ライター:伊藤 敦(まつがん)
SNSの発達で情報共有の速度はあっという間となった。
記事や大会結果でデッキリストが公開されれば瞬く間に拡散し、次週の大会に持ち込まれる。最近では「水闇コンプレックス」が良い例だろう。勝ち馬に乗れば少なくともデッキパワーの保証がある。効率の良いデッキ選択だ。
だが、そうした流れに抗う者たちもいる。何の保証もない暗闇に、自らの足で一歩を踏みだそうとした者たちが。
ここではトップ128まで勝ち残りつつも、その中で使用者がそれぞれ1人しかいなかった、そんな勇敢なる
13種のローグデッキについて紹介しよう。
たいし:光闇メカ
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たぃし
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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「アビス」や「マジック」とは異なり、「メカ」についてはテンプレートが固まりきっていない部分がある。そうした中でこのデッキは実質光単のいわゆる「成長」軸でデザイナーズに従って非常にシンプルかつ自分の動きを重視してとことんシャープに組まれながらも、環境的に強い動きを一本太い筋として通し、Tier上位デッキ相手にもしっかりと勝機を見出せる構造となっている。
キーカードとなっているのはやはり《鎧機天 シロフェシー》だろう。「G・ゼロ」で出した《忍瞬の聖沌 53nju》からの急襲は実際多くのデッキにとって脅威となる。「メカ」という種族が持つポテンシャルは、まだまだ過小評価されているのかもしれない。
蕨___:クランヴィアカクメイジン
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蕨___
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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あまりにも夢、あまりにも祭り。《氷牙要塞クランヴィアV世》からの《芸魔王将 カクメイジン》という誰しもが一度は考える欲張りルートをここまでしっかりと形に仕上げてきたデッキ構築力には脱帽というほかない。
5マナからの発進時に《終末王秘伝オリジナルフィナーレ》で7マナに伸ばしながら《ロスト・Re:ソウル》につなげる動きはあまりにも賢い。さらに現状あまり見かけないが、《デーモン・スパーク》は1点目で踏まれても5点目で踏まれても強く使える、環境のソリューションの一つかもしれない。
POZ:ナイト
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POZ
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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誰か!専門家の方を連れてきて!!……今回カバレージ班が裏で最も盛り上がっていたトピックの一つは間違いなく「ナイト」の決勝ラウンド進出だ。昨年も「頂上決戦!!デュエキングMAX 2023」で《真紅の魔光大帝ネロ・グリフィス・マイヤー》を手に入れており、制圧力に磨きがかかっている。
毎年ちょっとずつ強化されたりされなかったりを繰り返しているアーキタイプだが、真面目に研究している人が少ないだけで、実はとっくに閾値を超えているのかもしれない。わからん殺しを狙うならうってつけのデッキと言えるだろう。
HA★GA:ボルシャック
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HA★GA
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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力こそパワーである。「ありとあらゆる角度から盤面を滅茶苦茶にする」という強い意志が感じられるリストで、本当にどこからでもボルシャック祭りが開催される。ひとたび展開を許せば、対戦相手は月の裏側までぶっ飛ばされることだろう。
《聖竜ボルシャック・ウルフェウス》からの《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》はオーバーキルに見えて、《ボルシャック・スーパーヒーロー / 超英雄タイム》や《「必然」の頂 リュウセイ / 「オレの勝利だオフコース!」》などを唱えてメタクリーチャーを除去してから安全に《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》を着地させるプランもとれる。ボルシャック踏み倒し一芸ながらも奥が深い構築だ。
BitMEX:闇単ゼーロ
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BitMEX
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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2週間前の超CSⅥ福岡で示されたのは、《∞龍 ゲンムエンペラー》の環境的な強さだった。ならば、それだけに向けて全力を振りきった構築が出てきてもおかしくはない。だが、ここまでの全力が出せるとは誰が予想しただろうか?
