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最強位決定戦:事前メタゲーム総括記事 アドバンス編

ライター:清水 勇貴(yk800)

 DMGP2022の上位入賞者とDMPランキングの上位入賞者たちが集い、この半年で最も強いプレイヤーの座を賭けて相争う「最強位決定戦」。

 この記事は、今週末に開催される本大会を観戦する皆さまへ向けて、現在の競技シーンにおけるメタゲームと、注目すべきデッキについて簡単に解説するものです。

 2本目となるこちらの記事ではアドバンスフォーマットを解説いたします。昨日アップロードされたオリジナルフォーマットの記事はこちらからどうぞ!
https://dm.takaratomy.co.jp/coverage/skgp_mg_o/

 アドバンスフォーマットは殿堂レギュレーションで制定された殿堂入りカードや一部の例外的なカードを除き、これまでデュエル・マスターズで登場した外部ゾーンやゲーム開始時からバトルゾーンに置かれる特殊なカードを自由に使って戦えるルールです。 ・人気の高いドラグハートやP侵略・P革命チェンジという新たな選択肢が追加されたことで重要性がいや増す超次元ゾーンのカード ・ランダム性が高い代わりにコストパフォーマンスに優れた超GRクリーチャー ・ゲーム開始時からバトルゾーンに置いておくことでさまざまなシナジーやボーナスを受けられる≪伝説の禁断 ドキンダムX≫≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫《零龍》

 以上のようなカードの有無が、アドバンスとオリジナルの主な違いとなっています。

 それでは、早速本編に参りましょう!


アドバンス環境の新時代 〜【サガループ】は希望たりえるか?〜

 アドバンス環境にもオリジナルと同じく【サガループ】が登場し、一定以上の活躍を見せています……が、今後も最前線で生き残っていけるかを考えると、少々疑問が残るのが事実です。

 いくつかの理由がありますので、ひとつずつ見ていきましょう。

 まずは、そもそものデッキパワーがアドバンスにおいてはそこまで突出していない点。

 先攻からでも3ターンでコンボを叩き込める【自然単オービーメイカー】や【水闇ゼーロ】、【ジョルジュDOOM】のようなデッキが先んじて存在するアドバンス環境。

 【サガループ】の強みであった「条件のゆるさ」という部分には目を見張るものがありますが、「速度」という観点では平凡……とまでは言わないものの「速い部類」という程度です。  【自然単オービーメイカー】は能動的に使える《とこしえの超人》《ベイB セガーレ》のような優秀なメタクリーチャーが。  【水闇ゼーロ】は3ターン目に《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》でメタクリーチャーを破壊してそのままコンボに行ける突破力が。  【ジョルジュDOOM】は3ターン目の再現性こそ低いものの《「敬虔なる警官」》がコンボの達成に支障なくプレイできる点や召喚を絡めた動きだけで完結することから高いメタ耐性が。

 それぞれコンボの達成条件と連動したメタカードやメタカードを除去するカードを使用し、デッキパワーを損なわずに対応力を高めています。

 その上で、コンボにかかるマナの問題も無視できません。

 【自然単オービーメイカー】はマナをアンタップすることで実質コスト0のクリーチャーやコスト1のクリーチャーを多用してマナを圧縮し、【水闇ゼーロ】の《闇王ゼーロ》や【水闇ジョルジュDOOM】の《ジョルジュ・バタイユ》が代替コストを使用することでマナを使わずにプレイできるのに対し、《絶望神サガ》は基本的にきっちり3マナを払う必要があります。

 このコストの重さがどこまでも付きまとうため、メタカードを除去してそのままコンボに行く入り方を取れるのは、基本的に5ターン目以降になってしまいます。これから先の研究次第ではありますが、少なくとも現時点ではこれらの3ターンコンボデッキと比べて明確に主張できるメリットがやや薄いと言わざるをえません。

 次に、アドバンスはカード1枚あたりの持ちうる役割が多いため、デッキ内に対策カードを積んでもデッキパワーが落ちづらい点。

 特にドラグハートやP侵略・P革命チェンジなどの超次元ゾーンを扱うデッキでは、1枚のカードから広げられる選択肢が広いために、デッキ内におけるカードの役割が圧縮されているケースがあります。

