超CSⅧ北海道:ローグデッキピックアップ
ライター:清水 勇貴(yk800)
夏真っ盛り。北の大地は野菜だけでなく、ローグデッキも豊作だ。毎度お届けしているローグデッキピックアップだが、これまでもこれからも、カバレージにおけるローグデッキの基準は1つ。本戦時点において1/128のデッキタイプであること、ただそれのみだ。
そういうわけで大会ごとに多寡があるのが自然の摂理なのだが……今回のピックアップデッキはなんと全15品目。多い。多すぎるぐらいに多い。
紙面にも限りがある、早速だが色とりどりの採れたてデッキリストたちを味わわせていただくこととしよう。
【5cザーディクリカ】
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みぎて 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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「4ターン《ロスト・Re:ソウル》」の破壊力、トリガー《ドラゴンズ・サイン》or《ブレイン・スラッシュ》からの切り返し、《真気楼と誠偽感の決断》や《流星のガイアッシュ・カイザー》などの引っ掛け要素……。
次環境でも「意外とやれるのでは?」とまことしやかに囁かれる【5cザーディクリカ】が、環境切り替わり直前の本大会でも活躍を見せた。
みぎて選手の構築において特徴的なのは、《フェアリー・ミラクル》が採用されておらず、初動ブーストがツインパクトか《天災 デドダム》に絞られていることだ。
ゲーム最序盤にクリーチャーを墓地に置ければ、こちらの準備が整う前に《ブレイン・スラッシュ》を踏みに来る動きを牽制できる。
「マナ色の組み合わせ」という観念から自由になれることも無視できないだろう。手札に持っておきたい《真気楼と誠偽感の決断》や《流星のガイアッシュ・カイザー》をキープしつつ5色揃えるのは手札にかなりの負担がかかる。メインの動きにそれほど絡まない火・光の採用枚数を必要最小限に絞れるのは嬉しいところだ。
【水闇自然アマテラスループ】
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ディアノー 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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殿堂施行前最後の大型大会。【ファイアー・バード】をはじめとして最後にひと華咲かせてやらんとするデッキは数多く存在した。《クイーン・アマテラス》を使ったループの元祖とも呼べるこのデッキも、本大会において最後の輝きを放ったデッキのうちの一つだ。
《龍素記号wD サイクルペディア》と《クイーン・アマテラス》を1枚ずつ確保するだけで《クイーン・アマテラス》着地から即座にループに突入できるコンボデッキだが、この度プレミアム殿堂入りが予定される《フォース・アゲイン》がループにおける必須パーツとなっている。
しかし、現在環境で主流なのは自然ではなく光を採用したカラーリングだ。それでもあえて自然を採用する理由を考えると、筆者は《クイーン&かぼちゃうちゃう》の登場が大きな理由となったのではないかと推測している。
このカードが盤面に定着している限り、《クイーン・アマテラス》側はそもそも8マナまで到達させなければ《クイーン・アマテラス》の着地そのものが許されない。除去が必須となるわけだが、そのために5マナを払って《真気楼と誠偽感の決断》を唱えさせられている状況は、リソースとテンポの両面において、【アマテラスループ】にとって非常に苦しい展開となる。
しかし、自然文明を採用していれば、《天災 デドダム》や《ヨビニオン・マルル》で手札リソースをキープしたまま伸ばせる。8マナさえ揃えてしまえば、《クイーン&かぼちゃうちゃう》はなんの障害にもならないのだ。
環境の間隙を突いた本デッキを駆使し、使用者のディアノー選手は見事ベスト8への入賞を果たした。
【光水闇邪眼帝】
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すわ 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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すわ選手が持ち込んだ【光水闇邪眼帝】が希求したのは、徹底的なまでの手札破壊だ。
