DMGP2025-1st Day1(アドバンス):メタゲームブレイクダウン
ライター:清水 勇貴(yk800)
【はじめに】
GP2025-1st Day1、アドバンス。オリジナルと比べると大会やメディアといった情報源の絶対量が少なく、外部ゾーンの存在によってプレイの中での選択肢も多い。普段から慣れ親しんでいないプレイヤーにとっては、デッキ選択の難しいフォーマットだ。使い慣れたオリジナルのデッキをベースに、多少のアレンジを加えて挑むか。
外部ゾーンや初期設置カードを使って、アドバンスという名の自由を謳歌するか。
様々な思惑入り混じった本大会のメタゲームブレイクダウンをお届けしよう。
デッキ分布
約4600人ものプレイヤーが一同に会した本大会。熾烈な予選を勝ち上がった128人の選択は以下の通りとなった。TOP128デッキ分布
23 ファイアー・バード21 天門(うち巨大天門1)
16 5cワルドバロム
12 モルトDREAM
11 ドリームメイト
6 闇単XENARCH
5 闇単ゼーロ
4 火水光バクオンソー
4 呼び声ボルシャック
3 暴発エルボロム
3 ゴスペル
3 水闇自然DOOM
17 その他(母数2以下)
トップ3つのデッキタイプの母数が抜けて多く、【モルトDREAM】と【ドリームメイト】がそれを追いかける形となった。反面、【闇単XENARCH】や各種【バクオンソー】系のデッキは、事前評価に比してあまり振るわない結果となった。
ここからは、個別のデッキについて見ていこう。
【ファイアー・バード】
みるえめ DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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まずは本戦ラウンド進出数第1位にしてベスト4に3名が進出。本大会の顔となった、【ファイアー・バード】を紹介していこう。
オリジナルの熟練度がほぼそのまま通用する点が母数の多さに大きく貢献したのは間違いないが、それと同等以上に、現環境における通りの良さを無視するわけにはいかないだろう。とにかく、《ポッピ・冠・ラッキー》と《ハッター・ルピア》の妨害性能が凄まじいのだ。
中でも、ドラグハートやGRまで止めてしまう《ポッピ・冠・ラッキー》は、刺さりの良さがオリジナルとは比較にならない。エスケープによる場持ちの良さも相まって対処もしづらく、間違いなく本大会のメタゲームを定義していたカードの1枚だった。
これらに加えて動きが止まった相手のリソースを叩き落とす《ハンプティ・ルピア》で反撃の目を落とし、《龍后凰翔クイーン・ルピア》のアタックキャンセルを絡めて《雷炎翔鎧バルピアレスク》まで辿り着けば、【光水天門】ですら詰め切れてしまうほどのフィニッシュ力を発揮する。
やや苦手とする「自分より先に展開してくるデッキ」や「メタ(妨害)カードで速度をズラしている間にリソースを削ってくるデッキ」の類は【光水天門】と【5cワルドバロム】が駆逐しており、決勝トーナメントのフィールドにおいて明確に不利なデッキはほぼなくなったと言っていい結果となった。
その最たる例が【バクオンソー】系のデッキだろう。特に【火水光バクオンソー】はこのデッキが苦手とするメタ要素を多数含んでいたが、予選で【光水天門】の海に淘汰されたか本戦にはほとんど残っておらず、これが大きな追い風となっていた。
余談ではあるが、上位入賞者のリストでは、《カモン・ピッピー》などのアドバンス要素はメインデッキに採用せず、オリジナルのものそのままの構築に超次元ゾーンの≪轟く覚醒 レッドゾーン・バスター/蒼き覚醒 ドギラゴンX≫などだけを採用する構築が大多数を占めていた。現在オリジナルで使用されているデッキリストがいかに完成されているかがよくわかる。
【光水天門】
ネバー DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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続いては、上位卓に非常に多く勝ち残った環境最大手のカウンターコンボデッキを紹介しよう。
アドバンスとオリジナルの【光水天門】は、《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》という特異点の存在によって、似て非なるデッキとなっている。
