超CSⅧ大阪 決勝Round 2:トステリン vs. ギャラクテストピーポー
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:坂井 郁弥
決勝ラウンドに進出した128チームが64チームにまで絞られたこの2回戦。そこには、驚くべきチームの姿があった。トステリンというトパーズ@シトリン、ヒロトス、鰤照による兵庫勢の3人で構成されたチームは、ヒロトスが鰤照の親御さんで、トパーズ@シトリンは知人とのこと。だが、注目すべきはその関係性ではない。彼らの使うデッキが、いずれもテンプレートから外れたカード採用をしていたからだ。
テンプレートとして広まったリストをあえてずらすことには利点がもちろんある。いわゆる「わからん殺し」を狙いやすいからだ。
しかしテンプレートにそのカードが入っていないことにも、やはり理由はある。膨大な数のCSによって洗練されたテンプレートリストは、出力と再現性の均衡点をとったいわば芸術だ。だから多くのプレイヤーはテンプレートをコピーするし、それが合理的で効率的な選択であるシチュエーションの方が、通常のCSに継続して出場する限りにおいては遥かに多いことだろう。
だが、一発勝負の大型大会となれば話は違う。対戦相手が初めてテキストを読むようなカードを持ち込んで、混乱から悩んでくれるだけでも儲けもの、もしかすると勝手に深読みして不正解択を採ってくれるかもしれない。2回目は通用しないような子供だましでも構わない。2回目を気にするようなタイミングは、2本先取になるトップ4以降まで基本的には存在しないからだ。
とはいえ、基盤そのものが環境に存在しない全くのオリジナルデッキを持ち込む場合にはその限りではない。
テンプレートが存在するアーキタイプには、最低限の出力保証がある。その出力にあまり関わらない受け札などの部分をずらす分には利点が大きいという話であって、オリジナルデッキには環境デッキと渡り合えるだけの出力の保証がない。
それでもなお持ち込むべきタイミングがあるとすればそれはもはや、全国のデュエマプレイヤーがいまだ誰もがたどり着いていない新たなる基盤の発見を成し遂げたとき、ということになるのだろう……そして今回、鰤照が使用しているのは、「サイバー」や「ファイアー・バード」、「キャベッジ」や「ドリームメイト」などではもちろんない、基盤そのものがオリジナリティに満ちたデッキであった。それでこのトップ64まで勝ち上がっているというのだ。
一方、対するギャラクテストピーポーのでらしゃん、てふ、ぎえんは鳥取勢のチーム。でらしゃんとぎえんが安定感のある「サイバー」で両脇を固め、真ん中でてふの「ジョーカーズ」が上ブレを狙いにいくチーム構成のようだ。
フィーチャー席に座ると、ジャッジが先攻後攻は予選順位で決まることを告げ、互いに予選順位を確認する。
トパーズ@シトリン「49位です」
てふ「16位です」
トパーズ@シトリン「後手っすね。……後手かー。後手かぁ……」
チーム戦の順位先攻は、個人戦に比べて3倍のアドバンテージとなる。多勢が後攻スタートのゲームをまくれなければ、チームの勝利はない。
はたしてオリジナリティは、テンプレートを打ち破ることができるのか。A卓:トパーズ@シトリン vs. でらしゃん
先攻で開幕3ターンに《フラワー・ハート》《アストラルの海幻》《アストラルの海幻》と展開して山札を掘り進めるでらしゃんに対し、トパーズ@シトリンは《天彩の精霊ミルディアス》でマナ加速しつつ《アストラルの海幻》を戻したのがファーストアクションとなる。その返し、でらしゃんは《マクスハト》で勝負に出る。だが「メクレイド」が弱かったか、《アストラル・ハート》を《マクスハト》に重ねて3ドローしただけに終わってしまう。
それでも《王導聖霊 アルファディオス》さえ走ってこなければという局面。トパーズ@シトリンは巧みな返し技を披露する。すなわち、5マナ目マナチャージから《天彩の精霊ミルディアス》を対象に《天翔と紋章の門》、一時的に6マナにしてマナから《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》!《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》による返しのターンのループ突入を確実に牽制する。
他方、でらしゃんも返しで《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を《魔誕の悪魔デスモナーク》を下敷きに着地させ、《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》をどかしながら勝ちにいくプランを作る。トパーズ@シトリン「あー、その形だったんですね」
だが返すトパーズ@シトリンは余裕たっぷりに《光開の精霊サイフォゲート》を送り出すと、そこから《闘門の精霊ウェルキウス》から《闘門の精霊ウェルキウス》へとつなげ、B卓のヒロトスとの相談を挟んだのち……《∞龍 ゲンムエンペラー》を着地させる!

