DMGP2024-2nd Day2(オリジナル):ローグデッキピックアップ
ライター:清水 勇貴(yk800)
未知での奇襲は大型大会の華。……そんな成句があるわけではないが、ローグデッキの活躍を見るのはどんな大会でも楽しいものだ。思いもよらぬカードがトップメタのデッキに一矢を報いる様はいつだって痛快だし、知られていないからこその強みは確かに存在している。
しかし、ただ知られていないだけで勝ち残れるほど大型大会が甘くないことは、皆さんもご承知の通りだろう。未知のスパイスが隠し味として機能するのは、ベースとなる強靭な構築の旨みあってこそだ。
本記事では本戦進出者が1名のみであった、8つのレシピを紹介していこう。
@フライゴン:【光水自然逆アポロ】
@フライゴン DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
@フライゴン選手の構築は一般的な構築とは異なり、自然文明を採用している点が目立った。
内訳としては以下の通りだ。
《空間型無限収納ストラトバッグ》 4枚
《調和と繁栄の罠》 3枚
《深緑の魔方陣》 2枚
≪「シールド戦隊、トリガージャー!!」≫ 3枚
5色カードでマナ要員には基本的に数えられない≪「シールド戦隊、トリガージャー!!」≫は置いておくとして、残るカードの中で目を引くのは《空間型無限収納ストラトバッグ》のフル採用だ。
役割対象はおそらく【マーシャルループ】や【闇単ゼーロ】などのコンボデッキが筆頭だろう。
同じくコンボデッキとして現在主流な【ゴスペル】系のデッキも残念ながらメインギミックこそ止まらないが、《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》への革命チェンジを阻止し、呪文ロックとアタックキャンセルによるループを同時に制限できる。
また、【ファイアー・バード】の《凰翔竜機マーチ・ルピア》や《ボルシャック・モルナルク》無限追加ターン取得ギミックや、【水闇自然マルル】の《終末の監視者 ジ・ウォッチ》を使ったアタックキャンセルループなど、受けデッキを対策するために用いられる特殊なギミックを咎めるのに一役買ってくれるだろう。
そして、真っ当に殴るしかないとなれば、無数とも思える防御札で身を固める【逆アポロ】を突き崩すのは至難の業だ。
要するに、《空間型無限収納ストラトバッグ》は、【逆アポロ】が得意とする「殴り合い」の土俵に相手を引き込めるカードなのだ。ただのメタ(妨害)クリーチャーではなくタマシードであることも、場に維持するうえで非常にありがたい。
カード除去1枚でご破産になってしまうことを考えれば1枚ではやや心許ないところだが、複数枚貼れば特定の対面には必勝になりうる。確実に引き込んで時間を稼ぐためにも、枚数を確保するためにも、納得の4枚採用だと言えそうだ。
ハラチャ:【火光闇ライオネル】
ハラチャ DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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《邪心臓の魔法陣》は水/闇/火の3色を用いるデッキにとっては待望すぎる1枚だ。しかし、これまでの類似カードであるキング・セル各種とは違いタマシードであることが、思わぬデッキをも強化した。
決勝トーナメントに唯一コマを進めた【火光闇ライオネル.Star】の使用者であるハラチャ選手は、そのデッキリストに《邪心臓の魔法陣》の名を3度刻んでいた。
火/闇2色のマナを安定して供給しつつ、タマシードであるがために《カーネンの心絵》で拾うことができ、G・ストライクで受けの増強にも繋がるこのカードを3枚採用していた。
キーカードとなる《禁断英雄 モモキングダムX》の2ターン目プレイには火マナと闇マナが1マナずつ必須となるため、片方の単色マナを肩代わりできるこのカードの有無はマナベースにかける負担の観点でかなり大きな差だ。
光文明やレクスターズを持たないためその他のカードとの噛み合わせは良いとは言えないが、ハンドキープの条件を緩和する色マナサポートはそれを加味してもあまりあるメリットだと言えるだろう。
ビートフィニッシュも狙えるが、メインのフィニッシュ手段が特殊勝利なのも環境に適していて、好印象だ。
麻倉百千代:【5cゾージア】