その出自の由来となった《奇跡の精霊ミルザム》よろしく、《音感の精霊龍 エメラルーダ》などシールド回収手段との組み合わせての爆発的リソース回収&トリガー踏み倒しをメインに運用しつつ、各種ドラグハートやサイキック・クロスギアで柔軟に戦況へ対応できるのが強みだ。
純粋なデッキパワーと押し付け力においてはオリジナルの同デッキとは比較にならないほど高い一方で、出力の一部を外部ゾーンに委託しているために、《とこしえの超人》や《ポッピ・冠・ラッキー》のメタ能力が直撃してしまう点は無視できない。
特に対【ファイアー・バード】の1点に限れば、《頂上接続 ムザルミ=ブーゴ1st》よりもオリジナルで採用される《冥界を統べる新月のハーデス》の方が優れているとさえ言えるだろう。この相性関係が、本大会における【ファイアー・バード】の躍進の理由の一因となったとも考えられる。
構築の大枠はおおよそどのプレイヤーのものも似通っていたが、フィニッシュ手段にはバリエーションがあった。大きく、GR召喚を使ったメカーネンループ型、超次元ゾーンの1枠を《龍芭扇 ファンパイ》を採用したファンパイループ型、これらを採用せず追加ターンと打点で押し切る純正型の3種に分けられる。
ループフィニッシュ型の2タイプはコンボに入ったそのターン中に勝てるため、「時間切れ時には追加ターン発行なしで、そのターンの終了時に両敗北」というGP予選ラウンドの制限時間システムに適していた。
旧来の構築では時間切れになってしまうとそのターン中に打点を揃えて殴り切るしかなかったため、何らかの手段でそのターン中の打点が止められてしまえば両者敗北のリスクがあった。その点で、ループフィニッシュ型はルール上強いという見えざる利点がある。
この両者を比較すれば、メカーネンループ型はシンプルにマナドライブGRクリーチャーのバリューが高く、次元を圧迫しないためムザルミの選択肢をより広く持てるが、メインデッキを圧迫し、外部ゾーンを止められた際に何もしないカードが増えてしまう点がネック。
ファンパイ型はメインデッキの枠を費やさずにフィニッシュできるため、主となる動きの再現性を落とさない。フィニッシュパーツが常に超次元ゾーンにあるため、コンボパーツの所在管理にリソースと手数を割かなくていいのもかなりの魅力だろう。一方、ほぼループにしか使わないカードを採用することで超次元ゾーンの選択肢が狭まるのがネックとなる。
一概にどちらが優れているとは言い難いが、最終的な戦績をベースに語るのであれば、ベスト8にコマを進めたループフィニッシュ型の【光水天門】は《龍芭扇 ファンパイ》を採用した構築だった。
しかして、優勝したネバー選手の【光水天門】はそのどちらでもない、純粋にパワーを追い求めた形だった。
そもそもループなどしなくとも、無限に追加ターンを得ずとも。追加ターンを2、3回取りながら有り余る打点でシールドをブレイクしきれば、デュエル・マスターズというゲームは勝てるものだ。
盤面制圧力と打点形成、そして山札を凄まじい速度で削ってからの《真邪連結 バウ・M・ロマイオン》+≪♪必殺で つわものどもが 夢の跡≫コンボによる追加ターン獲得。このデッキの持てる武器を純粋に、そして最大限評価し、パワフルなデッキとして使いこなしたがゆえの勝利だったと言えるのかもしれない。
【5cワルドバロム】
志乃 DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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新時代を代表するコントロールデッキの王として、大きな存在感を放っていたデッキタイプだ。このデッキの強みはなんと言っても、新旧デーモン・コマンドたちによる豪快なリソース制圧能力と、ロックやマナ否定に裏打ちされた高いフィニッシュ力の両立だろう。
バトルゾーンは《魔令嬢バロメアレディ》を起点に展開される各種「バロム」系カードや≪終焉の禁断 ドルマゲドンX≫の禁断爆発によって何度でも除去し尽くせるし、それを嫌って手札を抱え込む相手には《修羅の死神フミシュナ / 「この先は修羅の道ぞ」》のクリーチャー側(と、ヨビニオンで直接呼び出せる《魔誕の猛将ダイダロス》)や《悪魔龍 ダークマスターズ》、《悪魔世界ワルドバロム》が執拗にハンデスを繰り返してリソースを奪う。
