超CSⅧ大阪 Round 2:チーム村井 vs. とらリルちたん
ライター:伊藤 敦(まつがん)
撮影:瀬尾 亜沙子
チーム戦なので参加チーム自体は3分の1になるとはいえ、総数としては約3500名が参加というほぼグランプリのような規模となった今回の超CSⅧ大阪。そこには、多くの意味が込められている。2025年度前期のDMPランキングをいままさに走っている者にとっては、優勝による日本一決定戦出場権の獲得、あるいは上位入賞で大量ポイント獲得による逆転のチャンス。後期のランキングをこれから走ろうと思う者にとっては、優勝によりその労を節約できるチャンス……そして何よりデッキビルダーにとっては、殿堂施行後一発目の大型大会ということで、自らの存在を全国に向けてアピールできる貴重な機会でもあるのだ。
何しろ現在のオリジナル環境は、そうしたデッキビルダーの登場を期待したくなってしまうほどには、大会開始前の段階で圧倒的な一強環境と目されている。「サイバー」……「愛感謝祭 ヒロインBEST」でフィーチャーされたこのデッキは、1年前の「ファイアー・バード」登場の歴史をなぞるように、瞬く間にして最強デッキの座に昇りつめた。ちょうど2週間前、殿堂施行前かつ《愛銀河マーズ・シンギュラリティ》を手に入れフルパワーの「ファイアー・バード」が使えた超CSⅧ北海道においてすら、「サイバー」ミラーの決勝戦が実現していたのだ。ならば殿堂施行後にどうなるかは……想像に難くないだろう。
そしてその想像の通り、最強の「サイバー」を最強のままに使い倒すことを選択したチームがあった。3人ともデュエチューブリーグではflat-gamingの一員としてリーグを戦っている、今大会ではチーム村井として出場の村井、はるる、るるるだ。8月23日時点で前期ランキング3位に名を連ねるはるるはもちろん、村井もるるるも実力派のプレイヤーとして知られている。そんなデュエマ界のトッププロたる彼らの選択が、あまりにもデジタルな「サイバー」3面なのだ。
対し、1回戦目を勝利し、そのチーム村井の対戦相手としてフィーチャーマッチエリアに呼ばれたのはとらリルちたんの3名。とら、とらのこちたん、月野リルという地元関西のプレイヤーたちによって結成されたチームだ。……だが、呼ばれ慣れていないであろうフィーチャーマッチエリアに来ても、彼らの表情に緊張はない。むしろ有名なプレイヤーを序盤で倒し、勢いをつけてやろうという挑戦的なムードすら感じられる。
勝つのは最強か、挑戦か。ここではA卓、村井VSとらの対戦をお送りしよう。Game
じゃんけんで先攻は村井。はるると初手を相談しながら《疾封怒闘 キューブリック》をチャージすると、とらが素早くチームメイトに報告する。とら「あー、サイバーだねぇ。3面か」
その声色には慌てる様子はない。当然この大会に参加すると決めた時点で、3人それぞれが最も多く当たるであろう「サイバー」に抗しうる術を用意してきているはずだからだ……しかしそれを受けてのマナチャージは、まさかの《スロットンの心絵》!?もし「光水ライオネル」だとするならば、ループが主な勝ち手段である「サイバー」に対しては受けの堅さは機能しない。何かシークレットテクがあるのか。
一方、村井はマナ埋めについて逐一B卓のはるると相談しつつプレイを進める。その間にもC卓のるるるは独りでプレイを進めており、「サイバー」のプレイ歴が浅い村井をサポートしたいというチームの方針が明らかとなる。そのまま村井は《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》チャージから《アストラル・ハート》を召喚し、《マクスハト》への伏線とする。
だが、《ジェニーの黒像》をチャージしたとらは予想外のカードを唱える。《サイバー・K・ウォズレック / ウォズレックの審問》!