麻倉百千代 DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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分類が難しいため、暫定的に【5cゾージア】と呼称させていただく。
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を《アカシック・ファイナル》に侵略しつつ、各種革命チェンジドラゴンと入れ替えて手札にカムバック。次のターンにも同じ動きを繰り返し、ロックと盤面処理を繰り返しながらファイナル革命で自分の動きを作っていくのがメインとなる動きだろう。
驚くべきはその多色枚数。単色カードはなんと《ドラゴンズ・サイン》2枚、《R.S.F.K. / オールイン・チャージャー》2枚の4枚のみ。≪Volzeos-Balamord≫を構成するキング・セルが各種3枚、計9枚採用されているが、それでもアンタップイン換算できるマナはたったの13枚だ。
一見してかなり運用が難しいようにみえるが、その実アンタップインマナが必要なタイミングは3ターン目のみの 1回、あるいはその次のターンも合わせた最大2回程度に絞られる。
《R.S.F.K. / オールイン・チャージャー》か《風波の1号 ハムカツマン》からスタートした場合は次のターンにタップインを処理して4マナで《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》を召喚すれば動き出せる。
《風波の1号 ハムカツマン》の場合は《アカシック・ファイナル》に侵略することで追加のキング・セルを引き込んだり、多色ドラゴンを軽減して強引に動き出す展開も視野に入るだろう。
また、《Disコットン&Disケラサス》で2マナブーストできれば、次のターンにはタップインを処理しながら5マナ域の《王道の革命 ドギラゴン》か《漢気の2号 ボスカツ》をプレイ可能だ。
一見すると無茶な構築のように見えて、その実では繊細に各ターンの動きを見据えて構築されているように見受けられる。
ネクロノミコン:【デスパペット】
ネクロノミコン DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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曰く「《龍后人形メアリー・ジェニー》を使うために構築されたデッキ」とのことなので、本記事では【デスパペット】デッキとして紹介させていただこう。
ネクロノミコン選手が持ち込んだこのデッキの設計思想は、至って伝統的な水/闇のハンデスデッキに則ったものだ。
序盤は各種メタカードで相手の動き出しを制限している間に、軽いハンデスでゲームプランを崩す。中盤には《ナーガの海黒環》や《龍后人形メアリー・ジェニー》といった永続リソース源を着地させてハンデスを継続したまま自分はドローを進めてアドバンテージ差を確立。最終的に《カレイコの黒像》を立てたまま《Vチャロン》を召喚すれば相手のシールドはすべて消え去り、ダイレクトアタックを安全に通して勝利できる。
デスパペットシナジーを加味してもハンデスコントロールの基本に忠実な構築だという印象だが、その中でも《パクリオ》の採択は目を引く。
再利用に一手間かかるシールドゾーンにキーカードを幽閉するだけでも十分強力なのだが、相手のシールドが増えて6枚になることで《幽幻人形キヨ&ヨン&シー》の踏み倒しを能動的に誘発させられる点が【デスパペット】デッキに採用する意義となっており、非常に面白い。
また、フィニッシュ手段として採用されている《カレイコの黒像》+《Vチャロン》のパッケージについても、現在の環境において《カレイコの黒像》単体がメクレイドやヨビニオンへの対策として機能するメタカードとして有用なのが嬉しいところだ。
ストマチャチェ:【ガイアハザード退化】
ストマチャチェ DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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ストマチャチェ選手の【ガイアハザード退化】は、その構築の自由度から新カードが登場するたび少しずつアップデートを繰り返してきたデッキタイプだ。
