ライター:原田 武(たけじょー)
2025年8月23日、インテックス大阪はヒロインの炎につつまれた!
海は【サイバー】に制圧され、地は【グランセクト】に覆い隠され、全ての独自デッキが死滅したかのように見えた。
だが、ローグデッキは死滅していなかった!
……今大会はオリジナルフォーマットで開催されたため≪勝利の覇闘 ガイラオウ≫の出番はなく、したがってこの話はここでおしまいなのだが、それはさておき。
今大会を席巻したデッキが「愛感謝祭 ヒロインBEST」出身のデッキたちであったことは疑いようもないだろう。なにせ本戦出場した384名のうち、実に156人が【水単サイバー】を使用したのだ。二番手の【自然単キャベッジ】も合計すると使用者は207人、およそ60%という数字となる。
しかし、そんな中でも己の意志と意地を貫き、自分ならではのデッキを選択してこの大会に臨んだ者たちが確かに存在する。その創意工夫と勇気、あるいは愛が勝利に結びつく瞬間……それは紛れもなく、デュエル・マスターズの醍醐味の一つだと思うのだ。
当記事では勇敢なるローグデッキ使いたちに敬意を表しつつ、混迷の予選を勝ち抜いて本戦出場を成し遂げた珠玉のローグデッキ16種を紹介しよう。
fana:【光水自然ゴルギーオージャー】
「邪神VS邪神Ⅱ」発売直後に大流行した【光水自然ゴルギーオージャー】だが、本戦に残ったのは意外にも一人のみだった。【水単サイバー】への対策としてメジャーな《Dの天災 海底研究所》や《天革の騎令嬢 ミラクルステラ》がそのまま突き刺さることが重たかったのだろうか。
しかし、唯一の本選進出となったfanaのリストにはきちんと対策が準備されている。それが《ダイヤモンド・ソード》だ。これで各種攻撃ロックをすり抜けて《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》が動けるようになる。
また、《薔薇の使者 / ガイアズ・ソング》の採用も特徴的。数枚進化元の重なったNEOクリーチャーに下側を打ち込むことでマナを伸ばし、進化元が除去されると苦しくなるこのデッキの弱点を補っているのだ。新環境に適応する新たな選択肢として、この2枚は是非抑えておこう。
zomuku@JP:【火光水庵野】
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zomuku@jp
超CSⅧ 大阪
オリジナル構築
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クリーチャーを大量展開する昨今のデッキに対し、1ターン限りの機能不全を引き起こす《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》。今年春先に流行した【火光水庵野】は、現オリジナルフォーマットで最も強くこのカードを使える選択かもしれない。
zomuk@JPのリストには起点となる2コストクリーチャーを対策する《ボイル・チャージャー》がたっぷり4枚。さらに《真気楼と誠偽感の決断》も3枚と枚数が割かれており、先出しで展開を咎める《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》と合わせ、後出しでの対処も完備されている。
フィニッシュプランとなる《庵野水晶》と革命チェンジ、《転生スイッチ》を組み合わせたチェインも当然健在。幅広い対面に有効なロック能力は、環境を読みづらい大型大会でも十全に役目を果たしてくれたことだろう。
そうこう太朗:【ペテンシーフシギバース墓地退化】
《逆転の影ガレック》を失った【墓地退化】。欠けた部分を補うためにそうこう太朗が見出したのは、同じく片翼をもがれた【ペテンシーフシギバース】だった。
能動的に戦う際は【墓地退化】として、《死神術士デスマーチ》+《白騎士の精霊HEAVEN・キッド》で《竜魔神王バルカディア・NEX》着地を狙う。相手の動きが速いと見れば【ペテンシーフシギバース】プランへ移行。S・トリガーとニンジャ・ストライクで打点を受け止め、《流星のガイアッシュ・カイザー》《真気楼と誠偽感の決断》でカウンターをお見舞いする。
いずれのプランでもピンポイントで切札を墓地に落とせる《伊達人形ナスロスチャ》、トリガーだけでなく手打ちの除去札としても役割を持てる《オリオティス・ジャッジ》など、細部まで抜かりなし。2デッキを統合する発想は勿論ながら、カードチョイスの妙も光るデッキリストだ。