 メインデッキ同士のカードの組み合わせだけで全てに対応しなければならないオリジナルと比べて、メインデッキのカードとエクストラデッキのカードの組み合わせも考慮しうるアドバンスはカード1枚あたりの対応幅が広くなります。  また、少し方向性の違うアプローチとして、《13番目の計画》でデッキを物理的に拡張して対応できるカードを詰め込むことがアドバンスでは可能です。  これらの傾向は【4cギャラクシールド】や《最終龍覇 グレンモルト》を用いた【5cコントロール】のような、対応力に優れたデッキで顕著に見られます。  【闇火ドルマゲドン】のように勝ち手段を外部カードに仮託しているデッキも、同じように少し特殊なメタカードを採用してもそれほどデッキパワーを落とさないため対抗手段を採用してくる可能性があります。

 最後に、そもそもアドバンス環境で定番のメタクリーチャーである《とこしえの超人》がナチュラルに【サガループ】に刺さってしまう点

 オリジナル環境でも《若き大長老 アプル》という強力なメタカードがそのまま刺さることに悩まされることが多い【サガループ】ですが、アドバンス環境において自然が入ったデッキで《とこしえの超人》が採用されないデッキは、ドラゴン系デッキを除いて存在しないと言っても過言ではない採用率です。

 単純に対抗手段を持ったデッキに当たる可能性がオリジナルよりも高い点は意識しておくべきでしょう。


アドバンスを象徴するカードたち

 ちょうど《とこしえの超人》に触れたところで、アドバンス環境ならではのカードを大きく3つ紹介していきます。  まずは話題にも登っていた《とこしえの超人》から。

 王来篇第1弾で登場したこのメタクリーチャーは情報が公開された当時から大きな話題を呼び、そのまま環境を席巻。支配的なまでの制圧力を失って今でも、環境を定義するメタクリーチャーとしてアドバンスの門番としての役割を果たしています。

 ドラグハートや超GR召喚と、《零龍》系の墓地コンボをまとめて対策できる《とこしえの超人》は、アドバンスにおいて必携のメタカードと言えるでしょう。

 オリジナルにおける《若き大長老 アプル》のようにハンデス戦術との相性は特に優れており、【水闇自然ダークネス】で確立された「ハンデスで相手の選択肢を狭めて《とこしえの超人》で超GRやドラグハートなどの外部リソースを制限する」コントロールは、アドバンスにおける定番戦術として受け継がれています。

 採用デッキは代表的なものを挙げるだけでも【水闇自然ジャオウガ】や【自然単オービーメイカー】、【5cコントロール】に【4c万軍投】など多種多様。

 このカードの登場以降新規のドラグハートやP侵略・P革命チェンジなどの超次元カードが続々と増えており、アドバンス環境の防波堤としての役割も担っています。  続いては墓地デッキ・コンボデッキの友、《零龍》

 【水闇ゼーロ】や【ジョルジュDOOM】といった水/闇系の墓地コンボデッキの成立はこの5枚があってこそ。《破壊の儀》の墓地回収と《復活の儀》による墓地肥やしでデッキの動きをサポートすることを主目的としつつ、《墓地の儀》の-3000修整によるボード処理やコンボ後のダメ押しフィニッシャーとしての役割も同時に持ち合わせています。
 ゲーム開始時に相手に1ドローを与えるデメリットは決して軽くありませんが、それを補って余りあるほどにメリット要素が詰まった初期配置カード。

 特に《破壊の儀》を達成した際の墓地回収は柔軟性が非常に高く、単純にアドバンテージ源として優れているのはもちろん、コンボに組み込めんでパーツを1枠圧縮する効果も期待できます。

 また、変わったところでは【自然単オービーメイカー】にも採用されています。墓地ギミックは一切使いませんが、先手を取った際に手札を全力で使い切って《手札の儀》を誘発させ、シビルカウント5を達成させるために使われたりもします。

 このような発想の自由さがしばしば見られるのは、アドバンスならでは楽しみのひとつだと言えましょう。  最後に超次元ゾーンから、ドラグハートとP侵略・P革命チェンジ

 ドラグハートはかねてより人気の高いテーマでしたが、基本的にひとつのドラグナーが装備できるドラグハートはどんなデッキでも常に同じでした。

 その常識をぶち壊したのが、3種の「最終龍覇」たち。彼らはマナゾーンにあるカードの文明と同じ文明のドラグハートを装備できるため、1体のクリーチャーから多彩な選択肢を持たせられるようになりました。