本構築においては、《ハンプティ・ルピア》と《聖霊超王 H・アルカディアス》が比較的新しいカードとして採用されている。どちらもデッキとの相性が良く、現在の【ガイアハザード退化】にとってなくてはならないカードだ。
《ハンプティ・ルピア》は《自然の四君子 ガイアハザード》着地前・着地後ともに強力な役割を持つ。
着地前はハンデスと盤面干渉を同時にこなして時間を稼ぎ、着地後は《自然の四君子 ガイアハザード》のロックを突破しうるカードを排除して万全の状態を築き上げる。
カラーリングも完璧だ。火/闇を両方含んでいるため《禁断英雄 モモキングダムX》の召喚に貢献しやすく、《生魂転霊》で3マナに変換できるのも強力。
総じて現在の【ガイアハザード退化】のデッキパワーを大きく底上げしているカードだ。
本構築では《ハンプティ・ルピア》と合わせて《絶望と反魂と滅殺の決断》もしっかり2枚採用されており、ハンデスによるリソース制圧をかなり重要視した構築であるように見受けられる。
《聖霊超王 H・アルカディアス》は《自然の四君子 ガイアハザード》の隙となる呪文での除去を完全にシャットアウトするカードだ。呪文を主体としたデッキを《自然の四君子 ガイアハザード》以上に重要で、強烈なフィニッシャーとなるのは言うまでもない。
単純にビッグマナデッキとして立ち回るうえでも、マナブーストに費やしたリソースを補填してくれる3ドローが沁みる。
また、ハイパー化も《自然の四君子 ガイアハザード》と相性が良く、シールドをブレイクせずにタップすることで安全にプレイヤーへの攻撃をシャットアウトできる。
《禁断英雄 モモキングダムX》をハイパー化のタネにすればその下の《自然の四君子 ガイアハザード》ごとタップされるため、トリガーした《生魂転霊》や《闇参謀グラン・ギニョール》で退化できればいきなり攻撃誘導が有効化される隠しテクも面白い。
現環境は、かなりクリーチャーに偏重したメタゲームが展開されている。
主流なカードのうち《自然の四君子 ガイアハザード》を安定して除去できる軽量呪文は《深淵の逆転撃》と《同期の妖精 / ド浮きの動悸》の呪文側くらいで、《自然の四君子 ガイアハザード》は非常に対処が難しいフィニッシャーとして機能してくれるだろう。
メタゲームの間隙を突いた、鋭いデッキチョイスだ。
カイホウ:【火自然バイク】
カイホウ DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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カイホウ選手の【火自然バイク】は、殿堂前は【火自然アポロヌス】と呼ばれていた構築のリペアに近い、侵略を主戦力に据えたビートダウンデッキだ。
環境の主流とは言えなくなったものの、その攻撃性能の高さは折り紙付き。基本的には2種8枚採用された「バイク」でのビートダウンがメインプランだが、《エボリューション・エッグ》が絡めば、殿堂入りによって忘れかけていた《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》の恐怖をふたたび思い出させてくれるだろう。
こういったデッキが活躍するのは、非常に「GPらしさ」を感じる。
基本的にはあの頃と変わらないパーツが並んでいるが、さりとて丸っきり過去のままというわけでもない。
《偽りの希望 鬼丸「終斗」》の採用は多色環境の現在のメタゲームにおいて納得の採択だ。
【火光闇ファイアー・バード】にしろ、【水闇自然マルル】にしろ、序盤に多色マナを置かなければ立ち行かないデッキは多い。単体でも2打点を出しつつ盤面に触れるスピードアタッカーの侵略元が3マナで手に入るのならば、破格というほかないだろう。
オッコルピア高倉:【水闇自然COMPLEX】
オッコルピア高倉 DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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【COMPLEX】と呼ぶべきか、【ジャオウガ】と呼ぶべきか。あるいはそのどちらでもないのか。
オッコルピア高倉選手がデッキシートに書き込んだ40枚は、それぞれのカードこそ多くのデッキで見る顔ぶれが中心だが、その組み合わせは極めてユニークだ。
デッキの終着点として目指しているのは、おそらく「下に7枚貯まった《DARK MATERIAL COMPLEX》を作った状態で《CRYMAX ジャオウガ》を出す」、もしくは「《DARK MATERIAL COMPLEX》のアタックトリガーで《CRYMAX ジャオウガ》を踏み倒す」ことだろう。
