにしかなりませんが、他のメタ手段やハンデスと組み合わせた際の有効性はピカイチ。デッキトップから解決されるリスクを大きく減らし、サブプランとして採用されがちな墓地枚数に依存したカードたちを無力化できます。
注意点として、墓地リセットはややコストが重め。汎用性に優れる墓地リセットでコスト2以下なのは《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》のみで、他はほとんどのカードがコスト3を超えています。
単体では速度の面でも強度の面でも物足りないため、墓地リセットだけを持って「【サガループ】対策」とするのは厳しいところです。どれだけデッキへの負担をかけずに採用し、どのようにして他のメタ手段と同居させるかが重要になってきます。
その他にも、 ・同一ターン中のクリーチャー登場回数を制限する《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》、《リツイーギョ #桜 #満開》 ・破壊されるクリーチャーを墓地ではなくマナに置かせる《空間型無限収納ストラトバッグ》 ・《超神星DOOM・ドラゲリオン》を登場させない《ベイB セガーレ》、《キャディ・ビートル》 ・《超神星DOOM・ドラゲリオン》に攻撃させない《流星のガイアッシュ・カイザー》、《こたつむり》、《その子供、可憐につき》
……などなど。
これだけ幅広いカードが刺さってしまう以上、環境上に存在するほとんどのデッキが何かしらの形で【サガループ】に刺さるカードを採用できてしまいます。
そして、もうひとつの弱点が 速度。
もちろん3ターンでのフィニッシュは速度として環境最速クラスですが、同じ3ターンフィニッシュをより高い再現性で叩きつけてくるデッキにはどうしても不利を取ってしまいます。
メインギミックの中に防御的に優れたカードはそれほど採用できないので、うまく自由枠をやりくりしてビートダウン対策のカードを採用していく必要があるでしょう。
【サガループ】には受け札らしい受け札はあまり取られていない場合が多く、メタクリーチャーなどでゲームを引き延ばされた場合に突破できるよう手札からもプレイできる除去か、別の役割を持てる踏み倒しカードが優先して採用される傾向にあります。 代表的かつデッキの動きと噛み合うカードとして知られているのが《「敬虔なる警官」》。ギャラクシールドで表向きにシールドに置くとコスト2以下のクリーチャーを1体持ち主の手札に戻し、次の相手のターン中にコスト2以下のクリーチャーが召喚できなくなります。
コスト2以下という非常に狭い範囲にしか通らない除去ですが、先述したように【サガループ】を対策するうえではまずコスト2以下のメタカードから優先的に採用されるため、狭い除去範囲がデッキの強みと見事に噛み合っています。
また、メタクリーチャーだけでなくもうひとつの弱点である「高速ビートダウン」に対しても、最序盤から小型クリーチャーの大量展開に待ったを掛けられるため、極めて有効な防御手段として機能します。
《》は最小でコスト1まで下がりながら高パワーのクリーチャーまで除去できる点が唯一無二。呪文の通らない《ガル・ラガンザーク》を処理するにはこのクリーチャーに頼るほかありません。 呪文側が確定破壊除去トリガーのツインパクトカードである《龍頭星雲人 / 零誕祭》も、どちらも使いでのある優秀な1枚。呪文に選ばれないカードは除去できないものの、どんな大型クリーチャーでも確実に除去できるのは強みです。 受け札らしい受け札としては、小型クリーチャーの横展開に対してめっぽう強く、引き延ばされたゲームでは手札からプレイしてメタクリーチャーを一掃できる《九番目の旧王》や、自身のトリガーはもちろん《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》から踏み倒してもターンを強制的に中断させられる《終末の時計 ザ・クロック》などが採用されることもあります。
サブプラン
もうひとつのメタへの対抗策として、「そもそもメタカードの効かない別の戦い方を用意しておく」、という軸をズラした先述も定番です。 《》、《龍頭星雲人 / 零誕祭》はどちらも墓地ギミックを有効活用しつつ、踏み倒しメタ・《若き大長老 アプル》などの墓地対策メタクリーチャーや《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》などの、《絶望神サガ》ループだけを止めるカードの上からゲームを作れるカードたちです。