トパーズ@シトリン「100億点で!」
巨大軸ではない「トリーヴァ(光水自然)アルファディオス」から突如として飛んできたまさかの5コスト以下完全封殺を前に、「サイバー」のでらしゃんは当然返すターンに何ができるわけでもない。それを尻目に、そのまま次のターンに《∞龍 ゲンムエンペラー》がすべてのシールドをブレイク。続けて《闘門の精霊ウェルキウス》のダイレクトアタックが、見事に勝利を決めたのだった。
WINNER: トパーズ@シトリン
C卓:鰤照 vs. ぎえん
1ターン目《フラワー・ハート》から2ターン目パスのぎえんに対し、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《奇天烈 シャッフ》とチャージした鰤照が《DG ~裁キノ刻~》を送り出すと、ぎえんも思わずテキストを確認。そして「メクレイド」が封じられていることを知ると、3ターン目は《マクスハト》チャージから《アストラルの海幻》で別のプランを探しにいく。だが鰤照はなおも《検問の守り 輝羅》チャージから《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》で先んじて《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を牽制。そう、鰤照のデッキはまさかの「光水メタビート」。あまりにも環境外すぎるデッキだが、「サイバー」の海を泳ぎきってここまで勝ち上がっているということは、一定の勝算があるということなのだろう。
4ターン目はマナチャージのみでターンを返したぎえんに対し、そのまま鰤照は《オリオティス・ジャッジ》をチャージしつつ《奇天烈 シャッフ》で戦線を強化する。《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》と合わせ、これなら《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》が出ても突破されることはない。ぎえんのプランを、先回りして咎めていく。しかしぎえんもここで《アストラル・ハート》を《アストラルの海幻》に重ねて3ドローから《フラワー・ハート》+《アストラル・リーフ》でリソースを大量に補充。一方鰤照はリソースカードが引けていないのか、マナチャージのみでターンエンド。雲行きが怪しくなってきた。さらにぎえんは6マナ目をチャージすると《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》を《アストラル・ハート》の上に重ね、鰤照のメタ(妨害)クリーチャー戦線に対して強引な突破を予告する。
それでも、そろそろ何か引かないと……というところで鰤照がどうにか引き込んだのは《理想と平和の決断》。4ドローで手札を補充する。だが余りは2マナで、《検問の守り 輝羅》と《金天使 エン・ゴルギーニ》のどちらかしか召喚できない。悩んだ末の決断は……《検問の守り 輝羅》。
もちろんこの隙をぎえんは見逃さない。《フラワー・ハート》を召喚し、《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》の能力で《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》を手札に戻すと、満を持して制約のない《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》が《昇カオスマントラ》2枚と《アイドル・ハート》を下敷きに降臨する。そのまま攻撃時、《検問の守り 輝羅》と《DG ~裁キノ刻~》を戻しながらの「メテオバーン」で《アイドル・ハート》の「メクレイド」を発動させ、さらなる《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》が降臨。T・ブレイクで《理想と平和の決断》がトリガーし、シールドを2枚追加されるも、続けて1点ブレイク、1点ブレイク、《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》でW・ブレイクと割られる中に追加のトリガーはなく、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》のダイレクトアタックが鰤照を介錯したのだった。
WINNER: ぎえん
B卓:ヒロトス vs. てふ
《ジョジョジョ・ジョーカーズ》で《ベイビーポンの助》を加えたてふに対し、ヒロトスは《チャラ・ルピア》をチャージしてゲームが開始する。そのまま《ネフェルカーネン / タイム・ストップン》を送り出す……の、だが。てふ「オーマイガー」
