DMGP2024-1st Day1(アドバンス):メタゲームブレイクダウン
ライター:高橋 穂(北白河)
アドバンスとしてはおよそ一年ぶりとなる大型大会となった、DMGP2024-1st Day1。前年環境を席巻した《絶望神サガ》の殿堂入りや、アドバンス環境に大きな影響を及ぼした「頂上決戦!!デュエキングMAX2023」の登場など、一年の間に激変を遂げたこのフォーマットにて、今回「勝ち組」となったのはどんなデッキだろうか?
ここでは、予選を突破した128個のデッキ、そしてその中からさらに勝ち抜いた16個のデッキたちから今大会のメタゲームを振り返っていきたい。
というわけで、早速デッキ分布を確認していこう。
TOP128 デッキ分布
21 【闇火バイク】20 【光自然巨大天門】
18 【水火マジック】
12 【光水火ゴスペル】
10 【闇自然アビス】
9 【光闇火ドルマゲドン】
4 【水闇自然ジャオウガ】
4 【闇火自然アビス】
4 【モルトNEXT】
3 【サバキZ】
3 【ブレスラチェイン】
3 【水闇卍夜】
2 【4cドラグナー】
2 【5cモルト】
2 【水闇自然DOOM】
10 その他(使用者1名)
2024年に入ってからは【光自然巨大天門】【水火マジック】【光闇火ドルマゲドン】【闇火バイク】の「四強環境」と言われてきたアドバンス環境だが、今回はそこに【光水火ゴスペル】【闇自然アビス】が加入。
【闇火バイク】【光自然巨大天門】【水火マジック】という最上位3デッキを、【光闇火ドルマゲドン】【光水火ゴスペル】【闇自然アビス】という準上位3デッキが追いかける…という形になった。
さらに強豪プレイヤーの間でチューンが施され共有されたデッキや、メタ外から追い上げた古豪デッキなどもしっかり複数人を本戦に送り込んでいる。
一度はかなり固まったと言われてきたアドバンス環境だが、先日の全国大会にて独自のチューンのデッキが多数登場したことが呼び水となり再び多様性が生まれてきたようだ。
ちなみに、ここでの紹介は割愛したが実に10種もの「母数1」デッキが存在するのも見逃せない。
こちらについては、「超CSⅥ 群馬」で好評だった伊藤 敦(まつがん)による単独記事が今回も公開される予定だ。ローグデッキファンの読者諸賢は楽しみにお待ちいただきたい。
そして、この中で勝ち上がった16デッキの分布はこうなる。
TOP16 デッキ分布
2 【闇火バイク】2 【光水火ゴスペル】
2 【5cモルト】
1 【水火マジック】
1 【闇自然アビス】
1 【光闇火ドルマゲドン】
1 【モルトNEXT】
1 【サバキZ】
1 【ブレスラチェイン】
1 【水闇卍夜】
1 【水闇自然DOOM】
1 【水闇自然ザビ・ミラ】※
1 【光単ゴルギーニ】※
(※はベスト128の時点で母数1だったデッキ)
なんとベスト128時点では第二位につけていた【光自然巨大天門】が全滅し、代わりに準上位から【光水火ゴスペル】が複数人をベスト16に送り込むことになった。
これに限らず、もともと母数2の【5cモルト】が両方ベスト16に残ったり、強豪プレイヤーが使用する「専用機」といえる【サバキZ】【水闇自然DOOM】【水闇卍夜】といったデッキがしっかり結果を残したりと、母数の差よりも立ち位置や練度の差が出た形といえそうだ。
この結果を踏まえて、いくつか注目したいデッキをピックアップしていきたい。
【光自然巨大天門】
monokuro DMGP2024-1st アドバンス構築 |
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最初に触れるのは、ベスト128時点ではシェア2位にまで昇りつめたものの、ベスト16時点でまさかの全滅という結果に終わったこのデッキ。
オリジナルでも活躍中の非常に高い地力と《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》による超次元利用、そして新規加入の《光開の精霊サイフォゲート》等の多数の美点を持つこのデッキの不振の理由は、やはり「最大の仮想敵」としてメタられる対象となってしまったからだろう。
事前メタゲーム予想においても指摘されたように《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》や《キャディ・ビートル》といったぶっ刺さるメタクリーチャーを多くのデッキが搭載していた今大会では、思うように本来の強みを出せなかったものと思われる。
全国大会にて語られた「天門はポジションデッキ」という言葉通り、警戒されすぎている今はその実力を発揮できるポジションになかった……といえるだろう。
だが、エスケープ付与と除去により盤面の取り合いを有利にする《冥界を統べる新月のハーデス》が採用されるなど、このデッキ自体も少しずつ姿を変えつつある。
雌伏の時を耐え、「ポジション」が訪れる日もそう遠くないのかもしれない。
【闇火バイク】
引きでカバ男 DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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ベスト128最大母数となりベスト8にも使用者を送り込んだこのデッキは、逆にこちらから自分のポジションを押し付けていくことで立ち位置を確保した形となった。
