全国大会2023:メタゲームブレイクダウン~アドバンス~
ライター:河野 真成(神結)
アドバンスは、超次元や≪伝説の禁断 ドキンダムX≫といった外部ゾーンのカードが使用可能であるフォーマットだ。本大会では、予選の1~3回戦までがアドバンスでの対戦となっている。
そして参加者48名の使用デッキは以下の通り。
13 光自然巨大天門
8 水火マジック
5 光闇火ドルマゲドン
5 水闇卍夜
4 闇火侵略(バイク)
3 闇自然ジャガイスト(アビス)
2 5cモルト
2 光水火ゴスペル(タッチ闇を含む)
2 サバキZ
1 光水火ライオネル
1 マトリクスループ
1 ブレスラチェイン
1 光水闇偽衒学者LO(逆アポロ)
全国大会2023のメタゲーム
昨年との大きな違いは、大会開始前に既にメタゲームが存在していたことだ。これは単純に(地域差はあれど)アドバンスのCS開催数が、昨年と比べて大幅に増加していることが要因と言えるだろう。
実際、今回のデッキ分布については事前メタゲーム予想と大きなズレはない。
有力と言われていたのは【光自然巨大天門】、【水火マジック】、【光闇火ドルマゲドン】の主に3つ。そこに【闇火侵略(バイク)】や【4cドラグナー】といったデッキが続くことが予想されていた。
そして蓋を開けてみると、概ね予想通りではあった。
その中で【光闇火ドルマゲドン】が思ったほど伸びなかったり、或いは【4cドラグナー】の使用者数が0であったこと、また【水闇卍夜】が集団で持ち込まれていたりと、少し意外な点も幾つか見られた。
この点も留意しながら、各デッキについて振り返っていきたい。
光自然巨大天門
今回の最多使用は、光自然の巨大天門と呼ばれるデッキだ。もっとも、一般に“天門”と呼ばれる《ヘブンズ・ゲート》をデッキ名に冠しているが、その実体は《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》からの展開デッキである。もしかしたら、「光自然巨大星門」の方が正しいのかもしれない。
ブラック会社@プレ デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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とてつもなくつよい、守りの王道デッキ……であるのも事実だが、このデッキはミッドレンジのビートダウンデッキの性質も兼ね備えている。
このデッキは4ターン目以降に《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》から展開し、盤面制圧や、そもそも展開したクリーチャーで次のターンには殴り切ってしまおうというコンセプトのデッキだ。
当然展開には手札が必要となるが、それを支えているのが、2ターン目に最大4ドロー出来る《巨大設計図》。
デッキの大半のカードを手札に加えられる上、これを《超七極 Gio / 巨大設計図》と併せて5枚採用出来るのも強みだ。
そして《巨大設計図》と並んで天門を支えているのが《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》だ。
こちらも4ターン目以降の展開で欲しい《星門の精霊アケルナル / スターゲイズ・ゲート》+《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》をセットで回収することも出来る。
そこから先は《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》から《邪帝斧 デッドアックス》・《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》といった強力なドラグハートたちを繰り出すことで、ゲームを大きく有利にしてくれるだろう。
また、《闘門の精霊ウェルキウス》と《邪帝斧 デッドアックス》の相性の良さも見逃せない。
このデッキを使用したブラック会社@プレはアドバンスを3-0とし、最終的に予選のトップ通過に成功した。
選択理由について、次のように語っている。
ブラック会社@プレ「《巨大設計図》からの安定感が一番で、状況不利でも手札さえあればなんとか出来ることが多いんですよね。またアドバンスは試合開始前に(超次元の情報等で)相手のデッキがわかることも多いので、手札の持ち方などでメタカードを超えやすいのも良い点だと思っています。」
ブラック会社@プレも言っているが、もちろん誰にとっても対天門は意識せざるを得ない相手で、各デッキ・プレイヤーは相応のメタカードを採用していた。
後述する【水火マジック】の《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》、またアーチーは自身の【闇自然ジャガイスト】に《キャディ・ビートル》を4枚採用している。
これらに対しても、《巨大設計図》で手札を増やしていれば《竹馬の超人 / テイクバック・チャージャー》を当てることで直接除去が可能であり、またそうでなくとも《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》を連打することでマナを伸ばし、7コストの《神聖龍 エモーショナル・ハードコア》や9コストの《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》を直接召喚することで対処する、なんていうプレイを取れる訳だ。