《冥土人形ヴァミリア・バレル》4枚・《修羅の死神フミシュナ / 「この先は修羅の道ぞ」》4枚の定番パッケージに加え、《~不死の黄昏司祭~》4枚・《汽球男》3枚、さらには《絶望と反魂と滅殺の決断》までもを2枚採用し、40枚のうち実に17枚がハンデス(手札破壊)能力を持つカードで構築されている。
脇を固めるメタ(妨害)クリーチャーのチョイスも特徴的だ。《飛ベル津バサ「曲通風」》と《ポッピ・冠・ラッキー》らは手札以外のリソース活用を制限し、リソース枯渇状態からの脱却を許さない。
《神判のカルマ コットン / ジャッジ・水晶チャージャー》は単体で相手のリソースに干渉できるわけではないが、スピードアタッカーや進化クリーチャーを1ターン止めることでアタックトリガーを使わせない。
無視して強引に展開してきた相手にも、返すターンの《冥土人形ヴァミリア・バレル》や《~不死の黄昏司祭~》でバウンスして相手のテンポを大きく阻害しつつリソースをさらに奪えるのだ。
これらのカードを自在に使い回す《~邪眼帝~》で執拗にリソースを制圧されれば、逆転するのは容易ではない。
最終的にはメタクリーチャーで盤面をガチガチに固めた状態で1枚ブレイク→ハイパー化でタップしておいた《~邪眼帝~》でハンデスクリーチャーを出し入れしてじわじわと相手を詰め切る。墓地からクリーチャーを出す手段も多く、多少のメタ除去には屈しない。総じて、粘り強いメタコントロールデッキだと言えるだろう。
【ゴルギーオージャー】
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ヘブンズニート 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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Q.「『王道W』ブロックを代表するデッキといえば?」
筆者がそう問われたとしたら、このデッキをおいて他のデッキを挙げることはできないだろう。NEO進化とフュージョナーの申し子、それが【ゴルギーオージャー】だ。
ヘヴンズニートが使用したこのデッキは、独特の立ち位置を持つアンフェアコンボデッキだ。リソース補給手段に長けていてメインの動きの再現性が高く、かと思えば《ソウルサンライト コハク》を起点に《一音の妖精》や《~西方より来る激流の竜騎公~》といったカードを載せることで多くのデッキに対して1ターンをもぎ取ったり、相手のメタに対しても《華謡の精霊カンツォーネ》で対応できる。
一方で個々のカードパワーは低く、シナジーを潰されてしまえばデッキがうまく機能しないこともしばしばある。特に進化元の除去に対してはかなり苦戦を強いられるだろう。
また、《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》の自己軽減が展開の要となる都合上、《クイーン&かぼちゃうちゃう》は非常によく刺さる。もちろん《華謡の精霊カンツォーネ》で除去こそできるが、ほぼ同速で走ってくるようなデッキに対してはその1手が致命的になるのは間違いない。
「ヒロインBEST」の発売以降は単純に速度負けする【サイバー】と莫大なリソースを稼ぎながら《クイーン&かぼちゃうちゃう》をついでに着地させ速度の上でも遜色ない【自然単キャベッジ】の隆盛でやや下火となっているデッキタイプだ。
ヘヴンズニート選手が持ち込んだ構築で目を引く点は、《セイレーン・コンチェルト》と《USHI和歌轟-8》の採用だろうか。
《セイレーン・コンチェルト》は小回りの利くマナ回収としてベストに近い選択肢だ。特に初手に来た《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》をマナに埋めて2枚目が引けない展開において非常に便利な1枚となる。
《ソウルスカーレット アカネ》がマナに触る手段を担っている場合が多かったが、何らかの手段で直接進化クリーチャーの下に入れたうえで1ターン生き残る必要があったため、より確実性の高いこちらに枠が移行するのは頷ける。
《USHI和歌轟-8》は《MATATA-美吾罪261》と散らして2枚採用されている。
パワーではなくコストを参照するため《クイーン&かぼちゃうちゃう》にもリーチでき、当たり先がいなくとも自分自身をマナゾーンに置いてブーストを進められ、トリガーとしても機能する。一方で、ブーストか除去のどちらかしかできず、ブーストとして使った場合は盤面にも残せない。近しい役割ながら少しずつ対象が異なるため、分散採用も納得だ。
【暴徒ループ】
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デドダム藤井 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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今回紹介するデッキの中で、筆者としては最も「ローグデッキらしいローグデッキ」だと感じたのが本デッキだ。