また、「デーモン・オブ・ハイパームーン」の新規として、高い打点を叩き出すとともに敗北回避による保険をかける《炎怒の夜 アゲブロム》の登場が話題となったが、ベスト16に残った構築はどちらも不採用。
もとより高い攻撃力をさらに高めるのではなく、《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》などのメタで相手を減速させるほうが今回の環境に噛み合った形となったようだ。
とはいえベスト128には多数の採用型レシピが存在するため、このカードがどういう立ち位置を得るかはまだまだ議論の余地がありそうだ。
【光闇火ドルマゲドン】
かめ DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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上位6デッキの中では最もベスト128の母数が少なかった【光闇火ドルマゲドン】だが、そのデッキパワーに疑う余地はない。
《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》→《魔光神官ルドルフ・アルカディア》→《魔の革命 デス・ザ・ロスト》という必殺の押し付けムーブや《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を絡めた禁断爆発カウンターなど、その完成度は現時点でもほかに劣るものではないといえるだろう。
それではなぜこのデッキが6強の末席に甘んじたかというと、序盤の安定感の低さが一つの理由となるだろう。
初手に動きを大きく左右されるというデッキ構造上「事実上ゲームに参加できずに負ける」パターンがあるという事実は、長丁場となるGPとなればなるほど重くのしかかってくる。
しかし、そこさえ乗り切ってしまえばスキのない強さを発揮するという事実は、ベスト8に使用者を送り込んだという事実が証明している。
【光水火ゴスペル】
masay DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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今大会で一気に勢力を拡大したのが、オリジナルにおいても一定の活躍を見せるこのコンボデッキ。ここまでのポテンシャルを秘めていたのかと驚いたプレイヤーも多いのではないだろうか?
オリジナルとの最大の違いは、《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》でドルスザクを出すのではなく、純粋な追加ターン目的で採用されるということ。メインデッキを圧迫しないのはもちろんのこと、もしトリガーを踏んでしまっても次のターンに軽減の残った《水晶の王 ゴスペル》をまた射出して追加ターン……というように、連続追加ターンによるフィニッシュを狙えるのもうれしい。
また、アドバンスならではの《オールデリート》や《時の法皇 ミラダンテⅫ》+呪文ロックなどをはじめとするメインデッキを圧迫しないより確実な勝ち手段を採用することで、デッキのフリースペースを確保しつつその枠で受け札や確実性を重視していけるのも見逃せない。
デッキ内に大量の手札入れ替えが入っていることからもともと高い再現性を持つデッキだけに、ここからさらに構築が洗練されていけば「アドバンスのコンボデッキ代表」となる日も遠くないのかもしれない。
【水火マジック】
あーるん。 DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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下馬評通りの突破力を生かして準優勝を果たしたのが、もはや現代デュエマのビートダウンの顔となった【水火マジック】。
3-4ターンというキルターンに加え、デッキの回転力の高さから《単騎連射 マグナム》《ファイナル・ストップ》などの少数積みのトリガー対策カードにたどり着きやすい……という利点は、これまでも紹介されてきたとおりだ。
基本的な構築がこれまでとほぼ変わらないだけに、これからは少数採用枠に何を採用するかといった細かな要素が勝率に直結してきそうだ。特に準優勝レシピに採用された《芸魔獅子 レオジンロ / ♪限りなく 透明に近い このワタシ》のように、複数の役割を兼ねられるカードの価値も高まるだろう。
【闇自然アビス】
試験管 DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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そして今回優勝を果たしたのが、オリジナルでも活躍する【闇自然アビス】。
しかも、アドバンスという環境にさらに適応するためにデッキの主役となる《アビスベル=覇=ロード》を全抜きした構築ということで、驚いたプレイヤーも多いのではないだろうか。
代わりにフィニッシャーとして加入したのが、《復活の祈祷師ザビ・ミラ》。
