DMGP2025-2nd Day2(オリジナル):メタゲームブレイクダウン
ライター:原田 武(たけじょー)
「王道W第3弾 邪神vs時皇 ~ビヨンド・ザ・タイム~」発売から1か月。「王道vs邪道 デュエキングWDreaM 2025」発売から1週間。プレイヤー達はめいめいの最強デッキを手に、Aichi Sky Expoに集う。数千人のプレイヤーの調整の結論が一堂に会する大型大会は、言ってみれば超大規模の実証実験だ。描き出される「現環境」は、いったいどのような姿をしているのだろうか。
まずは今大会のトップ128チーム384デッキ、その内訳を確認しよう。
TOP128 デッキ分布
104 【サイバー】66 【4cゼーロ】
37 【der‘Bande】
33 【光水闇ゼーロ】
28 【ドリームメイト】
25 【水闇COMPLEX】
19 【火闇自然D・D・D】
8 【ボルシャック】
8 【ロマノフループ】
7 【アルファディオス】
6 【ジャイアント】
5 【光水闇ARC REALITY】
4 【ゴスペル】
3 【ペテンシ―フシギバース】
3 【サムライ】
2 【ゼロジョーカーズ】
2 【モモキング】
2 【水闇ボウダンロウ】
2 【水闇自然ボウダンロウ】
2 【アポロヌス】
18 母数1


いずれもコンボが成立すればS・トリガーなどの逆転手段を意に介さずに勝利できるデッキであり、TOP128進出者の実に半分が高速ソリティアによる確実な勝利を選択したということになる。
加えて「邪神vs時皇」出身カードによって成立した、ないし大きく強化されたアーキタイプが数多く名を連ねていることも見逃せない。
目玉カードをそれぞれ切札に据えている【火闇自然D・D・D】【光水闇ARC REALITY】に加え、DTLでの活躍を機に周知された【der‘Bande】は完全なる新デッキとして成立。【ゼーロ】系列の躍進も、《~地獄帰りの騎士~》登場によるところが大きい。
夏の超CS時点では【サイバー】や【キャベッジ】といった「ヒロインBEST」組、【ドリームメイト】【ファイアー・バード】の「ファンタジーBEST」組が幅を利かせていたが、わずか2ヵ月弱でこの変貌ぶりである。いかに「邪神vs時皇」がハイパワーなセットだったか伺えるというものだ。
そしてこれら128チームによるトーナメントを勝ち上がった、ベスト8総勢24名の母数内訳はこのようになっている。
6 【光水闇ゼーロ】
4 【4cゼーロ】
4 【サイバー】
2 【水闇COMPLEX】
2 【der‘Bande】
2 【ドリームメイト】
1 【ファイアー・バード】
1 【水闇ボウダンロウ】
1 【アポロヌス】
1 【火闇邪王門】
なんと【サイバー】と【ゼーロ】系列の順位が逆転する驚きの事態に。数か月間環境の頂点に立ち意識され続けた【サイバー】と、直近で台頭したことでマークの甘い【ゼーロ】の差が出た形か。
続く【水闇COMPLEX】【der‘Bande】【ドリームメイト】はおのおの二人をベスト8に送り込んでいるが、【火闇自然D・D・D】はここで脱落。受けの堅い【ゼーロ】の躍進のあおりを受けたと思われる。
末席に名を連ねたのはTOP128段階で母数2だった【水闇ボウダンロウ】に【アポロヌス】。【ファイアー・バード】と【火闇邪王門】に至っては、母数1から単身でここまで喰らいついている。こうした少数精鋭の活躍から、「最強デッキ」突破のカギが見えてくるかもしれない。
では以上の結果を踏まえ、注目デッキの詳細を見ていくことにしよう。
【サイバー】
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TJM DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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誰もが「最強」と呼ぶ現代デュエル・マスターズの風雲児。早ければ3ターン目、そうでなくても4~5ターン目にループフィニッシュを決められるうえ、万一ループできずとも殴り勝てるだけのビートダウン性能も持ち合わせている。如何にこのデッキが凶悪か……なんて、いまさらくどくど語ることでもないだろう。
超CS大阪にて樹立した予選突破者中40%が【サイバー】、という記録に比べると幾分支配率を落とすこととはなったが、それでも単体で25%を占めるのは十分な異常事態。頭一つ抜けて意識されるデッキだっただろうに、これなのだから凄まじい。
構築・プレイ共にプレイヤー側の理解が煮詰まり切っている感もある。今後も競技シーンを定義づけるデッキであることに変わりはないだろう。
【4cゼーロ】
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ゲンドウ部 DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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「【サイバー】が強い」ことは前提条件として万人が知るところだった以上、今大会のメタゲームを真に動かしたのは2種の【ゼーロ】だったかもしれない。