どうやら《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》だったようで手札には加えられず。対しヒロトスは《ルピア&ガ:ナテハ》をチャージすると、C卓の鰤照と相談しながら《マジシャン・ルピア》を送り出す。
だがてふはマナチャージから《ゼロの裏技ニヤリー・ゲット》2連打!さらに《パーリ騎士》から《ベイビーポンの助》も送り出し、展開で先行しつつビッグアクションを牽制する。《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》入りの「ファイアー・バード」が流行している現状、《ベイビーポンの助》さえ立てておけば安心だ。しかし返すヒロトスは《ハッター・ルピア》を送り出すと、「ハイパーモード」に入り攻撃。そして「メクレイド」で出てきたのは……まさかの《コッコ・装・ルピア》!《マジシャン・ルピア》の上にNEO進化すると、《ベイビーポンの助》を除去することに成功する。

とはいえその代償は大きかった。1点ブレイクが《ネフェルカーネン / タイム・ストップン》を踏み抜き、ヒロトスは《ハッター・ルピア》を失ってしまう。
一方かなり余裕ができたてふは《ヘルトッQ》で3ドローしつつ《パーリ騎士》で《コッコ・装・ルピア》を相打ちにとり、有り余る手札を頼みに消耗戦に持ち込みにいく。
ここでヒロトスも《ハンプティ・ルピア》で、てふの溢れかえった手札からしかしそれでも唯一の決め手と言えた《王道の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》を奪い去り、簡単には決着まで持ち込ませない。それでもてふは《ヤッタレマン》2体に《ネフェルカーネン / タイム・ストップン》と《万能バンノー》までフル展開し、あとは切り札を待つだけという状況を作る。さらにヒロトスがC卓の鰤照との相談の下で《ハッター・ルピア》を送り出し《王道の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》のトップデッキを牽制した返しには、《ベイビーポンの助》を添えつつ「G・ゼロ」の《勝熱と弾丸と自由の決断》で《ハッター・ルピア》を除去。攻撃の基点を徹底して潰しにいく。
とはいえこの時点でてふの手札は1枚。しかも攻めきられていない以上有効札ではない。返すターンにヒロトスは試合を終えた鰤照のアドバイスを聞きながら、最適なプランを模索する。やがて攻防を兼ねた《龍后凰翔クイーン・ルピア》を召喚し、このターンこそ《万能バンノー》で攻撃できないものの、続くターンに《コッコ・武・ルピア》+《愛銀河マーズ・シンギュラリティ》で一気に反撃する手筋を選択する。このターンさえ、しのげれば。
返すターン、てふの両手が祈るように合わさる。そしてドローは……値千金の《ジョジョジョ・ジョーカーズ》!
それが《王道の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》をもたらすと、てふが抱えていた最後の手札である《勝熱と弾丸と自由の決断》によって《龍后凰翔クイーン・ルピア》のブロッカーを無効化しつつのT・ブレイクが通ってしまい、残る大量のジョーカーズによる攻撃をヒロトスは止めきれないのだった。
WINNER: てふ
試合時間いっぱいまでかかってしまったため、ギャラクテストピーポーの面々がすぐ次の試合に向かった一方で、惜しくも敗れたトステリンの面々、特に「光水メタビート」という非常に興味深いデッキを持ち込んでいた鰤照に話を聞いてみた。
--「このデッキはご自身で作られたんでしょうか?」
鰤照「作ったのは僕です。最初はラッカ(光水火)で組んでて。今年の3月くらいに『ジャイアント』と『ファイアー・バード』がいる環境があって、そのタイミングで《神判のカルマ コットン / ジャッジ・水晶チャージャー》が強いと感じたのがきっかけでした。また、自分が相手をコントロールして勝ちたいという性格だったので、メタを絶対入れたくて《神判のカルマ コットン / ジャッジ・水晶チャージャー》《検問の守り 輝羅》《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》と入ったデッキでした。そこに『メタを維持させるカード』と、『勝つカード』を探していて、維持は《金天使 エン・ゴルギーニ》でできたので、アドバンスの『ラッカバクオンソー』も参考にして《その子供、可憐につき》とかも入れていました」
鰤照「そこから環境が変わって、『ジャイアント』と『ファイアー・バード』が減ってさっきの中で後攻2ターン目に置きたいクリーチャーがいなくなってしまったんです。逆に《マクスハト》が『メクレイド』を簡単にしてくるということで、止めたいなと。そこで《DG ~裁キノ刻~》があって、《検問の守り 輝羅》と《DG ~裁キノ刻~》を軸にデッキを考えようと。《同期の妖精 / ド浮きの動悸》も確定で、《神判のカルマ コットン / ジャッジ・水晶チャージャー》も戻ってきました」