アドバンスで時折見られる《零龍》の《墓地の儀》残しのように、打点に対処されれば動き出す時限フィニッシャーを構えた状態でビートダウンを通していく動きが狙いであると推測している。
もちろん、対面によってはシンプルに《DARK MATERIAL COMPLEX》か《CRYMAX ジャオウガ》絡みの過剰打点だけで押し通ることもできるだろう。
デッキ構築に目を向ければ、多色カードは《天災 デドダム》4枚と《流星のガイアッシュ・カイザー》2枚の計6枚のみで、3色デッキでありながら実に34枚が単色カードで構成されているのが印象的だ。
闇単色カードの多さが特に顕著で、16枚採用。《DARK MATERIAL COMPLEX》を1ターン目に召喚したいのはもちろん、《天災 デドダム》の作った闇マナで召喚する場面も数多くあるだろう。
《星空に浮かぶニンギョ》は貴重な闇単色のメタクリーチャーだ。有効な対面が広いとは言えないがマナ加速を起点とするデッキに対しては強烈に刺さる1枚で、G・ストライクも兼ね備えている。《謀遠 テレスコ=テレス》と合わせて、相手にリソースを伸ばさせまいとする意志を感じる。
自然は分かりやすく、初動マナブーストや軽減、《CRYMAX ジャオウガ》を引っ張り出すための《母なる星域》が構成要素。
水文明に目を向けると、この手のデッキとしては珍しく《飛翔龍 5000VT》は採用されておらず、《終止の時計 ザ・ミュート》と《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》といった相手の過剰打点を止めるのに長けた受け札が優先されている。「受けて返す」ことも意識した採択なのだろう。
色バランスや独特のカード選択など、強いこだわりが感じられる一作だ。
醤油@殴り屋界隈:【光水自然ゴスペル】
醤油@殴り屋界隈 DMGP2024-2nd オリジナル構築 |
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醤油@殴り屋界隈選手が磨き上げたこのデッキは、一般に主流な【火光水ゴスペル】とは異なり、《エンドレス・フローズン・カーニバル》によるロックをメインギミックに据えた形の《水晶の王 ゴスペル》デッキだ。
序盤は墓地肥やしに専念し、中盤で《水晶の王 ゴスペル》を召喚して呪文を一斉回収。手札調整手段なども合わせて手札にスノーフェアリーを5枚揃え、《エンドレス・フローズン・カーニバル》によるロックを仕掛ける。
以降は2枚目の以降の《水晶の王 ゴスペル》や時に攻撃時の呪文踏み倒しも活用しながらロックを継続。最終的に《オリオティス・ジャッジ》でバトルゾーンの《水晶の王 ゴスペル》を山札に戻し、毎ターン召喚できる体制を整えて相手の山札が切れるまでマナをロックし続けるのがメインとなる勝ち筋だ。
こちらの型にしかない利点はいくつかあるが、中でも大きなものを2つ挙げよう。
まずは2マナ域の手札調整・墓地肥やしとしてダントツで効率に優れた《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》の呪文面をプレイできる点。
わずか2マナで山札を3枚掘り進めつつ、《水晶の王 ゴスペル》のコストを一気に3も軽減できるため、プレイできればその後の展開が大幅に楽になることは間違いない。
そして、《水晶の王 ゴスペル》が登場したターンに攻撃しなくてもよい点。
《キリモミ・ヤマアラシ》やそれに類するカードが必要ないため、コンボ以外の用途がないカードを極力少なくできるほか、《ハッター・ルピア》系のメタクリーチャーを立てられていたとしても最悪墓地回収の部分だけで十分に仕事を果たせる。
もちろん火文明には火文明で、2マナ域の手札入れ替え呪文が除去トリガーを兼ねていたり、軽量除去呪文が充実しているため盤面を捌く性能が高かったり、《氷柱と炎弧の決断》が採用できたりと言った多数のメリットがある。
一概にどちらが優れているとは言えないが、少なくとも本戦出場者1名のこのデッキが、GPの舞台においてベスト16まで勝ち残るだけのポテンシャルを有していることだけは紛れもない事実だ。
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