そーな/前田界隈:【水闇魔導具】
古参デッキと名高い【魔導具】だが、今大会でもきちんと実績を残すことに成功している。今回は進化クリーチャー全般へのメタ(妨害)カードとして《Dの天災 海底研究所》を取り入れ、現環境への適応を果たしたようだ。
興味深いのは《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 「すべて見えているぞ!」》を1枚も採用せず、《卍月 ガ・リュザーク 卍 / 卍・獄・殺》を3枚採用すると言う配分だろう。恐らくは【水単サイバー】の《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》や【自然単グランセクト】の多面展開にワンチャンスをもたらす除去トリガーとして、≪卍・獄・殺≫を重く見たのだろう。
1枚投入されている《ブラッディ・クロス》も恐らくはその布石、1コストにしてトータル5枚も墓地を肥やすことができ相性は抜群だ。神アート「魔法少女アイドル「Girl Mage」~偶像魔導具集」でデッキを組みたい諸氏は、このリストを参考にしてみてはいかがだろう。
ぽーと/親父の背中:【光水闇アマテラスループ】
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ぽーと/親父の背中
超CSⅧ 大阪
オリジナル構築
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《フォース・アゲイン》は旅立ってしまったが、【アマテラスループ】はまたしても帰ってきた。超CS開催直前にSNSを騒がせた、《邪眼皇アレクサンドルIII世》を搭載した新基盤が早速のベスト128入賞だ。
《真気楼と誠偽感の決断》や《爆藍月 Drache der’Zen》で唱えられた呪文を山札から即座に引っ張り出し、呪文を連唱。最終的には≪水晶の祈り≫を無限回唱えてエクストラウィンとなる。受けの堅さと《真気楼と誠偽感の決断》からの切り返し力の高さも大きな魅力だ。
まだ開拓から日は浅いものの、この結果はポテンシャルを証明するには十二分。【アマテラスループ】の正統後継者として立ち位置を築けるか、引き続き注目しておきたい。
いもす:【4cブレスラチェイン】
一方で、《フォース・アゲイン》プレミアム殿堂を機に《クイーン・アマテラス》からの脱却を図ったのがいもすの【4cブレスラチェイン】だ。なお、彼は【火光水庵野】で紹介したzomuku@JPと同じチームこっから先は一方通行のメンバーである。
《邪眼教皇ロマノフⅡ世》や《マーシャル・クロウラー》を駆使して《ブレイン・スラッシュ》を連鎖させ、最後は《アルカディア・スパーク》で相手にデッキを引ききらせて勝利する。こちらもコンセプト上S・トリガーが大量に入るため、受けが強いという強みは【アマテラスループ】と共通するものがある。
差別化点を挙げるなら4ターン目のコンボ始動率の高さになるだろう。たっぷり10枚採られた3コスト初動から《真気楼と誠偽感の決断》《ディスタス・ゲート》に繋げれば、墓地にカードを落とした状態からコンボをスタートできる。殴らず勝つデッキが増える環境であれば、自分から仕掛けやすい点は大きな強みとなるはずだ。
アレフティナ:【光水闇エルボロム】
もうずっと《ブレイン・スラッシュ》と《真気楼と誠偽感の決断》の話をしている気がするが、今暫くお付き合いいただこう。くるの・アレフティナ・ちゃんずぽんによるチーム龍素記号Sr スペルサイクReカは、3面【光水闇エルボロム】で今大会に臨んだ。
《超光喜 エルボロム》のハイパーモードを起動して《ブレイン・スラッシュ》から動き出し、《マーシャル・クロウラー》でシールドを追加して《光霊姫アレフティナ》で特殊勝利を狙う。チーム名に冠された《龍素記号Sr スペルサイクリカ》もバッチリ搭載、呪文の中継点として活躍したことだろう。
3名のリストには若干の差があり、個々の好みや環境への差さり具合を見てカスタムされていることが伺える。《飛ベル津バサ「曲通風」》や《カレイコの黒像》、《飛翔龍 5000VT》に《理想と平和の決断》など採用幅はかなり広く、今後環境が変化しても十分追従できそうなのが頼もしい。
エンニル:【クリスティ・ゲート】
