DMGP2025-2nd Day1(アドバンス):メタゲームブレイクダウン
ライター:清水 勇貴(yk800)
【はじめに】
アドバンスというフォーマットは年に一度、10月に大幅なアップデートが約束されている。EX弾の王様・デュエキングがデュエマの秋の風物詩となってから、今年は5年目だ。例に漏れず、10月18日に発売されたばかりの「王道vs邪道 デュエキングWDreaM 2025」はアドバンスに確かな波紋を投げかけた。
リリースから1週間という短い期間のうちに、プレイヤーはどのような答えを出したのか。新たな地平を迎えたこのフォーマットのメタゲームをお届けしていこう。
デッキ分布
本大会の予選を突破した128名のデッキ選択は以下の通りだ。TOP128デッキ分布
35 ダーバンデ18 火水自然ドラグナー
15 サイバー
12 火闇自然DDD
9 光水闇ゼーロ
7 4cゼーロ
5 ダーツデリート
5 水闇COMPLEX
3 ドリームメイト
19 その他(母数2以下)
母数において圧倒的なまでの存在感を放っているのは、光/水/自然の3色をベースに《ピザスターのアンティハムト》や《瞬閃と疾駆と双撃の決断》で火文明要素をタッチした【Drache der’Bande】(以下【ダーバンデ】)。
その下に、
・デュエキングWDreaMにて《双龍覇王 モルトVERSUS》を獲得し、大幅な強化を得た【火水自然ドラグナー】
・オリジナルにおける最強デッキの最有力候補と目され、《電流戦攻セブ・アルゴル》によるサイキック戦術が選択肢に加わる【サイバー】
・《禁断 ~封印されしX~》によって墓地肥やしのパターンが増え、柔軟性と突破力に磨きがかかった【火闇自然D・D・D】
・アドバンスならではの要素はあまりないがコンボフィニッシュの強度と防御性能の高さで他のデッキと勝負でき、光水闇型と自然入り型を合算すれば【サイバー】すら上回る人気となった【ゼーロ】系統
以上4つのデッキタイプが大きく支持を集める形となった。
まずは決勝戦において劇的なミラーマッチを見せてくれたあのデッキから見ていこう。
【火水自然ドラグナー】
|
デンネ DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
その姿は、まさにアドバンスの王道。
超次元ゾーンに並ぶドラグハートを戦況に合わせて使いこなすドラグナーデッキがメタゲームの覇王となった。
立役者となったのは、言うまでもなく《双龍覇王 モルトVERSUS》だ。
決して素早く相手を打ち倒せるカードではないが、6マナ揃えてしまえばそれ以外の「全て」をもたらしてくれる。
《銀河大剣 ガイハート》や《爆銀王剣 バトガイ刃斗》を装備すれば即時打点に。
≪爆熱天守 バトライ閣≫を設置すれば次のターンからの爆発的な踏み倒し展開の準備に。
ドラグハートだけじゃない。《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》を出せば盤面を制圧でき、《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》なら多面ジャストダイバー展開+攻撃ロックで圧倒的な優勢を構築できる。
そして、ジャストダイバーにより1ターンはほぼ確実に生き残り、次のターン開始時にも能力が誘発する。合わせて4ドローできるため、単純にハンドリソースを潤沢に確保できるのはもちろん、この手のデッキに付いて回る単色キープ問題も大幅に緩和される。
メタ(妨害)カードが置かれていても開始時の《爆勇王剣 ラッシュ・ギガハート》が弾いてくれるし、≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫や《流星のガイアッシュ・カイザー》といったコスト軽減カードで一気に展開を形成することもできる。
爆発的なフィニッシュ力はないが、無限の選択肢を操り自由自在に戦況をコントロールできるのが《双龍覇王 モルトVERSUS》というカードだ。
さて、決勝戦を戦ったデンネ・とり両選手のデッキはメインデッキから超次元ゾーンまでの48枚が一致する完全ミラーマッチとなった。
他選手の構築と比べた際に明確に差異となったのは以下の3点だ。
⒈ 《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》の4枚フル採用
⒉≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫
⒉ S・トリガー枚数の削減
まず何をおいても《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》のフル採用が最大の特徴だ。
《メンデルスゾーン》を撃ちたいこのデッキで、光/水の多色カードは一見すれば大きなノイズになる。