 《とこしえの超人》で止まってしまうことやドラゴン系のデッキが3ターンフィニッシュコンボを苦手としていることもあって、直近の環境ではやや下火気味ですが、ドラグハートの面白さ・強さは健在です。

 P侵略・P革命チェンジは年々狭まる超次元枠にさらなる一石を投じて波紋を呼んだカードたち。

 《轟く覚醒 レッドゾーン・バスター》は光のコスト5以上のコマンド、≪蒼き覚醒 ドギラゴンX≫は水または闇のコスト5以上のドラゴン、《時空の禁断 レッドゾーンX》は闇のコスト5以上のコマンドの攻撃時に、超次元ゾーンから侵略・革命チェンジが可能。

 トリガーやマッドネス能力などで登場した《最終龍覇 ロージア》《斬隠蒼頭龍バイケン》《闇参謀グラン・ギニョール》といったクリーチャーたちを、返しに強力な打点要員・除去手段として運用できるのが最大の強み。

 これらのカードが選択肢に加わったことで、侵略・革命チェンジの条件を満たすクリーチャーの評価は大きく上がったと言ってよいでしょう。

 ドラグハートを用いるデッキはただでさえ超次元ゾーンがいっぱいですか、それを押してでもP侵略を1枚〜2枚採用するのが一般的になっています。


アドバンス環境の代表的なデッキたち

 折に触れて述べている通り、アドバンス環境には様々な角度から強力なデッキたちが勢揃い。

【ガイアッシュ覇道】

 GP2022Day1で見事優勝に輝いた、アドバンスを代表するミッドレンジデッキ。

 《メンデルスゾーン》《ボルシャック・栄光・ルピア》といったドラゴンシナジーで爆発的なマナ加速が可能なカードをふんだんに使って一気にマナをランプアップ。  5マナ域に到達したら《インフェル星樹》《禁断 ~封印されしX~》のコンボや、《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》で潤沢なリソースを確保しつつゲームを掌握していきます。

 最終的にマナをしっかり伸ばすか《流星のガイアッシュ・カイザー》でコストを大幅に軽減して《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》を召喚し、追加ターンを絡めて攻め切ります。

 《流星のガイアッシュ・カイザー》は早期に踏み倒しやGR召喚を繰り出してくる相手に対して突然飛び出し、カード2枚と次のターンの大型ドラゴン軽減をもたらしてくれるありがたい存在。デッキ名にもなっている《勝利龍装 クラッシュ“覇道”》との相性は極めて良く、B・A・Dも考慮すればわずか4マナで召喚できるようになります。

 特に中盤戦以降の強さはアドバンス環境でも屈指。十分なマナさえ確保すればなんでもできるほど展開のバリエーションが豊富である反面、マナ自体が伸ばせなかったり、マナを伸ばす前に決着を付けにくる相手をやや苦手としています。

 ビートダウンデッキは《最終龍覇 ロージア》次第の踏ませ方次第でとんでもない受けが成立する可能性もありますが、自分より早いコンボデッキに関しては基本的に手も足も出ないのが弱点です。

【自然単オービーメイカー】

 1ターン目、2ターン目とサーチカードで手札を整え、3ターン目にはマナをアンタップするクリーチャーやコスト1のクリーチャーを連続で召喚し、《十番龍 オービーメイカー Par100》の着地を狙う高速コンボデッキです。

 先手を取ればシビルカウントのための頭数が手札の都合で1枚足りないところを、《手札の儀》を達成することで頭数を増やすギミックを持っています。

 もちろん超高速で着地する《十番龍 オービーメイカー Par100》が強力なのはもちろんですが、自然には良質なコスト1のメタクリーチャーが揃っており、それらを全く無理することなく取り込めるのも大きな強みです。

