ライター:鈴木 響太(ボルスズ)
これはこだわりのデッキチョイス!
……なんて驚嘆の言葉と共に、思わず手紙の一封でも贈りたくなるような使い手のこだわりを感じるデッキがある。
ローグデッキ。環境の穴をつき、群れに身を置く安心感を捨て、貪欲に勝利を狙うその姿は賞賛を贈るのに相応しい。
ここではトップ128まで勝ち残りつつも、その中で使用者がそれぞれ1人しかいなかった、そんな誇り溢れる
9種類のデッキたちについて紹介しよう。
無知丸:水闇自然グリッファ
安定したリソース確保から生まれる加速や、豊富なメタクリーチャーが場を繋ぎ、必殺の一撃へと繋げる水闇自然の3色デッキ。中でも複数のフィニッシャーを《哀樹神官 グリッファ》でつなぐのがこのデッキの特徴だ。
道中をつなぐ軽量クリーチャーたちをことごとく妨害に寄せることで環境上位へ抗う形になっている構成に加え、相手を翻弄するギミックが見え隠れするのが特徴的。【ヘブンズ・ゲート】や【ドラゴン】系デッキに焦点を絞ったのか、この手のデッキに採用されがちな《飛翔龍 5000VT》を1枚も採用しないという思い切りの良さにより、相手は見えない《飛翔龍 5000VT》を見越した取り越し苦労をしてくれる。
工夫はそれにとどまらない。見逃せないのが1枚だけ採用されたこだわりのカードたちだ。《終末の時計 ザ・クロック》のような防御カードがマナに見えるだけで、相手にケアをよぎらせるいやらしい戦法が可能。相手は終始、「あるはずもない何か」に怯えることになる。
細部に宿るこだわりで相手を翻弄する、匠のデッキと言えるだろう。
フッキー8:水闇自然マルル
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フッキー8
DMGP2025-1st
アドバンス構築
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「水闇自然三連星」の二人目は、一世を風靡したビッグマナデッキ。
こちらは一転して、道中を自身のリソース拡張に振り切った構築が特徴だが、注目のこだわりポイントは《ロスト・Re:ソウル》への全力集中!!
2→4→7のマナカーブを実現すべく投入された4の動きは2種8投!4ターン目に全ハンデスが決まればどんな相手も粉砕できる……という全ツッパスタイルが持ち味だ。
もちろんアドバンスらしく、《復活の祈祷師ザビ・ミラ》によるフィニッシュも完備。ヨビニオンによって頭数を用意しやすいという点も、このデッキにマッチしている。
腹に据えた一本の槍で、予選の荒波を潜り抜けた信念に拍手。
吐弱:水闇自然ハイパーエナジー
三者三様の構築を見せてきた水闇自然最後の砦は【ハイパーエナジー】。
ボードアドバンテージをそのまま速度へと変換するこの戦術は、《とこしえの超人》や《キャディ・ビートル》のようなメタクリーチャーの刺さりが良いこのフォーマットにマッチしている。そしてこの戦術は、そのまま《復活の祈祷師ザビ・ミラ》とのシナジーにも繋がるのだ。
吐弱が選んだ《復活の祈祷師ザビ・ミラ》からの≪勝利の頂上 ヴォルグ・イソレイト6th≫ギミックからつなぐフィニッシュは《水上第九院 シャコガイル》に始まり、《龍月 ドラグ・スザーク / 龍・獄・殺》のGRや《「特攻」の鬼 ヨミノ晴明-1.0》によるちまちまアタックに至るまで実に多種多様。
クリーチャーギミックが所狭しと詰まった、「エナジー」あふれる構築と言えるだろう。
ウエノ:ダーツデリート
ある意味、アドバンスの代表とも言える地雷の中の地雷デッキ。それがこの【ダーツデリート】ではないだろうか。
前期は《マーシャル・クイーン》と組んでいた《オールデリート》だが、この度新たなるS・トリガー戦術の核となる《真気楼と誠偽感の決断》を獲得。《暴発秘宝ベンゾ / 星龍の暴発》に加えて、ツインパクトとあわせて8投された《アクア・スペルブルー》が果敢に全消去を目論んでくる。
どんな鉄砲も数撃ちゃ当たる。引き鉄を引き続ける覚悟を感じられる構成と言えるだろう。
ノージョブズ:60枚ジャイアント
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ノージョブズ
DMGP2025-1st
アドバンス構築
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アドバンス“らしさ”を感じさせるデッキがここにも1つ。
あらゆる願望を叶えられるこのフォーマットにおいて、一際山盛りなデッキがこの【水自然ジャイアント】だ。
積むに積んだり、盛られたデッキの枚数は実に60枚。注目すべきは《雲の超人》の採用だろうか。