【暴徒ループ】は、《ビシャモンス・デーケン/「深淵より来たれ、魂よ」》1枚が墓地にある状態で、《暴徒-da-bummer》と2枚目の《ビシャモンス・デーケン/「深淵より来たれ、魂よ」》をバトルゾーンに揃えて、メガ・ラスト・バーストによって2枚の《ビシャモンス・デーケン/「深淵より来たれ、魂よ」》で相互に蘇生ループを行うコンボデッキ。
間に何らかの追加自壊手段を挟むことで他のクリーチャーを巻き込むのが常套手段であるが、本構築で採用されているのは《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺》。
2体の≪ビシャモンス・デーケン≫をぐるぐる回す際、自壊先を自分自身ではなくこちらにすることで、バトルゾーンのクリーチャーをすべて吹き飛ばしてから≪「深淵より来たれ、魂よ」≫で豪快に蘇生を行える。
この過程で全てのクリーチャーの登場時能力およびメガ・ラスト・バーストが好きに使用できるため、《終止の時計 ザ・ミュート》や《裏斬隠 テンサイ・ハート》、《情熱の薔薇 メーテル / 神にも届く歌声》の手札入れ替えで《冥土人形ウォカンナ・ピエール》を引いて捨てることでループに取り込み、相手の山札を全て削り切るのが主なフィニッシュ手段だ。
ループギミック自体は3枚コンボだが、間に他のカードも挟みたいことを考慮すると、実際に必要なパーツはもう少し多く、自分の動きでのコンボ成立は5〜7ターン前後と早くない。しかし、このデッキの特徴はコンボデッキとしては非常に高い防御力にある。
手札入れ替えパーツである《裏斬隠 テンサイ・ハート》と《終止の時計 ザ・ミュート》、シールド回収役の《情熱の薔薇 メーテル / 神にも届く歌声》、フィニッシャーである《冥土人形ウォカンナ・ピエール》は全て受け札を兼ねているし、《忍蛇の聖沌 c0br4》+《アーテル・ゴルギーニ》のパッケージも無理なく採用できる。墓地が十分に足りていれば《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺》も極めて凶悪な全体リセットトリガーだ。
そして、クリーチャートリガーやウラ・ニンジャ・ストライクで出たクリーチャーのカウントをズラせば、不意打ちで《真気楼と誠偽感の決断》の踏み倒し条件を満たすこともできる。
手札入れ替えにメタクリーチャー除去、そして《忍蛇の聖沌 c0br4》蘇生から《アーテル・ゴルギーニ》、さらに《暴徒-da-bummer》+≪ビシャモンス・デーケン≫のペアまで一気に揃えられる一発フィニッシュコンボ突入すら視野に入る、このデッキのマスターピースだ。
《深淵の逆転撃》もシンプルな防御札でありつつ、このデッキにとって致命的な≪支配の精霊ペルフェクト≫を後腐れなく排除できる貴重な手段だ。
これらの受け札をすべてケアするのは、もしかすると不可能ではないかもしれないが……とにかくありとあらゆる方向から絡め取ってくるこのデッキ、初見での対応は非常に難しいだろう。まさにローグデッキの「王道」をこの大会で見せつけたと言える。
使用者のデドダム藤井選手は北海道の地で長くこのデッキを愛用し続けているという。その研鑽に脱帽だ。
【光水自然ゴスペル】
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醤油せんべぇ/徒歩旅 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
1つのデッキを長く使い続ける、という点では醤油せんべぇ/徒歩旅選手の【光水自然ゴスペル】も引けを取っていない。
《エンドレス・フローズン・カーニバル》とツインパクト持ちスノーフェアリー5枚を《水晶の王 ゴスペル》で使い回して相手のマナと盤面を封殺し、勝利を目指すコンボデッキだ。
「スノーフェアリーかつツインパクト」のカードを一定数採用したいという厳しい制約もあって個々のカードパワーはやや低いものの、受け札やメタカードが豊富かつ種類が分散しているおかげで相手目線に立った時に適切な対応がわかりづらく、それらを《水晶の王 ゴスペル》のリソース力でバックアップすることでデッキとして成立している。
筆者の所感としては、《理想と平和の決断》は本デッキにおけるベストカードだと言えるだろう。メタ除去にリソース補充にシールド追加にと、どれを取ってもこのデッキにはありがたい能力で、革命2によるS・トリガー化も非常に心強い。
スノーフェアリーはデュエマ開発チームの(というかProf.キャロットの)「推し」種族ということもあり、今後の拡張にも期待できそうなデッキだ。