 コンボ要素の強いデッキですが、最終的にはシールドを殴って決着させなくてはならないため、シールド・トリガーによる逆転が許されてしまうのは玉にキズ。

【水火アポロヌス】

 アドバンスの【アポロヌス】は火/自然ではなく水/火がスタンダード。

 手札を入れ替えるカードでパーツを揃え、《ネ申・マニフェスト》のシンカパワーを《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》で起動させればコンボスタート。  《カチコミ入道 <バトライ.鬼>》の攻撃に合わせて間に複数回の侵略を挟みつつ《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》へ繋ぎ、メテオバーンで相手のシールドを全ブレイク。選ばれずブロックされない状態になった《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》でそのままダイレクトアタックまで持ち込みます。  《ネ申・マニフェスト》のシンカパワーが乗った《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の突撃は受ける手段が非常に限定されており、ほとんどのデッキにとっては文字通りに必殺の一撃。【アポロヌス】ではありますが、ビートダウンデッキというよりはコンボデッキと考えるべきでしょう。

 3ターン目の【アポロヌス】は「決まればラッキー」程度で、基本的には4ターン目に確実なフィニッシュを狙っていきます。

 火/自然の【アポロヌス】との違いですが、やはり「選ばれたら2枚マナ破壊」と「選ばれない」の間に横たわる差がそのまま答えになるでしょう。アドバンスは《最終龍覇 ロージア》をはじめトリガーブロッカーに遭遇する機会がオリジナルより少し多く、「ブロックされない」ことも重要です。

 また、環境的要因に目を向ければ、単に3ターン目にビッグアクションを起こせるデッキという観点では他にも強力な選択肢があり、相対的に「3ターンのビートダウンフィニッシュ」の速度面での優位が小さい、という部分もありそうです。

 必要なパーツを揃えてしまえばほとんどのデッキを貫通できる【水火アポロヌス】ですが、シールド追加や強制ターン終了あたりは有効で、なおかつ汎用性の高い受け手段として挙げられます。

 自分自身採用することの多い《終末の時計 ザ・クロック》は、わかりやすい対策カードの代表的な1枚です。

【ジョルジュDOOM】



 2ターン目の手札入れ替えクリーチャーで自動復活するカードを墓地に送り込んだり、頭数を揃えてからムゲンクライムで展開したりとあの手この手でバトルゾーンに4体のクリーチャーを確保。  闇マナを1つ残した状態で《ジョルジュ・バタイユ》の自己踏み倒し能力を使って一気に墓地を増やしつつ、《破壊の儀》で墓地に落ちた《超神星DOOM・ドラゲリオン》を回収してそのまま召喚。攻撃時能力で《禁断竜王 Vol-Val-8》《∞龍 ゲンムエンペラー》《終末の監視者 ジ・ウォッチ》などのフィニッシャーを踏み倒してゲームを決着させる墓地主体のコンボデッキです。

 墓地コンボデッキでありながら《ジョルジュ・バタイユ》を召喚するための4体を揃えて仕舞えば《とこしえの超人》1枚では止まらず、その他のメタクリーチャーについても《「敬虔なる警官」》で返しながら再登場を押しとどめ、次のターンには頭数としてコンボ成立の足がかりに。

 3ターンフィニッシュの再現性はそれほど高くないものの総じてメタ耐性が高いことが、他のコンボデッキと比べた際の強みと言えるでしょう。

 また、《∞龍 ゲンムエンペラー》がカードとして強く、単純に多くのデッキが機能停止するのはもちろん、《禁断竜王 Vol-Val-8》の天敵である《終末の時計 ザ・クロック》を乗り越えるうえでも重宝する1枚です。

 目下最大の競合は【サガループ】……と言いたいところですが、構築の工夫次第では併用もありそうなのでなんとも言えないところ。

 ハイブリッドすることで基本は【ジョルジュDOOM】として振る舞いつつ、うっかり《絶望神サガ》が早期に2枚揃えばそのままループする、といったアプローチで速度を引き上げられるかもしれません。