ひたすらに再現性を追求した「手札が減らない2コスト闇クリーチャー」16投は、《闇王ゼーロ》を引けない場合でも「ムゲンクライム4」素出しをも可能にする。闇単ながらもたった数枚の《秩序の意志》を妥協で採用することすらも許さない強い信念こそが、決勝トーナメントへの道を切り開いたのだ。
ナメプ~助:水闇自然デッドダムド
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ナメプ~助
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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「水闇自然ジャオウガ」の《キユリのASMラジオ》は強力だが、「水火マジック」が《歌舞音愛 ヒメカット / ♪蛙の子 遭えるの何処?好きと謂ひて》をフル搭載した時点で、3コスト以下のメタクリーチャーを並べるという構造そのものが攻略されきってしまった感がある。ならばと「革命チェンジ」に対する「ガイアッシュカウンター」に振りきって成功を収めたのがこちらのリストだ。
《流星のガイアッシュ・カイザー》をマナ置きで見せないための3投に《五郎丸コミュニケーション》を足しての実質4投という構造がまず美しく、「闇単アビスロイヤル」隆盛を見越した《龍素記号Xf クローチェ・フオーコ》の採用もセンスが光る。《アーテル・ゴルギーニ》からの《虹速 ザ・ヴェルデ》などは鼻血モノだ。CSにいないから、誰も使っていないからといって、環境で通用しないというわけでは決してない。《SSS級天災 デッドダムド》の華麗な復活劇でもってそのことを示してくれたナメプ~助には、心からの拍手を送りたい。
こっちゃー:水闇自然DOOM
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こっちゃー
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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「ガイアッシュカウンター」という思想は同一ながらも、また別のアプローチをとった者もいる。デッキビルダーとして知られるこっちゃーは、「エンド前《流星のガイアッシュ・カイザー》、自ターン《超神星DOOM・ドラゲリオン》からの《終末縫合王 ザ=キラー・キーナリー》」というコンセプトを軸にしたデッキで、その名声を再び確固たるものとして見せた。
「《ハニー=マーガニー / 「こっちは甘いぞー」》などの能動的な墓地肥やしによって、枚数を減らして散らした《アーテル・ゴルギーニ》の蘇生先を選択肢としてあらかじめ確保する」というアプローチは、さらに蘇生先を《同期の妖精 / ド浮きの動悸》《ボン・キゴマイム / ♪やせ蛙 ラッキーナンバー ここにあり》といった上下ともに有用なツインパクト・メタクリーチャーにすることで、デッキのスロットを極限まで圧縮できる。今後覚えておいて損はない構築テクニックだ。
つかえないやつ:アバク墓地ソース
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つかえないやつ
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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さらに同じ「ガイアッシュカウンター」でも最も異端なアプローチをとったのがこちらの「アバク墓地ソース」。闇火自然ベースで素出しが難しい分、墓地肥やしで落ちない限り初見でこのデッキの《流星のガイアッシュ・カイザー》を警戒するのはかなり難しいだろう。
見た目以上の受けの硬さはもちろん、多様な詰ませ札に代表されるような能動的なゲームプランをもいくつも持ち合わせており(「《アーテル・ゴルギーニ》召喚、8枚墓地肥やし」は言ってみたいセリフだ)、あらゆる角度で相手の読みを狂わせられるという点で非常に実戦的なデッキだ。
ろりす:光水火ゾージア
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ろりす
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》といえば7軸に統一して《ガチャンコ ガチロボ》を採用することで出力を確保した形が有名になったが、手札補充に難があり、安定してロックを継続することが難しかった。
そこで《アカシック・ファイナル》への原点回帰は、4ターン目以降《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》と《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を投げ続けるという点でコンセプトの一貫性が保てるため、デッキの強度という点ではむしろ必然だったのかもしれない。一発勝負では最大出力が求められ、長丁場では再現性が求められる。両立したいなら、フィニッシュターンを変えないままアクセスできる枚数を増やすしかないのだ。