【水単ビスマルクチェンジ】
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ざおまる 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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《アストラル・ハート》で強化されたのは何も【サイバー】だけではない。
3ターン目の《~西方より来る激流の竜騎公~》成立にデッキの全てを注ぎ込んだこのデッキで、ざおまる選手は見事に予選を駆け抜けた。
進化元こそ必要だが、《~西方より来る激流の竜騎公~》はわずか3マナにして3枚も公開領域を広げながら、コスト5以上のドラゴンで即座に攻撃できる。そうなればやることは1つ。革命チェンジだ。
このカードから《未来の法皇 ミラダンテSF》に繋ぎ、《審問の絆》で追加2ドローしながら《∞龍 ゲンムエンペラー》へアクセス。脅威の「3tゲンム」をそれなりの実現性でやってのけるのがメインとなるギミックだ。
序盤のドローソースはサイバーのそれを踏襲し、《アストラルの海幻》と《アストラル・ハート》が2マナの進化元でありつつ山札掘削要員として2種8枚のフル採用。そこで《~西方より来る激流の竜騎公~》が引けなかったとしても、《アストラル・リーフ》や追加の《アストラル・ハート》でガンガン山札を掘り進め、貪欲にコンボ成立を狙っていく。
とにかく攻撃的なデッキではあるが、数少ない受け札として採用される《ルード・ザーナ》が目を惹く。踏ませれば一気に相手のクリーチャーを押し返しつつ、返すターンにはチェンジ元として機能する非常に優秀なカードである。
活躍が見込まれる《超神羅星アポロヌス・ドラゲリオン》相手に確実に1ターンをもらえるトリガーとして、新殿堂後の活躍にも注目の1枚だ。
【オボロティガウォック】
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きりがし 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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昨年末付近からの新規戦力ラッシュで密かに、しかし着実に強化を重ねているデッキタイプが【オボロティガウォック】だ。
きりがし選手の持ち込んだ【オボロティガウォック】は一般的にイメージされる多色マシマシデッキとは異なり、【水闇自然ハイパーエナジーwithオボロティガウォック】とでもいうべき構成となっている。
4〜5ターン目に1マナないし2マナを浮かせた状態で《月光電人オボロカゲロウ》+《絶海の虎将 ティガウォック》のコンボでハンドリソースをきっちり整え、残ったマナで引き込んだ《「特攻」の鬼 ヨミノ晴明-1.0》や《飛翔龍 5000VT》による妨害を仕掛け、強い盤面を崩させないまま次のターンを迎えるのがメインの狙いとなるだろう。
フィニッシャーとして採用された《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》と《ドリーム・ボルメテウス・ホワイト・ドラゴン》はどちらもハイパーエナジーによる自己軽減で軽く登場できるため出すためのカードに枠を割かず、コンパクトに相手のリソース奪取とフィニッシャーを兼ねられるのが魅力だ。
多くの構築に《ハンプティ・ルピア》が採用されるピーピングハンデス枠に《「特攻」の鬼 ヨミノ晴明-1.0》が採用されているのは大きな特徴で、そこだけに限らず3色カードの採用は意外なほどに少ない。
いざ数えてみると、火文明のカードの採用は9枚、光文明の採用枚数は8枚にとどめられている。序盤の動き出しでの事故を避けようという意思が強く感じられるデッキリストだ。
【火光水ゴスペル】
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Aotori 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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《水晶の王 ゴスペル》デッキとして主流の火文明採用型だが、本大会においての予選突破数は1件にとどまった。
Aotori選手の【火光水ゴスペル】は基本に忠実な構成だが、多くの構築で《オリオティス・ジャッジ》が採用されている枠に、《極閃呪文「バリスパーク」》が採用されている。刺さる相手が限られがちな《オリオティス・ジャッジ》よりも、幅広い相手にターンをもらえるスパーク呪文が優先された形だろうか。
