超CSⅥ福岡:メタゲームブレイクダウン
ライター:渋谷 直也(シオン)
環境の変化
超CSⅥ福岡から遡ること2週間、「竜皇神爆輝」発売後の環境が落ち着き、メタゲームも落ち着きを見せていた。大幅に強化を受けた【水火マジック】をはじめとして、前環境から変わらず高い出力の出せる【水闇自然ジャオウガ】、【水闇魔導具】、【闇自然アビスロイヤル】が続く形であった。
しかし、落ち着いたかに思えた環境とは大きく変わったメタゲームが超CSⅥ福岡では繰り広げられることとなる。
TOP128デッキ分布
31 【水火マジック】25 【水闇COMPLEX】
16 【水闇魔導具】
9 【フィオナアカシック3】
7 【巨大天門】
6 【水闇自然ジャオウガ】
6 【闇自然アビスロイヤル】
6 【闇単アビスロイヤル】
3 【火自然アポロヌス】
3 【光火ボルシャック】
2 【光火カウンター】
2 【光水火鬼羅.Star】
2 【光水火ゾージア】
2 【水闇火レッドゾーン】
1 【ブレスラチェイン】
1 【ゼーロベン】
1 【5cコントロール】
1 【オボロティガウォック】
1 【水魔導具】
1 【闇火コンプレックス】
1 【水闇火邪王門】
1 【水闇自然オービー】
水火マジック
TOP128のデッキ分布からも【水火マジック】が環境の覇者として君臨していることは明らかだろう。「竜皇神爆輝」で新たに登場した《氷柱と炎弧の決断》の採用により、弱点であったリソースの細さや妨害札への脆さを克服した。
そして、【水火マジック】をさらに後押ししているのが他環境デッキとの速度の差だろう。【水火マジック】の先攻3ターン目の展開は同速度のリーサル(相手を倒す)プランを持たないデッキタイプに対して実質的な押しつけであり、致命的なカウンターを受けづらいことになる。
【水火マジック】の使用者が多くなると予想された今大会では、《氷柱と炎弧の決断》に加え《♪なぜ離れ どこへ行くのか 君は今》の採用も多く見られた。 3ターン目以降のリソースを安定させつつ、ミラーマッチでは《氷柱と炎弧の決断》のトリガーケアの役割を果たすこともできる。今後の【水火マジック】における注目カードになるだろう。
カルマ 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
水闇COMPLEX
超CSⅥ福岡の1週間前に現れたこのデッキは、以前まで環境の上位に位置していた【水闇自然ジャオウガ】や【闇自然アビスロイヤル】を圧倒し、一気に環境トップへと躍り出た。この【水闇COMPLEX】こそが、今大会のダークホースであった。
キーカードである《DARK MATERIAL COMPLEX》は、S・トリガーを大量に採用して相手の攻撃を耐えるデッキの「耐えるだけでは勝てない」問題を解決した。いや、もはや「耐えるだけで勝てる」と言っても過言ではない。それほどまでに【水闇COMPLEX】は強力であった。 《終末の時計 ザ・クロック》や《終止の時計 ザ・ミュート》といった確実にターンを稼げるS・トリガーで相手の攻撃を防ぎ、《アーテル・ゴルギーニ》や≪学校男≫で一気に《DARK MATERIAL COMPLEX》を起動させ勝利するデッキだ。
構築においては、まだデッキの歴史が浅いことからか多種多様な採用カードが見受けられた。
紅蓮 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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Mha 超CSⅥ 福岡 デッキリスト オリジナル構築 |
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紅蓮のリストでは《終末の時計 ザ・クロック》を2枚まで削り、代わりに《異端流し オニカマス》が採用されている。【水火マジック】をシールドだけで受けきるのは厳しいと判断し、《異端流し オニカマス》を出すことで相手に求められる要求値を高くしているのだろう。
対してMhaが採用しているのは《エル・セミファイナルのマスク》と《龍頭星雲人 / 零誕祭》だ。【水闇COMPLEX】は以外にもリソースが乏しく、ゲーム中に手札が尽きることが多い。《エル・セミファイナルのマスク》は【水闇COMPLEX】に非常にマッチしたリソースカードだ。
また≪零誕祭≫はS・トリガーでありながら《DARK MATERIAL COMPLEX》の起動も進められるため、攻めのカードとしも使用できる。
予選突破128人中25名が使用するほどの大きな結果を残した【水闇COMPLEX】だが、天敵となるデッキが存在しない訳ではない。
そんな【水闇COMPLEX】を狩る側のデッキが【水闇魔導具】、【フィオナアカシック3】だ。
水闇魔導具
【水闇魔導具】は明確な【水闇COMPLEX】のカウンターデッキと言える。以前から採用されていた《秩序の意志》や《堕呪 ボックドゥ》が《DARK MATERIAL COMPLEX》の機能を停止させるだけでなく、【水闇COMPLEX】の取り柄であるS・トリガーの潤沢さも《神の試練》の無限ループの前では意味を成さない。 大きく動きだせるのが4ターン目という弱点はありつつも、《堕∞魔 ヴォゲンム》+《「無月」の頂 $スザーク$》ので稼がれるアドバンテージは絶大であり、4ターン目以降では無類の強さを誇る。超CSⅥ福岡の2週間ほど前では仮想敵の少なさから苦しい立ち位置にあった【水闇魔導具】だが、今大会の環境は追い風となった。
ツムツム 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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フィオナアカシック3
今回みごとに優勝したこのデッキも【水闇COMPLEX】の苦手とするデッキだ。《奇天烈 シャッフ》による妨害は受けるものの、攻め手の数で総合的に競り勝つことができる。最速4ターン目に成立する無限ループは理不尽そのもので、相手の構築に影響されず勝ちきれるというのはやはりメリットとして大きい。