【水闇ゼーロ】

 こちらも水/闇をベースとしたクリーチャーの頭数が重要なコンボデッキ。

 2ターン目に手札入れ替えクリーチャーを使って自動復活するカードを墓地に送り込みつつ、次のターンにもう1体のクリーチャーを用意して《闇王ゼーロ》をプレイ。

 そのまま《知識の破壊者デストルツィオーネ》による全ハンデスや《∞龍 ゲンムエンペラー》といったゲームに大きな影響を及ぼすクリーチャーを踏み倒して勝利を狙います。

 バトルゾーンに用意するクリーチャーの数は【ジョルジュDOOM】より少なく済むものの、《闇王ゼーロ》の手札コストのためにデッキのほぼ全てを闇単色のカードで埋める必要があるのが構築上の制約として挙げられます。

 3ターン目のコンボ再現性はかなり高く、《闇王ゼーロ》さえきっちり引けていればかなりの確率でコンボを決められます。
 その一方で、手札コスト3枚を要求しつつそれらが全て闇のカードでなければならなかったり、《闇王ゼーロ》があらゆるメタに引っかかりやすかったりと、妨害への耐性がやや低いのはこのデッキの明確な弱点でしょう。《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》で1枚までならケアできますが、2枚以上になると対処に苦慮します。

 このデッキも【サガループ】との併用が視野に入るデッキのひとつ。追加のコンボパーツであることはもちろん、《絶望神サガ》《闇王ゼーロ》のアタリとして換算できるのは面白いですね。

【火単ブランド】

 アドバンス環境では長らく日の目を見なかった高速ビートダウンデッキが復調傾向に。

 基本はオリジナルの基盤とほとんど同じですが、アドバンスならではの要素として《GIRIGIRI・チクタック》によってGR召喚ギミックを取り入れられます。

 2マナで2体を召喚しているので単純に手札1枚あたりの打点効率がよく、2体のクリーチャーを召喚しているため手札1枚の消費で《“罰怒“ブランド》を1マナまで軽減できるようになったりと、カードアドバンテージの面で得する場面の多いカードです。

 ただし安易なGR召喚は本来引っかからない《流星のガイアッシュ・カイザー》を呼んでしまうリスクがあるので、【ガイアッシュ覇道】が流行している環境では使用に慎重になる必要があります。

 【火自然アポロヌス】と同じように、このデッキも「3ターン目のビートダウンリーサルの」速度的な優位がそれほど大きくないのが環境的に厳しい部分です。

 ただし【サガループ】を意識したデッキとしては有力な候補に挙がるかもしれません。アドバンス環境における【サガループ】の立ち位置をどう見るかが、このデッキの評価自体を左右するでしょう。

【4c万軍投】

 カード1枚から3回GR召喚を行える《“魔神轟怒”万軍投》を主軸に、超GR召喚を存分に味わえるよう構築されたコントロールデッキです。

 序盤はマナを伸ばしてマナドライブに備え、ある程度マナが伸びてきたら《“魔神轟怒”万軍投》で展開を開始。マナドライブGRクリーチャーで膨大なアドバンテージを獲得しつつ、《カット 丙-二式》によるハンデスで相手のリソースを削っていきます。

 《回収 TE-10》で同一ターン中に《“魔神轟怒”万軍投》を何度もプレイしていけば徐々に超GRゾーンが圧縮され、最終的には自分で順番を把握できる状態にしたうえで《とこしえの超人》を設置して相手の外部リソースを封殺しつつ打点を揃えて勝利します。

 外部ゾーンを使ったデッキの強みとして、メインデッキの動きは変えないままに外部ゾーンのカード選択を変えることで環境に適応しやすい点が挙げられます。

 極端な話ですが、環境に墓地利用デッキしかいない場合は大胆に《ポクタマたま》《トムライ 丙-三式》をフル採用したり、速攻デッキまみれの場合は《全能ゼンノー》《バツトラの父》のような防御的なGRを多めに採用したりといったように、GRゾーンのカードチョイスだけでデッキの対応範囲に大きく幅を持たせられます。

 このようなアプローチが可能なのはアドバンスならではの面白みですね。

【5cコントロール】

 《ドラゴンズ・サイン》《最終龍覇 グレンモルト》《龍風混成 ザーディクリカ》のパッケージを攻守に活かしつつ5色デッキならではの対応力で戦う、アドバンス界を代表するコントロールデッキです。