ブラック会社@プレがいう「メタカードを超えられる」というのは、そういった部分だろう。
このデッキは以前に発売された神アート「Angelic Wisdom」に加えて、4月6日発売の「いきなりつよいデッキ 守りの王道」を合わせることで、リストの大半を再現が可能だ。
恐らく、GPでも大きな活躍を見せるに違いない。
水火マジック
続いて使用者数が多かったのが【水火マジック】。オリジナルでも強力なデッキだが、アドバンスでは≪伝説の禁断 ドキンダムX≫や《頂上龍素 サイクリタ》が採用出来るといったメリットがあり、当然ながらオリジナルよりも出力が高いものとなっている。
はるる デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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デッキの動きについては既にお馴染みの人も多いだろうが、2ターン目にクリーチャーを出し、3ターン目の《芸魔隠狐 カラクリバーシ》チェンジ、そして《瞬閃と疾駆と双撃の決断》を併せての2回行動から《芸魔王将 カクメイジン》へのチェンジを目指すデッキとなっている。
一度《芸魔王将 カクメイジン》さえ通ってしまえば、大量展開に加えて《単騎連射 マグナム》や《同期の妖精 / ド浮きの動悸》が付いてくるので、多くのトリガーがケア可能だ。
一方、《機術士ディール / 「本日のラッキーナンバー!」》をプレミアム殿堂によって失ったものの、《ファイナル・ストップ》などで代替可能。実際、今回採用しているリストも多かった。
しかし今回アドバンス3-0したはるるやのすけといったプレイヤーのリストには採用されず、対天門を意識した《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》を気合いの3枚採用している。
マジックほどのデッキ速度でメタカードを投げられると、除去と展開を同一ターンで行うのは難しく、除去と展開を分割したターンを行わなくてはならない。
そしてマジックほどのデッキであれば、その1ターンの間にデッキの大半を掘り進めることが出来る。この過程にで《単騎連射 マグナム》に触ってしまえば勝てるよね、というわけだ。
《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》は決して場持ちのいいクリーチャーではないかもしれないが、【光闇火ドルマゲドン】に対しても《魔光神官ルドルフ・アルカディア》からの即進化を制限したし、他にも【5cモルト】の《ドラゴンズ・サイン》など、とにかくマジックが是が非でも欲しい1ターンを作ってくれるカードなのである。
ただしこれは、全国大会という独特のメタゲームを意識してのことでもある。
もしGPのような多種多様なデッキと対戦する環境であれば、《ファイナル・ストップ》は輝く筈だ。
光闇火ドルマゲドン
下馬評では最多使用もあるのではと思われたデッキだったが、使用者は5名。その大半はにわかやオチャッピィらのグループが持ち込んだものであった。
にわか デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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このデッキは《Forbidden Sunrise ~禁断の夜明け~》やチャージャーを軸に、5マナ圏から《魔光神官ルドルフ・アルカディア》や《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》といったカードで戦うデッキだ。
特に《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》は≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫と相性がよく、実質的に1ターンを貰える上に封印を剥がすことが出来る。とにかく3枚の封印を剥がしておきたいこのデッキは、ゾージアを軸にしていると言ってもよい。
天門との相性については諸説あるのだが、マジックに対してはもっとも戦いやすいデッキの1つであることは間違いない。
メタゲーム上の立ち位置も悪くなかったが、使用数が思ったほど伸びなかったのは使用難易度や、ブレも含めたゲーム序盤の不安定さにあったのではないだろうか。
特にゲーム序盤の手札やマナの作り方はゾージアとの兼ね合いもあって難しく、加えてミラーともなれば、かなり過酷なゲームが待っている。
ちなみに自身は2-1の戦績でまとめたにわかは、こんな風に溢していた。
にわか「めっちゃミラーの練習したんですけど、結局1回もなかったですね」
水闇卍夜
《卍夜の降凰祭》。これはバンナイト・カーニバルと読み、無月の門・終(ピリオド)を持つ呪文だ。このカードと《零龍》を軸に構成されたのが【水闇卍夜】だ。