また、《キリモミ・ヤマアラシ》を1枠《赤攻銀 サハラン/レッド・マジック》に譲っているのも面白い。コスト軽減がなく先撃ちもできないため動き出しのカードとしては心許ないが、上面が墓地回収持ちのツインパクト・クリーチャーであるのがキモだ。
このカードは、状況次第でミニ《水晶の王 ゴスペル》として機能する。
呪文デッキ相手に《ファイナル・ストップ》の使い回しでロックを継続したり、バトルゾーンに攻撃できる《水晶の王 ゴスペル》があれば《月下卍壊 ガ・リュミーズ 卍》を回収して追加ターンを取ったりと、1枠で柔軟性を高められるカードチョイスだと見受けられる。
【呼び声ボルシャック】
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トロンベ 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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昨年のGP-2ndでは台風の目となったこのデッキも、環境の変遷に伴い立ち位置を落としている。
トロンベ選手の構築はカードチョイス自体に目立った部分は存在しないものの、《ボルシャック・栄光・ルピア》が不採用・《ボルシャック・ドラゴン / 決闘者・チャージャー》の採用が2枚にとどまり、《メンデルスゾーン》と《ネオ・ボルシャック・ドラゴン / ボルシャックゾーン》の2コスト初動に8枚を割いているのが特徴的だ。
リソース面ではやや不安定なものの、《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》を引き込んだ際に3ターン目での見切り発車を行えたり、3ターン目から攻めてくる相手に対して、後手2ターン目をできる限りパスしないことで拾える試合を拾えたりと、メリットも相応に大きいのは間違いないだろう。
【マッド・デッド・ウッド】
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咲くSAKU 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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《真気楼と誠偽感の決断》+《逆転の影ガレック》のギミックは多数のデッキに強化をもたらしたが、咲くSAKU選手が使用したこのデッキもそんな中のひとつだ。
採用されたS・トリガー、実に20枚。攻めるデッキを弾き返すのにこれほど長けたデッキは他に類がない。
受けのバリエーションも豊富で、確定除去にパワー低下振り分け、ターンスキップに多面確定除去、コスト依存のバウンスなど通り一遍のケアは通用しない。
《異端流し オニカマス》はメタを除去しながらループしようとするデッキに対して選ばれない能力が光り、無視してビートプランを取ってくる相手は無限のトリガーで絡め取る。隙を生ぜぬ2段構えだ。
最終的には《Dの妖艶 マッド・デッド・ウッド》のDスイッチで相手の盤面を流しつつ、こちらは大量の打点と《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》を踏み倒して走らせるか、《水上第九院 シャコガイル》《逆転の影ガレック》や《天災 デドダム》を出して墓地リセット→山札削りの順で解決することで、確実な勝利を得られるだろう。
《逆転の影ガレック》の殿堂入りによりそのままの形でこのデッキが生き残ることは難しいだろう。しかし、《異端流し オニカマス》+強固な受けギミックという構成は、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を主軸に据えた【サイバー】をはじめとした多くの踏み倒しコンボ系デッキに対するアプローチとして興味深い。
このアイデアが次なる環境デッキの火種となるかもしれない。
【無色ジョーカーズ】
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光るバナナ 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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採用カード、わずかに12種。非常にシンプルなデッキリストの【無色ジョーカーズ】とともに戦い抜いたのは光るバナナ選手だ。
そのデッキ構成も、極めて基本に忠実。
《夢の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》をサポートできる《シャダンQ》こそ1枚採用されているが、その1枚採用を除けば、総じて【無色ジョーカーズ】の王道ど真ん中を突っ走る構築だ。