 速度の面で尖った強みはないものの、1枚で盤面処理からアドバンテージ源、フィニッシャーまであらゆる役割をこなす《最終龍覇 グレンモルト》と、呪文の使い回しで擬似的に複数の役割を付与しつつ継続的に火力除去とドローをもたらしてくれる《龍風混成 ザーディクリカ》のカードパワーが非常に高く、環境に合わせたメタカードを採用することでほとんどの状況に対応できるのが何よりの強みです。  《とこしえの超人》などを抜け目なく採用できるうえに《ロスト・Re:ソウル》という必殺技もあるので、うまくペースに持ち込めば非常に強力に振る舞えるデッキです。

 とはいえやはり速度面には難があり、特に水/闇系の墓地コンボデッキは《とこしえの超人》を引かなければかなり厳しい相手。先手であれば《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》も一定の効果がありますが、後手では間に合いません。

【水魔導具】

 オリジナル環境の雄はアドバンスでも注目株となるか。  ベースとなる構築にはそれほど変わりありませんが、アドバンス環境では《MEGATOON・ドッカンデイヤー》を追加のフィニッシャーとして採用できるのが最大の差異です。

 《卍 新世壊 卍》《「無月」の頂 $スザーク$》で稼ぎに稼いだ手札を一気に吐き出して《“魔神轟怒”ブランド》で爆発的な打点を形成。追加ターンに依存せずともゲームを決め切るほどの破壊力で相手を圧倒します。

 現在のアドバンス環境にはフィールドやドラグハート・フォートレスが少なく、カード除去がオリジナル以上に少ないのも動きやすさの一因と言えるかもしれません。

【モルトNEXT】

 昨年秋ごろから立て続けに強化を受けたデュエル・マスターズの歴史を代表する主人公デッキ、【モルトNEXT】。

 ドラゴン系基盤の爆発力をふんだんに盛り込みつつ、《炎龍覇 グレンアイラ / 「助けて!モルト!!」》によるドラグナーの早出しや追加のフィニッシャーである《爆炎龍覇 モルトSAGA》といった新規カードによってゲームの速度がガラッと変化。  《メンデルスゾーン》がなければ3ターン目のリーサルには追いつけないものの、最速3ターン・安定して4ターン目にはドラグナーの暴威を押しつけられるようになりました。

 アドバンスならではのドラグハート戦術の面白さや《超戦龍覇 モルトNEXT》というカードの人気から広く使われているデッキですが、【サガループ】の参入した環境では速度の面でやや押され気味。

 火文明のマナ武装を達成したい都合上《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》も採用しづらいため、墓地コンボデッキにはいいようにやられてしまう場面も少なくありません。
 とはいえ爆発力は高く、先攻《メンデルスゾーン》2ブーストの破壊力は環境でもトップクラス。爆発的な勢いが光るデッキです

【水闇自然ジャオウガ】

 他のデッキがそれぞれの個性や強みを押し出す中で、異彩を放っているのが【水闇自然ジャオウガ】。

 なんと12枚〜16枚と大量のメタクリーチャーを採用しながらも、《有象夢造》《キユリのASMラジオ》のような展開補助カードは0。

 大量のメタクリーチャーで遅延しながら《天災 デドダム》《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》でリソースを稼ぎ、フィニッシュは《終末の監視者 ジ・ウォッチ》で蓋をするか、環境最強のフィニッシャーと呼び声名高い《CRYMAX ジャオウガ》で一気に押し切って勝負を決めます。  この手のデッキはえてして速攻デッキに弱い傾向がありますが、各種メタクリーチャーの持つG・ストライクに加えて《終末の時計 ザ・クロック》《闇参謀グラン・ギニョール》もガッツリ採用されており、防御面も盤石。

 《闇参謀グラン・ギニョール》はバウンスが必要ない相手にもリソース源として活躍でき、《時空の禁断 レッドゾーンX》に侵略して打点や殴り返し要員として運用できる点が非常に強力。メテオバーン覚醒で墓地に行けばムゲンクライムで再登場できる点も強く噛み合っており、無駄がありません。  また、ドラゴン系基盤のデッキをはじめとしてマナ加速を多用するデッキはこのようなメタクリーチャーが通りづらい傾向にありましたが、マナ加速自体を止めてしまう《星空に浮かぶニンギョ》がマナ加速デッキへの明確な解答に。

