超CSⅦ横浜:メタゲームブレイクダウン&ローグデッキピックアップ
ライター:高橋 穂(北白河)
「ファンタジーBEST」登場による環境激変のさなか開かれた、超CSⅦ横浜。DMGP2024-1st Day2に続いてのチーム戦という特殊な環境ながら、これほど多くのデッキが長丁場でぶつかり合う都合上「今のオリジナル環境」を知るうえでこれ以上ない材料となるだろう。
この記事では、予選を突破した128チームの384デッキ、そしてその中からさらに勝ち抜いた16チームの48デッキたちから今大会のメタゲームを振り返っていく。
というわけで、早速デッキ分布を確認していこう。
なお、デッキそのものの数の多さから「元デッキの亜種といえるデッキ」についてはある程度系列でひとまとめにしていることはご留意いただきたい。
TOP128 デッキ分布
90 【火光闇ファイアー・バード】60 【水闇COMPLEX】
48 【火光水ゴスペル】
40 【光自然巨大天門】
24 【ドリームメイト】
20 【火水マジック】
19 【光水天門】
11 【闇自然アビス】
10 【光水闇ホワイト・スワン】
9 【水闇自然ジャオウガ】
7 【マーシャルループ】
6 【水自然ジャイアント】
5 【水闇自然DOOM】
4 【闇単アビス】
4 【ガイアッシュ「覇」】
3 【水魔導具】
2 【火自然逆悪襲】
2 【火光カウンター】
2 【火水闇バイク】
2 【刃鬼】
2 【マトリクスループ】
2 【火闇自然アビス】
2 【キリコグラスパー】
2 【5c蒼龍】
8 その他(使用者1名)
約1/4弱を占める【火光闇ファイアー・バード】の圧倒的なシェアと、それを倒すための【水闇COMPLEX】や【天門】系列などの受けデッキの躍進が目立つ結果となった。
そしてその相克を縫うかのように、自分の動きを押し付けることで幅広い相手に勝ちを狙える【火光水ゴスペル】【ドリームメイト】も一定のシェアを確保した形だ。
反面、前環境の覇者であり次回の殿堂入りの影響を受ける【火水マジック】【闇自然アビス】は大きくシェアを落としている。
「ファンタジーBEST」以降、環境全体ががらりと変わってしまったことが伺える結果となった。
そして、この中で勝ち上がった16チーム・48デッキの分布はこうなる。
10 【火光闇ファイアー・バード】
9 【水闇COMPLEX】
7 【光自然巨大天門】
5 【火光水ゴスペル】
4 【光水天門】
3 【火水マジック】
2 【闇自然アビス】
2 【ドリームメイト】
1 【水魔導具】
1 【水自然ジャイアント】
1 【水闇自然DOOM】
1 【5c蒼龍】
1 【ゲイル・ヴェスパー】※
1 【4cディスペクター天門】※
上位の順位的にはあまり変わらないが、全体との割合で見ると【火光闇ファイアー・バード】がわずかに割合を減らし(それでもまだ1/5以上を占めているのだが)、受けデッキたちの比率が増していることがわかる。
また、前環境から根強く【火水マジック】【闇自然アビス】を使い続けた熟練プレイヤーが複数人生き残っていたり、環境読みの成果というべき母数1デッキが2つ勝ち残っていたりと、練度や環境予測の精度も重要なファクターとなったといえるだろう。
この結果を踏まえて、いくつか注目したいデッキをピックアップしていきたい。
【火光闇ファイアー・バード】
あらすか 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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大会最大母数デッキにして、「ファンタジーBEST」段階での「最強のデッキ」となるのが、この【火光闇ファイアー・バード】。
強烈かつスピーディーな展開力と追加ターンの決定力、そして除去・メタ・ハンデスと三拍子揃った妨害まで併せ持つ隙のなさは、現段階ですらまさに完璧。ビートダウンデッキとしての完成度について疑う余地はない。
ただし、ビートダウンの宿命として受けに特化したデッキには(それでもかなり抗えるほうではあるが)苦戦を強いられることとなる。
今大会ではこのデッキに抗うために受けデッキが激増し、他のビートダウンデッキがほぼ駆逐されてしまう……と、大会全体に甚大な影響を及ぼすことになった。
これからしばらく、このデッキが最高峰のビートダウンデッキとして環境の中心に居座り続けることは間違いないだろう。
【水闇COMPLEX】