これらのクリーチャーで相手の動きに対処しつつ優位を取り、リソースゲームを制して最終的に《超神星DOOM・ドラゲリオン》まで絡めてビートダウンを仕掛けるプランは、本大会中でも度々見られるのではないかと予想しています。
【サガループ】を取り巻くデッキたち
新環境で活躍するデッキたちは、先ほどの項で触れた【サガループ】の弱点の苦手とする戦術やカードたちを何らかの形で取り込めるデッキが大部分を占めています。それぞれのデッキがどのような動きをするかに軽く触れた後、どのように【サガループ】と戦っていくのかについて解説していきます。
【火単ブランド】
《我我我ガイアール・ブランド》の登場以降、常に環境に居続ける速攻デッキ界のトップランナー。ここ数ヶ月は少し構築の軸を変えたビートジョッキー中心の構成が一般的でしたが、【サガループ】環境が始まってからは最初期の構築に近い《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》・《こたつむり》フル投入の形に回帰しています。
特に妨害がなさそうな場合は3ターンでのフィニッシュを、そうでない場合も《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《こたつむり》で相手の行動を1ターンズラしての4ターンフィニッシュを狙え、速度面で真っ向から張り合える数少ないデッキタイプのうちのひとつです。
ただし、【サガループ】側も《九番目の旧王》や《「敬虔なる警官」》などの有効な除去・遅延手段を持ち合わせているため油断は禁物。
【火自然“逆悪襲”ブランド】
軽量のメタクリーチャーや打点要員をバラ撒いて高速で手札を消費し、《"逆悪襲"ブランド》の打点を速やかに押し付ける高速メタビートです。早期のW・ブレイカーで高い火力を誇りながらもメタクリーチャーの遅延範囲が幅広いため複数ターンにわたって打点を機能させやすく、線の細いデッキでありながら高い評価を得て環境に定着しています。
採用されるメタクリーチャーは《とこしえの超人》や《ベイB セガーレ》、《若き大長老 アプル》といった自分ターン中にも機能するものたちオンリーで、トリガー経由のコスト踏み倒しまで強引に押さえ付けていけるのが何よりの強みです。
【サガループ】に強い要素が詰まっているため基本的には有利ですが、手札を効率良く処理できなければコンセプトである《"逆悪襲"ブランド》の「G・G・G」がうまく機能しなくなってしまうため、《「敬虔なる警官」》のバウンス、コスト2以下召喚不可のロックは【火単ブランド】以上に致命的です。
トリガーの埋まり方に加えて、【サガループ】側がいいタイミングで《「敬虔なる警官」》をプレイできるかどうかがゲームの焦点になるでしょう。
【火自然アポロヌス】
序盤はサーチを連打して手札を整え、3ターン目に《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》から他のクリーチャーを間に挟みつつ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》へと侵略。相手のシールドを吹き飛ばしてそのままダイレクトアタックを決める豪快なコンボ・ビートダウンデッキ。大量に採用されたサーチカードでコンボパーツをかき集めるため、こと3ターンキルの再現性では右に並ぶもののないデッキです。
このデッキは特にメタ要素を採用しているわけでもなく、純粋に速度のみで【サガループ】に対抗する貴重な存在。無対策の相手には綺麗に通るものの、《冥界の不死帝 ブルース /「迷いはない。俺の成すことは決まった」》採用型の構築では《絶望神サガ》経由で《蒼狼の大王 イザナギテラス》をブロッカーとして立てられるため一筋縄ではいきません。
【水闇自然ジャオウガ】
水/闇/自然3色の基盤を用い、メタクリーチャーを維持しながらゲームのテンポを取りながらゲームを進行して7マナ貯まったら《CRYMAX ジャオウガ》と大量のメタクリーチャー軍団で攻めかかる、メタビートとコントロールの要素を兼ね備えたデッキです。ハンデス要素を多めに取り入れた構築と、とにかくメタクリーチャーを大量に詰め込んだ構築の2軸がありますが、現在のメタゲームでは《秩序の意志》などの受け札を採用しやすく、《有象夢造》や《キユリのASMラジオ》の展開力でメタクリーチャーによるロック体制もキープできるハンデス軸がやや優勢な印象です。