中盤の超加速を支える3ブーストカードだが、その掘削力はマナ操作に長けたこのデッキでは半ばサーチ系カードに近い働きを担ってくれる。《インフェル星樹》とあわせて、見た目以上に安定感のある仕上がりだ。
環境に適応したメタクリーチャーもてんこ盛り。ジャイアントの名に恥じない、わしわしのプレイ感が勝利を手繰り寄せた。
phoneネギトロさん:4Cドラグナー
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ネギトロさん
DMGP2025-1st
アドバンス構築
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数多のドラゴンデッキが《夢双龍覇 モルトDREAM》と《魂の呼び声》に二極化する中、ネギトロさんは別のアプローチを取った。
こだわりのポイントは、バーチャルの世界と繋がった新たな力、《ボルメテウス・レインボー・ドラゴン》。メインのアタッカーを《最終龍覇 グレンモルト》に任せることで、爆発的な展開を可能にしている。
初動を《八頭竜 ACE-Yamata / 神秘の宝剣》に寄せていることも面白い。《王道の革命 ドギラゴン》との組み合わせによって擬似的なサーチを行える。これにより、《ボルメテウス・レインボー・ドラゴン》の枚数を最小限に抑えながら、4ターン目のアクションを厚く採ることに成功した。
ドラゴンデッキの構築は2つだけでなはい。使い手次第で、虹のように何色も選べることを体現したデッキだ。
すめらぎ:火水光Drache
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すめらぎ
DMGP2025-1st
アドバンス構築
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今春、突如として話題を呼んだループデッキもBest128の栄誉を授かった。
【火水光Drache】。関東の職人の手によって作られた、現アドバンスでは希少とも言えるオールインコンボデッキである。
光
性質上トップメタの【ヘブンズ・ゲート】デッキに強く出られることに加え、コンボ突入速度は現環境においても上々。もう1つのトップメタ、【ファイアーバード】は苦手とするところだが、新たに獲得した《真気楼と誠偽感の決断》を捩じ込むことで勝ち筋を残す工夫がうかがえる。
光
使い手は全国大会でも同デッキを使用したすめらぎ。あくなき探究心がもたらした勝利と言えるだろう。
さらだちきん:ジャスティスループ
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さらだちきん
DMGP2025-1st
アドバンス構築
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ループデッキ第二弾は【ジャスティスループ】。こちらは《真気楼と誠偽感の決断》の登場による復活で、主にオリジナルを中心に話題を呼んだが、どうやらアドバンスでも活躍を遂げたようだ。
《爆藍月 Drache der’Zen》型のループルートで令和最新版へとアップデートされていることはもちろんだが、やはり目を引くのは《七王無き宮殿》。
【BAKUONSOOO】系のデッキや【ヘブンズ・ゲート】、それこそ【火光自然ボルシャック】における《魂の呼び声》なども含めるとやや呪文偏重とも言えるこの環境に見事マッチしている。一撃が入れば即勝利となるループデッキにおいては大きなテンポアドバンテージ。クレバーな採用に拍手。
紅蓮:自然単イツァヤナ
悪夢、再び。昨年紹介した《イミッシュ・イツァヤナ》中心のデッキが連続ローグデッキ紹介に連続登場。
≪ナチュラル・ゴ・デンジャー≫、《逆転の剣スカイソード》といった踏み倒しクリーチャーから《幻影 ミスキュー》によるアタックキャンセルを通し、さらなる《イミッシュ・イツァヤナ》へと踏み倒しの連鎖を重ねていく基本方針はそのままに、紅蓮のアプローチは《口寄の化身/強欲の王国》。
ミステリー・トーテムの中でも使用回数は5本の指に入るであろう重鎮のピックアップ。ツォルキンや侵略者など、サブ種族が豊富な構築になっているため一度のドロー枚数もバカにならなず、《水上第九院 シャコガイル》での勝利をよりシームレスなものへと進化させた。
こちらもループに近いソリティアデッキ。ターンを返す必要がなくなったため、《真気楼と誠偽感の決断》の隙を与えず、【ヘブンズ・ゲート】や【XENARCH】などにも強気に出られる。
深い環境理解が成せるアプローチは、試行錯誤の現れ。勝利への欲求が生み出した解答と言えるだろう。