全国大会2023:メタゲームブレイクダウン~オリジナル~
ライター:山口 海斗(ジャイロ)
14/48 光自然天門7/48 水火マジック
3/48 水闇コンプレックス
3/48 水魔導具
3/48 フィオナアカシック
3/48 闇火自然アビス
3/48 水闇自然ジャオウガ
2/48 水闇自然DOOM
2/48 水自然ジャイアント
2/48 闇自然アビス
6/48 母数1
これは、デュエルマスターズ全国大会2023のオリジナル環境デッキ分布である。あなたはこの環境の異常さがわかるだろうか。おそらく、一見しただけではごくありふれたデッキ分布に見えるだろう。
しかし、注意深くすみずみまで見ると、そこかしこに奇妙な違和感が存在することに気づく。
1.殿堂発表を経て
直近の殿堂発表によって、環境王者であった【水火マジック】は《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》を失う。続いて、【水闇魔導具】【水闇自然ジャオウガ】【アカシックフィオナ】【火自然アポロ】は構築の大幅な見直しを強いられ、環境が大きく動いた。その結果、苦手なデッキが環境から消え、最強候補に名乗りを上げたのが【闇自然アビス】だ。しかし、全国大会のデッキ分布から見て分かるように、【闇自然アビス】を使用していたのはわずか2名のみである。この環境、なんか変……?
偶然にも私の知り合いに蒲原さんというカバレージライターがいる。
私もあまりに少ない最強候補という不思議なデッキ分布に興味を持ったので、蒲原さんに相談してみることにした。
2.蒲原さんの推理
蒲原さんには前もってデッキ分布のデータを送り、電話で話を聞くことにした。以下、蒲原さんとの会話を記載する。
--「蒲原さん、お久しぶりです。お時間とっていただいてありがとうございます。」
蒲原「お久しぶりです。ところで送ってもらったデッキ分布のことですが…」
--「はい。最強候補のはずだった【闇自然アビス】が全然いない謎があるんですが、これについて何かわかりますか?」
蒲原「うーん…一つ言えるのは、この環境は全国大会の場にいた全ての人にとっても意識外の事象だったということですね。」
--「全ての…ですか?」
蒲原「はい。例えば、公式の生放送でコバさんが挙げていたTier表、カバレージチームの予想していた事前メタゲーム、当日生放送で解説をされていたじゃきーさん、粒ぞろいのメンバーが【闇自然アビス】を注目デッキとして挙げていました。」
思い返せばそうである。なんとなく強いなぁなんてレベルではなく、直近のCS入賞報告でもダントツの1位にいたのが【闇自然アビス】だったはずだ。
オリジナル
— デュエル・マスターズ公式アカウント (@t2duema) March 30, 2024
38 闇自然アビス
30 マジック
23 水闇COMPLEX
17 DOOMドラゲリオン
16 天門
12 光水火ゴスペル
9 グラスパー
8 CRYMAXジャオウガ
8 水闇自然COMPLEX
6 5c蒼龍
6 マトリクスループ
4 フィオナアカシック3
続く)#デュエマ pic.twitter.com/DdrWuXLmVK
蒲原「ちょっといいですか?」
3.トップシェアとその行方
蒲原「いや、最初にこのデッキ分布を見たときにね、ずいぶん変な環境だなって思ったんですよ。」--「そうですか?【闇自然アビス】が少ない以外、特に気にならなかったんですが…。」
蒲原「私が変だと思ったのは【光自然天門】の多さ、そして決勝進出率なんです。構築の細かな違いはあっても、48人中14人が【光自然天門】という同じデッキを使っていました。そして、これが決勝進出者8名のデッキ分布です。」
4/8 水火マジック
2/8 水魔導具
1/8 闇自然アビス
1/8 闇火自然アビス
--「あれ!あんなに多かった【光自然天門】が誰もいない?」
蒲原「そうなんです。圧倒的トップシェアデッキが誰一人として残っていないんです。気になった私は、オリジナルの勝負に切り替わる4回戦時点での成績に注目してみることにしました。」
--「なるほど、アドバンス環境で3戦したのちにオリジナル環境で3戦する全国大会の仕組み上、アドバンスを勝ち越しているプレイヤーのみで構成される環境は、最初に見た環境とは別物になるはずですからね。…ってあれ?」
9/24 光自然天門
4/24 水火マジック
2/24 水魔導具
2/24 闇火自然アビス
7/24 母数1
蒲原「これが4回戦開始時点での上位24名のデッキ分布です。ここでもやはり、【光自然天門】がかなりのシェアを誇っていたんです。」
--「だったら、なおのこと決勝進出できなかった理由が分からなくなりませんか?」
蒲原「不思議に思った私は、4回戦のマッチングまで調べてみました。そこで全ての違和感が重なり、一つの事実に結びついたのです。」
蒲原「4回戦のマッチング、上位9名の【光自然天門】使用者のうち、天門同士の対決が2戦、残る5名はそれぞれ【水魔導具】【水火マジック】【闇火自然アビス】と対戦して、全員が敗れています。」
--「つまりオリジナルの初戦を勝てたのはどちらにせよ【光自然天門】が勝つミラーマッチだけだった…と。」