しかし、それ以上にこのカードによる呪文ロックが強烈に機能すると判断されたのだろう。【ゼーロ】は言うに及ばず、デッキ速度の面では一般的に相性不利とされている【ダーバンデ】についても、間に合ってしまえば一気に打点を抑制できる。
《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》はもちろん、スピードアタッカーを付与するドラグハートを持った《双龍覇王 モルトVERSUS》もチェンジ元になる。どちらも山札を掘り進めながらチェンジできるため、アクセス性は格段に高くなった。
また、《メンデルスゾーン》については、(早く撃てれば強烈なカードであることは前提として)2ターン目に撃てずとも3ターン目に撃てれば十分で、4ターン目の6マナ=《双龍覇王 モルトVERSUS》からゲームメイクができる。
水単色の受け札を一切採用せず、その枠をこのカードと自然単色に振り分けているため、印象に反して2ターン目《メンデルスゾーン》の成功率はさほど落ちていない。それどころか、下手に水単色を増やした構築より高いだろう。
超次元ゾーンで異彩を放つ≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫は、6マナ時点で召喚した《双龍覇王 モルトVERSUS》が定着したままターンが帰ってきた際、開始時に出すカードとして強力なオプションだ。
そのターンに単色マナをチャージすれば使えるようになるのは7マナ。≪遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ≫の2軽減と合わせれば9マナ域……すなわち《地封龍 ギャイア》と《夢双龍覇 モルトDREAM》まで召喚可能になる。
ロック能力自体は非常に強力だが、デッキトップから捲るか≪爆熱王DX バトガイ銀河≫を経由しなければならなかった《地封龍 ギャイア》の採用枚数は、議論のタネだった。強気の3投が肯定されたのは、手札から召喚する選択肢があればこそだろう。
マナ加速と違い、コスト軽減はクリーチャーを複数体プレイする際にさらに輝く。《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》が3マナ、《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》が4マナと細かい動きを取りやすくなるのも見逃せない。
大会上の立ち位置の話をすれば、単に速いだけのビートダウンは《PP-「P」》と【ゼーロ】のカウンター性能によって足切りされていた点が【火水自然ドラグナー】にとっては追い風だったと言えそうだ。
【ダーバンデ】はデッキ構造でいえば不利だが、相手が多少もたつけば《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》+≪音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ≫で面を叩きながら呪文をロックしたり、《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》で進化速攻を封殺したりが間に合うため、戦える範疇だ。
速度の面で不安を抱えていようと、それを補って余りあるカードパワーと対応力で本大会を制した【火水自然ドラグナー】。拡張性も文句なしに高く、今後も形を変えながらのアドバンス環境を牽引していってくれるだろう。
【ダーバンデ】
|
kaisora DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
このデッキの大躍進の要因を一言でまとめるとするなら、「軽い」ことだと筆者は考える。
軽いから、環境で主流なメタ(対策)が刺さらない。
軽いから、3ターン目にリーサル(勝負を決める打点)を叩き込む再現性が高い。
軽いから、4ターン目まで動き出せないような致命的な事故も起こらない。
軽量カードのみで対戦相手に打ち勝てるだけの打点を押し付けられるメリットは、これほどまでに大きいものなのだ。
現環境において最強のメタクリーチャー《PP-「P」》について、自分が使ううえでも相手に使われるうえでも相性に優れている点も、大きな追い風だ。
とにかく採用カードのコストが軽いため、「相手のマナゾーンの枚数」を参照するメタクリーチャーはこのデッキにほとんど刺さらない。
さらに、軽量クリーチャーをバラ撒く手段は豊富すぎるほどに充実しているため、自分自身がメタクリーチャーを扱うデッキとしてもトップクラスの強さを誇る。
環境上位と目されるデッキのほとんどに対して相性不利が付かず、再現性の高さから雑多なデッキに事故を拾われづらい。予選ラウンドでは無類の強さを見せつけて、入賞率は27%を数えた。
決勝ラウンドでもその存在感を大きく見せつけた……が、ベスト8に残ったのはフィーチャーマッチでの活躍も目覚ましかったkaisora選手のみ。
予選ラウンドで「勝ちすぎた」結果、あらかじめ【ダーバンデ】へのマークを上げたデッキに有利なフィールドになり、結果としてトーナメントが進行するに従って淘汰された側面が大きいと考えられる。
軽さは強みだが、同時に弱点だ。1枚1枚のカードパワーで劣る分、一度有利を形成されると覆すのが難しいデッキでもある。
特に、展開と進化速攻を同時に抑制されると、打開する手段は《心転地と透幻郷の決断》で除去を2回撃つぐらいしかないだろう。呪文への依存度も高く、ロックされると小粒なクリーチャーでちまちま削っていくしかない。
また、ロックフィニッシュを搭載していない場合がほとんどなので、《PP-「P」》がケアにならない呪文による受けが豊富かつ同速ないしはやや遅いぐらいの速度でフィニッシュに持ち込んでくるデッキ、例えば【ゼーロ】系統のデッキはやや苦手な相手と言えるだろう。
様々な要因が重なり本大会の最高戦績はベスト8に留まったが、それでもデッキのポテンシャルの高さは環境でも随一だ。
メタクリーチャーを削った代わりに《MANGANO-CASTLE!》による打点形成や《Disノメノン》でメタを叩く手段を取り入れつつ、火文明の枚数を確保して《ピザスターのアンティハムト》を手札からプレイしやすくした新たなバリエーションの構築も登場している。
基盤そのものの登場からまだわずか1ヶ月。【ダーバンデ】の挑戦はまだこれからだ。
【水闇COMPLEX】
|
OKAFUKU DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
そんな【ダーバンデ】を環境の中心として仮想敵に見据えた結果、大勝を収めたのがOKAFUKU選手の【水闇COMPLEX】だ。
《異端流し オニカマス》や《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》で相手の展開を抑止し、《冥土人形ヴァミリア・バレル》と《修羅の死神フミシュナ / 「この先は修羅の道ぞ」》でハンドリソースをじわじわと制圧。
メタクリーチャーが除去されても容易に立て直す《アーテル・ゴルギーニ》で盤面を支え、最終的に相手の逆転がなくなったタイミングで打点を通しきるか、道中で着地させた《DARK MATERIAL COMPLEX》がシールドを吹き飛ばして勝負を決する。
徹底的なメタ&ハンデスデッキでカードパワーにはさほど優れないものの、現在のアドバンスでは想定されづらいデッキタイプということで、刺さるデッキにはとことん刺さる。
≪ボン・キゴマイム≫でスピードアタッカーや進化速攻を抑止し、《奇天烈 シャッフ》と≪♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり≫、《裏斬隠 テンサイ・ハート》らが選べない相手の攻撃すらもストップ。選べるようになったら《冥土人形ヴァミリア・バレル》や≪「この先は修羅の道ぞ」≫で押し流し、以下勝てる状況ができるまでループ。
打点を通して勝つデッキに対して「負けない」性能が非常に高く、搦め手を突破する手段に乏しいデッキには無類の強さを発揮する。使用者のOKAFUKU選手は決勝ラウンドのほとんどで最大勢力の【ダーバンデ】とマッチアップし、それらを制して準決勝まで駒を進めたという。
準決勝では単体カードパワーの差から不利と目される【火水自然ドラグナー】に敗れたが、3位決定戦では同デッキタイプとの激闘の末、負けないプレイを徹底して粘り勝ちを収めている。
オーソドックスな構築であるため細かいカードチョイスの妙は少ないが、【ファイアー・バード】全盛期を過ぎてから目にする機会を減らしていた《カレイコの黒像》は再評価の余地があるだろう。
【火水自然ドラグナー】はマナブースト札と「バトライ」系のトップ捲り、【サイバー】はメクレイド、【ダーバンデ】は《キユリのASMラジオ》と《運命の選択》、そして【ゼーロ】は《DARK MEMORY CONTAINER》の蘇生をトリガーさせるシールド追加。
細かいところでは《PP-「P」》のマナブーストも抑止できるなど、現環境のデッキほとんどすべてに対して何らかの形で有効に機能するメタカードとして、今後の活躍に注目したい。
【光水闇ゼーロ】・【4cゼーロ】
|
らららい DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
最速3ターン・平均4ターンでフィニッシュできるアンフェアデッキは、アドバンスでも強かった。
【ゼーロ】系のデッキはアドバンス独自の強化要素をほぼ持ち合わせていないが、そのデッキ性質の強さのみでベスト8に3名を送り出している。