かつん 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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大量のメタ(妨害)クリーチャーとトリガー、そして《DARK MATERIAL COMPLEX》という絶対的フィニッシャーにより防御力と決定力を併せ持つコントロールデッキが、母数二位に輝いた。
【火光闇ファイアー・バード】に有利を取れる希少なデッキの一角でありながら、構築次第で多彩な仮想敵に対して対策して行ける……という魅力は唯一無二だ。
また、《冥土人形ヴァミリア・バレル》などの優秀な新規を「ファンタジーBEST」で獲得し、妨害性能そのものも跳ね上がっているのも見逃せない。
プレイ難度の高さと《DARK MATERIAL COMPLEX》への依存度の高さはどうしようもないが、新環境でも変わらず活躍できることは結果が証明している。
【光自然巨大天門】【光水天門】
ごんべえ 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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月嶋 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「受けデッキ」として忘れてはならないのが、元祖カウンターデッキこと【天門】系列。
特に出せさえすれば【火光闇ファイアー・バード】【水闇COMPLEX】の両方に痛烈に刺さる《∞龍 ゲンムエンペラー》の存在は非常に大きく、地力の高さも相まってその存在感はさらに増している。
これまでは《巨大設計図》のドロー性能と自然のマナブーストを活かした【光自然巨大天門】型が主流だったが、「カイザー・オブ・ハイパードラゴン」にて《理想と平和の決断》《聖霊超王 H・アルカディアス》が登場したことで【光水天門】が成立したのも見逃せないところ。
こちらは押し付け性能と引き換えに構築上コストの制限がなく受けやロック性能も高めやすい……という明確な差を持つこともあり、どちらが優位になるかの結論が出るのは先になりそうだ。
【火光水ゴスペル】
taki 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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大量のドローによる安定性と巨大呪文による決定力で知られるこのコンボデッキだが、墓地メタの重要性が減った隙を突いて立ち位置が劇的に向上した形となった。
さらにかつてから採用されていた《オリオティス・ジャッジ》だけでなく《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》まで採用することで【火光闇ファイアー・バード】への耐性も確保できるようになったのも見逃せない。
殿堂改定でも無傷だったこともあり、コンボデッキの代表としてこの先も環境での立ち位置を主張していけそうだ。
【ドリームメイト】
かきっず 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「ファンタジーBEST」で強化された種族の一角たる彼らも、今回の大会にてその実力を披露することとなった。
回りだしてからの驚異的な展開力については言わずもがな、その最大の独自性はビートダウンと《お目覚めメイ様》によるエクストラウィンという2つの勝ち手段を選べる所にある。
相手の受けが弱そうならば《龍后幻獣パティシエ・メイ様》(※上記リストでは不採用)、《料理猫のプワソン》などの連鎖から高速で詰め切り、受けが強そうならハイパー化で《森夢のイザナイ メイ様》の光臨を起動して安全に展開しつつ《お目覚めメイ様》で安全に勝つ…と、常に相手の嫌がる戦術を取れるのだ。
現段階では構築のテンプレートが定まりきっておらず研究途上ではあるが、最適な構成が定まった際には上位デッキをも食いうる柔軟性を見せてくれるかもしれない。
【火水マジック】
まぐろ/超人 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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前環境の覇者となるこのデッキだが、同じビートダウンである【火光闇ファイアー・バード】が遜色のない出力を持つうえ、そちらの妨害がことごとく刺さることから急激に数を減らしてしまった。
しかし、回ったときの出力の高さは据え置き。かつこれまで蓄積されてきたプレイングのノウハウを持つ熟練プレイヤーが使用したこともあって、ベスト4まで使用者を残す健闘を果たした。