これで3体クリーチャーを破壊して≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫セットを揃えることで、攻撃時に2体目の《復活の祈祷師ザビ・ミラ》含むクリーチャー3体を展開→1体目と≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫+αを破壊してまたセットを揃える……というループが発生する。こうなれば事実上あらゆるカードにアクセスできるようになるばかりかスピードアタッカーまでつくので、あとは《無双恐皇ガラムタ》を探してきてトリガーを完封すれば勝てる……という寸法だ。
「デーモン・オブ・ハイパームーン」で加入した《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》のおかげで非アビスフィニッシャーたる《復活の祈祷師ザビ・ミラ》を運用できるようになり、これまでとは別次元へと進化したこのデッキ。
《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で相手のカード効果を逆用してデッキ外カードにアクセスする動きや、メインデッキの地力の高さも相まって、おそらくこれからもアドバンスの環境デッキの一角としてデュエマの深淵を見せてくれることだろう。
なお《復活の祈祷師ザビ・ミラ》+≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫のパッケージについてはこのデッキ以外でも多数採用されており、中には【水闇自然ジャオウガ】の基盤から大胆にフィニッシャーを総入れ替えした【水闇自然ザビ・ミラ】というべきデッキも存在してしっかりベスト16という結果を残している。
古いカードながら、ここにきてその真価を表したこのカードの今後から目が離せない。
少母数のデッキたち
ここからは、母数こそ少ないながら好成績を残したデッキたちについて手短ながら語っていきたい。
Reus DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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ベスト128に残った二人をそのままベスト16とベスト8まで送り込んだ【5cモルト】。
デッキ名にもなる《最終龍覇 グレンモルト》のカードパワーに加え、《龍風混成 ザーディクリカ》を絡めた呪文さばきなどその器用さは他の追随を許さない。
想定以上に多様化した環境は、もとより「全方面対応」といえるこのデッキにおいても有利に働いたといえるだろう。
みみみ DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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高い出力・防御力と引き換えに非常にプレイ難度の高いデッキとして知られる【サバキZ】の上位入賞は、大きな話題となった。
強豪プレイヤーコミュニティによる綿密な研究と練習の末、使用者をして「4キルデッキ」と言わしめるデッキの最適化ぶりは見事と言わざるを得ない。
出力はもとより、これまでほとんど大型大会の場に出てこなかったデッキだけに、わからん殺し性能も相当に高かったことだろう。
dotto DMGP2024-1st TOP8デッキリスト アドバンス構築 |
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オリジナルでも活躍する【水闇自然DOOM】だが、第三位に輝いた構築はアドバンス仕様の強烈なチューンナップが施されているのが特徴。
《13番目の計画》によるデッキ枚数増加でデッキ枠を捻出したり、前述の《復活の祈祷師ザビ・ミラ》+≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫パッケージも搭載した意欲作といえる構成だ。
細かく散らされた追加カードからは、綿密な研究が伺える。
セキボン DMGP2024-1st アドバンス構築 |
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最後に紹介したいのが、全国大会アドバンス部門でも活躍した【水闇卍夜】。
これまた高い出力とプレイ難度を併せ持つループコンボデッキだが、ループによるフィニッシュの前に任意のドルスザクを投下できることから対面によってもっとも刺さるカードを選べる柔軟性は見逃せない。
「相手によって動きを自在に変えられる高速コンボデッキ」という独自の立ち位置が、多数のデッキが存在する長丁場において有利に働いたのは言うまでもないだろう。
総括
新シリーズ「王道篇」に突入し、まだまだ始まったばかりの現環境。多様性のあふれるデッキの数々は、固定された環境から抜けて全く新たな環境の始まりを予感させる結果となった。
新規登場の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》登場による《復活の祈祷師ザビ・ミラ》の再評価のように、新カードの登場が思わぬ化学反応を呼ぶのもカードプールの広いアドバンスの持ち味だ。まだ見つかっていないだけの第二第三の《超霊淵 ヤバーダン=ロウ》も、「デーモン・オブ・ハイパームーン」のどこかに潜んでいるかもしれない。
今回の結果が、読者諸賢のデッキ選択に新たな閃きをもたらしてくれることを祈っている。
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