鰤照「リストを見るとフィニッシャーがないように思うかもですけど、打点を並べながら面を維持する能力が高いので、基本的には分割リーサルで決める形になります。《金天使 エン・ゴルギーニ》の効果で《ブルトゥーラ-D1》を対象にすると、《ルード・ザーナ》に対しても全面を守れるようになったりします。そこに《同期の妖精 / ド浮きの動悸》も添えて《金天使 エン・ゴルギーニ》も守れるとより安心です。ヒロインBESTで『サイバー』と『キャベッジ』が台頭してきましたが、この構成はそれらに対しても刺さりが良くて、《キャベッジ・セッションズ / ソイルピンプ・キャベッジ》から《地封龍 ギャイア》が出たりするようなタイミングまでにきちんとメタが張れたり、《神判のカルマ コットン / ジャッジ・水晶チャージャー》の呪文側で何とかなったりするので、そこがこのデッキのアドバンテージかなと」
ヒロトス「実際、予選で『サイバー』と『キャベッジ』相手は全勝でした。最後7回戦目で『ドリームメイト』3面にだけ負けてしまいましたが」
--「すごい発想だと思います。ただ、プレイが非常に難しそうですね」
トパーズ@シトリン「使えって言われたけど、無理っぽいので諦めました(笑)」
鰤照「木曜日くらいに《昇カオスマントラ》と《~紺碧の奇術師~》というセットのシナジーに気が付いて、欲しかった追加のドローソースにもなるということで《一音の妖精》だったスロットを差し替えましたが、もう少し厚くとりたかったかもしれません」
--「ヒロトスさんの『ファイアー・バード』もトパーズ@シトリンさんの『トリーヴァアルファディオス』も、個性的なカード採用が光りますね」
ヒロトス「《コッコ・装・ルピア》が3コストエレメントまで割れるので、『サイバー』も遅らせられますし、『アポロヌス・ドラゲリオン』にも有効です。ミラーもハイパーモードの種を軽く焼けますし、S・トリガーというのも優秀です。また、《コッコ・装・ルピア》の上に《コッコ・装・ルピア》を重ねると一度に2枚割れる動きも強力でした」
トパーズ@シトリン「僕のデッキも、今日会場に来ている父親が専用にチューニングしてくれたものなんです。なので、父親に感謝ですね」
鰤照「最後ちょっと緊張して。《金天使 エン・ゴルギーニ》出せてたら、でも頭が真っ白になっちゃって……」
ヒロトス「緊張しいなんで、フィーチャーじゃなかったらとは思いますが……でも、良い経験になったと思います」
残念ながら敗退となってしまったものの、鰤照のデッキはこの日会場で見た中で最も発想に驚かされたデッキだった。『サイバー』『キャベッジ』に効かない《飛翔龍 5000VT》の不在というタイミングを見抜いたのも慧眼だ。
多くのプレイヤーがテンプレートに振り回されてばかりいる現状だからこそ、デッキビルダーの才が光り輝く。彼らには、大事なことを気づかされた。
縛られる必要はない。デュエル・マスターズは、自由なのだ。
WINNER Team: ギャラクテストピーポー
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トパーズ@シトリン 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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ヒロトス 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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鰤照 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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でらしゃん 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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てふ 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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ぎえん 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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