《瞬閃と疾駆と双撃の決断》殿堂入り後は安全なワンショットの難易度が激増してしまうが、《芸魔王将 カクメイジン》《芸魔隠狐 カラクリバーシ》というカード自体の強さから、全く新たな形で復活する可能性もゼロではなさそうだ。
【闇自然アビス】
ZweiLance 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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こちらも前環境で活躍した一品だが、同じく【火光闇ファイアー・バード】との相性が悪いことや苦手とする受けデッキの増加に伴い数が激減。
とはいえこちらも同様に、これまでの研究を活かしたプレイヤーが使用してベスト8まで使用者を残している。
展開の要となる《邪幽 ジャガイスト》の殿堂入り後は出力が激減してしまうことから、そのままの形でのリペアは相当困難。これからの【アビス】の主力は、再び【闇単アビス】に移ることになりそうだ。
他にもシールドを殴って勝つデッキ全般に刺さる受けデッキの究極系【光水闇ホワイト・スワン】の登場や《冥土人形ヴァミリア・バレル》などの登場による【水闇自然ジャオウガ】の復権など、ベスト16に残らなかったデッキにもまだまだ可能性が眠っている。
「戦えるデッキ」という視点であれば、実はその裾野は見た目以上に広がっているのかもしれない。
ローグデッキピックアップ
ここからは、ベスト128まで勝ち残った384個のデッキの中で、使用者が1人しかいなかった8種のローグデッキについて紹介していく。いつものような単独記事ではない都合上手短にはなるが、独自の選択を貫き通して激戦を勝ち抜いたプレイヤーと構築者への賛辞に代えたい。
さいは 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「ファンタジーBEST」の5種族の一角【デスパペット】だが、《DARK MATERIAL COMPLEX》すら非採用の種族デッキの形に仕上げ切って勝ち抜いたのは驚嘆に値する。
もともとハンデスを絡めた妨害性能の高さについては群を抜いた種族であるだけに、少数のフィニッシャーでサポートしてやるだけで十分に舞えるというポテンシャルを見抜いた使用者の慧眼が光る逸品だ。
イルクジラ 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「受けデッキ」が隆盛した今大会だが、何も受けの手段はトリガーだけに限らない。【火闇邪王門】はそれを示す最もわかりやすい例だ。
「受けて切り返す」という基盤はそのまま、《百鬼の邪王門》だけでなくメタクリーチャーやトリガー、S・バックなどあらゆる角度からカウンターを繰り出せる独自のチューンが施された今回の構成の前に、殴るデッキはやり辛い思いをさせられたことだろう。
TH 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「強力な新カードでデッキを固めないと勝てない」という風潮に待ったをかけるのが、王道篇どころかアビス・レボリューションのカードすら一切採用しない構築の【水闇自然オービーメイカー】。
カードこそかつての活躍当時と変わらないが、《とこしえの超人》をフル投入するなどチューンはしっかり今を見据えている。
間違いなく今の環境で対策がなされないデッキだけに、対戦相手は戸惑ったことだろう。最新のパワーカードに頼らずとも、環境に合わせた構築とコンセプトさえしっかりしていればしっかり勝てる……という事実を、こちらに伝えてくれているようだ。
Laviりぴと 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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根強い人気の【水闇魔導具】……と見せかけて、なんと《堕∞魔 ヴォゲンム》不採用で《卍夜の降凰祭》のドルスザクサーチに特化した全く独自のデッキである。
基本的には《頂上混成 ガリュディアス・モモミーズ’22》からさらなる大型フィニッシャーを投下することをメインプランとしながらも、状況に応じたドルスザクを直接呼び出すシルバーバレット戦術を狙う……という発想には驚かされた。
あと、使用者の名前を見て必死に《追憶人形ラビリピト》の姿を探してしまったのは内緒だ。
