DMGP2023-1st Day2(オリジナル):メタゲームブレイクダウン
今回見事に入賞を果たした128デッキから、プレイヤーたちの見出した結論を見ていこう。
TOP128 デッキ分布
【火単ブランド】 18名【サガループ】 14名(水闇:9名、水闇火:3名、水闇自然:2名)
【4c邪王門】 13名
【水闇自然オービーメイカー】 9名
【水魔導具】 9名
【5cザーディクリカ】 7名
【火自然アポロヌス】 6名
【水闇自然ハンデス】 6名
【光水火鬼羅.Star】 5名
【水闇自然ジャオウガ】 4名
【光水火「正義星帝」】 4名
【闇火邪王門】 3名
【アビス】 3名
【水闇自然ジ・ウォッチ】 3名
その他(母数2以下) 24名
計128名
母数として最大となったのは、本大会で見事に優勝を果たした【火単ブランド】。【サガ】系統のすべてのバリエーションを合算しても及ばないほどの圧倒的な数値を叩き出している。
いっぺこ DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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特筆すべきは、《絶望神サガ》のリリース以降数を減らしていた《烈火大聖 ソンクン》の採用者が12名で、全体の2/3にも及んだことだ。《パイセン・チュリス》まで採っている構築さえも過半数の10名を占め、ビートジョッキーを主軸とした形が今回の勝ち組となったことは明確なトピックだと言えよう。
《烈火大聖 ソンクン》は攻撃する時と味方のクリーチャーが破壊された時に誘発する、モード付きの効果を持つ。
除去のモードによって軽量クリーチャーを中心としたバトルゾーンのやり取りに非常に長けつつも、相手に依存しないシールドブレイクのモードも持っている。汎用性の高さと特定対面への特効性を両立した、文句なしのパワーカードだ。
さらに、ビートジョッキーのメタクリーチャーとして採用例が目立ったのが《U・S・A・BRELLA》だ。
《絶望神サガ》ループはもちろんのこと、水/闇/自然基盤のクリーチャーデッキが採用する《キユリのASMラジオ》による山札からの踏み倒しや《Disジルコン》のマナ・墓地召喚を封殺できる。
コスト4以下の呪文によって選ばれない能力も忘れがちだが優秀で、例えばビートダウンデッキを意識して【水魔導具】にたびたび採用される《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》では除去されない。
決勝戦でも、勝敗には直接絡まなかったが《堕呪 エアヴォ》で選ばれない《U・S・A・BRELLA》の姿が見られた。
このように、決勝ラウンドでも数多く残っていた上位に残っていたデッキに対して何らかの形で役割を持てる場合が多く、本大会のメタゲームにおいて優秀なクリーチャーだったと言えるだろう。
また、【火単ブランド】が躍進する中で直接対決で有利な【4c邪王門】もまた、相対的に見れば非常にいいデッキ選択だったと言える。
あーちー/はっちCS DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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そもそも【サガ】系統以外のデッキにはほとんど有利が付くとさえ言われているデッキで、特に【火単ブランド】のような直線的なビートダウンデッキにとっては悪夢のような存在。
ただでさえ地力も高いうえに、《とこしえの超人》+≪お清めシャラップ≫+《龍素記号wD サイクルペディア》の布陣を採用すれば【サガ】に対しても決して不利はとらない。非常に隙の小さなデッキだと言えるだろう。
実際に決勝ラウンドには相当数が勝ち上がっており、今大会において注目度の高いデッキのひとつであったことは間違いない。
筆者の所感ではあるが、これらのデッキが躍進した背景には【サガ】系統を意識したメタカードに比重を置いたデッキが増加したことがあるのではないだろうか。
例えば《烈火大聖 ソンクン》。【オービーメイカー】や【鬼羅.Star】などメタカードで盤面を制圧して相手に対して、特に踏み倒しや軽減を使わずにビートダウンしながらテンポを取れる《烈火大聖 ソンクン》の通りが非常に良かったのは間違いないだろう。
4マナを払って召喚すればメタカードに引っかかることもないため、相手からすれば分かっていても対処の難しい一手だ。
例えば【4c邪王門】。このデッキは《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》に代表されるように、豊富な除去手段と高いリソース力でメタクリーチャーデッキに対しては比較的強く出やすい。
もちろん本領を発揮する前に《百鬼の邪王門》を止められたまま殴り切られてしまったり、ロック能力を持ったクリーチャーで蓋をされてしまうと手も足も出ないが、一度でも自分の土俵に持ち込めばリソースゲームを制するのは容易いだろう。
《一なる部隊 イワシン》の殿堂入りや攻略法の共有によって、以前の環境と比べれば【サガ】を対策するのは遥かに簡単になった。
特に《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》+《凶鬼98号 ガシャゴン / 堕呪 ブラッドゥ》の呪文側や《とこしえの超人》+≪お清めシャラップ≫のように蓋をする置物+墓地リセットギミックを詰め込みつつ、自分の好きな要素を勝ち筋に据える工夫を施したデッキは予選でも数多く見られている。
ただし、これらのカードは刺さらない対面にとっては無効牌でしかない。これらのカードが有効に働かない上にそもそも地力でも優っていればこれらの「サガ対策」ギミックを採用したデッキは脆く、結果として【サガ】に意識を割いたデッキに対して強く、デッキとしても強度の高い《烈火大聖 ソンクン》採用型の【火単ブランド】【4c邪王門】が通りやすい環境だったのではないかというのが筆者の分析だ。
さて、これを踏まえた上でベスト16まで勝ち上がったデッキはどうだろうか?