「3ターン目のビッグアクション」が強いデッキの定義の一つなら、《クリスティ・ゲート》もその定義を満たしていると言って差し支えない。3ターン目に《偽りの羅刹 アガサ・エルキュール》が出たらゲームセット。こればかりは13年前から変わらない。
E2時代からの変化があるとするなら、サブプランとして用意された《魔誕の騎士ザガーン》の強度だろう。《混沌の獅子デスライガー / カオス・チャージャー》下面から繋いで召喚すれば、ヨビニオンによって《超光喜 エルボロム》が確定で登場してハイパーモードへ。《ルシファー》からの踏み倒しに繋げられる。
繰り出す大型デーモン・コマンドも実に多彩で、どの選択肢を選んでも相手のクリーチャーを吹き飛ばせる顔ぶれが揃っている。
一風変わった踏み倒し体験がしたいあなたに。
アラシヤマ:【逆アポロ】
シールドを駆使するデッキならこれも外せない。デッキの殆どをS・トリガーとシールド追加カードで構成する、「守りの王道」を駆け抜けてその果てまで行ってしまったアーキタイプが【逆アポロ】だ。
カードチョイスは比較的オーソドックスだが、ここにも《真気楼と誠偽感の決断》の影が。コストの重いS・トリガーを踏み倒せるので当然相性が良い。そろそろゲシュタルト崩壊が見えてきた。
殿堂改訂の影響を受けてはいるが、未だ【火光闇ファイアー・バード】や【火自然アポロヌス】など速攻勝負を仕掛けるデッキは一定数環境に存在する。周囲の環境変化を読みきって的確に投入し、真っ直ぐに攻めるデッキを喰い荒らそう。
あごもん:【火光自然サムライ】
DMGP2023-2ndにて全くの独自構築デッキ【火水闇ブータンドロン・ゴー】を駆って本戦出場を果たしたあごもん。今回は【火光自然サムライ】をチューンして持ち込んだようだ。
【火光自然サムライ】は一般的には3コスト始動。《無頼BEN-K1000》などから《PERFE910-御代紅海》に繋げていくのが常道だが、このリストには2コストでマナを伸ばせる《ROYAL-減亜5》《天体妖精エスメル / 「お茶はいかがですか?」》が採用されている。
これにより3ターン目に4マナを溜めて《ボルメテウス・武者・ドラゴン「武偉」》を召喚。《竜牙 リュウジン・ドスファング》を投げてメクレイドから展開できるというわけだ。一手早く着地した《PERFE910-御代紅海》の圧力は推して知るべし、と言ったところか。
かめ:【火自然レクスターズ】
かめのデッキはドリームクリーチャーの一角・モモキングをフィーチャーしたもの。《メンデルスゾーン》が絡めば3ターン目から、そうでなくても4ターン目から《王来英雄 モモキングRX》《夢双英雄 モモキングDM》で走り出す。
この構築の妙は《モンキッド <ライゾウ.Star>》で、これを最大枚数搭載することによって狙った進化クリーチャーへの到達率をグッと引き上げている。《ボルシャック・モモキングNEX》は勿論のこと、ドラゴン比率が下がることを承知で投入された鬼札・《CRYMAX ジャオウガ》へのアクセスも可能だ。
また、現環境における《アルカディアス・モモキング》の頼もしさにも触れておきたい。各ターン1体目のクリーチャーをタップインさせることで、《愛銀河マーキュリー・スターフォージ》や《轟䡛合体 ゴルギーオージャー》など進化クリーチャーを阻害できるのだ。予選を戦い抜く大きな支えとなったことだろう。
優栗つとめ:【5cグッドスタッフ】
5色の強力カードを詰め込んだ、まさしくてんこ盛りなデッキが優栗つとめの【5cグッドスタッフ】だ。序盤はマナ加速や《ハンプティ・ルピア》による手札破壊を行い、中盤以降は革命チェンジや《五輪の求道者 清永》からの踏み倒しで柔軟にゲームメイクを行う。
5cデッキあるあるの色事故問題に対しても、各文明15枚以上をキープしつつ単色カードを12枚(《邪爪の魔法陣》をカウントすれば16枚)組み込むことに成功している。マナ関連のストレスには縁遠いはずだ。
細かく散らされた採用カードも大型大会の場では有利に働くだろう。初見でこのデッキの《悪夢神バロム・ナイトメア》を見抜けるプレイヤーはそうそういない。《切札勝太&カツキング ー熱血の物語ー》や《支配の精霊ペルフェクト / ギャラクシー・チャージャー》下側から仕込むことで、デーモン・コマンド軸でなくとも防御札として起用できることは覚えておいてよいかもしれない。
サンシャインK:【水闇デスパペット】
【ファイアー・バード】【スプラッシュ・クイーン】が失速した今、花嫁レースに【デスパペット】が再合流を果たす。