フェアリー/AYN デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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実は2023年の夏頃から認知され始めていたデッキではあるのだが、恐らく初めて知るという人も多いだろう。鍵となるのは《堕魔 ドゥベル》だ。
動きを一例として上げると、2ターン目の《龍月 ドラグ・スザーク / 龍・獄・殺》から《堕魔 ドゥベル》を捨ててGR召喚。ここで11/12で《堕魔 ドゥザイコ GR》が登場するので、墓地から《堕魔 ドゥベル》が復活する。
この時に復活の儀で墓地に魔導具が2枚落ちると、なんと最速2ターン目に《卍夜の降凰祭》を唱えることが可能だ。これで《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》が建つと、対マジックはこの時点で勝ちである。
もちろん2ターン目というのは理屈上という話でもあるが、そうでもなくとも《闇王ゼーロ》と同様に3ターン目にはそれなりの割合で《卍夜の降凰祭》を唱えることは可能。
このデッキについて、使用者であるフェアリーや◆ドラ焼きは次のように教えてくれた。
フェアリー「ループフィニッシュをするデッキではあるけど、ループしなくても勝てるデッキです」
◆ドラ焼き「水闇ゼーロに近しいデッキで、相手の楯に触らなくていいのが大きいです」
最終的には《ツタンメカーネン》を使ったループフィニッシュを目指す。ループに際して(また、ループが可能となるような盤面を実現するのに際して)は《暗闇の裏闇市》が必要となるので、これを引けなかったケースでは殴るプランに移行する。
3ターン目に勝ちの状況を作ってからのループということもあって、4ターン以降を主戦場としているデッキに対しては
フェアリー「(零龍デッキなので)対マジックには先攻なら8割勝ち、後攻は9割負けという感じですが、他の対面にはいける相手が多く使わない理由がないくらいに通りがよかったと思っています」
ただデッキとして使い切るのが難しいのが短所と言えるか。
闇自然ジャガイスト(アビス)
オリジナル環境で強さを誇っている【闇自然ジャガイスト】(アビス)も、今大会のアドバンスで好成績を残している。
ZweiLance デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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マジックに対して強いのは、オリジナルから変わらない。
一方で、アドバンスでメジャーな《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》や《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》などは《アビスベル=覇=ロード》の11000ラインで対処することが出来ず、大型クリーチャーに弱いという欠点があった。
実際に今回使用したZweilanceもその問題が解決しなかったら使用することはなかったとのことだったが、その際に気付いたのが《邪闘 シス》だったという。
Zweilance「《邪闘 シス》はアビスの苦手な大型クリーチャーや、《∞龍 ゲンムエンペラー》まで対処することが出来ました。実際とりさんとの試合の中で、《邪闘 シス》が引けて勝てたんですよね。《邪闘 シス》がなかったら使ってなかったです」
また個人的に印象深いのは、軽く先にも触れたがアーチーが使用した《キャディ・ビートル》入りのリストである。
アーチー/はっちcs デュエル・マスターズ 全国大会2023 日本一決定戦 アドバンス構築 |
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このデッキは天門に《巨大設計図》を打たれると割と敗北するデッキなのだが、その敗因は主にアビスが展開を終える前に天門の展開に追い抜かれる、という部分にある。
しかし《キャディ・ビートル》が建つことでこの時間を生み出す、加えてアビスが先に展開すれば《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》や《謀遠 テレスコ=テレス》によって手札を削ぐことも出来るので、極めて理に適ったリストであった言えよう。
総括
振り返ってみると、「天門 vs 天門に刺さるメタカード(ギミック)」という構造であったように思う。マジックの《赤い稲妻 テスタ・ロッサ》、《キャディ・ビートル》。また卍夜はそもそもデッキ単位で天門に有利だ。逆に天門に不利を被る【4cドラグナー】を選択したプレイヤーは、誰もいなかった。
一方で天門側もそれを崩せるだけの力があり、実際ブラック会社@プレは不利状況も《ヘブンズ・ゲート》のトリガーでしっかり逆転して勝った試合もあったという。強いデッキは強い、といったところか。
アドバンスといえば、4月20日にDMGP2024-1stを控えている。
今回の全国大会を元に、デッキを考えるのも悪くないだろう。
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