《悪魔神バロム・クエイク》+《聖魔連結王 ドルファディロム》による受け札ロックを仕掛けつつ、万一止まった時のために《悪魔神ドルバロム》や5枚を進化元にした《悪魔世界ワルドバロム》で返しの相手のマナを封じることすらできる。特殊勝利には及ばないものの、フィニッシュの強固さにおいては指折りだ。
受けは決して「硬い」とまでは言えないが、各種「魔法陣」や《魔令嬢バロメアレディ》らが自然にG・ストライクを持っているほか、≪「この先は修羅の道ぞ」≫や《D2V3 終断のレッドトロン / フォビドゥン・ハンド》の呪文側など2面を止められるトリガーが複数採用されており、最低限の打点を受け止める用意は有している。特に【バクオンソー】系のデッキに対しては2回バウンス(手札戻し)や封印除去で《頂上混成 BAKUONSOOO8th》本体を咎められるのが非常に大きな魅力となる。
そして本デッキ最大にして最強の受け札、《悪夢神バロム・ナイトメア》は、生半可な盤面を一撃で流し去る必殺の1枚だ。
一方で、《魔令嬢バロメアレディ》の踏み倒しや《悪夢神バロム・ナイトメア》の受け能力などは、《ポッピ・冠・ラッキー》の影響をダイレクトに受けてしまう。バウンスで一時的に排除こそできるものの、基本的に破壊やバトル勝利でしか相手クリーチャーを完全除去できないデッキであるため、エスケープ持ちのメタクリーチャーはとかく厄介だ。
新進気鋭のニューカマーの前に突きつけられた大いなる課題。【ファイアー・バード】にどう抗っていくかは、【5cワルドバロム】にとって悩みの種となりそうだ。
【モルトDREAM】
ドラゴンデッキは《魂の呼び声》を採用したいわゆる【火光自然ボルシャック】型と【モルトDREAM】型で人気を二分していたが、予選突破母数では【モルトDREAM】に軍配が上がった。アドバンスならではのデッキを使いたい、という思惑もあっただろうが、《夢双龍覇 モルトDREAM》というカードの突破力と柔軟性の高さに魅力があったことも大きな要因だろう。
これは筆者の想像だが、【火光自然ボルシャック】型を選択したプレイヤーは、もっと【光水天門】や【5cワルドバロム】に偏ったメタゲームを想定していたのかもしれない。アドバンス・オリジナルに関わらず、このデッキタイプは自分より遅いデッキ相手なら問答無用で全てを粉砕できるパワーを有している。《魂の呼び声》によるサーチから繰り出される4ターン目の「必殺」の存在はそれだけ破格で、それはアドバンスにおいても変わらないだろう。
ただし、【火光自然ボルシャック】は本質的にはコンボデッキだ。起点となる《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》が止まってしまうと、他のカードも連鎖的に機能が低下してしまうのが明確なネックだと言えるだろう。相手側からの妨害の有無が出力に如実に現れるデッキタイプだ。
つまり、【ファイアー・バード】の母数が【火光自然ボルシャック】にとって最大の壁となったのではないだろうか。オリジナルにおいても明確に不利と言われるマッチアップに苦しめられたのは想像に難くない。
【モルトDREAM】も、メタクリーチャーがいれば十全に展開力を発揮できない点には変わりはないが、出力の低下具合には少し差がある。
ドラグハートによって能力を自在に外付けできる点、《竜皇神 ボルシャック・バクテラス》のためにアーマードを多数採用する必要がないため構築の縛りがない点の2点により、デッキ単位での柔軟性が高い。また、《夢双龍覇 モルトDREAM》自身がT・ブレイカーで2回攻撃できるため、メタクリーチャーによってドラグハートが機能を停止してしまっても、本体が通ってしまえば5点を叩き込んで打点で押し切る展開も視野に入るのは、このカードならではだ。
うにほー DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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Re:グッピー DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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改めて、【モルトDREAM】というデッキそのものについて見ていこう。火自然の2色は前提として、最後の1色を光にするか、水にするかで構築が分かれた。