自然は【サガループ】に有効なメタクリが豊富にあるものの、水/闇の2色にはほとんど存在しないため、特に構築をいじっていなければ【水闇自然ハンデス】/【水闇自然ジャオウガ】側はデッキに4枚の《若き大長老 アプル》に全てを賭ける展開になりがちです。
ただし、先述した通り《有象夢造》や《キユリのASMラジオ》までプレイできるマナ帯まで凌げば、山札を強引に掘り進めて出したり《「敬虔なる警官」》の効果発動中でもメタクリーチャーを展開できたりと、簡単には打開できないロック状況に持ち込めます。
もっとも【サガループ】側もあの手この手でロックを切り崩しにかかるのは想像に難くありません。
このマッチアップでは序盤に適切な妨害を挟んで【サガループ】側のコンボ成立を阻害できるか、そしてロングゲームに持ち込んだ後に【サガループ】側の「崩し」手段を捌いて勝ち切れるかが見どころとなりそうです。
【オービーメイカー】
こちらも水/闇/自然のメタクリーチャーを活用するデッキタイプ。メタクリーチャーによる遅延、あるいは2ターン目のマナ加速から4マナを揃えてマナアンタップクリーチャー→《キユリのASMラジオ》と繋いで《天災 デドダム》などを絡めて自然マナを作り、《十番龍 オービーメイカー Par100》を3〜4ターン目に着地させて殴り勝ちを狙います
前評判としては【サガループ】に勝てるデッキと目されていたように速度自体は【サガループ】とほぼ同速、メタクリーチャーが着地すれば有利に立ち回れるものの、ビートダウンに対してあまり耐性がないことと、《キユリのASMラジオ》がプレイできなかった際の出力の低さがネックです。
《キユリのASMラジオ》は【サガループ】を見て環境に戻ってきた《とこしえの超人》や《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》で機能停止してしまうのも厳しく、前評判ほどの活躍は見せられていません。
【水魔導具】
《卍 新世壊 卍》を展開した状態で魔導具呪文を4回詠唱し、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》のドルスザク展開・追加ターンでゲームを掌握するコントロール要素の強いコンボデッキです。定期的な強化を受けて長きに渡って最前線で活躍するデッキタイプでしたが、今回のパックでも《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》という新戦力を手にいれ、さらにパワーアップして環境に居座っています。
わずか2マナで手札を減らさずに墓地をリセットできる《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》と踏み倒しを完全に封殺する《ガル・ラガンザーク》を併用すれば、【サガループ】の機能はほぼ停止。サブプランでの貫通すら許しません。
さらに、相手だけでなく自分の墓地をリセットして《神の試練》を繰り返し使う無限ターンフィニッシュも《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》によって可能になりました。
このデッキ最大の弱点はビートダウンデッキ。《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》を採用するために《堕呪 ギャプドゥ》が不採用になっており、相手をするのがより難しくなっています。
【サガループ】との対面では《ガル・ラガンザーク》をどれだけ早く着地させられるか、および「《ガル・ラガンザーク》下での墓地0」という《》でも打開されない状況を作れるかどうかがゲームの分岐点となりそうです。
【水闇自然サガループ】
【サガループ】の発展形としてすでに環境に定着しつつある【水闇自然サガループ】。《霞み妖精ジャスミン》や《悪魔妖精ベラドンナ》といった自壊するクリーチャーマナ加速で素早くマナを確保し、《キユリのASMラジオ》で貪欲に展開しつつリソースを回収。水/闇/自然基盤の基本に忠実に、大量のマナ加速から早期に《CRYMAX ジャオウガ》を投げつけるビートプランを狙いつつ、隙を見せた相手には《絶望神サガ》をループさせて《超神星DOOM・ドラゲリオン》+《禁断竜王 Vol-Val-8》による大打点を突然押しつけます。
《キユリのASMラジオ》は単純に《天災 デドダム》や《Disジルコン》でリソースを伸ばすのはもちろん、コンボパーツとしても非常に優秀です。墓地に2クリーチャーがある状態で闇マナを残して《キユリのASMラジオ》を唱え、《絶望神サガ》と墓地の増えるカードが同時にめくれればそのままループして《超神星DOOM・ドラゲリオン》に繋げてゲームに勝つことも。