ケノン 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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【水闇自然ジャオウガ】を見ればわかるように、《CRYMAX ジャオウガ》は出るとだいたい勝つ。【水闇COMPLEX】を見ればわかるように、水闇のコントロール基盤の妨害と受けは延々と時間を稼げる。それならば、【水闇ジャオウガ】が成立するのは必然と言えるだろう。
マナブーストではなく妨害と受けで時間を稼ぎ、6ターン目《ブレイン・スラッシュ》からの《CRYMAX ジャオウガ》が確実にゲームにケリをつける。必要なカード11種だけを詰め込んだシンプルかつ堅牢な構築には、機能美すら感じてしまう。
上杉昇 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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【光自然巨大天門】【光水天門】など、アップデートを受けた【天門】デッキの強さが知れ渡った今大会。だが、天門は天門でも【4cディスペクター天門】までもがベスト16入りという結果を残すことを読めたのは使い手以外にいなかったに違いない。
《霊宝 ヒャクメ-4》&《砕慄接続 グレイトフル・ベン》の定番セットはそのままに、現代デュエマに合わせてさらなる防御力を手にした今回のチューン。
《Dの博才 サイバーダイス・ベガス》→《理想と平和の決断》や《テック団の波壊Go!》での硬すぎる受けで相手の攻めを挫き、挙句の果てに《煉獄大帝 キング・ロマノフ》が全体除去と攻撃強制で盤面を崩壊させて《水上第九院 シャコガイル》で締め……という世界が終わるまでは破れそうにない徹底した防御布陣は、対戦相手に何度も絶望をもたらしたことだろう。
おんそく 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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「デュエマ界のアイドル(にしてローグデッキコーナーの常連)ことおんそくが、懐かしのデッキ【ゲイル・ヴェスパー】を超CSに持ち込んだ」と聞いて、耳を疑わなかったものはいないだろう。しかも、そのままベスト8にまで進出したと聞けばなおさらだ。
しかし、パワー12000以上のクリーチャーを要求するデッキ構築上、【火光闇ファイアー・バード】の猛攻や《∞龍 ゲンムエンペラー》に対して最高の受けとなる《ブルー・インパルス / 「真実を見極めよ、ジョニー!」》をスムーズにフル投入できるのは唯一無二の利点。
他にも展開系デッキに刺さる《飛翔龍 5000VT》や《デスマッチ・ビートル》などの存在もあり、仮想敵に幅広く勝ちに行けるデッキ選択は見事の一言。まさに「この環境、この大会だからこそ輝けたデッキ」と言えるだろう。
和泉正宗 超CSⅦ横浜 オリジナル構築 |
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いくらなんでも最高すぎる。まさかこのコーナーで、既存の類似デッキ名すら存在しない完全オリジナルデッキにお目にかかれるとは思わなかった。
2種8枚の「8コストのアウトレイジを送り込むトリガー」で《勝災電融王 ギュカウツ・マグル》を射出し、大型多色フィニッシャーに繋ぐという割り切ったコンセプトに加え、あわよくば《アアルカイト <ペガサ.Star>》でさらに踏み倒しつつ毎ターン出た時効果を使いまわしちゃおう……というやんちゃすぎるギミックまで盛り込む発想に脱帽。
おまけに条件付きのものも含めれば16枚のトリガーを擁しており受けも堅牢、《Disコットン&Disケラサス》で始動できれば4ターン目に《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》軽減展開や踏み倒し札からの連鎖展開始動もできるなど、意外なほどに攻防に隙がない。
実際に使用者はこのデッキで予選全勝を果たしており、「面白いデッキ」に留まらない実績とポテンシャルを感じるレシピに仕上がっている。マジでこのデッキを紹介できてよかった。
「ファンタジーBEST」の驚異的な強さと同時に、それに抗う術も数えきれないほど存在するという事実を見せてくれた今大会のデッキたち。
先日の新情報発表や「ドリーム英雄譚デッキ」の登場などもあり、まだまだ掘りがいのある環境が見渡す限り広がっているのは確かのようだ。
今回の結果が、読者諸兄のデッキ選択に新たな閃きをもたらしてくれることを祈っている。
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