よしまる:光水火ライオネル.Star
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よしまる👹
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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環境に対する《アルカディアス・モモキング》の通りの良さについてはしばしば取り沙汰されてきたところではあるが、同時に《アルカディアス・モモキング》を出すコンセプトが環境にマッチしていないという矛盾も抱えていた。進化クリーチャーを使うコンセプトは小回りが利かず、おまけに受けも弱くなりがちだからだ。
だが、《奇天烈 シャッフ》と《スロットンの心絵》との併用はそうした問題を解決した。それでもこれまでなら4枚しかない《スロットンの心絵》を抱えながら4枚しかない《エヴォ・ルピア》から4枚しかない《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》を出す再現性はそこまで高くなかったが、《氷柱と炎弧の決断》の加入がアンバランスなマナベースの問題を解決しつつあらゆる不可能を可能にした。「水闇自然ジャオウガ」の沈没とそれに伴う《飛翔龍 5000VT》の減少は、思った以上に過去の様々なアーキタイプに浮上するチャンスを与えたようだ。
Amatsukaze:5Cコントロール
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Amatsukaze
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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5Cコントロールも根強いファンがいるデッキだが、Amatsukazeのリストにはこのアーキタイプが構造的に抱える「3→5→7」依存という課題、そこからの脱却という挑戦的なテーマが見え隠れする。
《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》で能力を奪われるリスクを冒してまで《ロスト・Re:ソウル》ではなく《悪魔龍 ダークマスターズ》を採用しているのは、6マナ手打ちの《ブレイン・スラッシュ》を強く使う意図があるのではないか。表の《ブレイン・スラッシュ》、裏の《流星のガイアッシュ・カイザー》。しばしばタップインしがちな7マナ目をマナカーブに据えずに、あえて《天命龍装 ホーリーエンド / ナウ・オア・ネバー》《ドンドン火噴くナウ》の次の6マナをキーにするための構築は、5Cコントロールというアーキタイプに深く向き合ったことの証左と言えるだろう。
すぱろー:蒼龍コントロール
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すぱろー
超CSⅥ 群馬 デッキリスト
オリジナル構築
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対し、「カードを散らしつつすべてのゾーンにアクセスできる構造をとる」ことで問題解決を図っているのがこちらのリストだ。「いつ」「どこから」「何が」飛んでくるのかわからなければ、最適なケアなどしようがない。ましてそれが、時間制限がある上に緊張感マックスの大舞台ならばなおさらだ。
予選通過人数の最多が「フィオナアカシック」だった今大会では、1枚差しの《DG-パルテノン ~龍の創り出される地~》は何よりも心強いお守りだったことだろう。ただ選択肢が多いということは、自分の側も見えている選択肢は常に検討しなければならないということ。熟練の実戦経験がなければ使いこなせないであろう専用機は、本当の意味でローグデッキと呼ぶのに相応しいだろう。
ドラポ:光水火マナ退化
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ドラポ
超CSⅥ 群馬 TOP8デッキリスト
オリジナル構築
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そして最後に、ローグデッキ使いの希望の星がトップ8にまで勝ち上がったドラポの「光水火マナ退化」だ。《同期の妖精 / ド浮きの動悸》が各所から飛んでくる中で、「退化」で成功を収めたのはまさしく偉業と言えるだろう。
意外なのは、2マナ域のサーチカードがかなり薄いこと。最速で3ターン目に無理に決めにいくよりも4マナ時の選択肢を《飛翔龍 5000VT》と《蒼狼の大王 イザナギテラス》からの呪文で厚くとっており、『水火マジック』以外に早いデッキがいないという環境の構造を読みきった大胆なデッキ選択と合わせて、あまりにも強心臓というほかない。
ドラポの大型大会でのアベレージの高さの秘訣は、的確なメタゲーム分析からソリューションに必要なデッキや構築を環境の大外から見つけだしてくる視野の広さと、どのようなデッキも使いこなせる地力の高さにあるに違いない。