光を採用するメリットは、主に《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》と《ボルシャック・ドリーム・ドラゴン》の2枚だ。ドラグナー絡みのカードを引いていなくともゲームメイクできるカードが追加されるため、ブーストさえできれば高い出力を発揮しやすいのが特徴と言える。
《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》は《ハッター・ルピア》に対して明確なキラーカードで、メタ能力をEXライフで受け流しながら火力除去で《ハッター・ルピア》を流しつつ、次ターンの展開までも抑制できる。一方、《ポッピ・冠・ラッキー》に対してはこれといった回答を持たないのが光型のネックだ。
水を採用するメリットは、主に《ルード・ザーナ》や《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》といったバウンスによる受けと、《頂上電融 クライアッシュ“覇星” ’22》のメタ能力、およびカウンター回避性能だ。
特に《ルード・ザーナ》はメタクリーチャーを絡めてビートダウンを仕掛けてくる相手に対してめっぽう強く、メタクリーチャーごと押し流してガラ空きになった盤面に《流星のガイアッシュ・カイザー》を着地させれば、返しの《夢双龍覇 モルトDREAM》や《頂上電融 クライアッシュ“覇星” ’22》で一気にゲームの流れを掴める。
バウンスによって破壊耐性を持つメタクリーチャーも無力化しやすい反面、ドラグナー関連のカードがない際に自分からゲームを作る能力では光型に劣る。
より能動的にゲームを作る光型と、カウンターに特化した水型。メタゲームによってどちらが適しているかは異なるため、今後も並行して活躍していくことだろう。
【ドリームメイト】
sword DMGP2025-1st アドバンス構築 |
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【ドリームメイト】も、【ファイアー・バード】の存在にさえ目を瞑れば悪くない立ち位置のデッキだったと言える。
《真気楼と誠偽感の決断》や《流星のガイアッシュ・カイザー》などケア必須のカードは多数存在するもののプレイである程度補える範疇で、《キャディ・ビートル》や《とこしえの超人》といったメタカードも採用できる。
とはいえ考えなしに展開を続けていればもちろんカウンターカードにズタボロにされてしまうし、オリジナルと比べてメタカードの重要性が高い分デッキ枠は非常にシビアで、構築・プレイともに練度が如実に出るデッキタイプだと言えるだろう。
目新しい要素はないものの、順当にデッキの強さと環境への通りの良さで勝ち残ってきたデッキだ。やはり直接対決で若干分の悪い【ファイアー・バード】の多さがネックとなったか、ベスト8には残っていないものの、本大会において活躍したデッキのひとつとして挙げられるだろう。
【闇単XENARCH】・【バクオンソー】
最後に、注目を集めつつも本大会においてはやや見せ場の少なかったこれらのデッキについても軽く触れておこう。【闇単XENARCH】はデッキパワーこそ申し分なかったものの、熟練者の絶対数がどうしても少なく使用母数そのものが伸び悩んだこと。
最大母数となった【ファイアー・バード】に対してかなりの噛み合いが要求されるうえに追加の手札を1枚与えてしまっていること。
このデッキのメタとなるドラゴンデッキの《闘争類拳嘩目 ステゴロ・カイザー / お清めシャラップ》や【光水天門】の《審秘の精霊ピュリファイ・ジョーカー》採用が少数ながらも一定数見られたこと。
これらの要因が活躍を阻んだ印象だ。
【バクオンソー】系のデッキは明白に【光水天門】の多さが大きな壁となっていた印象だ。連続攻撃を決めなければならない中でのトリガーを起点としたブロッカー展開はどうしても捌ききれず、一度走り出して完走できなければ《真気楼と誠偽感の決断》が直撃する。これまで以上に厳しい対面となったことは間違いないだろう。
おわりに
おそらく誰しもが衝撃を受けた【ファイアー・バード】の快勝のなかで、ネバー選手の【光水天門】が意地を見せつけ勝利を収めた本大会。今回はメタゲームの間隙を突く側に回った【ファイアー・バード】だが、鮮烈な活躍を印象づけた今後は、トップメタの一角として痛烈に意識されていくだろう。
この先のアドバンスの変遷に思いを馳せつつ、今回は筆を置かせていただこう。
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