 メタクリーチャーの強化に伴って対応範囲がどんどん広がり、【サガループ】加入前のアドバンスでは数週間に渡って入賞数1位の座を獲得するほどの強力なデッキとして環境を席巻していました。

 本大会においても最も注目すべきデッキのひとつでしょう。

【サガループ】

 最初の項目では色々と弱い点に触れていった【サガループ】ですが、ここでは強みについても触れていきましょう。

 まず、なんだかんだと2枚揃えば入れる3ターンコンボフィニッシュは十分早い点。

 他の選択肢と比べたときの相対的な魅力はやや減少していますが、それでもいざ対面して3ターン目にコンボに入られればどうしようもないデッキは少なくありません。

 支配的になるかはともかくとして、有力な選択肢のひとつであることに間違いはないでしょう。
 次に、《とこしえの超人》の数自体は増えているが踏み倒しメタや《若き大長老 アプル》との遭遇回数は減っている点。

 《とこしえの超人》はループこそ止められてしまうものの、うまく逆利用してマナを伸ばし解決手段を増やしていくことはできます。それこそ《超神星DOOM・ドラゲリオン》を素直にマナを払って召喚するプランを取るうえではマナの枚数も重要です。

 また、呪文のプレイは止められないため《絶望と反魂と滅殺の決断》を採用して突破するアプローチも取りやすいかもしれません。こちらもやや重いですが、相手の《とこしえの超人》のおかげマナが伸ばしやすいためオリジナルよりも使いやすさは増しそうです。

 このように、「ループを止められた際の突破手段」まで目を向けた時、《とこしえの超人》はかなり与しやすい部類のメタカードです。《とこしえの超人》にあぐらをかいて他の対策を盛り込んでいない構築は痛い目を見ることになるでしょう。

 そして、墓地コンボでありながら《零龍》に依存しない点。

 《零龍》は非常に強力なオプションパーツですが、おまけの1ドローは相手に対策カードを引かせやすく、ゲーム開始時にバトルゾーンに置くだけでかなりの割合で墓地コンボ、少なくともある程度コンボ要素のあるデッキだという情報を相手に与えます。

 一方でゲーム開始時に《零龍》がなければ情報が絞りづらく、相手に安易なプレイを許さないメリットがあります。

 もちろん《零龍》を採用しても十分戦えそうですが、「使わない」という選択肢が用意されているのは嬉しいですね。

 最後に、他のギミックとの併用がしやすい点。

 いわゆる【サガループ】と呼ばれる構築をそのまま使うのではなく、元々《超神星DOOM・ドラゲリオン》をフィニッシャーとして採用するようなデッキに《絶望神サガ》4枚と《黙示賢者ソルハバキ》を1〜2枚採用すれば、それだけで無対策の相手に3ターンフィニッシュするルートがひとつ追加されます。
 主役に据えても非常に強力なのはもちろん、省スペースのオプションパーツとして非常に優秀なのは覚えておきたいところです。


総括

 アドバンス環境は直近の大会開催数が減少傾向にあり、まだまだ未開拓の領域が広大に残されていて、率直に言って「読めない」メタゲームが形成されています。

 【サガループ】は数こそ多いもののオリジナルの構築をそのまま持ち込んで使っているプレイヤーも多いため実際のところ未知数です。単に使用者が多いか勝っているのか、それとも本当にアドバンスを戦い抜けるのかは今回の最強位決定戦の結果が教えてくれるでしょう。

 強いて予想に繋がる要素を挙げるのであれば、トーナメントの形式はヒントになるかもしれません。

 アドバンスフォーマットは決勝トーナメントまで戦い抜かなければならないオリジナルフォーマットと違い、予選ラウンドの半分のみを戦えればOK。大事なのはアベレージをしっかりと出せることです。

 メタの読みづらさも相まって、特定の相手に極端に強いメタを絞ったデッキよりも、強い動きを持ちつつも幅広い相手に対応できるデッキの方がアドバンスラウンドにおいては戦いやすいのではないかと予想しています。

 もっとも、これは「最強」と呼べるデッキが見つかっていない場合の話。これまでの常識を壊すような新たなデッキを発見できた場合は……その限りではないかもしれません。

 生放送をご覧になる際の副読本として、本記事が一助になれば幸いです。

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