多色デッキに対する《ジョリー・ザ・ジョニー Final》や、《王道の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》+《夢の弾丸 ジョリー・ザ・ジョニー》によるロックフィニッシュ、《勝熱と弾丸と自由の決断》を活かした細かい除去でのボード優位形成……。
強みは枚挙に暇がないが、その一方でデッキの出力をシナジーに強く依存しているため、初動をこかされると一気にテンポが損なわれるデッキでもある。
強いて挙げるならば、最有力と目されるデッキ群の中で《飛翔龍 5000VT》を採用するデッキが【アマテラスループ】以外にないことは、明確なポジションの向上に繋がっていたかもしれない。
何はともあれ、新旧BEST種族が支配する現オリジナル環境でジョリー・ザ・ジョニーとともに自由を謳歌せんとした、その男気に賛辞を送りたい。
【火光水庵野チェンジ】
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たなかたろー 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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たなかたろー選手が使用した【火光水庵野チェンジ】。
俗に【ラッカ庵野】として知られるこのデッキは、Jack-Potのメインボーカル、《庵野水晶》を主役に据えた特殊なコンボデッキだ。《真気楼と誠偽感の決断》が登場した時期にデッキが成立し、一時は環境上位にも食い込んだものの、直近では見かける機会が減っていたデッキでもある。
《庵野水晶》の攻撃時能力を待機させたまま先に革命チェンジを解決し、その後待機させた攻撃時能力で《庵野水晶》を手札から踏み倒す呪文を唱えれば、革命チェンジクリーチャーの打点と登場時能力を丸々得しつつ、《庵野水晶》が2ドローしながらまた攻撃できるようになる。
《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》のクリーチャー側で呪文ロックを仕掛けるだけで受からない相手なら、そのまま《庵野水晶》+革命チェンジ+踏み倒し呪文のコンボを繰り返し、雪崩のように押し寄せる打点で勝利できる。
それだけでは不安な相手であっても、《ドラゴンズ・サイン》+《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》や《時の法皇 ミラダンテⅫ》で呪文+クリーチャーロックを形成できればまず負けないだろう。
《転生スイッチ》や《真気楼と誠偽感の決断》のシールド送りを絡めたアタックキャンセルを繰り返しつつ《庵野水晶》の登場時能力だけ何度も使ってどんどん山札を掘り進めれば、相手のシールドに突っ込まずにパーツを手札に揃えることも夢ではない。
一般的には手札の減りづらいブーストとして《R.S.F.K. / オールイン・チャージャー》が採用されている枠に、軽量除去として有力な《ボイル・チャージャー》が採用されている点は見逃せない。コスト依存の除去ということで《クイーン&かぼちゃうちゃう》をテンポ良く除去できるのはもちろん、タマシードやフィールドも除去できる点が環境によくマッチしている。
そして、このデッキもまた《ルード・ザーナ》デッキであることには注目したい。【火自然アポロヌス】と【ファイアー・バード】が同時に存在する環境を攻略するうえで、やはりこのカードは見逃せない存在だ。
【ジャスティスループ】
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老眼鏡 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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《聖霊左神ジャスティス》がこの世に生を受けて足掛け13年。競技環境に【ジャスティスループ】が現れてから約8年。
《真気楼と誠偽感の決断》が成立を支えたデッキは数知れないが、現代に甦った【ジャスティスループ】もまた、このカードの存在なくしてはありえないデッキだと言えるだろう。
詳細な手順を書いているとそれだけで1本の記事になってしまうため割愛させていただくが、簡単に言えば《真気楼と誠偽感の決断》で《フォース・アゲイン》や《ウェディング・ゲート》+《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》の呪文面で何度も《聖霊左神ジャスティス》の能力をストックし、最終的に相手にドローを強制する呪文を何度も使い回して勝利を目指す。