そう、とらのデッキは「光水闇ライオネル」。《マクスハト》《ハッター・ルピア》といった3ターン目のビッグアクションを先攻後攻問わず2ターン目の手札破壊で咎められる形だ。さすがに《スロットンの心絵》をチャージしたデッキから2ターン目にピーピングハンデスが飛んでくるとは想定しづらいため、もし村井が《マクスハト》を《アストラル・ハート》で山札の上に隠さず抱えていたならば致命傷となりかねないという、死んだふりからの見事な奇襲だ。しかし、村井が開いた手はとらの予想を超えるものだった。《マクスハト》《マクスハト》《昇カオスマントラ》!これだと返すターンに《アストラル・ハート》を戻しながらの「メクレイド」が確定しているため、やむなく《昇カオスマントラ》を落とすしかない。
返す先攻3ターン目の村井は予定調和で《ルード・ザーナ》チャージから《マクスハト》を召喚し、「メクレイド」で《シュトラ》を送り出して《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》と《ジェニーの黒像》がそれぞれの手札に戻る。
とら「手札今何枚ですか?」
村井「3枚です」
とらも《ジェニーの黒像》をチャージし直してからの《ジェニーの黒像》で《マクスハト》を捨てさせるが、なおも村井は《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》再チャージから《アストラル・ハート》を《マクスハト》の上に重ね、3ドローで手札を拡充。執拗な手札破壊も効果が薄い。ここでB卓とC卓に目を向けると、B卓のはるるはとらのこちたんの先攻3ターン目《ハッター・ルピア》から《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》まで着地してしまっており、かなりの敗勢。C卓のるるるも月野リルとの「サイバー」同型戦で先に動き出されてしまっている様子。村井としては、絶対に負けられない……するとここでとらがついにアクションがなく、《「正義星帝」 <ライオネル.Star>》チャージのみでターンを返す。
はるる「3パス?」
村井「そう3パス」
はるる「じゃあこれでいいよ」
《アストラル・ハート》チャージからの《マクスハト》で《アストラル・ハート》を《マクスハト》ごと回収しながら「メクレイド」。《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》!横に並べ、再びの「メクレイド」……そして。
なおもマナを拘束する《シュトラ》!とら「2枚目ねー……」
さらに村井は《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》の効果で出したばかりの《シュトラ》を手札に戻す。返すとらも《邪脳の魔法陣》をチャージし、《ジェニーの黒像》で《マクスハト》を落とさせるが、事ここに至ってはもはやアクションなしでパスと同義だ。
そして、ついに村井が《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》の召喚を宣言する。だが下敷きに《昇カオスマントラ》の姿はなく、《シュトラ》で回収した《疾封怒闘 キューブリック》を「メテオバーン」材に使用して攻撃キャンセルしながら2ドローのみ。まだループパーツは揃っていない様子だ。
村井「そのまま返します」
とら「ハンド何枚ですか?」
村井「7枚です」
とらもループに必要なパーツを抜き続けられることを祈って3枚目の《ジェニーの黒像》で村井の手札を攻め立てる……だが《アイドル・ハート》を落としたのみ。他方ここで返す村井は《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》をチャージすると、《アストラル・ハート》を《シュトラ》の上に重ねて3ドロー。残りは3マナ。
はるる「……入れる?」
今にも負けそうなはるるが心配そうに聞く。それを受けて村井は。
しっかりと《昇カオスマントラ》1枚と《アイドル・ハート》を下に、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》宣言!そしてここでB卓のはるるがとらのこちたんに負け、チーム村井はA卓とC卓の両勝ち縛りとなる。はるる「『メクレイド』でなんか出ればオッケーだね」
《アイドル・ハート》を「メテオバーン」して2ドロー、そして「メクレイド」。《エメラル》でシールドを掘りつつ《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》の効果で《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を戻し、《昇カオスマントラ》効果で《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》を出し直す。
すると、その下には。
《昇カオスマントラ》が3枚!とら「負けた……」
村井「今からループ証明します」
サイバー種族を出すループ、サイバー種族を戻すループ。これにより《シュトラ》が出入りし、とらのマナゾーンはあっという間に0枚に。しかもここでC卓のるるるが月野リルに勝利し、あとは村井がしっかりと勝ちきるだけとなった。
はるる「一応エレメント剥がしてから全ハンデスしたい。《ジェニー&ガ:ナテハ》出るかもしれないし」
はるるらしい繊細な全ケア要望を受け、村井は《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》を下敷きにしつつ《マクスハト》を「メテオバーン」するループでとらのバトルゾーンの《ジェニーの黒像》すらも手札に戻させてから、新技の《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》を出し続けるループを披露する。かくして、とらは手札、マナゾーン、バトルゾーンいずれもなしという、生まれたての赤子のような状態となってしまう。さらにこの状態で村井が残り山札4枚、一番上と一番下に《マクスハト》という状態でターンを返すと、とらが引いたカードをマナチャージしようが持とうが、《シュトラ》と《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》を使いまわされていずれにせよ墓地に置かれる。さらにループに使用した《マクスハト》は《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》の効果でターン終了時に山札下に戻り、とらの山札だけが何もできず毎ターン減り続ける状態となってしまったことを確認すると、とらは潔く敗北を認めたのだった。
WINNER: 村井
月野リル「申し訳ない、メクレイドが途切れた……」
とら「やと思ったわ」
文面では伝わりづらいかもしれないが、敗北の後もとらリルちたんの面々の空気は決して悪くはなかった。あるいはそれが、ノリを共有できる関西出身のメンバーでチーム戦に出ることのメリットかもしれない。仕方のない負けを割りきって次の試合に意識を向ける姿は、デュエマというゲームに対して非常に真摯に向き合っているように思えた。
意欲的な構築でメタゲームの打開に挑んだとら。はるるを容易く粉砕したとらのこちたん。メクレイド次第でるるるに届きえた月野リル。
敗れはしたものの、リーガーのみで構成されたチームをフィーチャーマッチであと一歩まで追い詰めたという経験は、彼らをさらに強くするに違いない。
Winner Team: チーム村井
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村井 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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はるる 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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るるる 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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とら 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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とらのこちたん 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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月野リル 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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