【火単ブランド】 4
【水闇自然オービーメイカー】 3
【火自然アポロヌス】 2
以下各1名
【水闇自然ジ・ウォッチ】
【水闇自然ジャオウガ】
【水闇自然ハンデス】
【水闇火サガ】
【水魔導具】
【4c邪王門】
【5cドキンダンテ】
合計16名
【4c邪王門】にとって大きな誤算となったと思われるのが、【水闇自然オービーメイカー】の躍進だ。
みれうCS DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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最速3ターン目に《十番龍 オービーメイカー Par100》でクリーチャーの登場時能力を封じて相手の行動を制限しつつ、カード1枚から2体のクリーチャーを出す《キユリのASMラジオ》や山札を掘り進める《天災 デドダム》、《Disジルコン》で粘り強く戦えるうえに、《十番龍 オービーメイカー Par100》の後ろに控える《∞龍 ゲンムエンペラー》で〆る分かりやすい詰め筋も持っている。
デッキとしてのパワー・対応力が非常に高く、ビデオマッチでも何度も登場し、その強さを存分に見せつけたデッキタイプだ。
加えて、今回上位に入賞した【水闇自然オービーメイカー】の多くが《絶望と反魂と滅殺の決断》を擁していた。カード1枚から4枚のリソースを奪うこのカードの存在により、単に盤面を押し付けるだけでなくリソース面での攻防までこなせるような構築に昇華されていた。
【4c邪王門】側としては《とこしえの超人》を採用すれば【サガループ】には強く出られるものの、カードパワーがそれほど高くないカードを採用することでそれ以外のデッキに対しては隙が大きくなってしまう。逆に【サガループ】を割り切った構築は、母数としては十分な数を保っていた彼らとの直接対決を乗り切れない。
最大母数となった【火単ブランド】に有利な点は良かったものの、一度の敗北すら許されない決勝ラウンドの中で、「それ以外」のデッキとの対戦を制しきれなかったのが【4c邪王門】が勝ち残れなかった原因だろう。
また、当の【サガループ】も今大会のメタゲームでは完全に「狩られる」側のデッキだったと結論せざるをえない。
ベスト16に入賞したのは水/闇/火の、《アーチャー・チュリス/ボルカニック・アロー》や《一王二命三眼槍》などを採用したやや特殊な構築のみ。決勝トーナメントにこそ多く勝ち上がった【サガループ】だが、一般的に知られている構築のものは軒並みベスト16までに駆逐された。
とらくん0120 DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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先にも述べたが、やはり【サガループ】包囲網は厚かった。
【サガループ】自体が強力なデッキであることは疑いようもないが、ただでさえ《絶望神サガ》の2枚目へのアクセスが遅れたり、キーパーツのシールド落ちでフィニッシュプランを途中で変えざるをえなかったりといったリスクを常に孕むコンボデッキだ。
そこに加えて厳重な対策を施したデッキがいくつも襲いかかってくるとあれば、1戦、2戦は順当に乗り越えられたとしても、3戦、4戦と繰り返すうちにどうしてもどこかしらで綻びが生まれてしまう。
予選9回戦+本戦7回戦。異常なまでの厳戒態勢が敷かれていた【サガループ】は、合計16回戦という長丁場を戦い抜くのに不向きなデッキだったというほかないだろう。
そして、相対的に決勝ラウンドの「勝者」と言えるのが【火単ブランド】と【火自然アポロヌス】、すなわち素早く相手のシールドを5枚割り切ってそのままゲームを決着させるビートダウンデッキたちだ。
【サガループ】対策にかまけておろそかになった足元をすくうように、これらのデッキは見事に相対するプレイヤーたちを貫き、駆け抜けていった。
もちろん、優勝を飾ったいっぺこ選手の裏には、【4c邪王門】や《テック団の波壊Go!》や《B.F.F. モーメント》を採用した【水闇自然ジャオウガ】系のデッキ、あるいは何の変哲もないS・トリガーやG・ストライクに足踏みさせられて敗れ去った無数の【火単ブランド】があることは間違いない。
しかし、結果的に環境に適した構築・プレイングを携えたうえで最も「持って」いた【火単ブランド】が王座についたのは、ある種の必然だったと言えるだろう。
そして、デデ選手が準優勝を飾った【水魔導具】はやや特殊な立ち位置のデッキだった。
メタゲームの最終盤で突如として数を増やした【水魔導具】。《ガル・ラガンザーク》の殿堂入り直後は一時的に数を減らしたものの、空いたスペースにこれまでとは違った軸のカードを搭載して帰ってきたのだ。
デデ DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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【水魔導具】を代表するカードである《卍 新世壊 卍》は、デュエル・マスターズにおけるオーパーツ的存在だ。