【4cゼーロ】の特徴はデッキ名通り、自然文明の採用。令和の初動《天災 デドダム》の採用によりマナ・手札の安定感が増すほか、《戦国接続 ギャラクテスト・シデンシーザー》を無理なく複数採れるため総じて自身の動きが通しやすくなっている。
強力な受け呪文《R・R・R》が採用できるのも特筆すべきポイントで、広範囲な除去かシールド追加が選択できるため、踏めば概ねターンが返ってくる。《闇王ゼーロ》さえ撃てればほぼほぼ勝てるこのデッキでは、この上なく頼もしい防波堤だ。
【光水闇ゼーロ】
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sunameri DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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一方の【光水闇ゼーロ】はマナこそ伸ばせないものの、水・闇の優秀な小型クリーチャーにスロットを割ける点が主張点だ。こちらのリストでは《異端流し オニカマス》《裏斬隠 テンサイ・ハート》《「大蛇」の鬼 ジャドク丸》が採用されている。
併せて採用された《影世界のシクミ》のバリューはかなり高く《~地獄帰りの騎士~》を無理矢理探しに行くことも、状況に応じて小型クリーチャーを使い分けつつ、隙あらば《闇王ゼーロ》の種としてカウントしてしまえるため無駄がない。
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ペリュ DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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他方ではクリーチャーに囚われないこのような構築も。【サイバー】に抗うための《Dの天災 海底研究所》に《オリオティス・ジャッジ》、自身の動きを通しやすくする《氷牙レオポル・ディーネ公 / エマージェンシー・タイフーン》などに細かな最適化の痕跡が伺える。
こうしてクリーチャーを絞った構築で輝くのが《ティンパニ=シンバリー》で、確定で《~地獄帰りの騎士~》を呼び出せる闇のクリーチャー、と《闇王ゼーロ》使用への特急券となる1枚だ。
いずれも登場から日が浅いこともあり、それぞれのリストにはかなりのバラつきがある。今大会を経た後、どのような方向性で洗練されていくかに注目したい。
【火闇自然D・D・D】
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くろくさ DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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他方で前評判よりも伸び悩んだ感が否めないのが【火闇自然D・D・D】。数週間前までのCS環境ではブイブイ言わせていたものの、今回はベスト8に1人も残れないという結果に終わってしまった。
最大の要因はやはり【ゼーロ】の隆盛だろう。シールド追加が行えることやS・トリガーの質の高さからトドメを差し切ることが非常に難しく、ターンが渡ると《闇王ゼーロ》からのワンターンキルが起こり得る点で不利と言わざるを得ない。
また、そもそもトリガーのリスクと向き合うしかないビートダウンである点も大型大会においては逆風だったか。メタ(妨害)クリーチャー採用型や《堕チシ八叉ノ蛇神》型といった組み換え幅のあるアーキタイプであるため、GP後の環境でどのように最適化されるかは注目したいところだ。
【der‘Bande】
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yosshi- DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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《俳句爵 Drache der’Bande》から軽量呪文を唱え、アンタップや進化速攻を絡めてワンショットを狙うこのデッキもまた、【火闇自然D・D・D】ほどでこそないものの環境の逆風を受けてしまった感がある。
《一音の妖精》や《ネ申・マニフェスト》によってある程度はS・トリガーにも耐性があるのだが、《R・R・R》などの全体除去となると流石に避けきれない。
またそれなりの採用率を誇る《裏斬隠 テンサイ・ハート》に非常に弱いという難点も抱えており、3コストを止められるとターンを返さざるを得なくなってしまう。爆発力には目を見張るものがあるため、今後もメタゲームの一角には食い込み続けることだろう。
【ドリームメイト】
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ごみいち DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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「ファンタジーBEST」での登場から1年とすこし、同期の【マーシャル】や【ファイアー・バード】が規制によって一線を引いた後でも立ち位置を堅持しているのが【ドリームメイト】だ。