このデッキの本質は《キユリのASMラジオ》を用いてリソースを確保する《CRYMAX ジャオウガ》ビートダウンで、《絶望神サガ》ループからの展開は「隙を見せてくれるなら通して勝っちゃうよ」といった温度感。踏み倒しメタは一貫して有効に働くものの、墓地対策や回数制限系のロックならほとんど無視できるよう構築されています。
また、《若き大長老 アプル》で通常の【サガループ】のコンボを牽制しつつ戦っていけるのもセールスポイントと言えるでしょう。ある程度引きに依存する部分はあるものの、明確に【サガループ】への回答を持った【サガループ】として独自の強みを持っています。
ここからは、【サガループ】の登場によって環境での立ち位置が激変したデッキについて軽く触れていきたいと思います。 【水闇自然グラスパー】や【ケンジ・キングダム】、【ゼーロベン】などは、【サガループ】より遅いコンボデッキです。
コンボフィニッシュには独自の強みがありますが、その分より強くて早いアンフェアが出れば特別な理由がない限りはそちらが優先され、使う必然性が薄くなってしまいがちです。
特にコンボデッキは特殊な構成でもなければ自分より速いコンボデッキに基本的に勝つのが難しいため、他のアーキタイプの高速化よりも厳しい立ち位置に晒されてしまいます。 続いて【闇単アビス】と、再びの登場となる【ケンジ・キングダム】。これらは墓地戦術に強くフォーカスを当てているデッキたちです。
【サガループ】の登場によって《とこしえの超人》や《若き大長老 アプル》、もちろん墓地リセットもさらに増加。「ついで」にメタを貼られてしまい、振るわない戦績となっています。 最後に【4c邪王門】。
このデッキは【サガループ】の台頭により一気に沈む……かと思われましたが、まだまだ環境で活躍しているデッキタイプです。
その背景には、環境全体が【サガループ】に対策にリソースを割いたことによる、ビートダウンデッキの増加と全体的なデッキパワーの低下があると考えられます。
これまでに触れてきた通り、【サガループ】の台頭で最も勢いを増しているのは各種ビートダウンデッキ。そして【4c邪王門】はごく一般的なビートダウンデッキに対しては全般に有利を取れるデッキタイプです。
さらに、【サガループ】を意識することで周囲のデッキの構築が3ターン目前後までの軽くてゲームへの影響が小さいカードに寄ったり、【4c邪王門】には有効ではないメタカードが採用されたりと、純粋なカードパワーに優れる【4c邪王門】にとっては戦いやすい環境になっています。
とはいえ、既存の構築のままだと《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》とそれを使い回す《龍素記号wD サイクルペディア》ぐらいしか【サガループ】対策を採用していない【4c邪王門】は、直接対決では少なくとも有利とは言えないでしょう。
この「トップメタ<トップメタに勝てるよう構築されたデッキ<トップメタに勝つために歪んだ構築に勝てるデッキ<トップメタ……」というメタの構図は1トップの環境でよく見られる形です。
本大会に参加するプレイヤーたちが、どこまでメタが進むと予想してデッキを持ち込むのかも、注目すべきポイントのひとつでしょう。
総括
今回は超大型新人・【サガループ】を中心に、「最強位決定戦」直前のオリジナル環境のメタゲームを紐解いていきました。【サガループ】の存在感は非常に大きなものですが、現在のところ「【サガループ】が圧倒的な最強!」ということはなく、あくまでも「環境内で一番に意識すべきデッキ」というところに収まっています。
とはいえ厳しいマークを向けてどうにか、といった立ち位置なのは間違いありませんし、何度も述べた通り非常に構築の自由度が高いデッキなので、「最強位決定戦」本番では見たこともないような新型【サガループ】が開発されて、猛威を振るっているかもしれません。
選手の皆さんのデッキ選択には必ず何らかの意図が込められています。生放送をご覧になる際に、そのプレイヤーがなぜそのデッキを選んだのか、なぜそのカードを採用するのかに思いを馳せるにあたって、本記事が一助になれば幸いです。
アドバンスの事前メタゲーム記事は明日アップロード予定です! お見逃しなく!
TM and © 2024, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY