超CSⅧ大阪:メタゲームブレイクダウン
ライター:高橋 穂(北白河)
『ヒロインBEST』の登場と殿堂施行により幕を開けた、新たなオリジナル環境。その中で開かれた超CSⅧ大阪は、いわば新環境のメタゲームのスタート地点を定義するものと言えるだろう。
果たして、新環境の景色はどのようなものに仕上がっているのだろうか。
この記事では、予選を突破した128チームの383デッキ(※)、そしてその中からさらに勝ち抜いた16チームの48デッキたちから今大会のメタゲームを振り返っていく。
というわけで、早速デッキ分布を確認していこう。
なお、デッキそのものの数の多さから「元デッキの亜種といえるデッキ」についてはある程度系列でひとまとめにしていることはご留意いただきたい。
※1デッキ欠けているのは、「チームメンバー1人が欠席となったが残った2人の成績だけで予選を突破したチーム」が1チーム存在するため。実はこのチームが一番凄いのでは……?
TOP128 デッキ分布
156 【サイバー】51 【キャベッジ】
38 【ドリ-ムメイト】
26 【アルファディオス】
18 【ファイアー・バード】
15 【ジャイアント】
8 【ボルシャック】
7 【ジョーカーズ】
6 【水闇火ジャオウガ】
5 【COMPLEX】
4 【4cディスペクター】
4 【水闇自然ジャオウガ】
4 【アポロヌス】
4 【ゴスペル】
4 【バロム】
3 【エルボロム】
3 【ザーディクリカ】
3 【水闇自然マルル】
3 【邪眼帝】
2 【オボロティガウォック】
2 【ブラックルシファー】
2 【ペテンシーフシギバース】
2 【マジック】
13 その他
全体の40%以上を占める、【サイバー】の海。それが、新たな環境の風景だった。
「超CSⅧ札幌」でもワンツーフィニッシュを果たして実力を証明した新進気鋭のデッキだが、殿堂施行でライバルが消えた今となってはまさに無双状態。シェア率二位にトリプルスコアをつける圧倒的なシェア率は、「一強環境」の様相を呈している。
ちょうど1年前の「超CSⅦ横浜(チーム戦)」の【ファイアー・バード】登場時ですら25%を超えなかったことを考えると、これは明らか過ぎる異常値と言えるだろう。
それに次ぐのが、同じく「ヒロインBEST」産のデッキである【キャベッジ】や、ちょうど1年前に登場した【ドリームメイト】。
ドリーム英雄譚デッキで強化された【アルファディオス】や前環境の覇者【ファイアー・バード】、根強い活躍の【ジャイアント】なども食らいついているが、やはり母数の差は歴然といったところだ。
そして、この中で勝ち上がった16チーム・48デッキの分布はこうなる。
21 【サイバー】
8 【ドリームメイト】
6 【アルファディオス】
3 【4cディスペクター】
3 【キャベッジ】
3 【ジャイアント】
1 【水闇自然ジャオウガ】
1 【水闇火ジャオウガ】
1 【ファイアー・バード】
1 【墓地退化】※
※はベスト128で母数1のデッキ
相変わらずの【サイバー】率は変わらないが、【キャベッジ】が大きく数を落としているのは見逃せないところ。その代わりに比率的には【ドリームメイト】【アルファディオス】が躍進する形となった。
また、チームで同じデッキを選んで優勝を果たした【4cディスペクター】や母数1から生き残った【墓地退化】など、思わぬデッキが勝ち残ったのも見逃せない。
この結果を踏まえて、いくつか注目したいデッキをピックアップしていきたい。
【サイバー】
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じゃーまん 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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まずは「超CSⅧ北海道」の優勝デッキにして、断トツの最大母数デッキとなる【サイバー】。「ヒロインBEST」での登場時点でも強力だったが、殿堂改訂を経てライバルが減った結果、その驚異的なデッキパワーを活かして順当に「環境の中心」の座を独占している逸品だ。
実際に有識者の多いカバレージ席でも「(シェア率)40%でもまだ少ないくらい」「シェア率が半分を超えても驚かない」等という発言が飛び交っており、その強さについてはもはや言わずもがなと言えるだろう。
《昇カオスマントラ》を仕込んだ《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》と《黄昏ミミ&トワイライトMk.3 ー挑戦のヒロインー》のメクレイド&セルフバウンスを駆使して、ソリティアに突入する……というムーブがこのデッキの骨子なのだが、強さの理由はそれだけではない。
大量のドローにより4ターン目には高確率でループフィニッシュに持ち込める構造に加え、《マクスハト》での3ターン上振れプランやビートダウンプランも併せ持ち、準備が整っていない状況からの「見切り発車」も十分可能。自由枠もある程度存在しカスタマイズ性も十分……と、現代デュエマにおける「強いデッキ」の条件をきっちり抑えているのだ。
母数の多さもさることながら、デッキ出力のアベレージが高すぎて半端なデッキを完全に駆逐しているといっても過言ではないだろう。
構築についても、ミラーマッチで効果の薄い《パクリオ》の減少や、新たなループルートを実現する《~墓碑に刻まれし魔弾の名~》の採用など、少しずつ洗練中。
間違いなく現環境で「絶対に意識しなければならないデッキ」であり、他デッキも「【サイバー】に効く軽量の妨害」を増量しているあたりに影響の強さがうかがえる。
ちなみに、《昇カオスマントラ》によるソリティアではなく《魔誕の悪魔デスモナーク》を仕込んで《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》によるビートダウンを行うタイプも、ベスト128に3人残っていたことを追記しておく。
【キャベッジ】
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Kαit0 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
「ヒロインBEST」で優秀な軽量妨害クリーチャーとさらなるフィニッシャーを得て強化を受けた【キャベッジ】が(1位と大差がついたとはいえ)母数2位。
グランセクトの「パワー12000以上」シナジーを活かして≪キャベッジ・セッションズ≫にたどり着けば、マナからの連鎖から《うららかもも&ミノマル ー献身のヒロインー》《地封龍 ギャイア》といった封殺持ちが一瞬で大量登場する……という決定力が売りのこのデッキ。
《地封龍 ギャイア》の刺さりの良さや優秀な軽量妨害手段の存在から結構な数の相手に抗えるのだが、マナブーストの必要があり動き出すまでのタイムラグが存在するのはいかんともしがたいところ。
デッキパワー自体は非常に高いので、環境が何らかの要因で変動すれば常に最良の選択肢に成り得るデッキと言えるだろう。
【ドリームメイト】
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フジタリョウヤ3rd 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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一年前の「ファンタジーBEST」で登場以来駆け抜けてきたこのデッキも、引き続き強さを押し付ける側に回っている。
やはり最大の売りとなるのは、《お目覚めメイ様》による突然の特殊勝利。軸をずらした勝ち手段を持つというアドバンテージの大きさは言わずもがなだ。
【サイバー】に対しても《森夢のイザナイ メイ様》からの《忠犬な騎士スゴイワン》サーチによって一定の妨害を狙えるなど、広大なドリームメイトのカードプールをフル活用できるのも嬉しいところだ。
ベスト16に8人の使い手を送り込んだり、3面【ドリームメイト】のチームが第3位に輝いたりと、【サイバー】以外の主流デッキでは一番の勝ち組だった……と言えるかもしれない。
【アルファディオス】
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ヴァ―ムース 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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エンジェル・コマンドの広大なカードプールを活かし、高速展開した《王導聖霊 アルファディオス》からのロックと展開を両立する新進気鋭のデッキが【アルファディオス】だ。
「アルカディアスの書」で《天彩の精霊ミルディアス》という優秀な初動兼マナ基盤を手にしたことで、これまでの《巨大設計図》軸から解放。時にはエンジェル・コマンド以外も採用可能な、グッドスタッフめいた柔軟な構築が可能になったのは見逃せない。
実際に入賞レシピでは(【サイバー】対策として)《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》はおろか《異端流し オニカマス》までも採用されており、エンジェル・コマンド以外の力も借りられるようになったのも事実。これからも、チューンによって無限の可能性を見せてくれそうだ。
【ファイアー・バード】
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四階堂ふみふみ 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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「もう見飽きたよ」「殿堂改訂で弱体化したでしょ?」と思われるかもしれないが、【ファイアー・バード】は今でも強いという事実は結果が証明している。
《ハッター・ルピア》や《ハンプティ・ルピア》、《ポッピ・冠・ラッキー》といった優秀な妨害基盤は無傷だったことから、《愛銀河マーズ・シンギュラリティ》と《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》をフィニッシャーにしたメタビートの形で再び成立したのだ。
《アリスの突撃インタビュー》の殿堂入りによる防御面の弱体化はいかんともしがたいが、スピードと妨害性能を兼ね備えたデッキパワーはまだまだ通用するといえるだろう。
また、通常の構築から少しずらして「ファイアー・バード以外から【サイバー】対策の妨害手段を採用する」「デッキ全体を《鬼ヶ覇覇覇 ジャオウガ》の運用に寄せる」などのアプローチで環境に適応しようとする構築も見られた。
中にはとんでもないアプローチを試みたデッキが予選を勝ち抜いたりもしているのだが……これはぜひローグデッキピックアップを楽しみにしていただきたい。
【ジャイアント】
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ダビデ 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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「アビス・レボリューション」の5種族(オレら)最後の生き残りとなるのが、【ジャイアント】。こちらも採用できるカードプールが広く、「全局面対応」と言わんばかりの戦いぶりが期待できる。