《お目覚めメイ様》×《森夢のイザナイ メイ様》による圧倒的な速度感、そして山札から臨機応変に踏み倒し先を選べる光臨での対応力と、主張点は以前から変わらない。《真気楼と誠偽感の決断》や《流星のガイアッシュ・カイザー》にさえ気をつければ、ほとんどの対面にスピードの暴力を押し付けられるだろう。
2位に輝いたごみいちのリストは《清浄のカルマ インカ / オキヨメ・水晶チャージャー》の3枚採用が印象的。上下ともに【ゼーロ】系列に非常によく刺さる効果をしているため、今後しばらくは頻出するカードになるかもしれない。
【水闇COMPLEX】
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とり/ま枠 DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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DMGP2025-1st オリジナルの優勝デッキ【水闇COMPLEX】。依然《DARK MATERIAL COMPLEX》は1枚のみでありながらも、今大会でも一定以上の存在感を示している。
《異端流し オニカマス》を始めとするメタクリーチャーと《冥土人形ヴァミリア・バレル》等による手札破壊を掛け合わせる鉄板ムーブは今なお健在。昨今はやや影が薄いものの、《飛翔龍 5000VT》はいまだに多くのデッキを機能不全に陥れる。
採用カードの選択肢も幅広いが、今大会では【ゼーロ】の楯追加を咎める目的の《カレイコの黒像》、プレイも現実的な受け札こと《裏斬隠 テンサイ・ハート》などが印象に残る。サンプルリストでは《水神 ミヅハノメノカミ》が投入されているが、こうした隠し味的な運用もGPの長期戦では役立ったことだろう。
【水闇ボウダン=ロウ】
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うなたろす/彩色硝子 DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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メタクリーチャー+手札破壊のパッケージはそのままに、《流星のガイアッシュ・カイザー》カウンターの要素まで取り込んだのが【水闇ボウダン=ロウ】だ。
ベースカラーが水・闇である点が実に巧妙で、【水闇COMPLEX】かな?と油断した相手の踏み倒しに意識外からの《流星のガイアッシュ・カイザー》をひっかけることが可能。《超暴淵 ボウダン=ロウ》が着地すれば相手の戦略をズタズタにできる。
【サイバー】の《マクスハト》、【ゼーロ】の《DARK MEMORY CONTAINER》など早期から反応できる場面も多い。今大会の「二強」環境がしばらく続くのであれば見かける頻度も高まるはず、迂闊な踏み倒しには十分ご注意を。
【火闇邪王門】
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スライ無 DMGP2025-2nd オリジナル構築 |
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最後に紹介するのはTOP128内の母数は1でありながら、そのまま優勝まで駆け上った【火闇邪王門】。最新のドリームレア・《鬼ヶ伝双 VSジャオウガ》がシールド回収とフィニッシュ補助を両立してくれることもあり、総合スペックが大きく向上している。
鬼エンド達成時の火力は凄まじく、あれよあれよとクリーチャーが横並びして過剰打点を組み上げる、G-NEOでの除去耐性付与や《王道ダチ ケントナーク》からのD・D・D解決、1枚仕込まれた《ギガボルバ》など、立ち回りの選択肢も多岐に渡る。
また妨害さえなければ《鬼寄せの術》からの上振れを狙うことも可能。突然の《轟く邪道 レッドゾーン》や《アーテル・ゴルギーニ》登場が不可能を可能にしてくれる。新たなビートダウンの選択肢が産声を上げた瞬間だ。
【サイバー】が依然大きなシェアを持つ一方で、2種の【ゼーロ】が大躍進。両デッキが母数・実績共に大きな爪痕を残したことで、「速度の速いループデッキ」の脅威度が改めて示される結果となった。
一方でこれらを上手く相手取れるメタ+手札破壊の組み合わせ、あるいは《流星のガイアッシュ・カイザー》によるカウンターなど、対抗策のヒントも垣間見えている。ガードが下がれば再びビートダウンの優位性も高まってくることだろう。
次なるカードプールの追加は11月中旬「ドリーム英雄譚デッキ グレンモルトの書」を待つことになるが、こちらはアドバンスにフォーカスした商品であることが既に明かされている。オリジナル環境のプール更新には12月発売の王道W第4弾を待つことになりそうだ。
今大会の結果を踏まえ、プレイヤー達の研究はどのように進展していくのか。メタゲームの変遷を楽しみに待つこととしよう。
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