水・闇文明の良質なメタカードに加え、手札破壊をふんだんに盛り込めるのは【デスパペット】ならでは。例えドローが得意なデッキタイプ相手でも、リソース補給の直前で打ち込むことで大きな被害を与えやすくなる。勿論、《解体人形ジェニー》で直接引っこ抜いてもいい。
《冥土人形アカイブ・ヤップップ》もこのデッキタイプならではのカードで、エレメント全般を破壊できるのが何よりの魅力。《アストラルの海幻》や《ジャスミンの地版》といった軽量タマシードを見かける機会が増えた今、改めて採用を検討すべきカードだろう。
鰤照:【光水メタビート】
「相手の動きを邪魔しながら、コツコツ攻撃して勝つ」。シンプルかつ強靭な意思に裏打ちされた、真っ直ぐなビートダウンデッキが鰤照の【光水メタビート】だ。
ほぼ全てのデッキに何かしらの影響を及ぼす《検問の守り 輝羅》を始めとしたメタクリーチャーを序盤から展開し、《同期の妖精 / ド浮きの動悸》や《検問の守り 輝羅》、《金天使 エン・ゴルギーニ》でガッチリガード。それでもケアできないカードは《奇天烈 シャッフ》でピンポイントに止めていく。
仮にそれを乗り越えられたとしても、≪ジャッジ・水晶チャージャー≫や《オリオティス・ジャッジ》でリセットして再び自分のペースに持って行ける作りになっており、安易な一発逆転を許さない。勝つために派手なフィニッシャーはいらない。無骨かつ研ぎ澄まされた、美しいリストだ。
ヒロトス:【火光闇ファイアー・バード】
最後に紹介するのは【ファイアー・バード】。といっても、尋常の型ではない。ヒロトスが作り上げたのは、《龍后凰翔クイーン・ルピア》のドラゴンの部分――種族・ドラゴンの花嫁に目を付けたデッキリストだ。
《ハッター・ルピア》からのメクレイドルートはそのまま搭載しつつ、《チャラ・ルピア》を採用することで3ターン目に通常召喚することも視野に入れている。《龍后凰翔クイーン・ルピア》の5枚目以降としては、同じくドラゴンかつファイアー・バードである《凰翔竜機バルキリー・ルピア》を起用した。
この《凰翔竜機バルキリー・ルピア》で山札から《蒼き団長 ドギラゴン剣》《時の法皇 ミラダンテⅫ》《音卿の精霊龍 ラフルル・ラブ / 「未来から来る、だからミラクル」》を持ってきて革命チェンジする、従来にはない火力の出し方を実現している。さながら《ボルシャック・NEX》抜き【NEXミラダンテ】と言ったところか。
ちなみに、ヒロトスと【光水メタビート】鰤照もまた、チームトステリンの同朋。残るメンバーのトパーズ@シトリンもかなり尖ったチューンの【光水自然アルファディオス】を使用していたことを書き添えておく。類は友を呼ぶ、のかもしれない。
pon/ぽん:【火光闇ファイアー・バード】
こちらも同じく【ファイアー・バード】だが、pon/ぽんが眼をつけたのはアーマード・ファイアー・バードのアーマードの部分。展開の補助として《ボルシャック・アークゼオス》を採用している。
ファイアー・バードを出す度にバトルを行える効果も相まって、盤面の取り合いには原型以上の適性がある。《ザーク・砲・ピッチ》なども採用されているため、相手の初動を叩きながら打点を組み上げることが可能だろう。
こちらもフィニッシュには革命チェンジを採用しており、それらをピンポイントで回収できる《凰翔竜機バルキリー・ルピア》も引き続き搭載されている。【ファイアー・バード】2度目の復活は、あるいはこのカードにかかっているのかもしれない。
いかがだっただろうか。紹介したデッキは16種、3人チーム戦故の集計対象の多さを踏まえても、非常に多くの母数1(あるいはチーム3面での母数3)デッキが活躍したことが伺えよう。
殿堂改訂と「ヒロインBEST」によって環境が書き換わった直後ということもあるだろうが、既存の選択肢に縛られずに自分なりの可能性を模索したプレイヤー達の勇気に拍手を送りたい。
そしてもうひとつ、これらのデッキが輝けた理由があることを忘れてはならない。それはローグデッキ使いを信じたチームメンバーの存在だ。
互いが互いに背中を預けるチーム戦でのデッキ選択は、いつにも増して慎重にならざるを得ないもの。
それでも「お前が作ったデッキなら信じられる」「お前が選んだデッキなら間違いない」と後押ししてくれるチームメイトがいたからこそ、ローグデッキたちは日の目を浴びることが出来た。
「ローグデッキ使いは孤高だ」と評する声もある。
確かにそうかもしれない。だが、
ことチーム戦においては彼らは一人ではない。それはとても素晴らしいことだと、私は思う。