一度唱えた呪文は《爆藍月 Drache der’Zen》で墓地から《真気楼と誠偽感の決断》を唱えて山札に戻し、山札から呪文を唱えられる《聖霊左神ジャスティス》と交互に解決することで山札切れをカバーしつつ好きな呪文を繰り返し使うフィニッシュが現在の【ジャスティスループ】のトレンドだ。
このデッキもコンボパーツのことごとくにS・トリガーと書かれており、とにかく防御力が高い。《ドレミ団の光魂Go!》に至ってはいわゆるスパーク系トリガーなのだから、序盤に押し切られて負けることはまず考えずともよいだろう。
メタカードへの干渉は得意とは言えないが、《♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》と《真気楼と誠偽感の決断》で最低限「詰み」になりにくいのは評価点だ。
とはいえ、このデッキがローグデッキたる所以は環境の立ち位置でも知名度でもなく、そのループ手順の難しさだろう。筆者の主観ではあるが、保留領域まで念頭に置いて回さなければならない【ジャスティスループ】の煩雑さは、アドバンスの【水光天門】における《真気楼と誠偽感の決断》ループをも遥かに凌ぐ。
《フォース・アゲイン》のプレミアム殿堂によって明確に被害を受けるデッキではあるが、ループ手順がさらに複雑化するだけで、デッキタイプ自体が成立しなくなるわけではない。ループ捌きに覚えのあるものは挑戦してみてはいかがだろうか。
【光水エンジェル・コマンド】
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Ruru. 超CSⅧ 北海道 オリジナル構築 |
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最後に紹介するのは、最新セット「愛感謝祭 ヒロインBEST」で大幅な強化を得た【光水エンジェル・コマンド】。
Ruru.選手の構築は純正も純正、なんと40枚のうち31枚がヒロインBEST収録カードなのだから筋金入りだ。
その他のパーツとして採用されているのは、《華謡の精霊カンツォーネ》や《聖霊王アルファリオン》など。そのほとんどが直近半年のうちに収録or再録されており、非常に手に入りやすいカードたちでリストが構成されている。
そんな中で異彩を放つのが、《赤翼の精霊エルラ・ルージュ》だ。
相手クリーチャーの攻撃後に選んだクリーチャーをタップできるこのクリーチャーは、攻撃時に展開を作ってくるデッキに対してめっぽう強い。すなわち、《ハッター・ルピア》であり、《龍后凰翔クイーン・ルピア》であり、《愛銀河マーズ・シンギュラリティ》だ。
【ファイアー・バード】は、攻撃時の展開をギミックの要としている。これらのクリーチャーの攻撃時に出てきたクリーチャーを狙いすましてタップできれば、追加の展開を大きく抑止できることは間違いない。
また、この能力は《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》とセットで並んだ際にも有用だ。カードを実行したら攻撃ができなくなるためバトルゾーンにあるクリーチャーで攻撃するしかないが、その際に《赤翼の精霊エルラ・ルージュ》が横にあれば、突破は困難を極めるだろう。
カードパワーで見れば最適とは言えないかもしれないが、このカードにしかできない役割は確かにある、実に味わい深いカードチョイスだと感じた。
まとめ
というわけで、駆け足ではあるが本大会のローグデッキピックアップはこれで全てだ。いずれ劣らぬ創意と熱意が感じられる、「美味しい」デッキリストたちが揃っていた。もちろん、今回筆者が読み取ったのはデッキリストの表層部分のみ。まだまだ隠された工夫や意図は存在しているだろう。
しかし、特に本大会においては、やはり「【ファイアー・バード】と【火自然アポロヌス】」というビートダウンの急先鋒2デッキに対してどう向き合うかがそれぞれのデッキの命題となっていたことを疑う人はあまりいないのではないだろうか。
もちろん例外はあるが、今回見ていったデッキはそのほとんどが下記のいずれかに分類された。
1.受け札が豊富で《真気楼と誠偽感の決断》による初見ハメを有する、中速トリガーコンボデッキ
2.トップ級のカウンター性能を持つ《ルード・ザーナ》を活用できる、水入り革命チェンジデッキ
3.シナジーが強固で回れば手が付けられない、種族コンセプトデッキ
新殿堂で変わる環境の最後に、プレイヤーたちが出した無数の答えに敬意を表し、今回のローグデッキピックアップは結びとさせていただく。
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