特に活躍が目覚ましかったのは《異端流し オニカマス》や《冥土人形ヴァミリア・バレル》などを採用して序盤はメタコントロールのように振る舞いつつ、受け札として《影世界のシクミ》を採用しカウンター性能を高めた光水闇3色の構築だ。
妨害札で安易な大量展開を封じ、カウンター札で迂闊な攻めを許さず、じっくりリソースを貯めてコンボ突入のタイミングを虎視眈々と伺う。そんなデッキが、パーツさえ揃っていれば3〜4ターン目にいきなりゲームを畳んでくるのだから、相手としてはたまらない。
|
いわし; DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
もうひとつの主流・【4cゼーロ】はいまいち振るわない結果となったが、ベスト8に食い込んだいわし;選手は《天災 デドダム》をフル採用しつつも《宇宙妖精エリンギ》や《R・R・R》を採用せず、《新世界王の闘気》とディスペクターで自然の枚数を賄った独自の構築を持ち込んだ。
2ターン目の動きとして《サーイ=サイクル》が3枚採られている。
手札の減らない2マナ域で3ターン目《闇王ゼーロ》の再現性を向上させつつ、メタクリーチャーでゲームを引き延ばされた際には、ターン開始時のシールド回収に《秩序の意志》や《イキナリ・スナイパー》のS・バックを合わせて除去を飛ばせる構成になっているのが興味深い。
本大会のダークホースとも言える好戦績を収めたデッキだが、ベスト8において3名全てが【火水自然ドラグナー】とマッチし、敗北している。《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》の採用枚数の増加が影響していないとは言えないだろう。
デッキ構造は非常に強力な一方で、呪文ロックや《DARK MEMORY CONTAINER》の踏み倒しを抑制されて《闇王ゼーロ》が撃てないと瓦解する、脆い側面もあるデッキだ。
今後他のデッキが【ゼーロ】とどう向き合うか、そしてこのデッキがどう進化していくかにも注目していきたい。
【サイバー】・【火闇自然D・D・D】
|
モントゥトゥルピー DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
|
dotto DMGP2025-2nd アドバンス構築 |
|
|
本大会において大きな勢力となったが、いずれもベスト8に名を残すことができなかったデッキタイプだ。
デッキ自体の出力の高さは折り紙付きだが、環境の上位を占めてからある程度時間が経っているため対面でのプレイングがある程度確立されており、多くのプレイヤーは対【サイバー】・対【D・D・D】の練度を十分に高めている。
どちらもデッキの中でギミックの占める割合が高く、アドバンス独自の要素や新カードで相手の対応をズラすのも難しい。実際これらのデッキにいわゆる「シークレットテク」はほとんど見られず、順当に戦い、順当に勝った負けたが起こるため、抜きん出た好戦績を残しづらいデッキだったという側面はあるだろう。
また、速度と再現性の【ダーバンデ】・遅延性能とフィニッシュ確度の【光水闇ゼーロ】・カードパワーと対応力の【火水自然ドラグナー】と各々に方向性の違う3デッキが上位に揃ったことで、これらのデッキは独自のポジションを主張するのがやや難しかったかもしれない。
繰り返しにはなるが、これらのデッキがデッキ単位での出力で劣っていたわけではなく、今後も活躍が期待できるデッキタイプだ。
しかし、アドバンスでの【ゼーロ】の躍進や【ドラグナー】系統のデッキの台頭で、絶対的な存在であるとは言えなくなってきているのは紛れもない事実だろう。
おわりに
アドバンスの地平を、新時代のモルトが切り拓いた本大会。もちろんいずれのデッキも輝きを放っているが、それでも、決勝戦の【ドラグナー】ミラーマッチを目の当たりにして、「これでこそアドバンス」と思ってしまう筆者がいたのだ。
ドラグハートが。サイキックが。超GRが。
かつて僕らと共に過ごしたあのカードたちそのものではないかもしれないけれど、確かにあの時の熱さが今でもそこにあるような。
そして、それは今を楽しむプレイヤーへと受け継がれ、遠い先の「かつて」を創り出していくのだろう。
デュエル・マスターズは止まることなく、前へ前へと進み続けてきた。アドバンスはその歴史を余すことなく味わえるフォーマットなのだ。
今回はドラグハートが大活躍したが、次は果たして何が出てくるだろうか。
モルトとその子供たち、そしてまだ見ぬパンドラに想いを馳せつつ、筆を置かせていただく。
本記事がアドバンス環境の理解の一助となれば幸いだ。
©ANYCOLOR, Inc.
TM and © 2025, Wizards of the Coast, Shogakukan, WHC, ShoPro, TV TOKYO © TOMY