蒲原「それだけじゃありません。なんとか4回戦を勝てた2人の【光自然天門】も、5回戦以降戦うのは、4回戦で【光自然天門】を倒してきたデッキばかりです。例えば4回戦で【光自然天門】を倒しているブラック会社@プレさんの【水火マジック】には《ディメンジョン・ゲート》が採用されており、《単騎連射 マグナム》を絡めた攻撃にかなりの再現性があったはずです。」
ブラック会社@プレ デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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蒲原「ここからは私の推測になるのですが、最初にお話した【闇自然アビス】が少ないのも影響として大きかったはずです。本来【光自然天門】は《巨大設計図》や《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》を使って蓄えた豊富な手札から《∞龍 ゲンムエンペラー》などの必殺のクリーチャーを出せる都合、【闇自然アビス】は元々想定していた相手のはずです。ところがアドバンス環境を勝ち抜いた猛者たちがみな同じ結論に至ってしまった。」
--「【闇自然アビス】が少ない理由は、使用者が【光自然天門】に偏っていたから。また、得意な相手のいない環境で【光自然天門】同士の喰い争いが始まってしまい、結果として誰も本戦を抜けることはできなかったんですね。」
蒲原「とはいえ、普段よく知られている【光自然天門】にはないギミックがいたるところで見られ、デッキの完成度はどのデッキよりも高かったと思います。」
--「蒲原さんがそこまで言うとは。例えばどういったギミックが気になりましたか?」
蒲原「オリジナルで【光自然天門】を使用していたプレイヤーのうち、最も予選順位の高かったノン@ゴジットさんは《Rev.タイマン》の採用で自然文明の増量に成功していたり、《聖霊龍王 バラディオス》でミラーも制せる特徴があります。次点のカイザさんは《闘門の精霊ウェルキウス》を3枚に減らしており、代わりに入っているのは《邪光魔縛 ネロマノフ=ルドルフⅠ世》や《聖魔連結王 ドルファディロム》といった強力なエンジェル・コマンドたち。≪ギャラクシー・チャージャー≫のプレイバリューは相当高かったのではないでしょうか。」
ノン@ゴジット デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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カイザ/はっちcs デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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4.まとめ
蒲原さんの助言もあり、この変な環境にある程度の予測がついた。消えた【闇自然アビス】の謎、決勝に残れなかった【光自然天門】の謎。それら全ての違和感が重なり、上述のような結果へと結びついたのだ。また、【光自然天門】がぶつかり合った一瞬の隙をついて高い勝率を出せた【闇自然アビス】の地力の高さは流石と言うほかない。火文明を加えた型も好成績を残していることから、拡張性の高さもポイントに挙げておこう。
ミノミー デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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にわか デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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もう一つ注目したいのは【水魔導具】の活躍である。【水火マジック】以外に前のめりに攻め込むデッキがいないこの環境において【水魔導具】の選択は理に適っている。だが、一発勝負の全国大会に、直近の目立った活躍が少ないデッキを持ち込むことができるだろうか。
いや、そんな選択ができたからこそ、【水魔導具】を選択したキナリが優勝できたと言った方がいいだろう。
キナリ デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 オリジナル構築 |
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4月13日(土)には新商品である「DM24-RP1 デュエル・マスターズTCG 王道篇第1弾 「デーモン・オブ・ハイパームーン」」の発売も控えている。本記事はあくまで1大会の結果の考察であり、プレイヤー達は次の環境へと歩みを進めている。私は今大会のマッチング表やデッキリストをフォルダに閉まって、次の大会へと備えることにした。
おわり
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