【水火マジック】に対しても勝率を上げるため《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》や《》といった強力なトリガー呪文が採用した構築が多い印象だ。
やっすー 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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玉兎 超CSⅥ 福岡 デッキリスト オリジナル構築 |
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また、【水闇COMPLEX】そのものの増加だけでなく、強力な受けデッキの台頭によるゲーム速度の低下も【フィオナアカシック3】にとっては好都合であったといえるだろう。
巨大天門
だいごろ-01 超CSⅥ 福岡 デッキリスト オリジナル構築 |
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密かに好成績を収めたのが【巨大天門】だ。注目すべきカードはやはり《∞龍 ゲンムエンペラー》だろう。
【水火マジック】及び【水闇COMPLEX】に対して1度着地すればデッキの大半を無効化することができる。1枚のみでゲームを終わらせることも少なくないほどだ。その環境に対する刺さりの良さから、他のデッキでも採用が見られた。
そんな今大会では頼りがいのある《∞龍 ゲンムエンペラー》だが、思いもよらぬデッキで活躍していた。
オボロティガウォック
卍フライ卍 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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【オボロティガウォック】だ。デッキの性質上、どんなフィニッシャーでも合わせやすいタイプではあるが、想像以上に《∞龍 ゲンムエンペラー》が上手く機能している。
フィニッシャーの《∞龍 ゲンムエンペラー》を踏み倒すための《禁呪と聖句の決断》。その《禁呪と聖句の決断》を唱えるための《頂上縫合 ドギラディス勝3rd》だ。
そして、この《禁呪と聖句の決断》+《頂上縫合 ドギラディス勝3rd》の文明の組み合わせが《月光電人オボロカゲロウ》と噛み合っているのも面白いところだ。
水闇自然ジャオウガ
DMGP2023-2ndと比較すると大きく数を減らすことになったが、それでも基盤の強さは健在だ。3ターン目の《キユリのASMラジオ》から展開される《キャディ・ビートル》や≪ボン・キゴマイム≫といったメタクリーチャーで相手を妨害し、隙あらば《CRYMAX ジャオウガ》で突然のリーサルが襲い掛かる。≪母なる星域≫による4ターン目の《CRYMAX ジャオウガ》の破壊力は現在でも計り知れない。加えて、先ほどの《∞龍 ゲンムエンペラー》を採用することで【水闇COMPLEX】を対策する形も散見した。
BASARA太郎 超CSⅥ 福岡 デッキリスト オリジナル構築 |
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しかし、それをもってしても【水闇COMPLEX】を克服するには至らなかった。
闇自然アビスロイヤル
「竜皇神爆輝」では《エリー=ザ=ダーティ》が登場し、【闇自然アビスロイヤル】を苦しめてきた≪ボン・キゴマイム≫に一矢報いたかと思ったが、このデッキもまた【水闇COMPLEX】を課題として抱えることになる。 《秩序の意志》の採用が見られたのはその影響だろう。【闇単アビスロイヤル】にも採用されており、【水闇COMPLEX】だけでなく【水火マジック】に対しても役割を持てるという点も評価が高い。闇単アビスロイヤル
【闇単アビスロイヤル】の構築で目を引かれたのは《忍蛇の聖沌 c0br4》の採用だ。従来の形ではS・トリガーとして《撃髄医 スパイナー》が採用されていることが多かったが、9コストと非常に重くS・トリガー以外で機能しにくい。
対して《漆黒の深淵 ジャシン帝》の蘇生先としても優秀な《忍蛇の聖沌 c0br4》は、【火自然アポロヌス】が減少していることもありベストなS・トリガーと言えるだろう。
832レモン 超CSⅥ 福岡 デッキリスト オリジナル構築 |
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次に、入賞数は多くないもののメタゲームに適していたと感じたデッキを紹介したい。
光水火鬼羅.Star
ぴーとげ 超CSⅥ 福岡 TOP8デッキリスト オリジナル構築 |
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【水火マジック】に対しては先出しの《アルカディアス・モモキング》と《奇天烈 シャッフ》による呪文ロック、【水闇COMPLEX】に対しては《氷柱と炎弧の決断》と《奇天烈 シャッフ》で《DARK MATERIAL COMPLEX》の機能停止と、上位2デッキに非常に上手くアプローチできている。
苦手とする【水闇自然ジャオウガ】や【闇自然アビスロイヤル】といったデッキタイプも減少していることから、今大会での立ち位置は最高に良かっただろう。素晴らしいデッキ選択だ。
そして、決して使用者が多かったとは言えない【光水火鬼羅.Star】がTOP8まで勝ち進んでいるという事実がその証明だ。
おわりに
新たに登場し、輝かしい結果を残した【水闇COMPLEX】には今後も注目していきたいところだ。次の舞台は群馬だ。
変わらぬ顔ぶれで迎えることになるのか、またダークホースが登場するのか。
いずれにせよ、「竜皇神爆輝」の集大成となる。
この記事が皆様の力になれば幸いだ。
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