コンボデッキらしく最速4ターン目に追加ターンを取りながら《「無月」の頂 $スザーク$》を複数展開して手札と盤面を荒らして勝つ「押し付け」がありつつも、《卍 新世壊 卍》さえあれば魔導具呪文1枚から際限なくドローを繋げられるためリソースゲームにも強い。
呪文コンボデッキでありながら呪文ロックを無視できるためやや特殊なメタカードでなければ対策が成立しづらく、環境で主流なメタカードで「ついで」に完封されてしまうこともほとんどない。
本来お互いのプレイヤーに影響を与えるはずの《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》も、《卍 新世壊 卍》の存在によって魔導具呪文・ドルスザク呪文に限れば一方的に無視できるためほとんど負担をかけずに採用できてしまう。
カードパワーの平均値が大きく引き上がっている現代でも、これだけ特殊な性質を持ったカードはほとんど見られない。それだけ独特で【水魔導具】のアイデンティティたりうるカードだ。
墓地の魔導具をコストに「無月の門」を使ったり、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》で墓地のドルスザクが出せなくなる《若き大長老 アプル》の減少や、《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》・《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》が刺さる【水闇自然オービーメイカー】の増加など、細かな追い風を受けて【水魔導具】も総合的に見れば悪くない立ち位置だった。
惜しむらくは、上位に苦手とされるビートダウンデッキが多数進出してきたことだろう。対【サガループ】の話題が取り沙汰されがちな《ガル・ラガンザーク》の殿堂入りだったが、それと同程度には「破壊されても魔導具呪文を唱えるたびに再登場できるブロッカー」を早期展開しづらくなったことによってビートダウンへの耐性も下がっている。
《ゴゴゴ・Cho絶・ラッシュ》や《終末の時計 ザ・クロック》によってある程度のフォローが可能ではあるものの、結局のところ3〜4枚のトリガーが埋まっていてようやっと勝ちの目が出てくる、というレベルの話だ。明確に不利を背負っていることに変わりはない。
出戸ももぐま DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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スヌーピィィ DMGP2023-1st オリジナル構築 |
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惜しくもベスト3への入賞は逃したが、水/闇/自然の3色を基盤とした【CRYMAX ジャオウガ】系のデッキもまた良い選択肢だった。
環境内に存在するいずれかのデッキに尖った有利を付けられるわけではないが明確に不利の付く対面も少なく、どんな相手にもプランニング次第で「勝ち筋」を見つけられるのがこれらのデッキの強みだ。
同系列のデッキを用いて上位に入賞したプレイヤーの多くはメタクリーチャーの採用を必要最少限に留め、《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》によるマナランプとゲームの趨勢を決定づける重量級のフィニッシュカード、そして十分な時間を稼ぐための豊富な受け札を主軸として40枚を選び抜いている。
少なくとも今回のメタゲームにおいては、防御面を意識してどっしりと腰を据えた構築が大きな成功を収めていたことは特筆しておくべきだろう。
【サガループ】包囲網の中を駆け抜けた【火単ブランド】をはじめとするビートダウンデッキが華々しく優勝を飾ったGP2023-1st Day2。
ベスト16に目を向けてもビートダウンデッキの活躍は華々しく、今大会においてこれらのデッキが「勝ち組」であったことは間違いない。
しかし、それは【サガループ】や【水闇自然オービーメイカー】、【4c邪王門】といったデッキが劣っていたというわけではなく、あくまでメタゲームの焦点が【サガループ】にあり、わかりやすく対策されやすい「標的」だったから、という事情は大いにあるだろう。
本戦進出者の母数からも読み取れるように、現在のオリジナル環境はある程度目立ったデッキはありつつも、絶妙な均衡の上に成り立っている。
目前に迫ったアビス・レボリューション第1弾 「双竜戦記」の発売によって現在のカードプールは終焉を迎えるが、今回活躍したデッキたちは以降も引き続き有力なデッキであり続けるだろう。
このメタゲームブレイクダウンが、次の時代を切り拓くヒントとなれば幸いだ。
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