特に大きいのが、「王道W」以降光文明のジャイアントが登場したこと。《一音の妖精》による強烈なロックや、ブロッカー対策の《ゴールドハム・サックス》などをピンポイントで繰り出せるのは非常に大きい。
また、今回の大会では序盤から大量ドローを行う【サイバー】に対してリベンジ・チャンスで召喚できる《ベニジシ・スパイダー》を採用することで、先にマナを伸ばしつつ革命チェンジ元を用意して押し切る……というアプローチの構築が複数見られた。
これからも【サイバー】環境が続くならば、キラーカードとして輝くこともあるかもしれない。
【4cディスペクター】
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ラボン 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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賽盗 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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さくやま 超CSⅧ 大阪 オリジナル構築 |
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そして、ここまで挙げてきた「環境デッキ」と一線を画すのが、今大会の優勝チーム「特攻の卓」の全員が使用した【4cディスペクター】だ。
一般的な大会環境のメタゲームには明確に「ほぼ存在しない」とまで言えるデッキだが、実はこの「超CSⅧ大阪」という非常に特殊な環境には完璧に適応したデッキだったといえよう。
このデッキが活躍した理由は複数あるが、まず第一に《真気楼と誠偽感の決断》と《流星のガイアッシュ・カイザー》へのガードが下がっていたこと。
先日の殿堂改訂により【アマテラスループ】【ペテンシーフシギバース】という《真気楼と誠偽感の決断》をカギとしたデッキが環境を退いたことで、このカードのケアや対策の優先度は落ちていた。
さらに【サイバー】の《マクスハト》や【ファイアー・バード】の《ハッター・ルピア》といった「3ターン目ごろまでに踏み倒しを含めて2体以上のクリーチャーを出す」ムーブが増えたことで、ターンの終わりに《真気楼と誠偽感の決断》《流星のガイアッシュ・カイザー》をカウンターで繰り出すという必殺ムーブが格段に決まりやすくなっていたのだ。
おまけに、コスト10以上の大型ディスペクターをゴール地点とするこのデッキでは《真気楼と誠偽感の決断》は「《ヘブンズ・ゲート》や《光開の精霊サイフォゲート》→《砕慄接続 グレイトフル・ベン》→伸びたマナからディスペクター召喚」、《流星のガイアッシュ・カイザー》は「ドローで大型ディスペクターを引き入れてから4コスト軽減でディスペクター召喚」と、単独でもゲームプランになりうる強さを見せてくれる。
また、攻撃時効果を起点に動くデッキには《流星のガイアッシュ・カイザー》が単体で対策として機能したのも見逃せない。【サイバー】の《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》などが機能するのが1ターン遅れれば、それだけで戦況は変わってしまうだろう。
総じて、現環境において《真気楼と誠偽感の決断》《流星のガイアッシュ・カイザー》を最もうまく運用できたのが【4cディスペクター】だったというわけだ。
第二に、《天彩の精霊ミルディアス》の登場。
これまでこの手の多色デッキの3ターン目のムーブと言えば《天災 デドダム》だったが、そこに追加のマナ基盤とブーストを兼ねるこのカードが出てきたのは大きな変革。
バウンス効果とブロッカーでゲームを引き延ばしてこちらのレンジに持ち込む作用に加え、3→5のマナカーブを描くことで《真気楼と誠偽感の決断》素撃ちプランもさらに強固になる。
他にもブロッカー踏み倒し系トリガーから出しても2面ぶんの防御になるなど、デッキとの噛み合いは抜群。このカードの採用が、デッキの地力の向上に大きく貢献したといえるだろう。
最後に、この大会がチーム戦であること。
このデッキは、前述のとおり一般的な環境にはまず存在しないデッキだ。そんなデッキにぶつかった相手は、まず何を確認するだろうか。
それは、横の席の対戦相手の使用カードだ。どうやら同じデッキの3面チームだ……とわかれば、採用カードを少しでも知ろうと別席に目を向けるのは当然といえるだろう。
しかし、このチームの3人のレシピは、トリガーから勝ち手段までそれぞれ微妙に異なっている。つまり、横の席に見えたカードを素直にケアしようとすると、必ずどこかで裏目を引くことになるのだ。
また、3人が同系統のデッキを使っているということはチーム内での相談も容易であるということ。どこかの席での複雑な戦局に対して、単純計算で3倍の思考リソースを割けるというのも大きなアドバンテージである。
相手には絶対にこちらの動きを悟らせずに攪乱し、こちらは確実に強い動きを通す。そんな理想を実現できるこのデッキは、まさにこの「超CSⅧ大阪という一回しかない環境」を勝ち抜くためだけに作られた、ソリューションと言える品だったといえるだろう。
下馬評通りの【サイバー】の圧倒的な強さと、それを攻略しようとする多数のデッキの相克が大きなポイントとなった今大会。
殿堂後の新環境を占う材料として、「最強デッキを乗りこなすか、乗り越えるか」という選択をプレイヤーに問うているようだ。
今回の結果が、読者諸賢のデッキ選択に新たな閃きをもたらしてくれることを祈っている。
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